アルカンレティアの地に立った私達は人気の無い路地を進み大通りを目指した。
そして、入り組んだ路地から出ると。
「そこのお嬢様、見てらっしゃいうちじゃぁ…」
「よっ!そこの兄ちゃん、今ならここにサインしてくれたら8割引きで…」
「そこのお兄ちゃん、コレ落としたよ…」
「アクシズ教徒になればハッピー、みんなハッピーだー。どうだいじい様、入らないかい?」
「元祖アルカンレティア名物の…」
「うちこそが本家本元アルカンレティア名物…」
「うまいよやすいよー…」「」「」「」……
あちこちで呼び込みや客引きの声がし、観光客でごった返す賑やかな大通りに出た。この世界に来てから初めてみる混雑ぶりだった。
私達に対して声を掛けようとして印に気付き、笑顔で手を振る子供や勧誘を含まない普通の呼び込みも受けた。
「やあやあ、お嬢さん達。うちこそが本家本元のアルカンレティア名物、アルカン饅頭本舗だよ。アクア様の恵みがタップリのどっかのパクりじゃない本物のアルカン饅頭さ。試食してかないかい?お嬢さん達美人さんだからお安くしとくよ!」
ミアさんと一緒にちょっとだけ足を止めて試食した。即お買い上げです。水まんじゅうでした。水気いっぱいなので、確かに水の恵みでいっぱいです。
通りを進み、宿屋を見つけ足を踏み入れる。
壁に何か貼ってある。アクシズ教徒歓迎、アクシズ教徒なら5%割引。アクシズ教徒ではない場合、当宿で入信書を記入された方は最大30%割引!
「いらっしゃいませー!温泉宿、水の導き亭にようこそ!」
カウンターに座っている女の子が元気な声で出迎えてくれる。
「あっ!皆さんアクシズ教徒ですね。うちでは5%割引やってます。是非ともうちでお願いします!」
「五人だが部屋は空いているか?」
「はい、部屋割はいかがしましょう?五人部屋一つか、三人部屋と二人部屋一つずつならご案内出来ます。」
「三人部屋と二人部屋を一つずつで頼む。」
順当に男女別になった。とりあえず休憩し、その後夕食まで情報収集することになった。私はミアさんと一緒に街を歩き情報収集がてら観光する事になった。
「っく、っはぁぁぁぁ。温泉、良い響きだよね。今すぐ行きたいけど、先に仕事を済まそう。」
待ちきれないと言った表情でリナさんは言う、私も温泉に行きたい。ああ、待ち遠しいけど帰ってからのお楽しみに取っておこう。
「念のためだが、マイムはフードで髪を隠しておいてくれ。」
出発前に言われ、これまでの道中でもずっと隠していた。水の精霊や女神アクアと瓜二つと言うのはトラブルに巻き込まれる要因になりかねないとの事。
少なくとも私以外で青い髪色の人は居なかった。顔立ちもそっくり。隠しておいた方がいいのは実感した。
街ではアクア様にあやかって、髪を青く染める怪しげな薬品も売っていた。でも売り子のお姉さんの髪色は青は青でももっと濃い青だった。
アクア様のような鮮やかな水色の髪は私以外に居なかった。
これは観光客のふりして正体を隠して潜入するミッション。私のテンションが上がる。
観光客として街を散策するふりをする。ふりですよ?遊んで無いですよ。
道の両側にはズラリとお土産屋さんや温泉宿や酒場が並ぶ。客引きや客引きと平行してアクシズ教に勧誘していたり、地元の通行人が観光客を勧誘している。それは視界に入る全ての場所で行われている。
勧誘されている人達の反応も様々だ。
入信書をポケットや鞄に無理矢理ネジ込まれて揉みくちゃにされている黒髪の男の子や上手い事煽ててあしらっているおじさん、若い女性に勧誘されて逆に口説き始めたお兄さん、両手で耳を塞ぎながら走って逃げようとしている女の子等。大半の人はなんとか勧誘を逃れようと奮戦している。
