夜が明け、身の回りを片付けた。
今日は帰る日だ。依頼は仕事だけど、なんだか旅行の最終日みたいな感覚がある。名残惜しいけど、家が恋しいみたいな。ま、家って言っても居た日数はこっちと変わらないけどね。
荷物と言える程の荷物は無い、せいぜいが装備と着替え程度。腰まわりのポーチに入れたり、丸めて縛り着けたりして動いても邪魔にならないように固定していく。
なんか、リュックみたいなの探してみようかな。ナップザックでも良いかも、狼の毛皮で作ってみようかな。
ミアとリナが背中に背負い袋の様なボディバッグを着けているのを見て思う。拳一つだから手ぶらだが、装備を持つとなると必要を感じた。
「じゃあ、行こうか。」
村長達に挨拶してから帰る事にした。
「皆さん、お元気で。この度はほんとうにありがとうございました。あなた方の行く先にエリス様の御加護がありますように。」
村長は旅立つ者への幸運を祈る。
「ええ、お元気で。私達は少し村の様子を見回って帰ります。」
マグナさんが村長さんと話してる。私に出来る事って何か無いかな?幸運か。パッドの女神様の女神エリスは幸運の女神だって聞いたけど、幸運なら私も出来る事がある。
「皆さん、お元気で。皆さんに水の女神アクアの恩寵と御加護がありますように。ブレッシング!」
幸運を付与したよっ!パッド神の加護が有るなら、こんな不運なんて来なかったんじゃないの?アクア様万歳!
「ああ、女神様はアクシズ教徒の方でしたか…。」
ちょっと引きながら言われた。良いじゃんか!
「はい。私はアクア様を信仰しています。生きとし生ける者、全てが生きるのに水が無ければ生きられません。生きる事、それその物がアクア様の恩寵にすがらねばなりません。日々暮らし、人生を謳歌する。全てはアクア様のお陰です。」
水が無きゃ、生きられない。水が無きゃ、死ぬ。
「こう言っては、不敬に聞こえるでしょうが。運が悪くても別に死にません。ですが、水が無ければ生きられません。ならば、水の恵みに感謝しましょう。エリス教徒もアクシズ教徒も関係ないのです。日々の恵みに感謝を。今ある恵みを享受すれば良いのです。アクア様はきっと感謝しろ等とは言わないでしょう。日々を生き楽しむ事こそ、アクア様への最大の感謝の表し方だと私は思います。」
アクシズ教の教義を思い浮かべつつ言う。
「何を信仰しようと関係ありません。何かに感謝すればその全ての大元はアクア様の恩寵によって成り立っています。そう、この世の全てはアクア様のお陰です。」
村長さんは考え込んでいる。考える事なのかな?水も食べ物も全部アクア様のお陰でしょ。
「そうですな…。私達が日々口にする糧、それも全ては水が無くば成り立ちませんな。日々の恵みに感謝しているのも、全てが祈りなら人も動物もモンスターも全てが女神アクアによって生かされているのでしょうな。」
さあ!口に出して。さあ!言わないの?言わないの?
「これからは女神アクアへも感謝するように、子供達へと教えていかねばなりませんな。」
言ってくれないんだ…。パッド神めっ!エリスの胸はパッド入りっ!男達の夢をパッドで誤魔化すなんて、女神のやる事じゃない!アクア様が正しいのに!豊かなのは正しいんだよっ!
「信仰とは急に変える事は出来ません。だから、女神マイムよ、あなたがこの村を救った。あなたが来たのもきっと女神エリスと女神アクアのお導きでしょう。」
っく、ここで女神なんて言われたら。何も言えないじゃん。
「分かりました。そう言う事にしておきましょう。」
まあ、しょうがないか。でも、女神って言われて嬉しいとかじゃ無いから。
「ゴホン!マイム、行くぞ。」
マグナさんの咳払いで我に返った。いけないいけない、帰るんだった。
「では、皆さんお元気で。」
互いに手を振り合った。
村の中は平和その物。小さな子が親に付いて回ってはしゃぐ声、何か作業してるのか掛け声も聞こえる。木槌の音、井戸の滑車の音、様々な生活の音。
「おねえちゃん、かえっちゃうのー?」
「うん、そうだよ。」
「そっかー…。またね、おねえちゃん。またいつかきてね!」
村の小さな女の子が抱き付きながら言う。
「うん、またね。また、絶対に行くから良い子にしててね?」
「うん!いいこにしてる!やくそくだよっ!」
いい子だなー。
「ええ、約束ね。あなたに、幸運が訪れますように。ブレッシング!じゃあ、またね。」
手を振り別れた。いつ行けるかは分からないけど、絶対来ようと心に誓った。
行き交う人に挨拶を交わし村を出た。例によっていつもの魔法を使いながら帰って行く。
今回の道中ではモンスターに会わなかった。あの狼達の縄張りだったから、暫くはこの辺りでモンスターに会う事は少ないだろうとの事。
そして、ホームにしてる村に帰る。
この村、実は正式名称が無い。村が成立したばかりだと、ちょっとした災害やモンスターで全滅したりして村が無くなったりする。その為、住民が300を超えるか20年以上経たないと村の命名に領主の許可下りないらしい。
だからこの村は8番目の開拓村だから8の村。正式名称が付けられるようになるまで、あと7年だそうだ。
因みに村名を名乗ると税金が上がるらしく、水の村の様に通称だけで正式名称を名乗らない村も幾つもある。水の村は税金を払う位なら、その分で贅沢したいんだとか…。アクシズ教徒の上に理由が理由だから、領主からは嫌われてるらしい。でもって、領主主導の開拓じゃなくて勝手に住み着いて村を作ったのも要因だそうだ。アクシズ教は自由だから…。
そんなこんなで、ギルドに到着。報告はマグナさんが行った、私達は。
「「「かんぱーい!」」」
先に始めました。マグナさんの許可は取ってるよ。
今日はステーキです。アクア様ありがとうございます。肉汁が滴るぅ!
