偽アクアの旅路   作:詠むひと

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お酒はほどほどに

 

 

 

 

 宴は川のほとりの広場で行われた。私達が来た時には早くも飲み始めている大人達が居て、私達を見ると。

 

「主役のご到着だぁーー。」「わぁー。」と歓声を上げたり口笛を吹いたりと大騒ぎで迎えられた。出来上がっている人達に囲まれ少々お酒臭かったのはご愛敬。

 

 川で採れたのか、畑で収穫されたのかどちらとも分からない魚や野菜が串刺しで焼かれていたり、ピチピチ跳ねるバナナの様な何かが皿に盛り付けられていた。

 お酒のツマミと言った風情が強いが、果物や肉をパンに挟んだサンドイッチ等もありお酒が飲めない人向けに飲み物も用意されていた。

 

 私は適当に小皿にバナナ風の何かと魚の串焼きや果物を貰ってきた。お酒を勧められたけど遠慮した。

 

「お酒はいりません。あっ、そっちの葡萄ジュースを下さい。ありがとうございます。」

 

 みんな笑顔で思い思いに飲み食いしながら話している。

 私にも見知らぬ人達が、特に酔っぱらいが「お嬢ちゃぁん、楽しんでっかぁー?」と陽気に話し掛けてくれたりして、自分から話し掛けに行くのが苦手な私も楽しくなってきた。

 

 

 

 さて、そろそろ誰かと合流したいなぁ。ミアさんとはぐれてしまったし。

 

 

 周囲をキョロキョロと見回すけれど、ミアさんもリムタスさん達も見当たらない。小さな村と言えども数百人が暮らす村であり、村の宴会ともなれば村人だけで無く、商人や冒険者もおり人でごった返している。

 

 私の悪い癖だけれど、人ごみの中に居ても見知らぬ人に囲まれているとつい、寂しくなる。

 人が居ても、私の知らない人ばかり。声を掛けられれば応えるけれど、私の知人友人では無い。その他大勢の私は、酷く場違いに感じてしまう。

 

 例えば花火を見に来たけど、誰かと特に約束した訳でも無くて。誰か友達にたぶん会えるはずって、思って来たけどそうそう会えず。見掛けてもその輪の中に入れない時みたいな。

 

 声を掛ける。見知らぬ誰かに話しかける。たったそれだけの事が出来ない私。

 一歩踏み出して声を掛ける普通の人なら当たり前に出来るコミュニケーション。

 でも私には出来ない。その一歩が限り無く遠く険しい道に見えてしまい、声を掛けられるのを待ってしまう。

 

 一人で勝手に完結して暗くなっていると、誰かに腕を掴まれて引っ張られた。手を引っ張られた私は突然の事に動揺し、抵抗する事も思い付かず連れていかれた。

 

 

 

「おっ、可愛いいの見つけて来たじゃん。」

 

「よう姉ちゃん、暇だろぉ。俺らにお酌してくれよ、なっ?」

 

 私はガラの悪い冒険者風の男達の前に引きずり出された。私を連れてきた人は私の肩を後ろから掴み、私の顔の横へ後ろから覗き込む様にして言う。

 

「キミ、折角の宴会なのに独りぼっちで寂しそうだったじゃん。友達が見付かるまでで良いからちょっと付き合ってよ、なぁ。」

 

 なぁ。の所だけドスの利いた声で脅された。怖い。力で敵うとか敵わないとかじゃなくて怖い。

 

「あの、私は……。」

 

「いいからさぁ、ちょとだけ付き合えよ。可愛いからってお高く留まっちゃってんの?あぁ?さっさと注げや。」

 

「はい……。」

 

 私は消え入りそうな声で返事をした。昔からお祭りとかで絡まれる事があったけど、こっちでもそうなのか……。なんでなんだろう。

 

 

「そうそ、大人しくお酌してくれれば何にもしねえからさ。」

 

「俺にも頼むぜ。」

 

「おーいー、次は俺だってぇ。」

 

 

 そうして何度かお酌していると一人が腕を引っ張り、私を抱き抱えようとした。私は咄嗟に男を突き飛ばした。

 

 突き飛ばされた男は地面を転がっていった。

 

「いってぇ!なにしやがんだ、クソアマがぁ。」

 

 立ち上がって殴り掛かって来た。横に居た男は私を羽交い締めにし、お腹に男の拳が突き刺さる……突き刺さ……アレ、痛くない。

 

