東方煙焔記   作:Amaryllis___

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文章力。


赤に擬し紅、煌めく緋。

白玉楼の門をくぐり抜けた先は、やはり綺麗な枯山水が広がっていた。

なんとなく砂利を踏んではいけないような気がして、オレは飛び石だけを踏んで先へ進んだ。

 

 

 

妖夢「まっ…待ってください…っ!」

 

 

 

妖夢との戦いからあまり時間は経っていないはずなのだが、妖夢はボロボロの体を引き摺りながらオレを追ってきた。

幽霊というのは中々に頑丈らしい。

 

 

 

「そんな体たらくじゃオレには勝てねェよ、諦めな。」

 

 

 

満身創痍の妖夢を見たオレは冷たく吐き捨てる。

今の状態の妖夢がオレに勝てないのは事実だが、この状態の奴と戦うのは俺自身も抵抗があるからだ。

 

 

 

妖夢「幽々子様に…何の用ですか…」

 

 

 

「幽々子様ァ〜…?誰だそりゃ。」

 

 

 

産まれたての小鹿のように足を震わせながら楼観剣を構えて妖夢はオレを睨む。

 

 

 

妖夢「幽々子様に危害を加える気なら…私は命に替えても貴方を斬ります…ッ!」

 

 

 

どうやら盛大な誤解を生んでいるらしい。

恐らく“幽々子様”というのは妖夢の主人なのだろう。

もちろんオレはそんなつもりで来ているわけではない。

 

そっか、悪人面だから勘違いされてんだな。悪人面だからな。ふん。

 

 

 

「オレは嫁の生死を確かめるためだけに来てンだ。勘違いも甚だしいぜェ…」

 

 

 

ひとまず、剣を納めてもらうために事情を軽く説明する。

完全にオレを悪人だと思っていた妖夢は、何を言っているのか理解できないと言わんばかりに目を丸くして硬直し、数秒後にハッとして刀を納めた。

 

 

 

妖夢「し、失礼しました。そういうことなら幽々子様のもとにご案内致しますね。」

 

 

 

どうやら誤解は溶けたようで、妖夢は先程と180°態度を変えてオレを先導しようと歩き出した。

 

が、膝をガクンと落としてその場に崩れ落ちた。

妖夢はその後すぐ立ち上がろうとするが、やはりガクンと崩れ落ちる。

 

 

 

「…肩ァ貸してやろうか。」

 

 

 

そんなバンビガールに見かねたオレはゆっくりと歩み寄り、手を差し出した。

 

 

 

妖夢「…お願いします。」

 

 

 

誤解したうえに助けてもらうことが単純に恥ずかしいのだろう、妖夢は目を逸らしながらオレの手を掴んで立ち上がった。

 

 

 

妖夢「勘違いで斬りかかってしまったのにすみません…」

 

 

 

「命を狙われんのは慣れてンのさ。」

 

 

 

妖夢は酷く申し訳なさそうにしてオレに謝罪した。

まぁ正直、オレ自身喧嘩が大好きなわけで。

妖夢との戦いはスリル満点で非常に楽しめたのであまり気にしてはいない。

 

…悪人面、ね。ふん。

 

 

 

妖夢「…ふふっ、優しいんですね。」

 

 

 

「悪人面の割には、ってか?」

 

 

 

妖夢「い、いえ…すみません…」

 

 

 

オレもオレで容赦なく殴ったり蹴ったりしたわけなので、優しいなどと言われる資格はない。

というより、単純にケツが痒くなるので皮肉で返した。

すると更に申し訳なさそうにするので、逆にこちらが申し訳なくなってきてしまった。

 

 

 

「…その幽々子様とやらの話を聞かせてくれよ。」

 

 

 

なんとなく気まずいのでひとまず話題転換。

これから会いに行く“幽々子様”の話を聞くことにした。

嫁の生死を確かめると言われて案内するということは、きっとその“幽々子様”にしかわからないのだろう。

 

 

 

妖夢「わかりました。まず幽々子様は幽霊で、この屋敷、白玉楼の主です。」

 

 

 

「ほォ、幽霊か。その幽々子様とやらが瑠美の…いや、オレの嫁の生死を教えてくれんのか?」

 

 

 