アクシズ教徒の観光客は普通に買い物する他に他の観光客を勧誘しようとしたり、指を指して大笑いしていたりとカオスな光景が繰り広げられている。
私達は買い食いしながらそれを眺めていた。私達には関係無いもん、って思っていたら勧誘から逃げてきた男の子とぶつかってしまった。
のほほんと他人事だと思って気を抜き過ぎていたのかも知れない。ぶつかった拍子に被っていたフードが脱げてしまった。それを見た男の子は唖然とし、声を上げようとしたので咄嗟に彼の腕を掴んで背後の路地裏に連れて行った。
思いがけないタイミングだったけど、いつか接触しないといけない人達の一人と出会えた。出会った事に後悔は無いけど、強いて言えばもうちょっと格好着けて登場したかったかな…。
~~~~~~
とある少年
正直、アルカンレティアに来た事を後悔し始めていた。
一度、アクア様のお膝元のアルカンレティアに行ってみようとは思っていたんだ。でも、誰に聞いても良い顔をされない。
「温泉は良いんだけど、アクシズ教徒がなぁ。」
「執拗な勧誘で道も歩いてられないよ。」
「うざすぎて観光どころじゃなかったよ。」
「女の子に声を掛けられたと思ったら宗教の勧誘だったよ…。」
「飯は旨いし温泉も良かったけど、勧誘が鬱陶しかった。」
「年齢イコールの俺が可愛い女の子に声を掛けられて舞い上がって、着いてったらさ。アクシズ教徒のオッサンに囲まれて勧誘地獄を味合された恨みは忘れない。」
「女の子にチヤホヤされても油断するなよ?アレは罠だ。絶対魔王軍より悪質だ。」
「女の子と付き合えるなら入信してもいいかなぁ…。」
「男でもイケるオッサン司祭が居るから気をつけろよ。」「」「」「」「」………。
聞けども聞けども、ろくな話じゃ無かったから気をつけていたつもりだった。
王都で買ったガイドブックに載っていた比較的マシな対応の宿で部屋を取り、街を観光するつもりだったんだ。
宿まで行くときも大変だったから僕達はへとへとだった。でもせっかく来たんだしこっちで出来た知り合いにお土産でも買っていこうと思って街の散策に行こうと二人を誘ったけど、二人には断られてしまった。まぁ、気持ちは分かる。僕も正直、気乗りはしない。でもお土産を買ってくると約束してしまったしね。
歩きながら考える。
僕は昔から鈍感だって言われて来た。確かに周りが見えて無くて空回ってたりして他人の気持ちに気付けない事も有ったと思う。
でも、本当は気付かないふりをしている部分がある。今もそうだ。
二人から明確に好意を示されて、気付かないワケが無い。彼女達の気持ちに気付いてて知らないふりをしている。僕の中途半端な態度が彼女達を傷付けている事も分かってる。分かってて応え無い僕は、最低のクソ野郎だともね。
でも、僕はどうしても諦める事が出来ないでいる。
あの日、僕は。女神様に恋をした。
初恋は実らないと言われている。確かにそうなんだろう。女神様に恋をする。それはお伽噺で語られるようなレベルの話。叶うはずの無い、身の程知らずの愚かな想い。
僕の本心を見抜いた人はアクア様が初めてだった。
僕が気付かないふりをしている理由も見抜かれた。
僕には幼なじみがいた。僕とアイツとあの娘。あの娘が僕に好意を寄せているのは気付いていた。でも、アイツがあの娘を好きだったのも知ってる。僕はこの何でも言い合える関係が壊れてしまうのが怖くて、ずっと気付かないふりをしてた。誰かの為じゃない、僕が傷付かない為にしていた事だ。上手く隠せていたと思っていた。
誰も気付かないし、誰も傷付け無くて良いって思ってたんだ。思い込んでいたんだ。