「いってぇぇぇ。」

 

 殴り掛かって来た男が手を押さえて痛がっているのを見て、急に頭が冷えた。ザッコ……。私、こんな奴らを怖がってたんだ。どうにも苛立つ、男達(雑魚)もムカつくけど、怖いと思って震えてた私自身にも苛立つ

 

 後ろのと横に居る男が反応しない。羽交い締めにされているのを力ずくで引き剥がして胸ぐらを掴んで持ち上げてやった。身長差があるから男はまだ足が地面に引き摺っている。男が私の腕を引き剥がそうと抵抗しているけれど無駄。全然無駄。狼の方がよっぽど強いくらい。

 

 もう一人の男に向かって投げ飛ばした。

 

「あなたの友達でしょ?受け止めてあげなよ。」

 

 自分の声に、こんな冷たい声が出せるんだって変な感心をした。

 

 投げ飛ばした男と一緒に地面に倒れた男達。するとそこへ……。

 

 

「こらぁ!何の騒ぎだぁ!」

 

 自警団の腕章を着けた男の人が駆け付けて来た。内心、遅いと思いながら。

 

 

「こ、この女が俺達を殴り付けやがったんだよ!」

 

「ほんとうかね、お嬢さん。ちょっと来て貰えるか。」

 

 自警団員は警杖を手に近寄って来る。どうして私が責められるのか、凄く腹が立つ。私は無意識のうちに拳を握り込んでいた。

 

「あのっ。僕見てましたけど。そっちのおじさん達がそのお姉ちゃんを殴ったからお姉ちゃんが反撃したんだよ!」

 

 自警団員が私に辿り着く前に、少し離れた所にいた小さな男の子が声をあげ証言をしてくれた。

 

「おいっ、そんなガキの言う事信じんのかよ?」

 

 

(ゴミ)(雑音)を上げる。うっざ。

 

 私も俺もと何人かが証言し出す。一番最初に言い出した男の子が居なきゃこの人達は見て見ぬふりだったのかなって思うとイラッとした。

 こういうところは世界が違っても一緒なんだね。誰かが困って居ても見ていぬふり、知らん振りで嵐が過ぎるのをただ待つだけの群衆。心配そうにするふりだけで、何もしない人々。

 

 

「私は腕を掴まれて連れて来られて、脅されてお酌させられてました。あっちの男の人が私を抱き締めようとしたから突き飛ばしました。そのあと、そっちの人が羽交い締めにしてきてあっちの男にお腹を殴られました。なので反撃しただけです。」

 

 私は何一つ嘘は言ってないけど、自警団の男は私を疑わし気に見ている。他の人が証言したの、聞いて無いの?耳は飾りか何かなのかな?

 

 それとも、女ならか弱くて当然だから男達が転がってて、私が立ってるのがおかしいから嘘じゃ無いかって?

 

「私を疑ってるんですか?」

 

「…………」

 

 答えない、何か言えよハゲ。イライラが止まらない身体が熱い。これじゃ折角の宴会が台無しだよ。

 

「何か言ったらどうですか?」

 

「おい、ハゲ!お姉ちゃんは何も悪い事してないってみんな言ってるだろ!」

 

 最初の男の子がハゲって言った。子供にまでハゲって言われるなんてね。

 

 周囲の目撃者や酔っぱらいがハゲコールを始めた。

 

「ハーゲ」「ハーゲ」「ハーゲ」……

 

 ハゲがプルプルしてる。

 

「わかった、何もしてないなら行って良いぞ。あとハゲって言ってんじゃねえよ。」

 

 横柄な態度でハゲは雑音()を放つ。

 

「じゃあ、もう行きますね。ああ、この事はリムタスさんや自警団長さんに報告しておきます。被害者なのに無実の罪を被せられそうになったって。」

 

「おっおい、どういう事だ!団長を何で知ってる?」

 

 狼狽え始めるハゲ。

 

「どうも何も、面識が有りますし。私は村の会合でご挨拶させて貰った身ですから。ハゲ散らかした人に大変お世話になったって言っておきますね。」

 

 まだ何か喚いているけど、そんな雑音聞きたく無い。さっさと離れよう。あー、むかつく。

 

 

 今度からは絡まれたら力ずくで対応しようと心に決めた。きっと変に弱気だから付け込まれるんだ。

 

 川の近くに行こう。精霊様に慰めて貰おう。

 

 

 

 

