偽アクアの旅路   作:詠むひと

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本日2話目です。


憑依合体

 

 教会から帰ってくる時に殆どの精霊達は残っていたけど、二人の幼い精霊は私達に着いて来た。見た目は6歳か7歳くらいのアクア様似の女の子。髪は結ばず流している、私達の周りを楽しそうに駆け回り私の腰に抱き付いてくる。可愛い。

 

 撫でて、と言わんばかりに頭を差し出しぎゅっと抱き締めてくる。撫でると頭を手に押し付けてくる。犬か、犬系なのか。可愛い。

 

「なにしてんのマイム?」

 

「私と手を繋げば分かりますよ。」

 

 そういって私は左手を差し出す。

 

「ああそういう。って何してんのさ。いや凄い可愛いんだけどさ。」

 

『わーい』『もっともっとー』

 

 精霊二人がはしゃいでいるのが分かって貰えたようです。精霊が見えない人には私は一人で不審な動きをしている様にしか見えないのは困り物ですね。

 

「精霊様達も一緒に来るんですか?」

 

『うん』『ついてく』

 

「そういう事みたいですので行きましょうか。」

 

 

 ミアさんの家に着くと二人は外で遊びながら待つと言い、私達は昼食を取る事にした。

 

 

 メニューは焼き魚ときゅうりの漬物。畑で収穫されたばかりの新鮮なサンマの塩焼きと川で取れたばかりのきゅうりで作った浅漬け。もうツッコマ無い諦めよう。

 ご飯が食べたい、パンじゃなくてお米のご飯が。美味しいけれど、そんな感想の出る昼食を終え私達は教会に戻って来ました。

 

 

 

 村の会合は教会の食堂?で行われています。何でお酒とオツマミを準備してるんですかね?しかも既に飲んでる人も居ますよね?

 しかもなんか私をじっと見ている人が何人も居る。

 

 ミアさんは無言で首を振っている、諦めろって?

 

 

「二人はこちらに座ってくれ。さて揃ったようだな。これより緊急の会合を始める。」

 

 リムタスさんは一同を見回し私達の紹介と彼等の紹介をしていく。

 

「この二人。まあミアは説明不要の儂の孫だな。こっちがマイムだ。姿を見て何か言いたい事が有る者も居るだろうが待て。そしてここに集うこれ程までの精霊達。緊急事態だと言った意味が分かるな?」

 

 

 さっきまで私にじゃれ着いていた幼い精霊も私の服の端を握って大人しく立っている。見られている。全員の視線が集中しているのを感じる。

 

「此度は村の存亡が掛かった話だ。見えるお前達はどういう事か分かるな?精霊達が寄り添う者が現れたのだ。ミシャ、精霊達の言葉をお前の口から伝えてくれぬか?」

 

 ミシャと呼ばれたお婆さんはデラックスな体型の白に近い銀髪のお婆さんだった。

 

「ああ聞こえる、いつもよりもはっきり聞こえる。まるで若い頃に戻ったようだよ。」

 

 私を見たあと、周囲の精霊達を見回していく。

 

「精霊達は彼女についてこう言っている。女神アクアの眷族であり、水の精霊と同格の存在だと。女神アクアの写し身としてこの世界に降り立ったと。ね。見ただけで分かるだろうけど、彼女と精霊達の姿は似ているなんてレベルじゃぁ無い、実体を持った精霊と言われた方が納得が行く容姿だったけど、これで納得したよ。」

 

「では彼女は…。」

 

 出席者の一人が口を開くと、次々に声が上がり好き勝手に話し出す。

 

「静粛に!」

 

 リムタスさんが言うと瞬時に静まった。

 

「これから彼女が語る事は精霊達より伝え聞いた事だ。今更疑う者は居ないだろう、ここは既に精霊達の支配下だ。いつもよりも精霊達がはっきり見えるのもそのせいだ。ではマイム頼む。」

 

 

  ドックンドックン

 

 心音がやけに大きく感じられる。人前、しかも初対面の人達の前。緊張で吐きそう。上手く言葉が浮かばない。しょうがない、思った事を言おう。上手く言うのは諦めよう、補足はリムタスさんと精霊様達に任せよう。

 

「私はマイム。女神アクアの導きによりこの地に参りました。今、この地の精霊達は危機に陥っています。魔王の手先により火の精霊は敗れ水の精霊の半身が捕らえられています。残された刻限は長くて半年です。このままでは汚染され闇に堕ち、人々に害を与える存在へとなるでしょう。そして残った土と風の精霊が支配下に置かれるのも時間の問題です。」

 

 なんだかクラクラする、一度深呼吸しよう。

 

「これを解決するには、闇に堕ちたサラマンダーを打ち倒し浄化せねばなりません。サラマンダーが復帰したならば、精霊達は団結して魔王の手先に立ち向かう事が出来ます。精霊達と人間達の力を併せればきっと魔王の手先を討つ事が出来ると信じています。」

 