でも、僕はアクア様に叱られた。僕のしていた事はただの自己満足で、本当は僕は二人を傷付けていたんだと。あんな風に親身になって、言葉を掛けてくれた人は居なかった。誰もが僕の仮面の裏に潜む醜い心を見抜いてくれなかった。
後悔しても、もう遅い。僕は幼なじみ達に謝る事はもう出来ない。死んでから気付くなんてね。
だから、アクア様の言葉は僕を救ったんだ。
「迷った末に出した答えは、どちらを選んでも後悔するもの。どうせ後悔するなら今が楽チンな方を選びなさい。」
そして僕は異世界へ行き、魔王を倒すように頼まれた。
「新たな命を得て、新たな人生を歩みなさい。あなたの後悔は次の世界で晴らせば良いのよ!さあ、あなたはここで立ち止まって逃げ出すの?それとも不器用でも前に進むの?」
僕は答えた。
「前に進みます。今度は後悔しないために。」
アクア様は僕に微笑んでくれた。
「次は後悔しないようにしなさい。誰かの為なんて気にするのはやめて、本能のままに生きなさい。汝、何かの事で悩むなら今を楽しく生きなさい。楽な方へ流され自分を抑えず本能のままに進みなさい。あなた自信の幸せを掴む事が罪滅ぼしよ。」
僕に新たな道を示してくださったアクア様。魔王を倒した暁には願いを叶えてくれると聞いた。僕は再びアクア様に会いたい。願いを叶えてくれる時に会えるはず。絶対に何が何でも魔王を倒すと心に誓った。
誓ったはずだった。
でも、僕はまた同じ事を繰り返している。そんな自分が大嫌いだ。そしてこんな僕には二人に応える資格は無いと思っている。でもこの中途半端さが一番彼女達を傷付けているとも自覚している。それでもどうしたら良いのか判らなくて泣きそうだった。
アクア様に一目会いたい。言葉が欲しい、厳しい言葉でも何でもいい。最低な僕にはお会いする資格なんて無いだろう。でもそれでも諦められず、
考えながら、迫り来るアクシズ教徒を捌きながら逃げて逃げて逃げて。
目の前にフードを被った女性が居る事に気付かずぶつかってしまった。フードが脱げて露になった姿を見て、僕は思わず息を呑んだ。
ずっと会いたかった。きっとこの想いが通じたんだと思った。声を掛けようとして無意識に大声になってしまったんだと思う。
「ア、アクア様!」
「シーッ。こっちに来て。」
アクア様は僕の腕を取り路地裏へと連れて行った。
アクア様に連れられて、大通りから離れた所まで来て止まった。僕が声を出す前にアクア様は人差し指を口の前に立て静かにするように合図を出した。僕は小声で尋ねた。
「アクア様。ありがとうございます。僕の想いを読み取ってくださったんですね。」
ここにアクア様が来たのは、きっとそうに違い無い。僕はアクア様と運命で繋がっている。
「日本人、ですよね?あと、私はアクア様ではありません。」
そんな事を言われた。だけどこの世界に来てからも一度たりとも忘れた事は無い。アクア様の声を聞き違えたりしないし、顔を間違えるワケ等絶対に無いと自信を持って言える。
「そんなはずはありません。僕はアクア様の声や顔を見間違える筈はありません。それに僕を日本人だと知っているのが何よりの証拠です。あっ、お忍びで来られているんですね。だから、今はアクア様じゃ無いって事ですね。」
きっとそうに違い無い。お忍びで地上の様子を見に来られたついでにこちらへ来られたんだ。
「私は、アクア様本人ではありません。私の名前はマイム。アクア様の眷属です。」
「眷属ですか?でも、瓜二つですよ。本当にアクア様では無いんですか?」
正直信じられない。記憶の中のアクア様と瓜二つだ。いや、眷属と言う事は本体では無いだけでアクア様の一部と言う事じゃ無いのか。だったらそれは十分にアクア様だと思う。
