もう、収拾がつきません……。
今私は、暴徒というか祭りの人混みというかなんかそんな感じの状態で流れに従って運ばれていってます。
周囲ではみんな好き勝手に騒ぎたて、わけが分からなくなっています。ミアさん達とも離ればなれになってしまい周りは初対面の人達ばかりです。
しかもこの人達は私をアクア様アクア様と呼ぶばかりで会話も成立しません。ある人は泣きながらある人は満面の笑みでまたある人は祈りながら。
もう、どうしたら良いのかも分からなくなってきました。誰も話を聞いてくれなくて近くに居ても、心は凄く遠いなって思いました。なんだか越えられない壁の様な物を感じました。
これは私のコミュニケーション能力が足りないのもあるのかも知れないですが、なにかこう。なんとも言いがたい壁を感じます。
何度も何度も声を張り上げ、
「私の話を聞いてください!、お願いします誰か話を!」
こんな風に叫んでも、誰も意味のある返答をしてくれません。
ただただ、壊れたスピーカーの様にアクア様アクア様アクア様アクア様アクア様アクア様……。そんな声に囲まれ続けています。
私の囲みの外では誰かが合流したりしてるようですが私からは全く状況が分かりません。
結局私は人に囲まれていても私は一人ぼっち。自分の力では何も出来ないんだって分かりました。トントン拍子に事が進んだのだって、周りの人達が親切だった事と、
私の力なんて何の役にも立っていないんでしょう、きっと……。
ただの足手まといだなぁ……。
そんな風に思っていると、頬を熱い物が落ちて行きます。視界もぼやけてきます。
でも、そんな姿をしてたらきっと……。
「あーーーっ!アクア様が泣いてる!誰だあー泣かした奴ーーー!」
すぐ横に居た男の子が騒ぎ立て始めてました。
普通は泣いても解決なんてしない。でも、この姿だったら周りが勝手に動いていってしまいます。結局、私は何の役にも立たない泣き虫でそんな自分が嫌になって更に涙が溢れていってしまう……。
周りがざわめいているのは分かるけど、耳に入っても理解が出来ない。何かが起こってるけど、分からなくてただ怖い。何にも考えられない自分を何処か冷静に見ている自分も居て心がバラバラになっていく感覚がしてきて怖い。周りが、人が怖い。理解出来ない、理解出来ない物全てが怖い。
全部、怖い。何が怖いのかも分からないけど、怖い。
涙が止まらないし身体も震えてるし頭が痛くなってきて目眩がしてきた。
分からない、分からないよ。怖い。
歩く事も出来なくなって、自分の身体を抱き締め立ち止まる。俯いたままで、何とか冷静さを取り戻そうとして、冷静ってなんだっけ?何がどうなんだっけ?えっと。考えようとしても考えられなくて立ち竦む。
誰かが声を掛けて来てる。
ぼんやりと、そう思ってたら抱き締められた。
「深呼吸しなさい。そう。ゆっくり、ゆっくりとね。慌てなくて良いわ。貴女は一人じゃないわ。だから、今は深呼吸して休んでいなさい。」
聞いた事の無い女の人の声。でもなんだか落ち着く声。お母さんじゃないけどお母さんみたいで落ち着くけど、涙は止まらない。
そっと頭を優しく撫でられ、そのまま背中をポン、ポンと優しく叩かれている。
段々落ち着いて来て急に恥ずかしくなったけど、その人は私を抱き締めたままだった。
「ごめんなさい。ありがとう、ございます。もう大丈夫ですから。」
抱き締めたられたまま、お礼を言った。
「ほんとうに大丈夫?」
優しい声、私にだけ聞こえるくらいの声。
「はい……。大丈夫、です。」
そう答えるとその人は離れていった。なんだか名残惜しいような気もした。
私から離れて私の目の前に立ったその人はこう言った。
「アルカンレティアへようこそ、マイム様。事情は精霊様から聞いております。私はリリー、アクシズ教団で運営している孤児院の院長をしています。」
その人は、四十代半ば位の銀髪の女性で声だけでなく容姿も優しげでとても美人だけど落ち着く方でした。
「泣いているのを見たらつい、自然に動いてしまいました。大丈夫ですよ、ここからは私が着いて行きます。周りのダメな人達なんて無視して良いですからね。」
言い終えると私と手を繋ぎました。小さい頃、お母さんと手を繋いだ事を思い出しました。それぐらい落ち着く人です。
「私がついてるから貴女は一人じゃありません。さ、行きましょう。」
リリーさんと手を繋ぎながら歩き、色々な事を聞きました。
孤児院だけでなく託児所も兼任しているとか、アクシズ教徒はへこたれないから子供も過去よりも未来を見て強く生きているだとか、大人達がちゃらんぽらんだから子供達も暗くなったりしないとか。
「マイム様も私達の家族です。アクシズ教徒はみんな家族ですから。何が有ったかは聞きません、でも周りのダメ大人も子供達も貴女の仲間も、みーんなアクア様の子供です。私達アクシズ教徒は大家族なんです。だから、ほら笑って。貴女が泣いてたらみんな心配してしまうわ、うん。笑顔が一番よ。」
