偽アクアの旅路   作:詠むひと

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思えば遠くに来たもんだ、と思う時はどんな時だろう。

私は地平線に道が消えるのを見た時だった。

体感するまでは実感しない物だと思う。



震えるスティック

 

ギルドに戻りながら辺りの様子を見ていると、村人達は桶やたらいの様な物を家の外に並べていた。

 

 井戸の水位が下がり水が貴重となっているのは聞いていたが、目で見るまでは私はあまり実感していなかった。

 

 日本で生まれ育てば、水に困ると言う事を経験する事はあまり無いだろう。

 

 災害に合えば断水したりも有るだろうけど、「僕」はそういった事も無く水で不自由した事は無かった。そういうのはテレビで見るどこか遠い国の話と言う感覚があった。

 

 

 今、「私」が居るのはそういう国である。

 

 

 どこか現実感が無く夢の続きの様に感じていた。両の足で踏みつけ歩くぬかるんだ道、雨の後の湿った風。濡れて顔に張り付く髪。

 

 髪…。んん?張り付…いてない。

 

 マグナさん達は濡れネズミって感じなんだけど、私の髪は風に揺られている。

 

 衣服もローブも乾き歩く度に揺れている。水に関わる事だし、きっとこれもアクア様に由来するのだろうか。

 

 脳内で一人でシリアスぶってみたけど、もう既に不思議でいっぱいで実はもう異世界すごい!って位にしか思って無い。

 

 自由に動く身体、アクア様がベースの超美少女ボディ、魔法にスキル。そして波動拳。

 

 波動拳はもうちょいゲームのイメージでゆっくりな弾速とふんわりした形に調整して連発出来るようにしてみたいかなーって思うけど。個人的には特に不満は無いかな、新生活への不安は有るけどたぶんきっとなんとかなるでしょ。

 

 水が貴重だったら飲み水はクリエイト・ウォーターで出せば良いじゃん?

 

 文字通り生まれ変わったんだし、暗い過去なんて見なくても良いよね。アクア様最高、ありがとうございます。

 

 

 まあ、そんなこんなでギルドに戻って来ました。今度はマグナさん達も一緒だし扉の前でうじうじせずに中に入れました。

 

 

 

 ギルドの中は受付のアステールさん以外居なくてがらんとしている。酒場の方はウェイターのお兄さんがテーブルを拭いている位であちらも人が居ない。

 

 

「酒場の方で話すか。」

 マグナさんが言い私達は付いて行った。

 

 

 全員が席に着いたのを確認してマグナさんが口を開いた。

 

「じゃあとりあえず、ネロイドのシャワシャワ4つ。」

 

 マグナさんがウェイターさんに注文していたけど、ネロイドのシャワシャワって何だろう。

 

 

「さて、まずはうちのパーティーの決まり事から説明していくか。決まり事と言っても別に重たい事じゃないから安心して欲しい。うちは初心者への指導のようなものもやっててな、安全性を重視してるってだけだ。」

 

 マグナさん曰く。

 討伐に行くときは最低二人以上でパーティーを組む事、レベルどうこうと言うよりも緊急時の為に一人では危険だからと言う事と互いに切磋琢磨して欲しいから。

 

 胸部は最低でも革鎧かチェインメイルを着る事、胸に強い衝撃を受ければ詠唱出来ないし息も出来なくなる。ベテランでも一瞬の隙が命取りだと。

 

 常に予備の武器を携行する事、魔力が切れた武器が壊れた戦えません、では話にならないし、味方を危険に晒す。魔法使い職やプリーストも武器を持て、戦士職は予備の武器を持て。

 

 

「以上だ。冒険者をやる上で当然であり、基本中の基本だ。だが、残念ながらこの基本が出来ない奴も多く毎年死人が出てる。本人が死ぬぶんには自業自得だが巻き添えを食らう者は堪ったもんじゃ無いからな。」

 