「はい、私は水の精霊と同じ様にアクア様の眷属であり、アクア様本人ではありません。ですから誤解です。それと私の質問に答えて貰えませんか?あなたは日本人ですよね?アクア様によってこの世界に送られた。」
水の精霊と同じと言う事はやはりアクア様の一部だと思う。本体では無いけれど、僕はアクアに再びお会い出来た。ああ、祈りは届いていたんだ。
「あのー?もしもーし。私の声聞こえてますか?おーい。」
ハッと気付く、アクア様じゃなくてマイム様は僕の目の前で手を振っていた。感動してあの日と変わらぬ美しさに見とれてしまっていた。
「はい、すみません。その通りです僕は日本人です。アクア様にこの世界に導かれた一人です。」
「良かった、合ってましたね。」
マイム様はほっとして笑顔になった。あの日の凜とした顔は美しかったけれど、普通の女の子のように笑顔になった姿は僕の心を掴んで離さない。胸が苦しい。心臓が早鐘の様に鳴る。
「実はお願いがあるのですが聞いてくれますか?」
否応無い。答えはイエスだ!マイム様のお力になりたい、僕は本能で答える。
「はいっ!もちろんです。どんな事でもお聞きします。」
この気持ちはなんだろう。何処からか力が沸き上がって来るようだ。さっきまでの迷いは吹き飛んだ!どんな事であってもこの笑顔の前ではイエスしかあり得ない。
「あっはい。ありがとうございます。」
ああ、声が大きかったか。ビックリさせてしまったか。ああ、凄く申し訳ない気持ちになる。僕はなんてダメなんだ。
「私が拠点にしている場所があるのですが、そこが魔王軍の手先によって攻撃されているんです。既に火の精霊が敗れ支配下に置かれています。私達は水の精霊と共に闇に落ちた精霊を打ち破り火の精霊を解放せねばなりません。」
マイム様は胸の前で両手を組み、僕を上目遣いで見る。
「どうか力を貸して戴けませんか?私達はこのベルゼルグでは伝が有りません。一人でも多くの人の手助けが必要なのです。あなたの知り合いへ伝えてくれませんか?近くギルドを通じて正式に依頼が出るはずです。ですが、もう時間はあまり無いのです。」
気のせいでは無い。彼女の目尻に光る物がある。僕の答えは決まっている。
「僕に出来る事で有れば何でもします。王都には同じ様に日本から来た人達が居ます、彼等に伝えます。僕自身もお力にならせて下さい。」
泣きそうで不安そうにしていた彼女は笑顔に戻った。今の僕ならきっと何でも出来る。
「ありがとうございます!火の精霊との戦いでは聖剣や魔剣に類する武器が必要だと言われているのですが、大丈夫ですか?」
これこそ、僕には打ってつけだ。僕の魔剣グラムはきっと今日この日の為だったのかも知れない。
「僕はアクア様より、魔剣グラムを戴きました。この剣ならきっとお役に立てると思います。」
マイム様は僕の手を取って言った。
「ほんとうですか?ありがとうございます。ほんとうにありがとうございます。良かった、魔剣を持ってる人が見付かって…良かった。」
マイム様は涙を流した。彼女の涙が僕の手に掛かる。暖かな涙は僕に勇気をくれた。
僕の手は、自然と動いていた。彼女は僕の左手を両手で包んでいる、右手で彼女の頬から涙を拭う。
「必ず、お力になると誓います。この剣に、いや。僕の魂に誓って。全身全霊で戦います。」
「はい…ありがとう、ございます。」
涙声で言う彼女はひどく庇護欲を誘う。護りたい。僕はアクア様に恋をしたはずだったのに、こんなにも心を揺り動かされている。たぶんアクア様への想いは恋では無くて、憧憬だったのかも知れない。
僕はきっと、今この瞬間、恋をしたんだ。きっとこの形に出来ない想いが初恋なんだ…。
このか弱くも美しく可憐な少女は女神様の眷属。僕の様な人間では手の届かない存在なんだと思う。
