やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある   作:トマト嫌い8マン

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覚えている限り、彼女たちはいつでもあの海のそばの町で待っている。

なんだか、そんな気がしますね。


堕天後上昇後墜落(アップ・サイド・ダウン)

んなわきゃないだろ。

 

何がって?それは前回の話を見てもらったらわかる。

 

結論から言うと堕天使系スクールアイドルグループの誕生ということにはならなかったというだけだ。

 

何があったのか。その話自体は昨日の放課後まで遡る。

 

はい、ほわんほわんほわわ~ん。

 

……あ、今の何って?いやほらよくあるだろ?アニメとかで回想シーンに入る時にでるモクモクした演出と効果音。あれだよ、あれ。ダメ?

 

ダメか。なら仕方がない。ちゃんと説明するとしよう。

 

主に時間的要因により、流石にあの衣装が完成してすぐに撮影というわけにはいかず、とりあえず津島を体験入部生という形で迎え入れ、スクールアイドル同好会の活動は翌日に持ち越される形となったのだった。

 

で、翌日――つまり時系列的には今日この日。

 

天気も良く、見晴らしもいいからという理由で紹介PVの撮影に指定されたのは、

 

「いつもの屋上、か」

「?どうかしましたか?」

「いいや、なんでも。で、とりあえずカメラの方の設置はできたけど、どんな風に取るんだ?」

 

渡辺が自宅から持ってきたビデオカメラを三脚にセットし、俺のすることといえばあとは録画ボタンを押すだけである。あまりにも簡単な仕事に拍子抜けしそうになるが、如何せん今回は本当にそれしかやることがない。

 

一方、撮られる側のAqoursのメンバーはというと、今こちらに話しかけに来ている高海を除いたメンバーは、

 

「いい、もう一回よく見てなさい。指はこう!そして指と指の間に目が来るようにして――ギラン!」

「ほ、本当にこれをやるのよね」

「む、難しいズラ」

「うゆ」

「ギラーン!からの~、ヨーソロー!」

「って、変なものを付け加えない!」

 

動画の締めとして全員でやるらしい、津島曰く「堕天のポーズ」とやらを練習中である。むむむ、と首を傾げる国木田と黒澤。げんなり顔の桜内はともかくとして、意外と渡辺がノリノリである。

 

「とりあえずはヨハネちゃんをメインで撮って、その後に一人ずつ堕天系のコメント。最後にヨハネちゃんをメインで全員で堕天!って感じで行こうかと」

「なるほど。大体わかった」

 

マジで大雑把に、それとなりに、大体という言葉が適切な程度には理解した。まぁ、天候にも恵まれているし、そんなに難しく撮影するわけでもなさそうなので、俺としても特に不平不満不安はなく、手っ取り早く終わらせることはできそうである。

 

ただまぁ、

 

「なんか嫌な予感はするんだよなぁ」

 

――――――――――

 

放課後

 

「はぁ~」

「怒られちゃったね」

 

場所は移りまして高海家の前のいつもの海岸。ため息をつくのは6人、正確には5人の少女たち。

 

あの後、結局高海の指示通りに撮影は行われた。あくまで全体で写る時に録画する以外は特に関わることはなく、撮影の様子を見守るだけで俺の役割は終わった。その後、流石に配信慣れしているということもあるのか、PR動画の制作はしっかりと堕天使ヨハネ、基津島がごく短時間のうちに仕上げていた。

 

その動画をスクールアイドルのための動画配信サイトに投稿したのがほんの数時間前。さてその反響はというと――

 

「嘘!もうこんなに上がってる!」

「昨日までは3000の代だったのに、もう1000位だなんて」

「やっぱり堕天使効果があったのかな?」

 

事実、投稿される前と後ではスクールアイドルランキングの順位には明確な違いがあった。高海の言っていたように、堕天使系スクールアイドルというのが他には見当たらず、インパクトや真新しさがあったことや、元々の素材がいい彼女たちがゴスロリ系の服で着飾っているのが、客観的に見ても興味を惹かれるものだったからだろう。

 

しかしまぁ、この小さな島国にうん千ものスクールアイドルが存在しているというのを、改めて、こうも数値的に見せつけられると、自分としては――かつてのラブライブを、初期も初期のころから展開されていた大会のことも、その後に彼女たち主催で行われた全国のスクールアイドルたちと共に作り上げられたライブのことも――知っている身としては、いささか驚いていると言わざるを得ない。

 

現在スクールアイドルはいわば飽和状態にある、と言っても過言ではないのかもしれない。軽く調べてみただけでも、単純な実力でいえば、あの頃絶対王者と思われていたA-RISEに匹敵するレベルのパフォーマンスを披露しているグループも、今では決して少なくはないのだ。

 

 

さて、そんなスクールアイドルに対する現状認識はさておき、話を我らがAqoursの活動の方へと戻すとしよう。

 

前述したように、スクールアイドルランキングにて、投稿された動画の影響を受けたAqoursは確かにさながらジェットコースターのような勢いでその順位を上げていた。

 

……まぁ、この例えを出したことで察しのいいものなら、大体予想がついているかもしれない。

 

