やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある 作:トマト嫌い8マン
さてさて、今回登場しますのは……
やはり女の子は久しぶりに会うと驚きを与える
並んで歩くことしばし、無事に自宅についた俺はチャリを停めて凛の方を向く。
「で?他にも2人来るって言ってたからなんとなく察しはついているが、一応聞くぞ。誰が来るって?」
「もちろん、かよちんと真姫ちゃんだよ!」
「だと思ったよ。あいつら相変わらずか?」
「?そんなの、この後会うんだから確かめたらいいんじゃない?」
「それもそうだな。で?何時ごろにどこに着くって?」
「え~っとね、あと30分くらいで三島だって」
「ってことはそれなりに近くまで来てるのな。沼津駅まで来るのか?」
「うん!」
「っつってもこの時間帯だとバスももう少ないし、タクシー拾うってのも……しゃーねー。迎え行くか。面倒だけど」
「おっ!ヒッキー先輩の運転久しぶりだ!ねぇねぇ、凛も行ってもいいよね?」
「好きにしろ」
「やったにゃ~!」
別段驚くようなことでもないかもしれないが、これでも一応車の免許はしっかりとっている。まぁ免許くらいあった方がいいだろうという考えのもと取ることになったのだが(因みに全額自腹だった)、本当に取っておいてよかったと思わざるを得ない。こちらでの生活で車が必需品だというのはもちろんのことではあるが、よもや学生期間中に何度も運転する羽目になるとは、誰が予想していただろう。
まさか休み期間に一時帰国しに来た絵里の出迎えのために空港まで迎えに行ったり、旅行で千葉に来て迷子になった穂乃果を探すために車を走らせたりするとは思ってもいなかったわ。おかげさまでそれなりの運転経験を積むことができたから、まだ慣れない沼津の道でもそこそこ問題なく走ることができるのだから、何が良い方向に転ぶことになるのかなんて、わかったものではないな。
何が嬉しいのか鼻歌を歌っている凛と共に再び外に出て車庫へ向かう。今更ながらちゃんとした車庫がある一軒家とか、千葉じゃあんまり見なかったよな……
とりあえず車に乗り込みエンジンをかける。言っておくが、この車については中古車ではあるものの半分は自腹である。もう半分はというと、どういう風の吹き回しか親父が出してくれたのだった。流石に勤め先が勤め先なだけに車が生活必需品になるだろうと。まぁそれも半分は本気で、もう半分はどうやら俺がついに小町離れすることを喜んでのことらしい、ソースは小町。
決して大きいわけではない車、比較的平均的なサイズとフォルムだけれども座席を調整することで5人乗りから7人乗りに早変わりできる。まぁ、個人的にはそれなりに気に入ってはいる。
ともかく車に乗り込みエンジンをかける。助手席にはやはり上機嫌な凛。凛の鼻歌をBGM代わりにしながら俺は車を走らせた。
「そういや、何気に凛が助手席に座ったのって初じゃね?」
「そうだよ。いつも穂乃果ちゃんか真姫ちゃんか絵里ちゃんばっかりだったから。なんだか特別な感じがするにゃ~」
「そういやそうだったな」
「ふふ~ん。これで凛もそっち側の仲間入りにゃ~!」
「そんな喜ぶことでもないだろうに。それと、喋り方今は戻すんだな?」
「うん。大人になったからちゃんとした喋り方も大事だとは思うけど、やっぱりヒッキー先輩やみんなといる時くらいは、あの頃の凛のまま、ありのままの凛でいたいから。」
「……そっか」
時間の流れというのはどうしようもなく進み、否応なしに変えていく。周囲も、立場も、人も――否応なしに変えていってしまう。
昔は持っていたつながりも時と共に風化し、「ずっと友達」なんて言いながらも気が付けば相手の顔も名前も忘れてしまう。それほどまでに過ぎた時は残酷なのだ。
それでも――
それでもこうして過ぎた時間を大切にすることもできるのだと奉仕部が、μ‘sが、教えてくれた。大人になるまで気づくことができなかった――気づこうともしなかった俺が言うのは間違っているのかもしれないけれども……
時に過去を振り返り、懐かしめるほどに――俺の青春は、間違っていなかったのだろう。
――――――――――――――――――――
沼津駅前はこの時間でも意外と車が多く、何とか停車することができた。時間的にはほぼほぼ丁度良かったのか、ついて数分後に凛の携帯に二人から到着の連絡が届いたため、凛が改札の方まで出迎えに行った。
