『さあ、次の試合に進みましょう!』
男性実況の声がスタジアム内にうるさいくらいに響き渡る。
観客席にいるオレでも若干耳を塞ぎたいレベルです。
予選リーグ1回戦。
環境は水のフィールド。
ということで長方形の形をした水深数mの深いプールに水がなみなみ入っています。
水ポケモンしかダメじゃないかと思うところですが、そこはきちんと円形状の陸地がいくつもきちんと出来ていて、水ポケモン以外でも活躍できるになっていたりします。
ちなみに、これはカビゴンやボスゴドラが乗っても壊れないんだとか。
この世界の科学技術はよくわかりませんね。
『まずは赤コーナー! ハクタイシティ出身、サユリ選手!!』
うん、どう見てもエリートトレーナーです。
『サユリ選手は毎回決勝リーグまで勝ち進む強者です! そして青コーナー! フタバタウン出身、ヒカリ選手!!』
そして両者がゲートを通り、トレーナーがポケモンに指示を出す枠の中に入る。
基本、トレーナーはこの枠の中から出ることは許されない。
「結局ヒカリちゃんとバトルは出来なかったけど、楽しみね」
「ああ。なんつったって、このうすらバカの弟子だかんな」
そしてオレの周りにはグリーンさんたち。
ちなみにダイゴは席をはずしていてこの場にはいない。
なんでも、チャンピオンとしての仕事が入ったようだ。
しかし、相変わらず、シルバーさんは口が悪い。
だから、年上扱いしないんだよ。
尤も、心の底から嫌っているわけではないけどね。
「おい、シルバー」
「あ? 年上には敬えつってんだろ?」
口喧嘩に発展しそうになっても、
「二人ともやめないか。ヒカリちゃんの試合だよ」
グリーンさんが止めてくれる。
尤も、オレたちも本気じゃないんだけどね。
っとそうだった。
ヒカリちゃんの持っているポケモンは、ポッチャマ、リザードン、ムクホーク、エルレイド、ギャラドス、ベトベター、ムウマージ、ジバコイル。
この中で水ポケモンはポッチャマ、ギャラドスのみ。
リザードンなんかは水が大の苦手だ。
「まあでも、そんなに心配はしてないんだよね」
「それは君が彼女の師匠としての自信かい?」
「それもありますが、彼女のトレーナーとしての才能ですかね」
『では、試合開始ィィィ!!』
「きっと面白いことが起こりますよ」
*
初めてのポケモンリーグ。
スタジアムに立って見回すと、客席を埋め尽くすさまざまな色。
そして耳を塞がんというばかりの歓声。
こんな中でのバトルなんて、今まで一度も経験したことはない。
緊張もしてる。
でも。
緊張もしてるけど、何より——
「ワクワクするなぁ!」
期待感の方が大きかった。
そしてトレーナーの待機場所に立つ。
ここからポケモンたちに指示を出すのだ。
「では、改めてルールを説明します」
ジャッジの人のルール説明を聞く。
「1対1のシングルバトル、使用ポケモンは3体、ポケモンの入れ替えは認めます、道具の使用はできません。以上です」
うん、想定通り。
今のを言いかえれば、それ以外は何をしたってOKなのだ(スポーツマンシップに反さない行為以外)。
ということはわざわざご丁寧にこの水のフィールドに付き合ってあげることもないのである。
尤も、この手段はまだとっておく。
「では、よろしいですね?」
相手選手、それからあたしも頷く。
「では、両者、ボールを構えて!」
あたしの最初のポケモン。
『では、試合開始ィィィ!!』
それはあなたよ!
