FateHF.Normal√×FateGO AD.2004? 幻想逃避都市冬木   作:ありゃりゃぎ

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一月振りの投稿です……。
実はHF2章見てたら考えていた展開を書き換えたくなりまして、一か月ほど練り直すことになりました……。
これからもミスが多々あるでしょうが温かく見守っていただければとおもいます


ep4 十年後の顛末

「ここから先は又聞きだ。私は第五次聖杯戦争には参加していないのでね。……本来ならばミス遠坂本人に話してもらうべきだろうが」

 

 時計塔の講師はそう前置きして、静かに語りだした。

 

「間桐桜は第五次聖杯戦争の折りに聖杯の器になっている。本来であればそれはアインツベルンのホムンクルスの役目だったろうが、そのあたりはその時の間桐の当主が上手く出し抜いたのだろう。と言っても、先に言った通り聖杯は汚染されていた。案の定、彼女は暴走したらしい」

 

いつの日か特異点と化した第四次聖杯戦争で見たような、呪いによって汚染された聖杯の端末となるなんて、想像するだけでも良くないことだと分かる。

 

「加えて、彼女自身にも呪いといった負のエネルギーに対する親和性があった。かなり悲惨な幼少期を過ごしたらしいからな」

 

「魔術師の家系に養子となると、確かに……。魔術刻印の継承など体質の問題を改善・克服するには幼少から過酷な施術が必要と言われていますから」

 

 一般人代表の僕からすれば、魔術師のことなんてよくわからない。けれど人理修復の旅の中で、魔術師と呼ばれる人たちの妄執、執着は幾度も垣間見ている。きっと間桐さんもそれに巻き込まれてしまったのだろう。

 

「……結局、彼女の暴走は寸前で食い止められた。幾人かの犠牲の末にな」

 

 彼女の義兄、間桐慎二。そして義祖父である間桐臓硯は黒き聖杯と化した間桐桜を利用するも、いずれも道半ばにして死亡。

 そして、彼女の暴走を止めるためにアインツベルンのマスターでありもう一人の聖杯、アイリスフィール・フォン・アインツベルンと監督役の言峰綺礼が犠牲となった。そしてもう一人、

 

「衛宮士郎。セイバーのマスターとして今回の聖杯戦争に参加した、ほとんど一般人の青年が犠牲になっている。そして彼は、間桐桜の思い人だったらしい」

 

 偽りの日常。あの白昼夢がフラッシュバックする。

 菫色の髪をたなびかせた少女と、赤銅色の髪の精悍な青年が、並んで炊事場に立つ。手慣れた風な青年と、その青年をサポートするように調理する少女。そこには長い間に培われた信頼があって、先輩はすごいですねと彼女が言えば、青年は桜だって大したもんだよなんて返す。僕は居間でぼんやりしていて二人の背中しか見ていなかったけれど、きっと二人は朗らかに笑っていたに違いないのだ。

 そんな春の陽気のような、侵しがたい幸福。それはもう、とっくに壊れてしまっていたのか。

 

「じゃあ、間桐さんが聖杯を手に入れようとしたのは——」

 

「かつての——第五次聖杯戦争が起こりえる以前の日常へ還るため、だろう。実際、そうなっている」

 

 2014年の冬木市に上書きするように、2004年の冬木市を再現した。十年の月日は、彼女の傷を癒すには足りなかった。

 

「そうして今の状況が出来上がった。召喚したサーヴァントに人格を上書きする形で再現した」

 

「それは、つまり敵側には冬木市全人口分のサーヴァントがいるということですか……!?」

 

 マシュの驚愕は最もだ。今まで、そんな数のサーヴァントを相手にしたことなどほとんどない。戦力差は絶望的と言えた。

 

「もちろん、全てが先ほどのバゼット・フラガ・マクレミッツのような強さではない。間桐桜にとってキーパーソンとなる人々のみが正規のサーヴァントを材料にしている。ほかは皆、シャドウサーヴァント。もしくは君たちのカルデアから召喚されたサーヴァントたちだろう」

 

 シャドウサーヴァントを基にして再現された人々は決まった行動を定められた場所でしか行えないという。正にNPCという表現がぴったりくる。

 

 そしてカルデアから召喚されたサーヴァントというのは、午前中になぜか教鞭をとっていた北斎ちゃんやレオニダスたちのことだろう。

 