 すごく納得がいった。当たり前の事って言われる事って、当たり前にやるのって実は難しいよね。

 

「まあ、そんなわけだから。マイムのステータスが高くともやってもらうからな。ああ、金の心配は要らん。新メンバー用の胸部鎧の費用はパーティーの予算から出す事に決まっているんだ。各人毎月報酬の1割を拠出する事になってるんだ。」

 

 非常時の治療用やパーティー全員での慰労会をやったりしているそうだ。もっともプリーストが複数居るし、治療用に使う事は滅多に無いそうだ。

 

 

「予備の武器の件は、そうだな…。私のナイフを一本あげよう、使い込んではいるがまだまだ使える。負傷した時や採取の時等に使うといい。」

 

 ナイフを受け取った。柄に人差し指を掛ける穴が在り、刃の厚みは3mm位で刃渡りは20cm位だった。

 

「扱い方や手入れの仕方は後で私かリナに聞くといい。」

 

「ありがとうございます。」

 

 ナイフと言うと果物ナイフや十徳の折り畳みナイフしか見た事が無かった私には、少しおっかなかった。

 

「他の防具はどうするかな。マイム、その手袋を少し見せてくれないか。」

 

 

 私が脱ごうとすると、そのままで良いと言われ私の手を取り間近で観察し始めた。手袋の上から私の手を握ったり、補強プレートを摘まんだりしたり、手のひら側を指で押されたりした。

 マグナさんが真面目にやってるのは分かるけど、なんだか気恥ずかしい。顔が赤くなってないと良いけど。

 

 

「かなり防具としても出来が良いだろう。柔軟性が有るが、手首や肘等は革自体に厚みが有り裁断が工夫されていて屈曲を妨げない様になっている。プレートはおそらくミスリルだ。手入れしながら使えば長持ちする非常に良い品だ。マイムはスキルで頭部の防御も上がってるし、胸部の防御を上げ、後は様子見としよう。戦闘スタイルに合わせて防具を揃えればいいだろう。」

 

 

 

 ウェイターさんがジョッキを4つ持って来た。これがネロイドのシャワシャワか。語感から言って炭酸飲料かと思ったけど、違う。なんだろうコレ。あ、乾杯するのか。

 

「では、今日は我が灼熱の風にマイムと言う新たな仲間を迎え入れた事に乾杯だ。マイム、一言。」

 

 

 うぇっ、急に言われても。

 

「え、えと。全然わからない事ばっかで、その、これからどうしていくとかわからなくて、迷惑掛けてしまうと思いますけど、一生懸命頑張ります。よろしくお願いします!」

 

「じゃ、乾杯!」

 

「「「乾杯っ!」」」

 

 マグナさんの掛け声で乾杯した。こういうの初めてで嬉しい。あと無茶振りは焦る、やめて欲しい。

 

 飲んだら甘酸っぱくておいしい。果物じゃないし、でも何となくどっかで飲んだような味。あとなんだかシャワシャワする。シャワシャワと言うのがなんなのか上手く言えないけど、口の中での刺激じゃなくてなんだろうコレ。

 とりあえず美味しいからいいや。

 

 

「ニシシ。マグナさんはほーんと、女の子には優しいよねー。女の子には。」

 

 リナさんが笑いながら言い、マグナさんは反論した。

 

「心外だな。私は飲んだくれと馬鹿以外には誰にだって優しいだろう?どっかの飲んだくれドムとかな。」

 

「ドムって誰ですか?」

 

 はっ、私は今無意識に小首を傾げながら聞いていた。「私」じゃなくて女の子がやってたら見たい仕草なのに、自分でやってたら見れないいいい。

 

「ドムって言うのはね、うちのパーティーでプリーストをしている人の一人よ。クエストから帰るといつも飲んだくれてる人よ、悪い人じゃ無いんだけどね。良い人かって言うと微妙ね。」

 