 川の近くではリムタスさんを始め会合のメンバーが揃っていて、水で実体を作った精霊様達が立っていた。

 

「こんばんはリムタスさん。」

 

「おお、来たかマイム。んん?えらく機嫌が悪いようだがどうした?」

 

 気持ちを切り替えたつもりだったけど態度に出てたか。

 

「さっき絡まれてお酌しろって脅された挙げ句、抱き付かれそうになったんです。」

 

「何だと!そいつらはどうした?この儂の鉄拳で引導を渡してやろうぞ。」

 

「ああ、ぶっ飛ばしたからもう良いですよ。そのあと、ハゲた自警団の男が被害者の私に無実の罪を吹っ掛けようとしてきたのがムカつきました。」

 

 思い出しても腹が立つ。

 

「何、その自警団の男はどんな奴だ。ちょっと行って地面の染みにしてくれるわ。」

 

 お酒が入ってるから、ちょーっと発言が過激だなぁ。拳を握ったり閉じたりしながら聞いてきた。

 

「おいっ!ルーク。お前の所の団員の不祥事だ!ちょっと行ってここまで引き摺って来い。」

 

 ルークと呼ばれたのは自警団長の男の人だ。

 

「どんな奴でした?」

 

「ハゲです。小太りのハゲです。」

 

 ハゲめ、良い気味だ。

 

「ハゲと言うと、ハーゲルだな。分かりました、引き摺ってでも連れてきます。」

 

 名前もハゲなんだ。ハーゲルって禿げるのが確定したような名前だなぁ。

 

「全く、こんな目出度い日にどうしようも無い奴が居たもんだな。マイムを脅迫した屑達も自警団に拘束させるとしよう。」

 

 因果応報だ。捕まってしまえ。

 

「こんな時飲むに限る!さあマイムも飲むと良い、嫌な事は忘れよう。」

 

「いえ、私は飲めないのでジュースですよ。」

 

 私は甘いジュースでじゅうぶんじゅうぶん。あまくておいしいなぁ。

 

「うん?それはリキュールだの。お酒じゃぞ。」

 

「え?」

 

「村で作っとるブドウのリキュールだな。甘いがそれも酒じゃぞ、それに度数も高めだ。おーいマイム顔が赤いが大丈夫か?」

 

 

 お酒だったんだ。さっきから熱いのは酔ってたから?なんだか、ぼーっとしてきて感覚が遠いや。

 

「あー、酔ってしまっておったか。こっちの果実水を飲むといい、ほれそっちのコップを渡しなさい。」

 

 でも、もうほとんど飲んじゃったしなぁ。残りも飲んじゃえ、勿体無いし。

 

「あー、無理せんでええのに。ほれこっちに座りなさい。」

 

 ベンチに座るように勧められて腰を下ろした。まわってる?ううん?こう、ふわーっと。

 

 

 

「あはは。」

 

 なんだか突然笑いたくなった。なんで?なんかもうどうでもいいや。さっきまでムカついてたけど、もういいや。たのしい。

 

 

 

 ぼーっとしてたら、いつの間にか周りが少し騒がしいしなんか怒鳴り声がしてる。なんかあったっけ?あー、あのハゲだ。そうだったや。

 

 

 

「貴様!職務中に飲酒するとは何を考えている!そればかりか無実の少女に罪を被せようとするとは何事だっ!歯を食いしばれぇ!!」

 

 

 あー、ハゲが殴られてる。ざまぁ。うふふ。

 

 

 

 ルークさんが私の前に来て、ハゲの頭を掴んで力尽くで頭を下げさせた。光ってる。

 

「ケジメを付けさせて下さい。さあ、一発コイツをぶん殴って下さいマイム様。それでおあいこにして頂きたい。」

 

 えー……。脂ぎってるし触りたく無いんですけど。」

 

 途中から声に出てたよ。まあいいか。

 

「この村の掟です。やられたらやり返せ!自警団の前でお互いがお互いに復讐したらそれで終わりです。それで事件は終わりにする掟なのです。死なない程度なら、殴っても蹴ってもいいです。ご協力お願いします。」

 

 もうどうでもいいんだけど、殴るまで終わらせてくれそうに無いなぁ……。

 

「分かりました。では一発だけ。」

 

 腕を引きながら拳を握り込んで、殴ると見せ掛けて。平手でっ!

 

 ビンタしたら、吹き飛んでった。手首のスナップで打つべし!