「彼らも敵に回る可能性がある。間桐桜にはサーヴァントを黒化させて操る能力がある。エーテル体にとって天敵だ」

 

 状況としては、かつてのアガルタで起きたことに近いだろうか。決戦兵器とも呼ばれる彼らサーヴァントは頼りになるが、同時にサーヴァント故の弱点も抱えている。エーテル体の身体というのは、その最たるものだろう。

 

「サーヴァントを操ることができるっていうのは分かったけど、でもだとしたらどうしてエルメロイⅡ世や遠坂さんはこうして自分の意思で動けているの?」

 

 彼らもまた間桐桜に召喚されたサーヴァントだと言うのならば、そのマスターに反抗している現在の状況は辻褄が合わない。

 

「そこで先の話に戻る。言っただろう、彼女は正気ではないと」

 

 時計塔の講師は語る。その少女は、微睡の中に沈んだのだと。

 

「間桐桜は、十年前に戻りたかった。しかし本当の意味で十年前に戻るには、それまでの記憶を持っているのは都合が悪い」

 

 間桐さんが望んだのは、かつての日常。その日常をあらゆる憂いなく享受すること。

 

「有体に言って、彼女は己の所業に耐え切れなかった」

 

 だから、彼女は記憶を捨てたのだ。

 

「彼女は幾人かのサーヴァントに対してこの世界の秩序を維持するように命令したあと、自分自身の2004年から2014年までのあらゆる記憶を焼却した」

 

 不都合な真実から目を背け、彼女は眠りに就いた。偽りの幸福を映す白昼夢の中に身を投げた。

 

「マスターであり、聖杯そのものである間桐桜は眠りについた。管理を任されたサーヴァント——仮にこれをGMサーヴァントと称するが——彼らの管理は、最初のうちは上手くいっていた。けれど、予想外の事態が起きた」

 

「私たち、カルデアからの干渉ですね?」

 

 時計塔の講師は、「その通りだ」と首肯した。

 

「君たちのエントリーは、ただでさえカツカツだった聖杯の処理能力をパンクさせるに至った。GMサーヴァントたちは、聖杯のリソースを効率化してこの世界を維持させたが、一度できた綻びはそう簡単に戻らない。私とミス遠坂は、その綻びから記憶を取り戻したわけだ。それでも万全ではないがね」

 

 GMサーヴァントらは、限界に至ったリソース確保のために思い切った手段をとった。

 

「奴らは聖杯のリソース分配に勾配を付けることで現状に対処した。間桐桜の周囲にリソースを割き、それ以外はおざなりな状況にしたんだ」

 

 テレビゲームを想像すればいい、と彼は語った。

 

「はじまりの街の中にいる主人公を映しているときに、まさか魔王城の光景を映したりはしないだろう。もしくは、遠景のポリゴンは近くのものより大雑把な仕上がりになっているのを想像してくれればいい」

 

 昼間では、間桐桜は学校で活動しているもののアグレッシブに動くこともあることから、そこまでリソースの勾配をつけることはできない。だが、夜中は違う。夜の間、間桐さんは衛宮邸にしかいない。その間、衛宮邸の外は2014年の冬木市に戻るというわけか。

 遅まきながら、白き少女の忠告を思い出す。彼女は言っていた。もうじき夜が来ると。

 

「だからこうして、我々は夜の間だけは自由に行動できる」

 

「ということは、昼は無理なんですか?」

 

「ああ。昼間はこの冬木市全体にルールが適応されている。私もミス遠坂も、記憶を維持することさえできない。夜になれば、それまでのことも含めて思い出せるがね」

 

 これはかなりきつい縛りだ。一日の半分を無駄にしなければならないし、その上昼間は記憶を維持することさえできないなんて。

 

「だが、君たちならば昼の縛りも脱することができるはずだ」

 

 そうだろう? エルメロイⅡ世が中空に声を投げる。すると、見慣れた映像が空間に投影された。

 

「ダ・ヴィンチちゃん!?」

 

「やぁ。元気かい、マスター? こちらはしばらく通信が繋がらなくてだいぶヤキモキしていたんだが、その調子だと大丈夫そうだね?」

 

 どうやら僕が眠っている間に、カルデアとの通信が回復していたらしい。今までは現状の理解に努めるべく、エルメロイⅡ世の話を遮らないよう黙っていたようだ。

 