やはり冥界というだけあって、基本幽霊しか居ないらしい。

感心と共に、瑠美の生死がもうすぐ分かるということで単刀直入に聞いてしまった。

あの神社での事件から色々あって、暫く日が空いてしまった故の焦りからかもしれない。

 

 

 

妖夢「そうですね、冥界を出入りする幽霊の管理は幽々子様に一任されているので。」

 

 

 

となるとやはりその幽々子様とやらに頼むしか道はなさそうである。

事を急いても仕方がない。どのみちこれから会いに行くわけだから、焦らず妖夢に案内してもらおう。

とにかく生死確認の方法はこれで一安心。

落ち着いたオレは突然、無性にタバコが吸いたくなってきた。

 

 

 

「なァ、タバコ吸ってもいいか?灰は落とさねえからよ。」

 

 

 

妖夢「いいですよ。一旦離れましょうか?」

 

 

 

「ン…あァ、気にすんな。片手で平気だ。」

 

 

 

気を使ってオレの両手を空けようとする妖夢だが心配無用。

オレの能力を持ってすれば片手どころかノーハンドでもタバコに火をつけることが可能である。

改めて考えるとなかなかいい能力だ。

 

器用にタバコの箱と携帯灰皿を取り出し、タバコを咥えて火をつける。

携帯灰皿は能力で持っているので宙に浮かんでいるように見えている。

 

 

 

妖夢「戦っている時から思っていましたけど、それってどんな能力なんですか?」

 

 

 

興味津々といった感じで妖夢はオレに問いかけてきた。

一見すると手品のように見えるわけだから割と気になるのだろう。

 

 

 

「見えない無数の手を操る能力、らしいぜ。ほら、神の見えざる手ってよく言うだろ?」

 

 

 

妖夢「面白い能力ですね…あと、神の見えざる手はきっと関係ないです。」

 

 

 

知らないと思って適当なこと言ったら知ってた!博識…っ!

きっと教養に恵まれていたのだろう。

 

そんな話をしていながら歩いていると、目の前に立派な屋敷が現れた。

正面から見ただけでわかる、非常に広い平屋だ。

その屋敷の縁側には水色の着物を着たピンク髪の少女が腰掛けていた。

 

 

 

妖夢「あちらに座っていらっしゃるのが幽々子様です。」

 

 

 

幽々子「あら、随分と屈強なお客様ね?」

 

 

 

そう言って口元に手を当てながらふふっと笑ったその少女こそ、オレが喉から手が出るほど欲しい情報を握っているらしい幽々子様だ。

想像の数倍は若い見た目に内心驚きを隠せないが、未だこの世界を自分の常識で見ていたことにガクリとする。

 

 

 

「オレは葛城龍二。マブもマブなスケさんに聞きたいことがあって来たンだ。」

 

 

 

幽々子「褒め上手ね♪ようこそ白玉楼へ、何が聞きたいの?」

 

 

 

褒め言葉が通じたようで、眩いほどの笑顔を浮かべた幽々子に安心感。

だが彼女のどこか…どこかに黒い何かを感じるのは何故だろうか。

 

しかしそれも気の所為だろうと自己解決し、オレは早速本題に入った。

 

 

 

「オレの嫁…葛城瑠美の生死が知りたい。」

 

 

 

すると幽々子はほんの一瞬だけ暗い表情をし、鉛のように重い雰囲気を纏っていたが、すぐ元の表情に戻ってオレに笑いかけた。

 

 

 

幽々子「お安い御用よ♪貴方は現世から来たのね。」

 

 

 

「現世?」

 

 

 

聞いたことのない単語に素で質問を返してしまった。

だが幽々子はその質問に答えず、白玉楼の周りに浮かぶ幽霊達を呼び寄せ始める。

代わりに妖夢がオレの質問に答えてくれた。

 

 

 

妖夢「貴方が元いた世界のことです。貴方はきっと、幻想郷とは別の世界からいらっしゃったんですよね?」

 

 

 

「…なんだ、幽霊には何でもわかンのか?」

 

 

 

妖夢「幽々子様は博識ですからね。」

 

 

 

それは博識とかそういう問題なのか…?と疑問を抱いていると、幽々子がオレに声をかけてきた。

 

 

 

幽々子「おまたせ、留美さんの魂はここには来てないわ。きっとその子は生きているみたいね♪」

 

 

 

どうやら恐れていた事態は避けられていたようだ。

最も知りたかったことがわかって一安心。大きく安堵の息を吐いた。

だが幽々子は突然真剣な眼差しでオレに質問をしてきた。

 