 

 

「スカッとしました。なるほど、こういう事なんですね。」

 

「そういう事です。これでお互い仲直りです。ハゲ、じゃなくてハーゲルの事はこれで勘弁してやって下さい。」

 

「はい、私はもう何も言いません。」

 

 顔の脂でギト付く手をクリエイト・ウォーターでさっと洗った。あー、気持ち悪い。蹴った方が良かったかな。

 

『マイムよ、災難であったな。だが、人間とは見ていて飽きぬ。絶えず目まぐるしく変わっていく様はまるで、流れる水のようだ。怒りも悲しみも全て水に流して生を謳歌すると良い。』

 

 水の精霊こと、お姉様が慰めてくれた。半透明な人型でまるで氷の彫像のようだ。その手はヒンヤリ冷たく、火照った頬を冷ましていく。

 

 

 少しだけ酔いが醒めた。

 

「はぁ、そもそも私が冷静に動けてたら大事にならなかったんだよね。」

 

 冷静になって少し自己嫌悪がしてくる。最初に振りほどいてれば、断ってればと。たらればの話が頭に思い浮かぶ。

 

「マイム、酔っていたのだから仕方ない。そう思えば良い。汝、何かの事で悩むなら今を楽しく生きなさい。人間、生きてれば次がある。次に頑張れば良い。そういう事じゃぞ、難しく考え過ぎだ。」

 

 アクシズ教教義か……。そうだよね。今度頑張れば良いよね。

 

 

「はいっ!今度は頑張ってみます。」

 

「うむ、それでよい。お、さてさて。ウジ虫どものご登場じゃのう?」

 

 私に向けていた優しげな目を、一転させ視線で殺すかの様な鋭い視線に変えた。その視線の先には……。

 

 

「おいっ、離せよ!クソが、離せって言ってるだろぉ!」

「うっぜぇなぁ。女一人殴っただけだろうが、しかもこっちはそのあと投げられたんだ。こっちが被害者だろぉ!」

「離せよ!触んな!」

 

 ああ、ゴミ男達(ウジ虫達)のご登場だ。落ち着いていた心がざわつく。自分達が被害者だって?脳ミソ入ってるのかなぁ?カチ割って中身見てあげようか?

 

 

 

「団長、連れて来ました!」

 

 若い団員がルークさんに向けて報告している。ルークさんと、アレは誰だろう?何か話し合ってる。

 

 

「ああ、代官殿が来ておるな。」

 

「代官殿?」

 

 お代官様?この紋所……、は違うか。

 

 

「領主の代官じゃな。大きめな村々に常駐して税や法の取り締まりを統括している領主の配下だ。代官が見聞きした事はすべて領主の耳に入る。あの愚か者共のした事は恫喝と強制猥褻未遂と暴行だから、代官の担当じゃの。」

 

 代官は甘く無いぞ、と暗い目をして笑うリムタスさんは少し怖かった。ハゲ団員のした事はムカついただけで実害は無かったけど、ゴミ男達の方は私じゃなくて普通の女性だったら大変な事になっていたし当然の事だと思う。

 ちょっとした喧嘩や争い事など実害の無い事件は各村々で処理するけど、それ以上の犯罪行為は領主の定めた法で裁かれるそうです。

 

「あとは代官殿に任せておけば良い。適切に処理してくれるだろう。さ、悪い事は忘れて楽しもうぞ。」

 

「そうですね。忘れましょう。」

 

 

 

 

 その後、ミアさんと合流し食べたりしゃべったりして今夜もミアさんの家でお世話になった。明くる日の昼頃、教会でアクア様の伝説が書かれた本を読んでいると教会に訪れた人達がいた。それは……。

 

 

 

 

「マイム、ミア。話は聞いている。村からの依頼でアルカンレティアに行くときは我々も同行する。」

 

 村に来たのは、マグナさんとリナさんだけではなく。

 

 剣士が二人とプリースト、シーフ、狩人が各一人の五人パーティーだった。灼熱の風の別パーティーで、普段は村や街を異動しながら依頼を受けている人達で後日顔合わせをすると言われていた人達です。

 

 プリーストのドムさん、剣士のシグさんとスタイナーさん、シーフのシャッテンさん、狩人のサッヤードさん。

 

 

 ドムさんはマグナさんと同じくらい、スタイナーさんシャッテンさんサッヤードさんは二十代、シグさんは私より少し上でたぶん18歳くらい。アルカンレティアには彼らも一緒に行くそうです。

 

 

「詳しい話は司祭(リムタス)から聞き直すことにする。二人はもう少し待っていてくれ。」

 

 

 待つ事15分。

 

「事情は分かった。転移に関してだが一度少人数で試してみて、後日交渉に行く人員も同行した方が良いだろう。」

 

 人数が多いと私への負担が増えるかも知れないと。いや、私負担増えるとか聞いて無いんですけど。そもそも知らない間に話が進んでる?