*
『最初の1体目のポケモン! サユリ選手はスターミー、ヒカリ選手はギャラドスを繰り出しました! スターミーにギャラドス、どちらも水タイプのポケモンです!』
「ギャラドスね、悪いけど私のスターミーの相手じゃないわ」
スターミーは特攻、素早さが共に高いポケモン。
しかも、10万ボルトにサイコキネシスにれいとうビームといった多彩な技を覚える。
だけどね。
「さあ、どうですかね! ギャラドス、ダイビングでスターミーに接近!」
タイプ相性はバトルではすごく大事。
でも、それだけで決まるわけじゃない。
「スターミー、10万ボルト!」
スターミーの放った10万ボルトが水中にいるギャラドスを襲う。
『決まったぁ! スターミーの10万ボルト! 電気に弱いギャラドスには効果抜群だぁ!』
ギャラドスは浮かんでこない。
「さあ、次のポケモンを用意なさい!」
相手はスターミーともども完全に油断していた。
「ギャラドス、戦闘不 「今よ、出てきなさい! ギャラドス!」 !?」
「グオォォオ!」
『な、なんと! ギャラドス、スターミーの10万ボルトを食らってもダウンしていません! そのまま水中から飛び上がったァ!』
宙に飛びあがったギャラドス。
「そのまま反転してずつきよ!」
「くっ! スターミー、避けて!」
ギャラドスのその高い攻撃種族値からのずつき。
性格はわんぱくだったので、特性いかく込みの物理受けを考えた戦略で努力値を振っていたものの、攻撃にだってちゃんと振ってある。
しかも落下の加速度とギャラドスの全体重が加わる。
スターミーの耐久とHPの少なさなら、
『決まったァ! ギャラドスのずつき! スターミー、避け切れなかったァァ!!』
そして200kg以上の体重がスターミーに乗っかり、疑似的なのしかかり状態になって、
「スターミー、戦闘不能! ギャラドスの勝ち!」
*
「かみなりとか10万ボルトでもよかったんだろうけど、水面高く飛び上がってくれたんだったら、確かにずつきの方がよかったわね」
「ああ。200kg以上の体重があるから、いくら電気が弱点とはいえ、ずつきの方が威力があるからな。つか、あのギャラドスはマジなんなんだ? スターミーの10万ボルト食らってもピンピンしてるとか」
「なんでも、あのギャラドスは発電所内で捕まえたらしいから、電気に耐性があるんだとか」
「ええ!? なにその反則!」
隣では3人が今の試合の討論を活発に交わし合っている。
「でも、水タイプって2体しかいないわよね? ヒカリちゃん大丈夫かしら?」
その一言に若干ピクンときた。
「そこは大丈夫さ」
3人がこちらを振り向く。
目はどういうことか説明しろ、と口以上にものを語っていた。
「わざわざ、あのフィールドに付き合うことはないってこと。お? どうやらそれが拝めるかもね」
オレは相手が繰り出したポケモンを見てそう語った。
*
『サユリ選手、2体目のポケモンはキングドラだァ!』
「キングドラ、弱点はドラゴンタイプしかないわ。さて、どうするのかしら?」
どうするか?
そんなものは相手の出方を見ながら考える!
とりあえず特性は『すいすい』か、『スナイパー』か。
それにギャラドスの特攻からのりゅうのはどうは、弱点とはいえ、倒すには些か足りない。
「キングドラ、こうそくいどう! ギャラドスをスピードでかく乱するわよ!」
あまごいをやらないとすると、『スナイパー』の方が濃厚か。
「ギャラドス、急所攻撃には十分気をつけなさい! ハイドロポンプで牽制よ!」
特攻がもともと低い上に、性格でも特攻にマイナス補正が掛かっているため、あくまで足止め目的。
だけど、素早さがグーンと上がってるキングドラにはハイドロポンプは当たらない。
ならば、
「ギャラドス、りゅうのまい!」
「ムダよ! キングドラ、ギガインパクト!」
キングドラのこうそくいどうからのギガインパクトの方が先に決まった。
こうそくいどうで加速してる分、相手に突っ込むギガインパクトの威力は上がっている。
だけど、
『な、なんと! これはどうしたことでしょう! キングドラのギガインパクトが全く効いていない!』
「そっ、そんな!?」
あたしのギャラドスは打たれづよいのよ。
たぶん個体値もきっと最高値の31.
それに性格がわんぱく(防御↑、特攻↓)だったから物理受けに育てた。
だから、いくら、じばく系列を除いて、ノーマルタイプ物理技最強のギガインパクトといえど、簡単には大ダメージは食らわない。
『一方ヒカリ選手のギャラドスは何やら奇妙な踊りを踊っています!』
へっ?
奇妙な踊り?
いや、りゅうのまいっていうれっきとした技なんだけど。
アレ?
もしかして知られていないとか?