 

 

幽々子「…ところで、現世で何があったか聞いてもいいかしら?」

 

 

 

「ンあ…?まぁ別にいいけどよ。どうかしたのか?」

 

 

 

幽々子「ん〜…まぁ興味本位かしら?」

 

 

 

突拍子もなく事情を知りたがる幽々子。

さっきの重い雰囲気といい、どこか引っかかる節がある。

とはいえ瑠美の安否を教えてくれた恩もあるし、オレは素直に事情を説明することにした。

 

 

 

「かくかくしかじかってな?」

 

 

 

書くのが面倒だったのでサクッと説明した(手を抜いた)

 

 

 

幽々子「そう…刀の、ね。少し待っててくれる?」

 

 

 

事情を説明してやると、幽々子は何か考え込むような素振りをして不意に席を立った。

返事を待たずに席を立たれて困惑したオレは、ひとまず妖夢に話しかけた。

 

 

 

「…どういうことだァ?」

 

 

 

すると妖夢もまた困惑していたようで、困ったように答えた。

 

 

 

妖夢「いえ…どうしたんでしょう?」

 

 

 

妖夢も分からないとなると、幽々子だけが知っている事情…つまり中々に深い意味を含んだ何かがあるのだろう。

刀の男を知っているようにも見えたし、疑問は絶えない。

 

考え込むこと数分、席を立った幽々子が戻ってきた。

その手には古ぼけたひと振りの刀。

何が何だか分からないオレの眉間にはシワが寄り、妖夢もまた分からないといった表情で首を傾げた。

 

 

 

幽々子「貴方が言っていた男の刀、きっとこの刀が助けになると思うわ。」

 

 

 

妖夢「幽々子様、それは?」

 

 

 

妖夢の問いかけに幽々子は無言でその刀を抜刀して答えた。

その刀身は緋く煌めき、暗く寒い冥界を仄かに赤熱させる。

 

 

 

幽々子「これは“彼岸剣”、質量無き物を斬り裂く魔剣よ。」

 

 

 

「そんな大層なモン貰っちまっていいのか?」

 

 

 

そう言って幽々子から刀を手渡される。

細々とした刀身の割には少々重量感があった。

彼岸花のように緋いその刀身は美しく、かなり念入りに手入れされているように見える。

しかしビジュアルだけは特殊だが、ただの刀にそんな能力があるものなのだろうか。

 

 

 

幽々子「蔵の肥やしになっていたようなものだし、貴方さえ良ければ好きに使ってちょうだい♪」

 

 

 

「それなら遠慮無く頂くとするぜ、あンがとな。」

 

 

 

何か意図があるように見える幽々子だが、敢えて詮索しないでおいた。

確かに何か隠しているようだが、幽々子の目には悪意を全く感じない。

つまり聞くのは野暮というものだろう。

オレの直感はよく当たるのだ。

 

 

 

幽々子「さて、妖夢?そろそろお夕飯の時間じゃないかしら。」

 

 

 

妖夢「もうそんな時間でしたか、すぐにご用意致します。龍二さんも如何ですか?」

 

 

 

冥界には陽が無い。故に時間の感覚が掴みづらいのだろう。

さて、どうやら夕飯をご馳走してくれるらしい。

正直ここで断るのはよろしくないのだろうが、早く帰るとフランに言ってしまった以上、あまり時間はとれない。

 

 

 

「ありがてェんだが、もう行かねェといけねえんだ。悪ィな。」

 

 

 

致し方なし、もしまた機会があればご一緒させてもらおう。

 

 

 

妖夢「それは残念です。よかったらまた来てくださいね、幽々子様も私もお待ちしております。」

 

 

 

「そうするさ。色々と助かった、あンがとな!」

 

 

 

刀を貰ってからは少々駆け足になったが、こうしてオレは白玉楼、そして冥界を後にした。

 

 

 

彼岸剣を背負って結界の穴を越えると、見事に真っ赤な空。

冥界で夕飯の時間だと言っていたように、幻想郷でも夕陽が沈みかけていた。

 

 

 

本当に見事な赤い空。

 

 

 

 

「…ちっとばかし赤すぎんじゃねェのか?」

 

 

 

夕陽の見当たらないその“空”は、とても紅かった(・・・・)

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