でも、アクア様は言った。本能のままに生きなさいと。だから僕は諦めたくない、どんなに遠い存在でも手を伸ばし続ける。いつかこの手が彼女に届くと信じて。
「そうだ。ごめんなさい、まだお名前聞いて無いですよね?あなたの名前を教えてください。」
「僕の名前は御剣 響夜。」
「御剣、響夜さんですね。御剣さんはいつもはベルゼルグの王都に居るんですか?」
御剣さん、か。いつもはキョウヤって呼ばれるから新鮮な響きだ。でも名前で呼んで欲しいな。
「そうです。いつもは王都を中心に活動しています。と言っても最近来たばかりですけどね。それと、出来れば響夜って読んで貰えませんか?他の人達はそう呼ぶので。」
よしっ、自然な流れだ。
「えーと、御剣さんではダメ、ですか?その、初対面の人を名前で呼ぶのは恥ずかしくて…。」
顔を赤らめ、目を逸らされた。胸が痛い。そんな恥ずかしそうな顔は、クリティカルだ。初対面じゃ無ければ、いつか。いつか呼んで貰えるだろうか。
「良いですよ、こちらこそすみません。馴れ馴れしかったですね。」
焦ってはダメだ。今まで周りには積極的な女の子が多くて、内気で恥ずかしがり屋な女の子は居なかったから距離感が難しい。
「こちらこそごめんなさい。では間を取って。御剣君でどうでしょうか?」
僕のライフはもう0だ。クリティカルだぁ。ニヤケ無いようにしないと。
「はい、それで良いです。」
御剣君、か。これはこれでいい。なんだか日本に居るときみたいだな。どこか懐かしさを感じる。
「マイム様はこの後どうされるのですか?」
「この後、ですか?」
キョトンとした表情で聞き返された。そんな表情うわぁ、うわぁ。この後、出来れば一緒に歩ければ。
「この後も観光されるのでしょうか?」
「ああ、そういう。そうですね、観光とベルゼルグの近況を知りたいと思っています。」
「ベルゼルグの近況でしたら、僕が教えられると思います。よければ街を歩きながらでも話しませんか?」
「良いんですか?さっきはどこか急いでいる様な風に見えたんですが。」
アクシズ教徒から逃げている所を見られてたかな。
「大丈夫ですよ。勧誘から逃げてただけです。友人達にお土産を買って行こうと思ってる所ですから。」
グッジョブ過去の僕。お土産買いにきて正解だったぞ。
「そうだったんですか、じゃあお願いしても…」
と、そこでずっと黙ったままだったもう一人の女の子がマイム様の言葉を遮って、二人で相談し始めた。漏れ聞こえる声に耳を澄ませる。
「大丈夫じゃ……ですか?」
「初対…の男……よ。」
「で…良い人そ……。」
結論が出たようだ。
「話を中断して悪いわね。私はミア。彼女の護衛よ。悪いけど初対面の男を信用するほど私はお人好しじゃ無いから。人目のある場所だけという条件を付けさせて貰うわよ。」
疑われているんだろうな、話が出来すぎていると。でもなんとか信用して貰うしか無い。
「はい、それで結構です。」
「あら、意外ね。押しが強いし、不満を言ってくると思ってたわ。」
「女性二人ですから、男の僕を警戒するのは無理無いでしょう。僕としては信用して貰えるように態度で見せるしか無いと思いましてね。」
「分かってるようで何より。マイム、そういう事よ。表の土産物屋だけよ。」
「ありがとうございます、ミアさん。じゃあ御剣君、行きましょうか。」
僕とミアさんのやり取りを不安そうに聞いていたマイム様だったけど、花が咲くように笑顔になった。
こうして僕はマイム様と街を歩く事が出来た。
~~~~~~
マイム
突然の出会いだったけど、なんとか上手くいったかな。一人目で魔剣持ちに出会えたのは幸先が良いな。御剣君がベルゼルグの近況も教えてくれるみたいだし丁度良いよね。