「そこで、あなた方にはその助力をお願いしたいのです。浄化魔法の使い手が多数と強力な戦力が必要です。闇に堕ちたサラマンダーは鋼を腐らせる猛毒の霧を纏っています。風と火の魔法の使い手と聖剣や魔剣に類する強固な武器の使い手が必要なのです。私には残念ながら伝はありません。ですので戦力を募る助力をお願いしたい。」

 

 演説をした。実はこれ、横で小声であの精神年齢が高いあの精霊様が内容を教えてくれています。精霊様様です。

 

「ギルドから募集を掛けます。私の持ちうる権限でベルゼルグのギルドにも掛け合って見せます!」

 

 立ち上がって発言したのは、水の村の冒険者ギルドのギルド長のおじさん。

 

「私も商業ギルド経由で行商人達に方々へ伝え志願者を募ります。」

 

 商業ギルドの事務員をしているお兄さんが続き。

 

「各村や領都や近隣の領への募集を掛けます。」「鍛冶ギルドの総力で強固な武器の作成と使用者を洗い出して見せましょう。」「領都の魔術ギルドに広域募集を掛け合います。」

 

 駅馬車の管理人、鍛冶ギルド員、ウィザードの男性と次々に案を出して行きます。まだ案を出せていない人達も考えています。

 

 

「儂は、アルカンレティアに行こうと思う。」

 

 皆が息を飲み黙り込む。沈黙が痛い。

 

「分かってて言ってるんでしょうね?」

 

 ミシャさんが沈黙を破る。

 

「ああ。異端者の儂はどうなるかは分からん。儂の布告が未だに出ていれば即座に捕らえられる事になるかも知れんのは承知の上だ。」

 

 周囲を見て続きを言う。

 

「だが、過去の負債を若者達に遺す訳にも行くまい。儂よりも上の先達者は皆死んだ。儂の首一つで解決出来るなら良し、出来ずとも今回の件での助力は引き出して見せよう。」

 

 ミシャさんは鋭い目で問う。

 

「死ぬつもり?」

 

「死にたくは無いが、仕方無かろう。その後は村を頼むぞ、ミシャ。」

 

 ギリッと歯軋りする音が聞こえリムタスさんを睨むミシャさん。

 

「承服しかねるわ。意地でも生きて帰って来るくらい言いなさいな。あの鉄拳のリムタスが情けないわよ。」

 

「善処しよう。」

 

「フンッ。必ず生きて帰りなさい。」

 

 

 

「儂は過去の精算と助力を得る為にアルカンレティアに向かう。この辺境の戦力だけで勝てるとは言いきれない。精霊達を抑え込む実力だ、幹部級の力が有るかもしれん。儂はまだアルカンレティアに居た頃に義勇兵として前線に出た事がある。」

 

 昔を思い出す様に宙を見ながら話し出す。

 

「勇者候補と呼ばれていた騎士団の若い騎士や紅魔族のアークウィザードや数多の冒険者達と肩を並べ、アクシズ教義勇兵達も戦って居た頃だ。数多くの神官戦士を派遣し、魔王軍幹部デュラハンのベルディアと戦った。」

 

 強大なアンデッドの騎士は勇者候補と一騎討ちをして、勇者候補を討ち取った。

 配下のアンデッドナイト達も魔法と矢の雨を掻い潜り肉薄し乱戦となり多くの冒険者や騎士、義勇兵達が倒れていった。

 

 死を恐れれぬ戦士でも傷を負えば動きは鈍る。だが、不死の軍団は滅びるその時まで戦うのを辞めない。徐々に戦線は押され、砦まで後退させられていった。このまま徐々に削られて行くのを待つならば、決死の突撃をして華々しく散ろう言い出す者が増えてきた。

 

「そんな時、彼は来た。先代のベルゼルグ王だ、その時はまだ皇太子だったがな。」

 

 国事で一度王都に戻っていた所をベルディアが急襲し、前線は崩壊仕掛かっていた。だが崩壊の直前に間に合い、ベルディアと一騎討ちをして討てずとも退け増援と共にアンデッドの軍勢を押し返し事なきを得た。

 

「その後の事は村でも殆どの者が知っているだろう。存亡を掛けた戦いが繰り広げられているなか、好き勝手に騒ぎ堕落の中にいるアクシズ教徒達に心底嫌気が差した我等はアルカンレティアを出た。」

 

 リムタスさんは一度水を飲み続ける。

 

「魔王軍幹部は強い。ただただ、強い。あの日討たれた勇者候補の若者はレベル46のクルセイダーだった。当時の騎士団最強で皇太子の幼なじみで、片腕とも言われている程だった。故に油断せず、出来うる限りの戦力を用意せねばならん。例えそれが袂を別った者で在ろうともな。」

 

 

「精霊様、その魔王軍の手先はどのような者でしたか?」

 

 ミシャさんが聞く。他の人達はミシャさんの言葉を聞き漏らさない様に耳を傾けている。

 

「豪華なローブを纏った骸骨ですか。騎士ではなく、ですね?術士系でしょうか。魔法を主体にして、体術でサラマンダーを打ち据えた、ですか。」

 

 ミシャさんは腕組みして唸っている。

 

