偽アクアの旅路   作:詠むひと

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考えるんじゃない、感じるんだ。

 

 

 泣き疲れて寝てしまった。

 

 今は真夜中かな。寝直したいけど、目が冴えてしまった。とりあえず眠くなるまで今日の反省をしよう。

 

 まず、浄化スキルについて。血塗れで帰って来た所から、意識の無い間は無効化されているようだ。これ、なんとかオンオフ出来るようにならないかな。

 

 この服も不思議な事に破れてない。確かに牙が貫通してたのに、新品同様のままだ。不思議パワーで直ったって事にしとこ、深く考えるのはやめよう。

 

 

 新スキルの習得について。

 

 マスターキーは必要なかったかな。ダンジョンって聞いて取っちゃったけど、そもそも扉とか無いし。いつか遺跡に入った時に使うかもしれないけど、それまでは使わないかな。

 

 魔力効率上昇とブレイクスペルは今回は使わなかったけど、あって困るものでも無いし良いかな。ブレイクスペルはタイミングを合わせて攻撃魔法にぶつければ、打ち消せるみたいだし。

 

 聖拳は、微妙。暗闇のモンスターだったら光とか聖属性に弱いかと思ったけど、そもそも砂利と小石で充分だったし。一応、物理+属性ダメージで多少は威力アップみたいだけど。これなら、アイアンフィストでも取って攻撃力アップにすれば良かった。

 

 

 あとは、あの大狼との戦いか。

 

 私に足りないのは、物理防御とスピードかな。あと姿勢制御。聖拳使った時にもっと腰を入れて打ってればもっと威力出ただろうし、攻撃を逸らす事が出来たかもしれない。

 

 私は脳筋だけど、脳筋だからって所で思考停止してステータス任せで戦ってるからダメなんだろうね。もっと考えて動かなきゃ。今回は足場が悪かったけど…。足場か、何か使えそうなスキルは有るかな?

 

 

 私は冒険者カードを取り出して、スキルの表示をチェックした。なんかカードがうっすら光ってるし。

 

 えーと、幾つかあるね。

 

・水上走行

水面を走れるようになる。片足が沈む前にもう片足を出して進む。歩行不能。※要、高俊敏性。

 

・水面蹴り

水面を素早く蹴り、反発させて移動する。水面への静止不能。※要、高俊敏性、高筋力。

 

・エアロステップ

空気を超高速で圧縮し、足場にする。空中への静止不能。※要、超高俊敏性、超高筋力。

 

 

 ダメだ、脳筋移動しか無いや…。

 

 何このNINJIA紛いなスキル。どうせならチャクラを使って水面に立つみたいなのとか無いの?

 

 忍者の職とかあるのかな?またはNINJIAなのか。

 

 微妙だし、相談した方が良いや。他の職業でもっと良いスキルが有るかもしれないし。

 

 姿勢制御とか防御関係は何があるのかな。

 

・急制動

高速移動中での急停止や急激な方向転換を容易にする。

 

・仰け反り抑制

攻撃を受けた際の仰け反りを気合いで抑制する。殴られても蹴られても仰け反り難くなる。※投げ技、吹き飛ばしに対しては無力。

 

・ストロングスキン

皮膚強度を強化する。火傷や凍傷以外の物理的な刺激への防護力を上昇させる。斬擊、刺突、殴打に対して特に有効。

 

・ストロングボディ

骨格、内臓、神経、脳を強化する。火傷や凍傷以外の物理的な刺激への防護力を上昇させる。斬擊、刺突、殴打に対して特に有効。

 

・物理防御上昇

物理攻撃への防御力を上昇させる。気合いで上昇性が変動する。

 

 

 

 やっぱりモンクは超脳筋職なんだね、て言うか気合いって…。

 

 こっちは全部取っても良いかな。魔法防御って無いのかな。

 

 

・魔法抵抗力上昇

常時、魔法への抵抗力を上昇させる。※全ての魔法に対して有効な為、自身が受けたい魔法の時は停止させる必要がある。

 

・闘気の鎧

闘気で鎧を作り、魔法を弾く。発動中は常に体力を消耗し続ける。

 

・心頭滅却

暑さ寒さに強くなる。気合いで耐えられる間は炎も氷もダメージを受けなくなる。

 

 

 なんでこんな微妙に使いにくい仕様ばっかりなのかな…頭じゃなくて筋肉で感じろって?