「くっ! そんなヘンな踊りをしてたって私のキングドラのスピードについてこれないわ!」
……多分知られてないんですね、わかります。
これは勝っちゃうかもしれません。
とはいうものの、水面を滑空するように移動しているキングドラのあのスピードは、いくらりゅうのまいで素早さが上がったとはいえ、技を当てにいくのは些か厳しい。
ならば、いよいよ作戦 K☆A☆I☆K☆I☆N 。
「ギャラドス、高く高くとびはねなさい!」
その指示でギャラドスはスタジアムの客席の高さより高く飛び上がった。
「縦に回転!」
ゴローニャのころがるのごとく(あんなにグルグルとは回らないけど)縦回転を始める。
当然ギャラドスは飛べないので、落下をし始めている。
「アイアンテールを水面に叩きつけなさい!」
「グオォォオ!」
掛け声一閃。
アイアンテールが水面に叩きつけられた。
*
『こ、これは……!』
実況は言葉を失っているようだ。
尤もそれはオレやヒカリちゃん以外、この会場にいる全員が同じような状況である。
「まあ、ざっとこんなもんさ」
オレも自分のポケモンに対してああいう手合いなら、似たようなことをやる。
「高くとびはねることによって、落下する際に発生するエネルギー、しかもそれはギャラドスのあの重い体重も合わさって相当の威力になる。さらに縦回転による遠心力、そしてそれらが全て合わさったアイアンテール。そうなればこの結果も当然だ」
ついでに言えば、ギャラドスは高い攻撃種族値を持っている上に、りゅうのまいで攻撃力もアップしていたから、ただでさえ威力の高いアイアンテールにさらなるブーストが掛かっていたようなものだ。
『な、なんと! ギャラドスのアイアンテールにより、フィールドの水がほとんど外に溢れ出してしまったァァ!』
そして水のフィールドに張ってあった水はほとんどがなくなる。
別に、フィールドの環境を変えていけないなどというルールは存在していない。
だから、この戦法もアリである。
『キングドラは!? サユリ選手のキングドラはどこに!?』
キングドラはフィールドから消えていた。
だが——
フィールド上に僅かながら残る荒ぶっていた水流もだんだんと穏やかになり始めてきた。
「!? キングドラ! しっかり!」
『あーっと、キングドラが浮かんできました! これは!?』
ジャッジが傍による。
「キングドラ、戦闘不能! ギャラドスの勝ち!」
あんなボコボコの様子なら、きっと荒れ狂う水流によって壁に何度も叩きつけられたに違いない。
ちなみにオレだったら、威力を弱めることによってあの水流を調節してキングドラの自由を奪い、そして波が壁に当たって反射してきたところをカウンター気味に物理技を一撃入れていたことだろうな。
まあ、なにはともあれ、相手の手持ちはこれで残り1体である。
*
「まだよ! 勝負は最後まで分からないわ! 出番よ、ピジョット!」
『サユリ選手最後のポケモンはピジョットです!』
なるほど、空からヒットアンドアウェイ戦法で来るってことね。
「ピジョット、そらをとびなさい!」
「ギャラドス、たつまき!」
飛び上がったピジョットに対し、特殊技のたつまきを指示する。
威力的にもギャラドスの能力値的にも、これでピジョットを落とせるということはないが、
「ピジョッ、ピジョッーート!」
『ああっと、これはピジョット、ギャラドスのたつまきに巻き込まれた! かなり苦しそうな声をあげている! 効果は抜群だァ!』
実況の言うように効果抜群というほどでもないが、そらをとんでいる相手に対しては、たつまきは通常の倍の威力を発揮する。
『ピジョット、たつまきからなんとか脱出したァ! しかし、相当ダメージを負っているようです!』
「ピジョット、がんばって!」
これで迂闊にそらをとべなくなる。
なにせ飛んだら、またあのたつまきを食らうからだ。
実際これは飛行タイプの特徴を打ち消し、相手のトレーナーに相当のプレッシャーを与えることになるだろう。
「ピジョット、ブレイブバード!」
「ギャラドス、アクアテールで撃ち落としなさい!」
ピジョットのブレイブバードがギャラドスに迫る。
だが、りゅうのまいを1回積んでいたギャラドスのアクアテールの方が速く決まる。
急加速で突進していたピジョットに対し、カウンター気味にギャラドスのアクアテールが決まった。
ギャラドスは、ブレイブバードのダメージをもちろん食らった。
しかし、ピジョットはたつまきやタイプ一致物理技アクアテールのダメージを負っていた。
さらにプラスして、ブレイブバード自体が使った側もダメージを受ける技であるため、その反動ダメージも合わさって、ピジョットは墜落した。
「ピジョット、戦闘不能! ギャラドスの勝ち! サユリ選手が3体全てのポケモンを失ったため、この勝負、ヒカリ選手の勝ち!!」
『決まったァァァ! リーグ強豪として知られるサユリ選手がまさかの1回戦敗退! 打ち破ったトレーナー、ヒカリ選手2回戦進出決定ィィ! いやぁ、なにかが起こると言われていた今大会! なんと1回戦、早くもここで大波乱が起きました! ヒカリ選手の——』
シンオウ地方フタバタウン出身、ヒカリ。
2回戦進出。
ちなみに
「マリル、アクアジェット!」
『アクアジェットがクリーンヒットォォ! トオル選手のマッスグマ、耐えられるか!?』
「マッスグマ、戦闘不能! トオル選手が3体全てのポケモンを失ったため、この勝負、ユウト選手の勝ち!」
『マッスグマ、耐えられなかった! ホウエン地方ハジツゲタウン出身、ユウト選手、2回戦進出決定!!』
ホウエン地方ハジツゲタウン出身、ユウト。
2回戦進出。
ようやくの戦闘要素。若干アッサリし過ぎな感も否めないですかね?とりあえず、これ以後はしばらくバトル三昧といった感じですかね。
次回は主人公君の2回戦。ゲストのあのキャラが登場します。
それからピジョットのブレイブバードはタマゴ技ですが、タマゴ技は、遺伝じゃなくても覚えられるということにしてあります。