 ミアさんが教えてくれた。微妙な表情をしている、嫌いじゃないけど好きじゃないみたいな。

 

「で、いつも飲んでてクダ巻いてて鬱陶しいんだけど。酒場から帰る時は自分にだけ解毒魔法掛けて帰るのよ。酒場の中だけだから外だと害は無いし腕は良いんだけどね。」

 

 仕事は出来るけど残念な人って事か。ちょっと気を付けておこう。

 

 マグナさんとリナさんは、と。

 

「えー、シグが来た時は結構口調も強かったし、ちょっと怖かったじゃん。」

 

「話を聞かんし、勝手に空回る馬鹿には強く言わなきゃ届かん、最初が肝心だ。冒険者に成りたてで浮かれてたにせよ、ガツンと言わんと示しがつかんだろ。」

 

「態度によって変えるのは当然だろう。世間知らずの子供といい歳した男で対応は変えて然るべきだろう。」

 

 シグというのは馬鹿剣士その1で突撃馬鹿だと教えて貰った、ミアさんって割りと辛辣だな。

 

  二人はまだ色々話している。ミアさんに色々聞いておこうかな、と思ったら。

 

「ねえ、マイム。あなたの髪って長いし綺麗ね。私は短くしてるしリナも似たり寄ったりだし、ちょっと色々髪を結ったりとかしてもいい?て言うか、させて。ね?ね?」

 

 おおっと、女の子同士で髪を弄り合うとか難易度高い。女の子一日目の私にはハードル高いな。何て返せばいいんだ。というか、返事する前に毛先を指にくるくるさせてる。見ていたい光景だけど、私は当事者なんだよね。

 

「ええ、いいですよ。」

 

 とりあえず、yesで。どうやって断れと。

 

「言質取ったからね。」

 

 え、ナニソレ怖い。

 

「今夜は私とリナの泊まってる部屋に来なよ。リナも髪で遊…結ったりとかしたいだろうし。冒険者の事とか色々教えてあげるよ。」

 

 絶対遊ぶって言おうとしたよね。でも今日は…。

 

「今日はギルドの仮眠室を借りる事になってるんです。アステールさんに周辺地理等を教えて貰うんですよ。」

 

 ちょっと勿体無いけど、これで逃げられるはず。

 

「だーめ。私からアステールには言っとくから。ね?それに周辺地理なんて私達にも教えられるし。」

 

 退路を断たれたー。

 

「こんな可愛い女の子が仲間になったんだもん。それにこんな綺麗な青い髪、まるで伝承にある女神アクアみたいじゃない。雨を降らせたりなんて神様や精霊か紅魔族のアークウィザードくらいしか聞いた事無いしさ。」

 

 紅魔族?

 

「その顔は、紅魔族も知らないのね。ほんと世間知らずね、いったいあなたはどこから来たのかな?ああ、今は答えなくても良いわ。いつか教えても良いって思ってからで良いわ。紅魔族っていうのはね。」

 

 曰く。

 生まれつき高い魔力と知力を持ち、そのほとんどがアークウィザードになるという最強の民族にして人類の切り札。

 魔王の城を常に監視し警戒している人類の守護者達。

 古代の神の領域に登り詰めた錬金術師が産み出した人造の神々の子孫である。

 強大な魔力により繰り出される魔法は天地を自在に操り理を歪め、精霊をも屈伏させる。

 黒髪に紅い目をしており、風変わりな名前と風習を持つと言う。

 

 

「どこまでがほんとなのかは知らないし与太話かも知れないけど、雨を降らせる魔法が使えるって人は領主様の配下に居るそうだけどね。」

 

 なんかすごい人達が居るんだ…天地を操り理を歪めるとか。もう、何て言うの。こう。大魔導師とか賢者みたいな人達なのかな。異世界すごい。滾る。

 

「興味持ったみたいね。今度の雨乞いの儀式の時に視察に来るらしいのよ。効果が有る無しに関わらず地方の風習とかに興味が有るんだってさ。私も紅魔族の人に会うのは初めてだけど気になるよね。」