あ、帰って来た。
「乾杯。」
二回目の乾杯でマグナさんを迎える。
「報告は終わった、報酬は後で渡す。明日以降だが、私は定時連絡に行くから3日程留守にする。マイムはまだ慣れないだろうから、どちらかが付いててやってくれないか。」
他の人達に私の加入と大物討伐の件の報告に行くらしい。
「それと、帰ったら他のメンバーとの顔合わせだ。」
あ、やっと会えるんだ。
「また外?」
リナさんが聞いた。外って?
「今回はここでやる。前回はまだ無かったからな。」
「あの、外とかって何がですか?」
話が見えないよ。
「顔合わせさ。前回はまだ他の村を拠点にしててね。そこの村は酒場が無かったんだよ。」
荒野の岩場でBBQしながら会合したらしい。BBQか、良いなぁ。
「今回はせっかく酒場が有るんだから、屋根のある所でやりたい。楽だしな。」
わかる。
「なるほど、そう言う事でしたか。」
じゃあしょうがない。男女混合野外BBQがリア充っぽくて羨ましいとか思ったけど。
「私、ちょっと実家の様子見てきたいから。行って来てもいい?」
リアさんの実家って、例の。
「そうなると、ミアになるが。ミア、大丈夫か?」
「大丈夫よ、どのみち一緒に居るつもりだったし。」
「じゃあ、頼むぞ。村から離れる時は行き違いになるといけないからギルドに伝言を残して行ってくれ。」
ギルドの端っこに黒板みたいなのがある。炭で書く白い板だから、ホワイトボードでも良いのかな?黒板消しがわりの布キレが置いてある。
「じゃあ、全員気を付けて。また再会出来るようにな。」
解散し、宿に帰った。
今日も、サウナ。そしてクリエイトウォーターで汗を流す。川に近い村には湯船があるお風呂が有るそうだ。良いなぁ、お風呂入りたい。良いなぁ…。
リアさんが装備の手入れと荷造りをしている横で私とミアさんは明日の事に付いて相談してる。
「ミアさん。私、水の村に行きたいです。」
切実に。
「良いけど、どうしたの?」
聞いたからには、行かなきゃ。
「水の村には湯船の有るお風呂が有ると聞いて。」
日本人の魂が叫ぶ、風呂に入りたいと。
「ああ、ずっと言ってたもんね。じゃあうちに来なよ。うちもお風呂有るし、来てくれたらきっと母さんも喜ぶし。」
「はい、ありがとうございます!」
お風呂!遂に、遂に。
「マイムとお風呂かー。私も行きたかったけど、今度にするよ。または、今度皆でうちの村に来てもいいし。あんまり広く無いけど温泉も有るよ。」
!温泉!
「行きます。そのうち、絶対行きます。」
温泉行きたい!
「あはは、じゃあ近いうちにマグナも誘って行こうか。あ、混浴しか無いから。」
っちょ!
「湯浴み着って言うのが有るから、大丈夫だよ。無くても良いなら良いけど。」
「要ります要ります、絶対要ります。」
「はいよー、帰ったらいつ来ても良いように用意しとくね。」
「お願いします。」
「あそこのお風呂も良いよね。木で出来た大きいお風呂でさ、なんて言ったっけアレ。」
まさか、この世界で。
「名前?おじいちゃんはヒノキ風呂って呼んでたね。」
檜風呂も有るとは…行きたい行きたい行きたいっ!
「また次の機会でね。」
今回は我慢しよう。ミアさんの家にお泊まりして水の村を見回って、その後で教会で相談事してっと。
「そろそろ寝ようか。」
わくわくして眠れな…くも無いや。普通に眠い。
今日も1日終わります。水の恵みも肉汁滴るステーキもお風呂も温泉も、全てアクア様のお陰です。ありがとうございます。ああ、なんて楽しみ。おやすみなさい、アクア様。
温泉、近所に有るけど全然行ってないなー。
エリス様のパッド、別に嫌いじゃ無いです。
胸が貧しい(失礼)なのを隠して、盛りたいと思う事自体はいじらしくグッとくる。大きな胸に憧れる貧乳女神、なかなか良いです。