「……なんかどっと疲れたな。」
咲夜「どんな話をしたのか知らないけど、お嬢様と話した後にそんな事言わないの。」
レミリアとの対談を終えて、オレは咲夜と紅魔館の廊下を歩いている。
レミリアはオレの運命を視て、何かを思ったようだった。
あの話をされたオレは少し戸惑って固まってしまったが、レミリアはすぐに元の調子に戻ってオレに「咲夜と地下の図書館に行ってきなさい」と言った。
話の移り変わりが激しすぎて色々と困惑しているが、とにかくレミリアの言う通り、オレは地下の図書館に案内してもらうことにした。
「そういえば、ここって外観に比べて内装が広過ぎねェか?」
咲夜「それは私が空間を歪めて拡張しているからよ。」
「おう…」
今こいつ平然ととんでもない事を言ったが頭大丈夫か?
とはいえこの世界は能力だとか吸血鬼だとか、非現実的な物が沢山存在しているのだ。
空間を歪めるメイドが居てもおかしくはないか。
そう納得して、オレは咲夜に図書館まで案内してもらうことにした。
咲夜「そういえば貴方、龍二って言うのね。」
「そうだな、そういえば自己紹介がまだだった。」
咲夜「本当よ、私は名乗ったのに貴方は名乗ってなかったわね。」
「悪かったよ。改めてオレは葛城龍二、マトモとは言えねぇ人間だがよろしく頼むぜ。」
咲夜「何よその自己紹介、改めてよろしくね。」
そう言って、さっきまでオレを殺そうとしていた人間はまるで別人のように素敵な微笑みを浮かべた。
○
咲夜「着いたわ、ここが紅魔館が誇る最大の地下図書館よ。それと、私は仕事があるからここで失礼させてもらうわね。」
「わかった、あんがとな。」
咲夜に案内されて着いたその図書館はとても広く、建物のように大きな本棚がびっしりと並んでいた。
ここを知らない人間が本を探そうものなら簡単に迷ってしまいそうな程、その図書館は広かった。
「…こりゃすげェな…」
?「来たわね、貴方がレミィの言ってた人間ね。」
図書館の中央(と思われる場所)にある椅子に腰掛けた紫の長髪の女性。
月型の飾りが付いたナイトキャップを被っているその女性が俺に話しかけてきた。
「レミィ…?レミリアの事か。オレは葛城龍二、好きなように呼んでくれや。」
パチュリー「龍二と呼ばせてもらうわ。私はパチュリー・ノーレッジ、パチュリーと呼んで頂戴。」
パチュリー・ノーレッジ。
レミリアと会う前に咲夜が説明してくれた人物だ。
魔法使いで、確か『小悪魔』という使い魔を使役してこの図書館を管理しているんだったか。
パチュリー「レミィに『龍二を強くして欲しい。』って頼まれたの。だから貴方には魔法を使えるようになってもらうわ。」
「強くして欲しい…?それは置いといて、オレに魔法なんか使えんのか?」
パチュリー「それは貴方次第ね、早速だけど貴方にはこの魔法球に触れてもらうわ。」
そう言ってパチュリーは徐ろに水色の水晶を取り出した。
金色の装飾が所々に施されているその水晶はとても美しく、気を抜けば引き込まれてしまいそうなオーラを漂わせていた。
能力があったんだ。魔法が使えるようになってもおかしくはないが…
パチュリー「これには膨大な魔力が秘められていてね、触れることでその魔力を取り込むことができるの。取り込める量は人それぞれだけど物は試しよ、やってみなさい。」
「おう、触れりゃいいんだな…」
パチュリーが机に置いた水晶にゆっくりと触れてみる。
ひんやりとした感触、しかし体の中に温かい何かが勢いよく流れてくるのを感じた。
その何かは絶え間なく流れてきて、体がどんどん熱くなっていった。
パチュリー「ねぇ、ちょっと、大丈夫…?」
「あぁ…大丈夫だ…多分な…。」
体が熱くなりすぎて限界かと思ったその時、絶え間なく流れてきていた何かは突然無くなった。
水晶を見ると、先程まで水色だった水晶は暗い青色に変わっていた。
パチュリー「…まさか魔法球の魔力を全部取り込むなんて思わなかったわ。」
「全部もらっちまったのか。大丈夫なのか?それ。」
パチュリー「まぁ大丈夫よ。これを使う事はまず無いから。」
「なら良いんだがよ。」
どうやら魔法球の魔力を全てもらってしまったらしい。
ということはこれでオレも魔法が使えるようになったのだろうか?