 

「正直、すごく気になります。確か巫女を募集してるって話でしたよね。」

 

「そうよ。そして雨乞いの儀式は関係者以外見ることも出来ないのよ。だから会いたければ巫女になるしか無いのよ。私はもう志願したわ、マイムもどうかしら?」

 

 ここまで聞いたら、やるしかない。

 

「そうですね、私もやってみようかな。」

 

「じゃあ決まりね。マグナ!マイムも巫女に志願するってさ。」

 

 向こうの二人の話は途中から二人で盛り上がってたんだけど、二人ともこっちに振り向いた。

 

「おっ、マイムもやるんだ。じゃあ私達三人お揃いだね。」

 

 眩しい笑顔でリナさんが言った。

 

 

「そうか、後でアステールに申請しておくよ。」

 

 マグナさんが言い、私達三人を順に見ていった。

 

「その日は私は周辺の警護をする事になっているから顔を出せないが、頼んだぞ。」

 

「二人は私が責任を持って引率するから心配しなくて大丈夫よ。」

 

「ああ頼むぞ、まあミアに任せておけば大丈夫だな。」

 

 

 マグナさんは咳払いを一つして口を開いた。

 

「さて、明日からだが。当面の間マイムは私と行動をして貰う。クエストを受けながら実地での指導や地理を覚えていって貰う。まずは自分の力に振り回され無いように、出来る事出来ない事をしっかり把握していく事からだ。」

 

 「あと、出来ればリナとミアのどちらかには同行してもらいたい。歳の近い同性が居れば何かと安心出来るだろうし、私には出来ないアドバイスも有るだろうし、どうだ?」

 

「言われるまでも無く付いて行くわ。だってマイムはなんだか危なっかしいし。」

 

 ミアさんはそう言い私を見た。

 

「もちろん私も行くよ。じゃあ明日からはこの四人パーティーって事で良いの?」

 

 片手を振りながらリナさんが言った。

 

「ああ、そうだ。他のメンバーは追々紹介していけば良いだろうし。じゃあマイムから質問とかは無いか?」

 

 そう言われ、幾つか気になっている事を聞いた。

 

「じゃあ、えっと。灼熱の風って言う名前の由来って何ですか?」

 

「それはだな、二つの理由が有る。昔初めてパーティーを組んだ時に名付けたもので、私のもっとも多用する魔法から来ている。ヒートウェイブという非常に高温の風を発生させる魔法が在ってな、それを多用している事から私の代名詞となりパーティー名にしたんだ。もう一つの理由はこの乾いた大地を仲間と共に風の様に駆け抜けて行こうと言う願掛けだな。」

 

 パーティー名が格好いいって重要だよね。

 

「マグナさんってハイウィザードなんですよね。でもガタイ良いし腰回りに剣とか斧とか持ってるのって予備の武器の範囲を超えて無いですか?」

 

「私は元々魔法戦士でな、途中で魔法に重点を置くようになってハイウィザードに転職したんだ。だから武器の扱いに慣れてるし接近戦にも対応出来るようにしてるんだ。まあもっとも後衛が接近戦してるようじゃダメなんだがな。」

 

 ワハハと頭を掻きながら笑うマグナさん。ガタイが良くて渋い声とか、こういう大人に成りたかったんだけどね。と少しだけ内心寂しくなった。

 

 

「じゃあ次、リナさんの剣って変わった形してますよね。それはどういう物なんですか?」

 

 リナさんの剣は鉈を大きくしたような形で、鞘も剣の背?峰って言うんだっけ?が露出した形をしている。今は椅子に鞘を掛けているけど移動中は背負っていた。

 

 

「ああコレ。うちの村だと昔から使ってるんだけど、他じゃ珍しいらしいね。簡単に言うと、鉈を剣にしたような物よ?重さで叩き斬ったり背で殴ったり出来るし刃が厚くて丈夫だし。先端には刃が付いてなくて鞘に引っ掛けるように固定して革ベルトで留めてるのよ。長さの割に重いから普通の剣と扱い方が違うけど慣れればどうって事は無いし便利よ。」

 

 そのまま鉈なのか。鉈剣、いや剣鉈か?