車の中からぼんやり外を眺めることしばし、コンコン、と車の窓がノックされる。
視線をそちらに向けると、成長していながらも懐かしい微笑みを浮かべた三人が、並んで車内を覗き込むようにしていた。
「久しぶりね、八幡」
そう言いながら当たり前のように助手席に乗り込んだのは西木野真姫。凛ほど極端ではないが、高校時代から髪を伸ばした彼女は、どこか彼女の母親と雰囲気が似てきた。ツンケンした、というかツンデレチックな態度を取ることが多かった真姫だったが、今では随分落ち着いた優し気な印象を受ける。にしても本当にこいつは綺麗になったよな。最初の頃からそりゃ目を引く美少女だったが、なんというか大人びた感じが割といい、うん。
「な、何よ?そんなにじろじろ見て」
「ん、あぁ。悪い」
「ふふっ。八幡先輩、真姫ちゃんに見蕩れちゃったんですね」
「そう?まぁ、当然よね」
「あ~。真姫ちゃん、ちょっと顔が赤くなってるにゃ~」
「ちょっと、凛!」
「ふふっ」
じゃれあいを繰り広げる真姫と凛を眺めながら嬉しそうにクスクス笑うのは、μ‘s一年組最後の一人、小泉花陽。他の二人と比較すると外見面ではそれほどの変化はないが、以前ほどのおどおどした様子はない。むしろこうやって二人のことを微笑ましく見つめる様子は、まるで母親のそれ――そう、非常に母性的、落ち着きのある女性となっていた。
「で?どこまで送ればいいんだ?」
「?どこって?」
「いや、この時間に来たってことは泊りなんだろ?そこまで送ってく」
「あれ?もしかして伝わっていなかったのかな?」
「何が?」
「今日わたしたち、八幡の家に行くつもりだったんだけど?」
……
…………
………………
「……は?」
――――――――――――――――――――
『はいはい~、お兄ちゃん久しぶり~。どったの?』
普段の状況であれば、こうして久しぶりに元気な妹の声を聞くことができることに対して喜びを感じていただろうけれども、如何せん状況が状況なだけにそんな余裕はない。
「どったの、じゃねぇわ。何やってんのお前?」
『え?今はお風呂上りにアイスを』
「そうじゃねえ。何で俺の家にあの三人が泊まることになってるんだって話だ」
現在、沼津にある俺の家。とりあえずずっと駅前にいるわけにもいかなかったからとりあえず三人とも連れてきて、余っていた部屋に案内し終わったところである。道中聞いた話によると、どうやら小町から了承を得て泊まりに来たとのことらしい。
『あれ?言ってなかったっけ?』
「聞いてねえよ。というか何でお前が俺の家に泊まる許可だしてんの?」
『いやだって、お兄ちゃんの家だし』
「何それジャイアニズム?俺の家はお前の家ってこと?」
『細かいことは気にしないの。それに、そもそも凛さんを呼んだのはお兄ちゃんでしょ?だったら泊まる場所くらい用意してあげたらよかったじゃん』
「ぐっ、そう言われると返す言葉もねぇけど……いやでもなんで二人増えてるの?」
『だって凛さんだけじゃ不公平でしょ?二人だってお兄ちゃんに会いたがってたんだから。今のお兄ちゃんの家なら、一人泊めるのも三人泊めるのも大して変わらないんだからさ、ちゃんとおもてなしするんだよ』
「はぁ。わかってるよ」
『じゃ、そういうことで。バイバーイ』
そう言って小町との通話は切られた。まぁ、別段一緒の屋根の下ということについては初めてというわけではない。合宿の時もそうしていたわけだし、何ならその時は男女比率がもっと極端だった。が、しかし、
「家っていうのは初めてなんだよなぁ」
合宿の時、基本的には真姫の家が所有している別荘を借りていたということもあり、一応外でのイベントという風に割り切ることができた。しかしながら今回は、引っ越し後とはいえ自宅である。自身のプライベート空間にてあの三人が過ごすことになる。
いや、千葉の家に来たことがなかったのかと言われたらそういうわけでもない。ただその時は必ず日帰りで遊びに来ることしかなかったのだ。こうして自分の家に、それなりに親しい女子が泊まりに来るというのは、なかなかどうして緊張する……
「まぁ、なるようにしかならない、か」
ガシガシと頭をかきながら夕飯の用意でもするべく、リビングの方に向かうのだった。
そういえば虹のユニットのCD買いましたか?私は買いました。
いやぁ~どのユニットの曲も良くて良くて……
虹の物語も書きたくなる~、でも同時には無理~
ってなわけで誰か書いてください(笑)