 

 

 モンクにしたの、早まったかな…。

 

 

 こっちも全部取っとこ、こんな所にしよう。そろそろ寝よう。

 

 

 

 

 夜が明け、私は二人と一緒に部屋を出た。

 

「おはようマイム、もう大丈夫か。」

 

「おはようございますマグナさん。もう動いても違和感とかも無いです。」

 

「なら良かった。朝食を取ったら行こう。今日は周辺の見回りと残党の掃討だ。マイムは身体に違和感を感じたらすぐに言ってくれ。」

 

 

 

 村を出た私達は廃坑のダンジョンの方に向かい、昨日は見なかった所を確認して回った。沢に沿って歩き、潜んでいるモンスターを探して掃討していった。

 

 大ミミズや大土竜(ジャイアントモール)等が数匹、後は普通のほんとうに普通の動物だけだった。

 

「狼達、居ませんね。」

 

「結構な数を狩ったし、残りは逃げたのだろう。」

 

 

 

 昼を過ぎ、折り返す事にした。今日はモンスターとの遭遇も少なく、一日散歩をしていたようなものだった。

 

 

 今晩もう一泊して明日の早朝に帰路に着くのだけど、なんだか名残惜しい。帰る前にもう一度子供達と遊んでおこうかな。

 

 

 村に戻り子供達と夕方まで戯れ、幸せな一時を過ごした。小さい子って可愛いよね。

 

 

 夕食時の事、村長の孫娘(9)が私に言った。小さい子って以下略。

 

「マイムお姉さんほんとうにありがとうございました。お姉さん達は仕事かもしれないけど、私達は助けてもらってほんとうにうれしかったです。」

 

 孫娘ちゃん(9)の頭を優しく撫でながら私も言う。

 

「私もあなた達を助けられて良かった。あなた達の事は忘れないよ。」

 

 私に取って、初めての遠出と初めての敗北と重症。嬉しい事も悔しい事も経験した依頼だったし。

 

 夕食も終わり、風呂場で汗を流した。ここでも水は貴重品。サウナで汗を流してクリエイトウォーターで流す。

 

 つい、こう思わずに居られない。

 

 ああ、湯船のあるお風呂に入りたい。

 

 

 サウナで、一つ思う事がある。毎日着替えたりお風呂で全裸になっても、一切欲情しない。

 男なら一度くらい考えるだろう。好きな女の子の裸が見たいって。

 今の私にとって、アクア様は憧れの女性。その似姿ならって思うけど、全く無い。自分の身体だからとかじゃなくて、心の深い部分が書き換えられたのではないかと思う。リナさんとミアさんの裸を見ても、キレイだと思っても興奮する事も無い。

 

 私の心は知らない間に、男じゃ無くなってたと思うと何故か安心するような気分になった。名残惜しさも無い。きっと、心と身体が一致してるから違和感も無いのだろうか。身も心も憧れの人に近付いているのが嬉しいとすら思う。

 

 

 着替えて部屋に戻る、この時はいつも髪をほどいている。私の髪は毎晩二人のオモチャになっている。

 

 でも、私はポニーテール派です。なんと言われてもポニーテール一択ですよ。

 

 色々言われるけど、変えませんよ。今は青髪だけど、黒髪ロングのポニーテールとか大好きです。リナさん、髪を伸ばしてくれないかな。

 

 

 夜が更け今日も終わりです。

 

 アクア様今日もありがとうございました。私は私を見ているだけで、貴女を思い出します。私が感じる事の全てはアクア様のお陰です。アクア様に始まり、アクア様に終わります。いつの日か全ての人とこの感動を分かち合いたいです。

 

 

 


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