 

「あとは皆さん、腰回りのベルトに色々付けてるのって何を持ってるんですか?」

 

 三人とも革のポーチやら袋やナイフや斧とか何か色々付けてるし。

 

「私は、簡易砥石や目潰しとか止血薬とかポーション、毒餌かな。後は予備でショートソードとナイフだね。ナイフは剥ぎ取りにも使うよ。」

 

 リナさんがクルッと回りながら説明してくれた。ポーションきたよポーション、ファンタジーの定番きたよ。

 

「私は矢筒以外だと、予備の矢じり、毒、目潰し、ポーションと毒消し、後はメイスとナイフだね。予備の矢じりは矢を再利用する時に使うのよ。矢じりには抜けないように反しを付けてるから、モンスターが身を捩って矢を抜こうとしても体内に残るようになってるの。それに矢じりには溝があって矢が抜ければそこが空洞になって血が流れ出るようになってるから矢が抜けても大きなダメージになるのよ。」

 

 想像するとエグい。ミアさんは矢じりを取り出して説明してくれた。

 

 

「最後は私だな。予備の杖と斧、ショートソード、目潰し、ポーション、エリス教の聖水とアクシズ教の聖水、止血薬などだな。聖水が二種類有るのはそれぞれ効能に違いが有るんだ。」

 

「どちらもアンデッドに有効だが、エリス教の聖水は僅かに幸運値を上げる効果が有り、アクシズ教の聖水には水の浄化の効果が有る。生水を飲む時はアクシズ教の聖水を混ぜると腹を壊しにくいんだ。効果の違いは、それぞれの女神の権能の違いによるものだろう。より高度な加護を得た聖水ならモンスターの忌避効果も有るが残念ながらこの辺りでは手に入らん。」

 

 

 何かのゲームにあったね。聖水を撒くと弱い敵が寄ってこなくなるっていうの。ほんとに有るんだ。

 

 

「何故三人とも目潰しを?」

 

 

「主に不意に接近された時の時間稼ぎや牽制だな。目が無いモンスターに対しては口に投げ込んでも有効だ。凄まじい苦味を付けてあるらしく悶え苦しむからな。」

 

 

 そう言えば、こっちに来てからなにも食べて無いな。って思ってたら…。

 

「くぅ…」

 

 小さくお腹がなった。恥ずかしい。今顔が真っ赤になってると思う。うわぁ。

 

 

「くくく、マイムは腹が減ったか。私達も昼食はまだだったな。」

 

 

「マーグナ!マイムの歓迎会だし、お昼ご飯代も出るよね?」

 

 リナさんが笑いながら聞く。

 

 

「そうだな仕方ない。日替わりセット4つだ!」

 

 マグナさんが注文している横でリナさんがニヤニヤしながら冗談めかして聞いてくる。

 

「マーイムちゃんは腹ペコだったんだねぇ。お姉さん気付かなくてゴメンねぇ。」

 

 「でも丁度よかったわ、私もお腹が減ってきてたし。可愛いお腹の音だったわよ。」

 

 ミアさんも私を弄ってくる。恥ずかしい…くそぉ。

 

 

 そうこうしているとウェイターさんが料理を持って来た。バゲットを使ったサンドイッチと焼き鳥を大きくしたような肉串と野菜スティックだった。

 なんか野菜スティックがプルプル震えてるけど、気のせいだよね。

 

 

「おっ今日は砂狼の肉串か。これはこの地方にしか居ない砂狼の肉でな。歯応えが有るが肉食獣にしては臭みが無くて岩塩で味付けしてあるだけなんだがコレが旨いんだ。」

 

