やはり女神達との道を歩むことには間違いも正解もある   作:トマト嫌い8マン

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ほいっとな


新しいAqoursとして

さて、高海からの報告によれば彼女たちによる津島善子の勧誘は見事に成功したらしい。まぁ、流石に衣装を着たまま沼津港の方までダッシュするのはいかがなものかと思ったのもあり、そのあたりについては流石に立場上小言を言わせてもらったが。

 

スクールアイドル部に入部し、そのメンバーからも堕天使を個性として認められるようになった影響が大きいのか、それ以来津島善子は堕天使を隠したり、無理やり抑え込んだりはしなくなった。

 

世界は変わらない、だから自分が変わるしかない。いつだって特殊で特異な者は、環境に適するために妥協と我慢と変化を求められる。ただ同時に、自分がどう変わるかについては、自分自身である程度決めることができる。普通怪獣を脱却したくて始めるように、堕天使である自分であり続ける場所として、スクールアイドルを始めたとしても、別にいいじゃないか。

 

なりたい自分を我慢しなければいけない理由を、高校一年目にして探さなくてもいいのだから。そのままでいい、変わらなくていい。変わることを選ぶなら、妥協に基づいたものじゃなくてもいい。

 

自分を曲げることなく、その信念を貫き続けた結果孤高であり続けてきた彼女は、その果てにその自分を受け入れてくれる居場所を、大切な人々に出会い、孤独ではなくなった。

 

周囲に合わせて妥協してきた結果、人の顔色ばかり窺うようになった彼女は、自分の意見を貫きたいと思い、そのために妥協せず行動できるようになり、大切な場所や人を守れる人になった。

 

自身を上手く魅せることに長けながらも、周りから疎まれることもあった彼女は、いつしか「本物」を求めるようになり、自分の全部受け止めてくれる場所を見つけることができた。

 

なら、ずっと自分が天使であると――堕天使であるとしつづけてきた津島善子、堕天使ヨハネにとっての居場所が、見つかってもいいじゃないか。

 

そんな気持ちで授業のために1年生の教室の扉を開けると、

 

「くっくっく。このヨハネアイにかかれば、未来を見通すことなど、造作もないことなのです!」

 

と、制服の上から黒マントを着用し、教卓の上に水晶玉を乗せながら怪しげな儀式にいそしむ、女子高生の姿がそこにはあった。というか、件の津島だった。

 

堕天使系スクールアイドルであることをアイデンティティとした彼女は、どうやら自分を抑えることをせず、ありのままでクラスメイトとやって行くことにしたらしい。今の津島の方が表情が生き生きとしているし、いい気持ちの変化だろう。

 

そうかそうか、と思いながら教卓の方へ歩を進め、

 

「授業開始時間まで何やってんだ、駄目天使善子」

「駄目天使じゃなくて、堕天使よ!あと、善子じゃなくてヨ・ハ・ネ!って、先生!?」

「そうだぞ~、比企谷先生だぞ~。で?とりあえず授業開始時間なわけだけれども?」

「あ、えぇと……その……すみませんでした」

「よろしい。というわけで早く片付けろ~」

 

教師として、必要な説教をかますのだった。

 

良い子のみんなは授業開始時間とか始業時間とか、そういうのちゃんと守れよ。

 

比企谷先生との約束な。

 

 

 

さて、津島が加入して初めて正式に6人で部活動を経験した日の翌日、この日は水曜日だった。

 

そう、水曜日。この日は俺が松浦の家を訪問する日だ。

 

なんだかんだと年度初頭から度々訪問に来ていたわけだが、松浦から正式な復学に関する書類が提出されたらしく、こうして訪問するのもあと1,2回程度になるだろう。

 

「そうなるね。でも、いつも学校の外でしか会わなかったから、いざ先生と学校内で会うってなると、ちょっと違和感あるかも」

「そりゃまぁな。つっても、別に担任じゃないわけだしいつも会うわけでもないだろ。頻度的に言えば、今とさして変わらない気もするぞ」

「そういわれるとそうかもしれないけど、なんというか、環境が違うからさ。休学前は先生は学校にいなかったじゃん?」

「んな大した変化でもないだろ。そもそもお前学年上がってるわけだし、新1年生が入っているわけだし」

 

などと雑談しながらではあるものの、それでも互いの手はひたすらに動かされている。ウェットスーツやマスク、フィンを洗いながらのこうした会話ももうしなくなるのかと思うと、どことなく寂しさを覚えてしまう……いや、待ておかしい、この思考は俺らしからぬ思考すぎる、完全に働き者の思考回路じゃないか。教師生活始まって数カ月、既に染まりつつあるというのだろうか。

 

「1年生かぁ。なんかもう懐かしいや。そういえば千歌達のグループにも1年生が入ったんだっけ?」

「ん?おう。3人な。国木田、津島、でもって黒澤な」

「ルビィ?」

「そりゃお前なら知ってるよな」

「ダイヤがよく許したね」

「黒澤妹自身が生徒会長に自分の気持ちをぶつけて、説得したからな」

「そっか。どんな感じ?」

「ん~?まぁそうだな」

 

最後に手を洗いながら視線を宙に向ける。どう説明したものかとしばし思考し、

 

「ただいま絶賛迷走中だ」

 

と、率直な感想を述べるのだった。

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