「それでも、一言声をかけてくれればよかったのに……」

 

「それについては申し訳なかったね。でも、時間が限られているからね。どうしても優先事項である現状の確認から行いたかったんだ」

 

申し訳ないと謝って、ダ・ヴィンチちゃんは続けた。

 

「こちらで、再度マスターを補足できた。これでもう見失うことはないはずさ。存在証明の応用で、昼間の間でも君とマシュは記憶を維持できる」

 

 ダ・ヴィンチちゃんら、カルデアのスタッフの心強いサポートでどうにか光明ができてきた。

 

「さぁ、ここからが本番だ。我々の勝利条件を確認しよう」

 

 僕らの勝利条件は、聖杯を回収することだ。そしてこの特異点を解決することだろう。

 

「しかし、聖杯に手を出して、下手に間桐桜を正気に戻してしまえば、この冬木に召喚された全てのサーヴァントが敵に回る。それどころか私とミス遠坂も自由意思を失うだろう」

 

「カルデアからの応援も難しい。サーヴァントを追加で送ろうにも、その特異点の中じゃ契約に横やりを入れられかねない。現に、今そうなっているわけだしね」

 

 僕とマシュの二人きりで、現地サーヴァントとも分断されて孤立無援なんて想像するだけで恐ろしい。一足飛ばしに話を進めることはできなさそうだ。

 

「だから、まずはGMサーヴァントの撃破を優先する。今聖杯を管理しているのは奴らだ。間桐桜を眠らせたまま聖杯を回収できることが望ましい」

 

「GMサーヴァント……。あのバゼットさんも、そうなんですか?」

 

 正気を失ったバーサーカーのデミ・サーヴァント。先刻、僕とマシュを撃破せしめた彼女は依然、脅威のままだ。

 

「ああ、そうだ。まずは彼女をどうにかせねばならん。恐らくは神霊級のサーヴァントだ。我々だけでは太刀打ちできない」

 

 昼の間は僕とマシュ以外は記憶を失ってる状態で、夜の間もロードと遠坂さんが戦力になるくらいだ。これ、八方塞がりなんじゃ……?

 

「厳しいですね……。普段なら、現地で協力してくれるサーヴァントを探すのですが……」

 

 そう言い、頭を抱えるマシュに対し、エルメロイⅡ世は言った。

 

「いや、その通りだ。現状の戦力で太刀打ちできないなら、協力者を探せばいい」

 

「いやでも、この特異点じゃあ皆、記憶を失っているんじゃ……」

 

 そこで、エルメロイⅡ世は自らを指さした。

 

「私たちもそうだろう? だが少なくとも夜の間は、聖杯の支配から脱することができている」

 

「ああ!! 確かに!!」

 

「サーヴァントへの聖杯による縛りは、現在綻びができている。我々同様に、何かきっかけさえあれば、記憶を維持して夜の間に活動できる。それを偶然に頼らずに、君たちになしてもらいたい」

 

 強い光を瞳に宿して、ロード・エルメロイⅡ世は僕を射抜いた。

 

「君たちには、昼の間に力になりそうなサーヴァントを見つけて、記憶を取り戻すきっかけを与えて欲しい」

 

 光明は、見えた。まずは昼間のうちに協力してくれるサーヴァントを見つけて、記憶を取り戻させる!!

 やることは把握できた。決意を胸に秘めていると、部屋を出て行った遠坂さんが戻ってきた。

 

「その顔を見るに、話はまとまったみたいね? もうすぐ日の出よ。世界のテクスチャが書き換えられる」

 

 ザザッザザッと世界にノイズが走り出した。

 

「う、うわっ」

 

「落ち着きなさい。別になんてことは無いから。……昼間の私たちは何も覚えてないだろうから、きっと力になれない。私たちの不始末の尻ぬぐいをさせているようで申し訳ないんだけど。冬木市の管理者として依頼するわ。どうか、この世界を終わらせてほしいの」

 

 ノイズが走り、再び2004年の冬木へと書き換わっていく中、遠坂さんの声が聞こえた。

 

 そうして、朝焼けとともに世界は再び巻き戻った。

 




GMはゲームマスターの略です。
あと題名の年代を2004年に直しました。過去話も随時変更・修正していくつもりです。
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