 油が滴る香ばしい肉、思わず唾を飲み込んだ。

 

 

「「「「いただきます。」」」」

 

 

 美味しい。歯応えは確かに有る、でもこの噛み応えは肉を食べてるって感じで良い。サンドイッチも美味しい。後は…プルプルしてる野菜スティックだ…。これは他の人が食べてから手を出そう。なんか怖い。

 

 リナさんが野菜スティックの入ってる器の端を指で弾いた。指で弾いた時、スティックが跳ねてた。見間違いじゃない。跳ねてたよ。跳ねた後、動かなくなったスティックを摘まんで塩を振り掛けて食べてた。

 

 この世界って野菜が動くの?それも切った奴が。踊り食い?野菜の踊り食いなの?

 

 他の二人も同じようにしていった。私も食べてみよう。同じようにして手に取った。まずはそのままで。

 

 

 なにコレ。野菜がすっごく美味しい。ただの野菜スティックだよ?なんでこんなに美味しいの。

 

 

 

 

 

 食べ終わり、休憩しながら聞き忘れていた事を聞いた。

 

「雨が降らない状態で畑の水やりとかってどうしてたんですか?井戸水使うわけでは無いんですよね。」

 

「それはクリエイト・ウォーターが使える者に対して水の召喚クエストが出てたり、大きな桶を運搬して川から水を汲んで来たりだな。とは言え、本来この時期は週に2,3回は雨が降るのが正常でな。今年は明らかに異常だ。クリエイト・ウォーターで水やりをしていてもどうにも水が不足している。このままでは飲み水すらも危うくなるだろう。」

 

 だから雨乞いの儀式をやる事になったんだとマグナさんは続け、領都から来ていた調査団によると精霊の力関係のバランスが崩れてしまっているそうだ。その為に儀式で精霊を鎮めるんだとか。

 

 精霊か。あれかな各属性の調和とか光と闇の戦いとかみたいなアレなのかな。ああ、すごいファンタジーしてる。

 

 

「今日はそろそろ解散にしよう。各人自由時間だ。風邪を引かないようにな。じゃあ二人とも、マイムの事は頼むぞ。」

 

 そうマグナさんは支払いを済ませて帰って行った。

 

 

 

 

「さてと、「行こうか。」」

 

 あ、ミアさんが私の手を握った。今の私よりも少しだけ大きい手。細いけれど力が強い。コレはこのまま連れていかれるんだろうか。

 テーブルの反対側でリナさんも笑ってる。

 

 

「アステールさんに言わないと。」

 

「私が言って来るよ。」

 

 リナさんが席を立ち受付に向かった。

 

 私は本格的に退路を断たれた。諦めよう。

 

 

 

 

 こうして私達もギルドから出た。今の状態は両手に花か、はたまた連行される宇宙人かと言ったところかな。

 

 

 

 

 

 




マイムの外見は14~16歳の想定。書籍版でアクアとの初対面時にカズマが俺と同じくらいだろうかと記述があったので上限を16としてます。
中二病を患い気味なお年頃と思って貰えばいいです。


マグナさんがさっさと帰ってしまったは、他のメンバーへの連絡等です。普段はバラバラで動いていてもリーダーですので色々調整もあるかと。面倒見の良い苦労人です。


マイム達の居る場所はド辺境で紅魔族の実態等は伝わらず、噂のみが語られています。田舎過ぎて紅魔族が居ません。


キャラ名は思い付きか、どっかの国の言葉だったりします。
語感と響きを重視で意味はあんまり重視では無いですが、アステールはギリシャ語で星、ドムはデンマーク語で馬鹿の意味です。

追記
誤字報告でシャワシャワが来てますが、誤字ではありません。
書籍版はシャワシャワでアニメ版はシュワシュワになってますが、シャワシャワする謎の飲み物の方が面白いので書籍版のシャワシャワにしています。
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