「術士系のアンデッドならば最悪、リッチかも知れないと思ったけど。体術を使ってくるとなると…外法に手を染めた魔導師の成れの果てという可能性もあるわね。どっちにしろデュラハンではないみたいよ。」

 

 他の出席者は胸を撫で下ろす。

 

「でも、強者には違い無いわ。本来なら火を弱点とするアンデッドがサラマンダーに体術を使った時点で異常よ。魔法と体術、モンク系の派生職かしらね。予想でしか無いけど、魔王軍に下った元人間かも知れないわ。」

 

 苦々しい顔を浮かべる出席者達。これが人間の手によってもたらされた事だとしたら、やりきれない。

 

『悩む必要は無いと言うのに。』

 

 私達に語り掛ける精霊様。でも聞こえるのは私と手を繋いでいるミアさんとあとはミシャさんだけ。

 

『マイム、身体を貸してくれ。私の言葉を直接伝えたい。』

 

「え?はい。」

 

 私に重なる様にして一つになった。

 

「『気に病む必要は無い。良い者も悪い者も居るのなど分かっている。我等精霊の中にも魔王に力を貸す者も居るし、神の中にも居る。なら常命の者が狂わされ闇に堕ちても不思議は無い。堕ちたなら掬い上げて解放すればいい。』」

 

 私の口から私とは違う口調で私よりも少し低い声が出ている。

 

「『で、あるならば。魔王が全ての元凶だ。愛し子よ、我等を手伝っておくれ。共に邪なる者を打ち倒そうではないか。既に水の都の半身が彼方の者に伝えている。だから心配するな、そう悪い事にはならんだろう。』」

 

 精霊様、いやお姉様は言った。これからはお姉様って言っても良いですか?良いんですね。言質は取りましたよ。

 

「『日程等は任せる。転移のペンダントにも干渉した。私が憑依した状態でマイムが使う場合限定だが、周囲5m以内の者を纏めて転移出来るようにした。』」

 

「希望が見えて来ましたな。精霊様、ありがとうございます。」

 

 口々にお姉様を始め精霊様達に礼を述べていく。

 

「では方針を決めよう。儂とマイムの他、ギルド関係者がアルカンレティアに赴きそれぞれの交渉をする。その間にもこちらで出来る手段全てで戦力を募る。領主との話し合いはミシャを中心に進める。冒険者にも依頼を出す。」

 

 各々が頷きを返す。

 

「マイムは今、マグナのパーティーに参加しておる、暫く戻れなくなる旨をマグナへと伝令を出してくれ。同時にアルカンレティアに行く際、マイムの護衛を指名で依頼を出す。マグナ達がこちらに来るようであれば連れてきてくれ。」

 

「了解した。彼等の他のチームも居た場合も希望したら連れてくると言う事で良いか?」

 

 自警団長が答える。

 

「それで構わん、自己裁量で判断してくれ。他に何かある者は居るか?居ないなら…今日は宴会だ!新たな仲間を祝福しよう。」

 

 

「「「「「無しっ」」」」」

 

 全会一致で答えがあった。宴会って言うかもう飲んでるんだけど?

 

 

「『宴をするならば川の畔で頼む。川に近ければ水を使って実体を造れる。』」

 

「そんな事が出来るのですな、では川の横の広場でやりましょう。皆の者、後は任せる。それでは解散。」

 

 

 また後でね、と言って皆さんは帰って行った。

 

「マイムお疲れ様。良い演説だったよ。」

 

 凄く緊張していたけど、ミアさんはずっと手を繋いでくれていて少し気が楽になっていた。

 にししと笑いながら私の肩を叩く。

 

「『さて、それでは身体を返すか。まるで元からそうだったかのように違和感が無かった。これも眷族同士だからだろうな。』」

 

 そう言って私から出て行った。スルリと抜け出し目の前に立つお姉様。本当にそっくりだと思う。アクア様よりも少し歳上で二十歳過ぎ位の容姿かな。お姉様、アクア様、私で並んだとしたら姉妹にしか見えないと思う。

 

 

「それでは二人は一度帰っても良いぞ。夕方になったら広場に来てくれ。」

 

「お姉様はどうするんですか?」

 

『私はここに残ろう。ここが一番水の都との繋がりが強くて半身との連絡がしやすい。』

 

「お姉様?」

 

「はい、お姉様です。そう呼んでも良いと言ってくれたので。」

 

「まあ容姿としてもしっくりくるね。」

 

『今までやらなかったが水で文字を書けば声を聞けずとも伝えられるしな。司祭と細かい打ち合わせをするつもりだ。』

 

「わかりました。では私達は一度戻りますね。」

 

 

 私達は教会を出る、日が傾いて来ていて夕方まではあまり時間は無さそうだ。

 今度は幼い精霊が着いてきて無かったので手を繋がずに帰った。

 

 今日は宴会か。楽しみだなぁ。

 

 

 

 




ベルディアって原作だとあんなやられ方したけど、ほんとは凄く強いはず、きっと。

ミシャお婆さんはデラックスな体型です。そうデラックス。


年度末を乗り越えるまでは更新が遅れますが、毎日少しずつ書いてます。失踪はしませんのでご安心下さい。
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