ミアさんは警戒しなさいって言うけど、私は大丈夫だと思うな。
話を聞くと御剣君は3ヶ月前にこの世界に来たようで、魔剣の力でバッサバッサとモンスターを倒してレベルを上げているらしい。この世界に来た転生者は通常はベルゼルグのアクセルと言う街に行くそうです。そこは冒険者志望の人達が集まる場所で、ある程度レベルが上がったら他の街に行くと聞いた。
はじまりの街や王都かぁ、どんな感じなんだろう。私は辺境の村とアルカンレティアしか見た事が無い。ちょっと羨ましい。
そしてベルゼルグの近況へと話は移る。
魔王軍の進攻により、王都近くでも小競り合いが起きる様になったとかでそこには多くの日本人が勇者候補として戦場に立っているそうです。
それよりも前線にも多くの日本人が居て、日夜魔王軍との戦いを繰り広げている。ベルゼルグの騎士団やエリス教徒による義勇兵や冒険者により前線が維持されているけれど、時折少数の敵がすり抜けて他の街を攻撃している。
現在はアクシズ教徒の義勇兵は居ないそうで、私が昔はアクシズ教徒の義勇兵部隊も居た事を教えると驚いていた。
まとめると前線は一進一退で、有力な勇者候補は前線かベルゼルグの王都に居る。冒険者の居る街には大抵何人か日本人も居る事が多い。ほとんどがチートで活躍していて、現地の冒険者の先頭に立ち一目置かれている人が多い。
戦闘系以外の人達も何かしらの分野で活躍している。御剣君によれば、私が声を掛ければきっと多くの日本人が力を貸してくれるだろうと。
一度、王都に行ってみるのも良いかも知れない。
三人で街を歩いていると客引き以外には声を掛けられ無かった。
ミアさんに聞くと。明らかにアクシズ教徒と分かる女の子がアクシズ教徒じゃない男を連れているから、勧誘の最中だと勘違いしてくれて邪魔をしないようにしてるんじゃないかと。
御剣君も、勧誘でもみくちゃにされなくて助かるって笑ってた。
お互いの買い物を済ませた。もう夕方だから戻らなきゃいけない。御剣君の泊まってる宿屋はちょっと離れた所だから、私達と離れたらまたもみくちゃにされるだろうねって苦笑いしてた。
私が近くまで送ろうか?って提案すると断られた。女性を送るならともかく、僕を送る必要は無いって言われた。頑張って切り抜けるさ、って言ってた。私としてはもう少し話したかったから残念かな。
別れる前に聞いてみた。
「せっかくだから、お友達になりませんか?」
って聞いてみた。色々な話をしながらお土産屋を回って街を歩いたんだし。でも反応を見るのがちょっとだけ怖かった、これで断られたらショックかな。
「も、もちろんです。マイム様!」
様付け、やめて欲しいな。
「友達なら、様付けで呼ぶのやめてね?私の事はマイムって普通に呼んで。敬語も要らないからね。」
様付けや敬語で話されるのって、なんだか遠いって言うか。壁があるみたいで嫌だった。
「わかりました、いや。わかった。マイム、僕達は友達だよ。」
「うん、これからよろしくね。響夜君。」
友達だったら、名前で呼んでもいいかな。
「名前、呼んでくれた…。」
「どうしたの、ボーッとしちゃって?」
響夜君の方が背が高いから下から覗き込む様にして見た。
「いっ、いや。何でも無い。」
変なの。
「じゃあ、またね!」
「ああ、じゃあまた。」
そうして私達の宿の前で別れ、響夜君は速攻で人波に飲み込まれて行っちゃった。大丈夫かな?
今日は、この世界で初めての友達が出来ました。
暴走特急ミツルギ見☆参
ミツルギのキャラ崩れて無いかな、大丈夫だろうか。
ミツルギは小説の挿し絵を見ると黒髪っぽいのでここでは黒髪で行きます。
マイムは、暴走特急ミツルギにロックオンされました。