東方煙焔記   作:Amaryllis___

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異界

「瑠美ィィィィ!!!!!!」

 

オレは瑠美の腕を掴んで強く引いた。

簡単に折れそうな華奢な腕だが、そんなことを言っている場合ではない。

 

瑠美「痛ぁ!!急に何さ、びっくりした…」

 

間一髪、ロングコートの刀は瑠美の脇すれすれで空を切った。

仮面越しでもわかる明確な殺意を帯びた目がオレを捉える。

 

「おらァ!!!!!!!」

 

オレは境内に転がっていた少し大きめの石をロングコートに向けて全力でぶん投げた。

その石は見事にみぞおちに入ったようで、ロングコートはよろけた。

 

瑠美「え……なに…この人…」

 

「瑠美、逃げろ。車のキーは預けておくから、とにかく逃げて人のいる所に行け。」

 

コイツは今確実に瑠美を狙っていた。

偶然近くに居たからという可能性も捨てられないが、瑠美を遠ざけておいて間違いはないだろう。

ポケットから車のキーを取り出し、瑠美に投げ渡す。

 

瑠美「で、でも龍二は…!」

 

「バカヤロウ、俺は元柊会のトップだぞ。相手が刀を持ってようがタイマンで負けはしねェよ。

コイツを警察に突き出してちゃんと帰るさ。」

 

正直、本当に勝てるなんて確信はない。

だが瑠美を逃げさせるためにはこうでも言わねェと厳しい。

この言葉は、自分自身に言い聞かせてもいるのだ。

 

瑠美「…ッ、絶対だからね。警察も呼んでおくからね!だから無事でいてね!!!」

 

「…おうよッ!!!」

 

瑠美が車を停めている方向へ走っていった。

ノルマはクリアだ。あとはコイツをどうにかする。

腹を押さえながらロングコートは刀をオレに突きつけた。

 

ロングコート「…私の目的は葛城龍二、お前を絶望に落とすことだ。」

 

くぐもった低い声がロングコートから発せられた。

絶望に落とすこと…なるほどナ、だから瑠美を殺して…ということか。

ここで、今朝見た新聞の内容を思い出した。

柊会の事務所が襲われた事件。被害者は全員、外傷が切り傷のみ。というものだ。

 

「…っつーことは柊会を全滅させた犯人もテメェだな。」

 

ロングコート「そうだ。お前の身内と呼べる人間を一人残らず殺してお前を絶望させる。あとはあの女だけだ。」

 

「馬鹿なヤツだ。柊会の奴らはもうオレの身内じゃねェんだよ。」

 

ロングコート「…フン。まぁいい、あの女に逃げられては仕方がない。まずはお前を殺す。」

 

話し終わった途端に刀で切りつけてきたロングコート。

だが元ヤクザは喧嘩(?)で油断などしない。

右足を軸に体を回転させることで斬撃を躱し、そこから地を蹴って全体重を乗せたタックルを放った。

 

「…ったくよ、穏やかじゃねェなァ」

 

超筋肉質な男のタックルを受けたロングコートは成すすべもなく吹き飛び、大木に身体を強く打ち付けた。

オレは近くにあった金属の看板を引き抜いて、吹き飛んだロングコートに歩み寄った。

 

「看板で殴られたことはあるか?」

 

ロングコート「…衰えたな、葛城龍二。」

 

全体重を乗せたタックルを食らったにも関わらず突然起き上がり、飛び上がって刀を振り下ろしてきたロングコート。

 

「ちっ…頑丈な奴だなァ…!!!」

 

オレは金属の看板を下から強く振り上げ、その斬撃を受け止めた

 

 

 

…はずだった。

 

「な…ッ!?」

 

ロングコート「………!」

 

オレは確実に看板で刀を受け止めたはずだった。

しかし、看板には切り傷ひとつ付いていない。

刀は看板をすり抜け、躊躇なくオレに肉薄した。

 

 

 

そして視界がブラックアウトした。

 

 

その時俺が斬撃を食らって死んだのかはわからない。

ただひとつ分かること、オレはロングコートに負けた。

 

「…………あん?」

 

気がついたらロングコートはおろか、オレがいたはずの神社さえ消えて無くなっていた。

ただ何も無い空虚な森の中にオレは立っていた。

 

「…訳がわかんねェな。」

 

森と言っても、先程まで居た森ではない。

見たことも無いような形の木々に囲まれている。

兎に角、オレはこの森から出ようと歩き出した。

 

?「グギュルルルル…」

 

「あ?」

 

突如不快な唸り声が聞こえ、声のした方を向くと、そこには見たことも無い動物がいた。

 

「動物とは言っても、こんなクソでかくて物騒な爪を持ってンだ、こりゃ怪獣だな。」

 

?「グギャアアアアア!!!!!」

 

その怪獣はオレを捕食しようと襲いかかってきた。

大きさの割にはかなり素早く、その爪を避けることは出来ないだろう。

 

ドンッッッ!!!

 

だが、回避不能の怪獣の爪がオレのすぐ目の前で止まった。

反射的に出したオレの拳が怪獣の顔にクリーンヒットしたからだ。

それ故に怪獣は原型をなくして吹き飛んだ。

「悪いなァ…オレは今、虫の居所が悪いンだよ…!! 」

 

一撃で息絶えた怪獣に悪態をついて、今さっき怪獣を殴った自分の拳を見つめた。

あんなに強く殴ったのに傷一つついていない。

あの怪獣の顔は殻のようなもので覆われていたので、普通は傷がついたり赤くなるものなのだが。

 

そもそも原型がなくなるほどの威力で殴ったつもりは無い。火事場の馬鹿力のようなものか。

 

「…明らかに威力がおかしい。まるで夢の中に入ったみてェだな。」

 

まぁ、強くなる夢なら悪くねェな。と呟いて周囲を改めて見渡す。

大量の何かから見られてるような視線を感じる。

だが、その視線の殆どは恐怖を帯びているようだ。

恐らく、先程オレが怪獣を殴り飛ばした光景を見ていたのだろう。

 

「…今のは正当防衛だよな、オレ食われそうになったしな。」

 

今感じる目線以外にも、今殴り飛ばしたような怪獣は何匹かいるのだろう。

これから来るであろう怪獣達との戦いに備えて右腕をグルグル回し、自分の拳に目を向ける。

 

「筋肉がありゃなんでもできらァよ。」

 

そう呟いてポケットから煙草を取り出し、ジッポライターで火をつける。

独特な冷たい煙を強く吸い込み、目を瞑る。

 

(煙草っつーのは、本当に心を落ち着かせてくれるよなァ…)

 

 

煙を味わってから目を開け、煙を大きく吐いてオレは再びこの未知なる森を歩き出した。




展開がマッハスピードでしょう?
現代編書くの飽きちゃって早く幻想入りさせたかったんです。
分かりづらいかもしれませんが、よかったら見てくださいね(⌒▽⌒)
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