やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある 作:トマト嫌い8マン
さて、週末も明けまた新しい一週間がやってきた。今日の1限目の俺の担当は1年生の現代文。先日のやり取りもあり、今日こそは1年生が全員そろった状態の教室となっているのだろうか。
朝のHR後で少しキャイキャイしている教室の前に立ち、いつも通り小さく息を吐く。身体から力を抜いて、引き戸に手をかける。
「う~す。それじゃあ授業始めるぞ~」
いつも通りに教室に入りながらちらりと中を見渡す。それだけでもいつもは空席だった場所に艶やかな黒髪と右側のお団子が特徴的な少女が座っているのが目に留まる。
「……今日は欠席者なしっと。今年始まっての快挙だな。じゃあまぁ前回の続きからやって行くか。一応津島も課題の用紙とかでなんとなく把握していると思うが、欠席していたから隣の奴、フォローしてやれ。感覚的にはあれだ。転校生の面倒を見るみたいなやつだ、任せる」
「わかりました。津島さん、よろしくね」
「え、ええ。よろしく」
「ん、頼むわ。そんじゃ教科書開け~」
見たところ授業を行う分には何ら問題なさそうだ。津島もあの様子だとしっかりとクラスになじんでいけそうである。とりあえずは肩の荷が一つ下りたような錯覚を覚えながら、俺は本日最初の授業を進行させていくのだった。
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「どうして止めてくれなかったのよぉー!!!!」
「流石にあれはマルにも予想できなかったズラ……」
「……何事?」
放課後。
授業を全部終え、俺はこれまたいつも通りスクールアイドル部の部室の方へ来ていた。活動自体は一度全員そろっての打ち合わせが終わってからということもあって、着替えに遭遇するハプニングの心配もないため、そのまま部室の扉を開いた直後に聞こえてきた叫びが上記のあれである。
声の主である津島善子は、何故か机の下で体育座りをしながら、国木田と黒澤からどことなくかわいそうなものを見る目で見つめられていた。
「あ、比企谷先生」
「おう。で、高海?これはどういう状況なんだ?」
「えーと、実は私もわからなくて。なんだか放課後、善子ちゃんが何か失敗した、みたいなんですけど」
「失敗?」
首を傾げている高海から視線を外し、今一度津島の方を見る。そもそも何でここにいるのかという点からツッコミを入れるべきなのかもしれないが、そこは恐らく幼馴染である国木田が理由なのだと目星を付ける。さっきの叫びも、どうやら国木田に向けられているものだったみたいだし、概ね当たりだろう。というわけで、
「国木田。何があったんだ?」
「そ、それが……」
(少女説明中)
「というわけみたいです」
「ルビィもその時偶然見てたけど、さすがにびっくりしちゃいました」
「ううぅぅぅぅぅ~~」
困り顔の一年生コンビが机の下でうずくまっている津島を見やる。いや、その気持ちもわからんでもないがな。
占いができること、それ自体は確かに女子との共通の話題としては間違った選択ではないだろうし、まぁそういうものを通じて親交を深めるということもあるにはあるだろう。が、
「それにしても、こんなの学校に持ってきてたんだね」
「この辺の装飾、手作りなのかな?結構凝ってるね」
「それにしても、どうして普通のリア充ライフ?をしたいって言っているのに、これを学校に持ってきたのかしら?」
「そこはほら。ヨハネのアイデンティティ的なものが……はっ!?」
「……なんだかよくわからないけれど、とにかく複雑な状態にあるということだけはわかったわ」
津島の持ってきていた堕天グッズを興味深そうに、また感心しながら手に取ってみている高海と渡辺。そして若干引き気味の表情の桜内。
まぁ確かに痛い。痛いというか痛々しい。そればかりは通常の感覚の人であれば思ってしまうこともやむなしだろう。俺だって自分の昔のそういった言動を振り返ると今でも心が痛くなる。なんだよ名もなき神って。紙の間違いじゃないの?馬鹿なの?
まぁ津島の場合そんな自分と向き合おうとしている点は、ある意味評価できる。20過ぎのおっさになってなお、そういう乗りのままで生きている奴も世の中にはいるしな。ほんとそろそろ落ち着いてくれると助かるんだけど、材木座。とりあえず小説の方はましになってきてるんだから。
「うぅ……普通になろうとしてもなおこみ上げてくるこの堕天使の波動。ヨハネがヨハネたるこの性が恨めしいわ」
「え~と」
「ツッコんでやるなよ?そういうの、一番来るからな。ソースは俺」
「おソース?」
「いや、何でもない。高海、お前はなにも気にしなくていいから」
とりあえずジト目でこちらを見ている桜内と渡辺をスルーして、俺は机の下にしゃがみこんだままの津島に声をかけるのだった。
「おいこら堕天使。部外者が何この部室に滞在してるんだ?あと、そういう感じでひきこもるのは俺だけで間に合ってるんだよ」
「「「「「「説得の内容がひどい!?」」」」」」
かくして当の津島本人を含め部室にいた全員から総ツッコミを受けながら、津島善子の話を聞くこととなる俺だった。
……いつからこの部活はスクールアイドル部から奉仕部に変わってしまったのだろうか?