アクシズ教徒は大家族、か。それだったら別に良いかなって思った。みんなアクア様の子供。お母さんがアクア様なら、お父さんは誰だろうかとかは野暮だよね。
リリーさんの笑顔に私も釣られて微笑む。
リリーさんが牽制しているのか、周りの人達は私からちょっとだけ距離を取ってくれた。
私達は一塊になって進んで行く。先頭は見えない、ずっと先をずんずん進んでいく。
すると、先頭の方で言い争う声が聞こえ始めた。
沢山の男女の怒声や金切り声が聞こえ、押し問答しているのが分かる。
「先頭が着いたようね。さあ、マイム様行きましょう。貴女のが行かなきゃいつまで経っても進めないと思うわ。」
リリーさんに連れられ先頭に躍り出た。
そこでは扉の前を揃いの制服を着たイカツイ男性達との押し問答が繰り広げられていた。
力尽くで押し通ろうとする人々とそれをちぎっては投げちぎっては投げする僧兵団の争い。その横で一際イカツイ禿頭の僧兵と押し問答しているキラキラしたローブの男性が見える。私はその男性に向かっている。
「現在は来客中である。誰も取り次ぐなと命を受けているのだ。お引き取り願おう。」
「だーかーらー。アクア様の眷族がいらっしゃっているのです。さっさと開けろハゲ!」
「誰がハゲじゃ、やかましい!ここは何人足りとも通すなとの命令じゃい!ここを通りたくば、ゼクス様よりも権威在る者の命無くば通さん!」
派手なローブの男性と僧兵団長の押し問答をしている場面に出くわし戸惑っていると……。
「権威か、権威だと。この御方を誰と心得る!さあ!お前の目は節穴かっ!さあ!目ぇかっぽじって見ろぉ!我等が毎日祈りを捧ぐ御方だぞ!」
ローブの男性は勢いよく振り向くと、私の肩を掴み前に押し出しました。
「え、え……。」
突然の事で私がキョドっていると、僧兵団長は目をこれでもかと言うほど開きうわ言の様に呟きます。
「馬鹿な、私は夢でも見ていると言うのか?いや、例え白昼夢でも構わん……。これは現実か?そっくり、いや瓜二つ、いや。そんなものじゃない……。」
いや、だがしかし。と呟き私を凝視しつつ何かを考え始めました。
とりあえず今、私がやらなきゃいけない事はこの人を説得して扉を開けて貰う事だ。
深呼吸し、意を決して言葉を紡ぐ。私の言葉で、私だけの言葉を。
大柄な男性を下から見上げながら、言った。
「私は、マイム。女神アクアの眷族です。証拠はこの姿その物です。私には重要な要件があり、アクシズ教団に協力を求めています。」
一度言葉を切り、一呼吸おいた。
「お願いしますどうか、その先に行かせて下さい。」
私は僧兵団長の目を見て言ったあと、頭を下げます。
「お願いします!」
「あ、いや、その。ど、どうか頭をお上げ下さい。貴女の様なお方が私等に頭を下げるべきではありません。お願いしますマイム様、頭をお上げ下さい!」
慌てて僧兵団長はそう言うと、周囲の団員に扉の前から退くように命令を出します。
「どうか、お赦しを!貴女の道を遮った我等にお赦しを!」
僧兵団長を始め周囲の団員さん達もその場に踞り、赦しを乞うてきます。でも、私はそんな事はして欲しくなんて無い。
「あなた方は自らの職務を全うしただけです、何も悪い事なんてしていません。そうでしょう?あなた方は誠実で立派な僧兵です。だから、お立ちになって下さい。」
私はしゃがみ込み、踞る団長さんの手を引き立たせました。
私は指を二本立てて言いました。
「アクシズ教教義その2、分からない明日の事より、確かな今を全力で生きなさい。あなた方は自らの信念によって全力で生き、全力で使命を果たしているのです。何も恥ずべき事も、何も赦されざる事もしていません。さあ‼️胸を張って下さい。あなた方は敬虔なるアクシズ教徒です。今、あなた方の胸に在る重い気分なんて忘れましょう。」
二本立てていた指を一本に減らし、団長さんの前に突き出します。
「アクシズ教教義その1。アクシズ教徒はやれば出来る、うまくいかなくてもあなた方のせいじゃない。うまくいかないのは世間が悪い。ですから、今回はちょっとタイミングが悪かっただけです!あなた方のせいじゃありません。だから仕切り直しです。」
私はわざとらしく咳払いをし、改めてお願いしました。今度は女神の眷族っぽくやります!
「敬虔なるアクシズ教徒達よ。我は女神アクアの眷族、マイムなり!我はアクシズ教団最高司祭に用がある。我が道を開き、扉を開けよっ!」
決まった!
「ははっ。仰せのままに。」
団員さん達が扉の両側に着き開こうとしています。
おや?隣とかに見た事の無い偉そうな人達が並び始めたなぁ。まあ、いいか。なるようになるよ、きっとたぶん。たぶんね……。
夏が終わって秋が来て冬が近付いて来ましたね。
大幅に遅れてすみません。
言い訳をすると、最近面白い小説が多くて読み専になってました。
やっと昇進試験も終わったので、月2~3回の更新を目標に書きます。