そう、ジェットコースターは走り出したら勢いよく上ることもある。が、そののぼりの後には基本的には続きがある――ありていに言ってしまえば、下りが待っているのだ。

 

――――――――――

 

「破廉恥ですわ!!!」

 

と、思わずAqoursのメンバーが身をすくめてしまうほどの大音量で室内に怒声を響かせたのは、ほかならぬ黒澤ダイヤ、黒澤ルビィの姉にして生徒会長。

 

ここは生徒会室。呼び出されたスクールアイドル部を待っていたのは、パソコンの画面をにらみつけるようにしている黒澤生徒会長と、なんだか楽しそうにしている理事長の小原の二人だった。

 

「ダイヤ~、そんなに激おこぷんぷん丸してなくてもいいじゃない。私はプリティーだと思ったけど?リトルデーモン4号ちゃんもすっごい人気だったし」

「そういう問題ではないですわ!私がルビィのスクールアイドル活動を認めたのは、節度のある活動をしているものだと思っていたからです。こういうのははしたないというのですわ。大体あなた!」

 

ビシッとこちらを指さす黒澤姉。

 

「仮にも顧問なのでしたら、こういうのは止めてしかるべきではありませんの?」

「いや、まぁ……言うほど止めないといけないものでもないと思ったし、何ならこれ以上に酷い迷走っぷりをみたことがあったもんでな。あと、仮にも先生だから指さすのはやめようね」

 

いやいや、ほんとにこの程度は可愛らしいものですからね?まぁ向こうは動画サイトに投稿みたいなことをしていなかったから、人目に触れるレベルは今回の方がすごいだろうけれども。それでもそういうコンセプトで行くと決めたのなら止めるほどのことではない。

 

――まぁ、安直な考えだとは思うし、決して最善だとも思わない。そもそも最初の動画以降急激に彼女たちが力をつけたわけではないのだから、急上昇したのは堕天使ヨハネがもたらした真新しさゆえであることは確定的だ。それはつまり、

 

「でも、この動画を載せてからスクールアイドルランキングの順位も上がったんですよ?」

「まぁ、あくまで一時的なものだとは思うけどな」

「え?」

「んんっ!比企谷先生の言う通り、あんなものはあくまで真新しさにつられただけ。本当の人気や支持とは程遠いものですわ」

「それって、どういう?」

「ご自分の目で、確かめてみることですわ」

 

そう言いながら、黒澤姉は自身の見ていたパソコンを彼女たちの方に向ける。訝しみながらもそれを一番近い渡辺が受け取り、改めて画面の方を見ると、

 

「あれ!下がってきてる!あっ、今もまた!」

「えぇっ!?」

 

驚きのリアクションの通り、1400、1500と少しずつ、しかし確実にその順位は落ちつつあった。

 

「もし本当にスクールアイドルとしての活躍を続けたいと、ラブライブに出場したいと考えているのでしたら、安易なキャラ付けなどで挑むような真似は間違っていますわ。もう一度、ちゃんと考えることですわね」

 

そう告げる黒澤姉の眼光は鋭く、妥協を許さないものだった。

 

単にスクールアイドルが気に入らないのではない。そのスクールアイドルへの姿勢が気に入らないと、言外に伝わってくる迫力があった。

 

――――――――――

 

――で、戻りまして現在。

 

「確かにダイヤさんの言うとおりだね。お手軽に注目を集めて、μ’sみたいにラブライブに出たいって思うのは、それこそμ’sや他のスクールアイドルに対しても、失礼だったのかもしれないね」

「これからどうするの?」

 

少ししょげている高海に問いかける桜内。撮影中最も不安げで、終わった後もずっとやってしまった感を醸し出していた彼女もまた、この問題については薄々気づいていたのだろう。と、ここまで沈黙を保っていた津島がすっと立ち上がり、俺を含めた他のメンバーに背を向けた。

 

「もういいわよ。やっぱり、堕天使だなんて、そんな変なもの、世の中から受け入れられないものなのよ」

「え?でも」

「ありがとう。付き合ってくれちゃって。ほんの少しだけど、楽しかった……かな。でも、もういいの。これ以上あなたたちがこれに付き合う必要なんかないし、迷惑かけちゃうでしょ」

「ヨハネちゃん」

「堕天使ヨハネはもう終わり。これでちゃんと、終わりにできる気がするの」

「じゃあ、スクールアイドルは?」

「う~ん、そうね。誘ってくれたのは嬉しいけど、私はやめておくわ。暫くは普通の――ただの津島善子としていてみようかと思うから」

 

高海たちの質問に答えはするものの――応えはするものの、決して津島は振り返らなかった。振り返ることもなく、彼女は一歩踏み出した。

 

「バイバイ」

 

そう言って、津島はこちらに表情が見られないようにしながら、去っていくのだった。

 

ふと彼女の去った方向から何かがひらひらと風に乗ってこちらに向かってくる。

 

思わず手に取ったそれは、入学式の時と同じ、一枚の黒い羽根だった。

 




単純に5周年のDay1行く予定だったのが行けなくなってちょっと寂しいな、ってだけです、はい。

でも、潮風香るあの町はいつでも彼女たちを待っている気がしますね。

いつかまた会えることを期待しましょう。
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