 

「急で悪いがこの後、私とミア、リナ、シグ、が同行し一度アルカンレティアに行く。まずは現地の情報収集だ。他の者は村でギルドや代官との調整にあたってくれ。」

 

 五人でアルカンレティアに行き宿を取り二泊して情報収集し、現在のベルゼルグの情勢を掴むそうな。その間、私にミアさんかシグさんが交代で護衛と言うか迷子にならないようにお守りされる事になった。

 お守り……、いやあ、昨夜は確かに速攻ではぐれたけどさぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

「各人装備は確認したな?アクシズ教団の印になる物は持ったな?これが無いと勧誘で揉みくちゃにされるそうだ。必ず見える所に着けておけ。」

 

 

 アルカンレティアでは道行く観光客等にあの手この手で執拗な勧誘合戦が繰り広げられているらしい。

 それを回避し街に溶け込む為に全員がアクシズ教徒であると偽装する事になった。私とミアさんは元々アクシズ教徒だから良いけど他の三人は少々抵抗があるみたいだ。

 

 私は最初から持っていたローブの背中側に精霊様によって魔法による刻印を刻まれた。詳しくは聞いて無いけど、水の魔法の刻印で熱さを和らげる効果を持たせたらしい。水の羽衣的な効果?

 刻印が太陽の光で煌めき紋様が浮かび上がっている。

 

 

「『では、行きます!』」

 

 お姉様が憑依し、私と同調し心を一つにする。

 

 私の知らない光景、街、人々、川、泉、池。頭に様々な風景が浮かぶ、水の精霊がいる場所の風景。様々な場所に水の精霊が居る、水が流れる場所の全てに様々な姿で水の精霊が居る。その中から行きたい場所を選ぶ。

 

 今回は出来るだけ人目に付かないように……。

 

『「行き先は用水路脇。』」

 

 行き先を告げると、私達を水がドーム状に囲んだ。

 

 水の中の泡になったように感じる、暗く青い水の中を進む。水の流れを辿る様に。一瞬にも一時間にも感じ、時間の感覚があやふやになった。目標の用水路が見え、ぐんぐん近付いて行く。

 

 そして、泡が弾ける。

 

 用水路の脇に私達は五体満足で辿り着いた。

 

「『どれくらい時間が経ったんでしょうか?』」

 

 私には、あやふやな時間の感覚により経過時間が掴めない。

 

「ん?一瞬だったな。水で包まれたと思ったら直ぐに弾けたが?」

 

 私以外の四人は一瞬の事だと感じたようだ。

 

「『私には随分と長く感じたので。』」

 

『「我々にとって時間はあまり意識する事では無いのだ。それ故、同調していたマイムの感覚が狂ったのだ。」』

 

「『なるほど。じゃあ、実際には掛かった時間は一瞬なんですね。』」

 

『「そうだ。瞬きする程度の時間だ。」』

 

「だ、そうです。ではまず宿を取るんでしたね。」

 

 憑依を解く。この後は常に私と一緒に居ていつでも憑依出来るように準備していてくれる事になりました。

 憑依中は全ステータスが向上し、特に抗魔力が精霊に準じて上昇しますが時間経過と共に魔力を消耗していきます。万が一の時の防御用に備えてくれるようです。

 

 

「では繁華街方向に向かう。はぐれるなよ。」

 

 主に私に言った。むしろ私だけに言った。酷い。

 

 

 

 私達は繁華街方向に歩く、街の地理は教会に有った地図を見た。五十年前の地図だとはいえ、そうそうかわらないはずだと信じて……。

 

 




中途半端な長さだったので分割しました。次話はたぶん明日か明後日。

マイムを酔い潰させて記憶を飛ばそうかと思ったけど、初めてのお酒で記憶飛ばすとかトラウマ物なのでちょっと過激な言動までにしました。

シャッテンはドイツ語で影
サッヤードはアラビア語で狩人
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