やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある 作:トマト嫌い8マン
だって映画観たら行きたくなったんですもの。
そしてそのままのテンションで1話分書き上げました。
今回はメンバーの一人との出会いです。
そのメンバーとは……
本日の沼津の天気は晴天。爽やかな青空が広がっている。休みの期間とは案外早く過ぎ去るもので、気づけば既に新学期初日の入学式、つまりは初出勤日である。
新人ということで、特に大きな役割がないこともあり、入学式が行われる体育館の入り口で、新入生と保護者の出迎え、資料の配布を任されることになった。それなりに時間があるためか、まだ誰も来ていないが。
「……まだ結構寒いな」
4月になったとはいえ、まだどことない肌寒さを感じさせる風が、そっと吹き抜ける。潮とどこか柑橘系っぽい香りが運び込まれ、ふと視線を海の方へ向ける。遠くの方に富士山がよく見え、高校生活の始まり方としては、かなりいいものなのではないだろうか。……が、しかし、だ。
「やっぱ少ないな……」
目の前にある長机、その上に置いてある資料を見つめる。その数はどう見ても一学年のものとは思えないほど少ない。なんなら下手したら、俺の高校時代のひとクラス分あるかないかレベルだ。
なるほど、このまま行けば確かに、統廃合の可能性が高そうだ。そうなった場合、こっちに来てしまった俺の職もかなり危ういことになるわけだが……
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「きゃっ!?」
「ん?」
やや強めの風が吹いたかと思うと、驚きの声が聞こえ、そちらに顔を向ける。
はためいていた制服のスカートを抑える黒髪の少女。タイの色から一年生とわかる。ようやく一人目が来たらしい。隣には母親らしき女性もいる。
と、何かが風に飛ばされこちらに向かってくる。くるくる回るように風に乗りながら、目の前まで来たそれをひとまず捕まえてみる。
「……羽根?」
真っ黒な羽根。カラスの物を更に黒く塗ったようにも見えるほど、真っ黒な羽根。というかこの感じだと、天然のものではなさそうだ。
「ビックリした……あれ!?」
「ん?」
先ほどの黒髪女子が、右側でお団子に纏められている髪辺りに触れ、首を傾げている。母親らしき女性は、校舎の入り口の方に移動し、受付の先生と何やら話している。
黒髪女子がまるで何かを探しているように、辺りを見渡す。
「この羽根か?」
取り敢えずそのままほっとくわけにも行かなさそうなので、羽根を手に、彼女に近づく……まぁ、関係者の腕章してるし、大丈夫だろう。
「あの……」
「えっ、はいっ!」
こちらに背を向けていた少女がパッと振り返り何やら不思議な構えをとっている……や、別に何もしないんだけど。
「この羽根……君の?」
「あ、それ!」
慌てた様子で俺の手から羽根を受け取る少女。ほっとした表情を見せ、羽根をお団子に刺した。直後、
「ヨハネ、堕天!」
と何やら珍妙なポーズを決め、ドヤ顔になる少女……不覚にも面白いと思ってしまった。というか無駄にそのポーズ似合ってるな。
「えっと……」
「はっ!じゃなくて!その……あ、あり……ありがとう、ございます」
急にキョドりながら頭を下げる少女。小声で、
「うぅっ、やっちゃった……私のバカ」
とか聞こえてきて、なんだかいたたまれなくなる。
こういう場合俺の取るべき行動は1つ。
受付としての仕事を果たすとしよう。
「いや、まぁ気にすんな。それよか新入生だよな?」
「えっ?あ、はい」
「取り敢えず配布物だけ先に渡しとくわ。体育館に席が用意されてるから、自分の名前が書いてあるとこに座ってくれ。まだ時間あるから、資料だけ置いて、別にぶらぶらしててもいいしな」
「えっ、あの」
長机の方に戻り、配布資料を手に取り少女の元に戻る。差し出された資料を受け取りながら、少女は少し困惑したような表情でこちらを見上げてくる。
「どした?」
「どうした、って……変に思わなかったの?」
「変に?」
「だから、その……さっきの!」
「あぁ……」
どうやら先ほどの堕天ポーズ?をしたことが気になっているらしい。というか敬語どこ行った、一応教師なんだけど?……まぁいいか。
確かにいきなりあんなの見せたら、普通は変に思われるわな。ただ……
「いやまぁ、なんつーか……慣れてるからな」
「慣れてる?」
「おう」
脳裏に浮かぶのはコートに指ぬきグローブで高笑いする眼鏡の男。なんだかんだ言ってあいつとの付き合いも長くなるしな。
そしてもう一人、理想の為の努力を欠かさないあの背の低いツインテール。あいつも初っ端からかましてくれたしなぁ……
『にっこにっこにー♪あなたのハートににこにこにー♪笑顔届ける矢澤にこにこー♪にこにーって覚えてラブにこっ♪……って、なによその目は!』
『いや、これは……デフォルトだ』
『あ、そうなの?って、ンなわきゃないでしょうが!』
あ、うん。ほんと、すげぇ出会いだったわ……由比ヶ浜と一色はポカンとしてたし、雪ノ下もいつものこめかみを抑えるポーズとってたし。
まぁともかく、そんな奴らとの出会いを経験したんだ。並大抵の自己紹介では驚かない。
「まぁなんだ……割とポーズも様になってたし、悪くないと思うぞ」
取り敢えず思ったことを述べてみる。見た目だけでもあいつらといい勝負ができるレベルだし、そういう衣装も普通に着こなせそうだ。
が、何か間違えたのだろうか。少女……ヨハネでいっか、ヨハネは俯いてしまった。
「……大丈夫か?」
「だっ、大丈夫よ!な、中入ってるわ!」
「おう……って早っ!」
気づいたらヨハネは既に体育館内に駆け込んで行っていた。まぁ、別にどこでどう待つのも自由なわけだし、中に行っても問題はないだろう。そう思い、俺は再び入り口で新入生を待つことにした。
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『割とポーズも様になってたし、悪くないと思うぞ』
そんな風に言ってもらったのは、初めてだった。呆気にとられるか、ドン引きするか。
今まで他の人が見せた反応は、そのどちらかしかなかったのに……
「悪くない……か」
このままで、良いのかな?でも……
「ううん!何を考えてるのよ!堕天禁止!私はこの学校で、リア充になるんだから!」
他に誰もいない体育館に、自分の声が反響する。生徒数が少ないこの学校には、昔の自分のことを知る人はいないはず。だから、ここで心機一転、普通の女子高生としての生活をすれば……
『悪くないと思うぞ』
「っ……変わるんだから、私は」
というわけで最初にちゃんと出会ったのは堕天使ヨハネでした。
なんでこうしたかと言いますと、まぁよく考えたら入学式の方が始業式より先なわけで、そこには二年生以上は来ないですし、となると必然一年生の方が先に会うだろう、となったわけです。
じゃあ何故ヨハネ?ってことに対しては、個人的にヨハネなら八幡と同じように、入学式朝早くに行きそうだと思ったからです。
ではまた次回に続く。