体の変化はあまり感じないが。
「魔法ってのはどうやって使うんだ?なんか唱えんのか?」
パチュリー「要はイメージよ。例えば炎を出したいなら、掌の上に炎があがってる状態をイメージするの。」
そう説明して、パチュリーは掌の上で炎を起こした。
これなら煙草に火をつける時に便利そうだ。
オレも使えるようになれるだろうか。
そう思い、言われた通り掌の上で炎があがってる状態をイメージしてみた。
すると、オレの掌の上に炎が現れた。
だが…
「…なんか硬くね?」
パチュリー「それは炎じゃなくて『炎の形をした物体』ね…。取り込んだ魔力が多すぎてうまくコントロールできてないわ。」
「ふむ…やっぱり一筋縄じゃいかねェもんなんだな。」
炎のイメージを解くと、掌にあった『炎型の物体』も消えた。
もう一度、掌を広げて炎のイメージをしてみたが、何度やってもやっぱり『炎型の物体』しかできない。
パチュリー「貴方には気体や液体の魔法は難しそうね…」
「クッソ…。ん?待てよ…」
炎のイメージをやめて、メリケンサックをイメージしてみた。
すると赤いメリケンサックが掌の上に現れた。
しっかりと重さもあり、硬い。
「…こりゃ使えそうだなァ…」
パチュリー「なによそれ…変な指輪ね。」
「これはメリケンサックって言ってな、こうやって指にはめて握り拳を作ると良い武器になンだよ。」
パチュリー「…貴方は魔法より格闘の方が向いてそうね、見た目通り。」
オレにはパチュリーのような魔法は使えないようだが、こうやって物を生み出すことはできることがわかったから妥協点だろう。
煙草の火はライターで付けろってことらしい。
パチュリー「そういえば龍二、貴方能力の練習もした方がいいわよ。いざという時に使えなかったら大変。」
「まぁ確かにな…丁度いいや、このメリケンで練習すりゃ良いか。」
パチュリー「確か貴方の能力は、離れたところから物を動かせるのよね。もしかしたら魔法の知識が役に立つかもしれないし、もし何か聞きたいことがあれば私に聞いて頂戴。」
「おうよ、あんがとな。」
この館には優しい奴しかいないのだろうか。
いや咲夜は最初オレを殺そうとしてきたし、身内に優しいタイプだろう。
どちらにせよ有難いこと限りなし。
レミリアにもまた礼を言わなければいけないな。
「そういや、なんでオレを強くして欲しいなんて頼まれたんだ?」
パチュリー「私も詳しくは教えてもらってないのよ。でも貴方の運命が関係してるらしいわよ?」
「運命ねェ…」
レミリアが言っていた運命。オレもあまり分かっていないが、どうやらかなり重大らしい。
オレは一体どうなってしまうのだろうか。
すると背後にある図書館の扉が開く音がした。
何かと振り向くとそこには銀髪のメイド、咲夜がいた。
咲夜「お嬢様が暫く貴方を紅魔館に泊めてくれるらしいわよ。だから貴方の部屋を案内するわ。」
「まじかよ、だがまだパチュリーと話しててな。」
パチュリー「大丈夫よ、目的は果たしたし。貴方も疲れたでしょう?休んできなさい。」
「…わかった、ありがとな。助かるわ。」
どいつもこいつもお人好しだな。
オレがいた世界では初対面の人間にここまで優しい奴はなかなか居なかった。
ある種の感動を抱き、パチュリーに礼を言ってから咲夜に部屋まで案内してもらうことにした。
咲夜「じゃあ行くわよ。パチュリー様、失礼します。」
「また来るぜ、じゃあな。」
パチュリー「ええ、咲夜も無理しないでちゃんと休みなさいよ。」
咲夜「ありがとうございます、そうさせていただきますね。」
なんというホワイト企業か。元いた世界のブラック企業が見たら眩しすぎて見れないほどのホワイトだ。
『門番の休憩時間を無しにしようかしら』とか咲夜は言っていたが、きっとなんだかんだ門番にも優しいに違いない。
○
咲夜に暫くオレが世話になるであろう部屋まで案内してもらった。
色々な事がありすぎて気が付かなかったが、時刻は既に0時を回っていた。
咲夜「着いたわ、ここが貴方の部屋よ。」
「おう。色々ありがとな、咲夜。」
咲夜「えぇ、どういたしまして。」
濃い一日だった。
最初は殺されかけたが、レミリアの粋な計らいで歓迎してもらい、色々なことを教えてもらった上にこうやって泊まるところまで提供してくれた。
「……良い所だな、ここは。」
咲夜「そうでしょう?ここの住人は優しい方ばかりなの。私も何度助けられた事かしらね…」
「あぁ、どいつもこいつもお人好し過ぎらァ。咲夜もたくさんオレに付き合ってくれてありがとな。あとは適当に過ごしとくからゆっくり休んでくれよ。」
咲夜「えぇ、そうさせてもらうわ。ありがと、失礼するわね。」
「おう、じゃあな。」
咲夜と別れの挨拶を済ませ、咲夜が退室してからオレは窓を開け、煙草に火をつけようとしたが、ついでに能力の練習もしようと思ったので、煙草とライターを机の上に置いて能力で動かしてみた。
「2つ同時となるとなかなか難しいなァ…」
『無数の不可視の手で物を動かす能力』らしいが、やはり難しい。
そういえばパチュリーが「イメージが大切」だと言っていたのを思い出した。
なので無数の手で煙草とライターを持ち上げる情景を想像して念を送ってみた。
「おっ、これは割といけるか…?」
するとイメージ通り、煙草とライターが宙に浮いた。
そしてここが難しい。見えない手がジッポライターのフタを開けるのをイメージしてみる。
ゆっくりと宙に浮いたジッポライターのフタが開いた。
「良い調子だ。コツを掴めば簡単にできそうだな。」
少しコツを掴んだので、そのまま煙草のフタを能力で開け、煙草を1本口元に引き寄せて咥えた。
そして同じようにジッポライターを引き寄せ、火をつけた。
ライターのフタを開けてから割と簡単にできたので、ちゃんとコツを掴めている証だろう。
「これでオレもペ○ルギウスだな。怠惰だなァ?」
こうやってすぐ別の作品を出したがるのは投稿者の悪い癖だ。
言わされているオレの身にもなって欲しい。
ライターを宙にプカプカ浮かせながら煙草の煙を吸い込む。
「デカいことを成し遂げた後の煙草は格別だァ…」
相変わらずのヤニカスっぷりを発揮しつつ、オレは窓の外を見やった。
夜空には無数の星が煌めいており、一際存在感を放つ緋色月が浮かんでいる。
「紅い月か…夜空なんて前の世界じゃろくに見てなかったからな、余計綺麗に感じるぜ。」
しばらくして煙草を吸い終わり、オレは煙草を灰皿に押し付けた。
「煙草吸ったら眠くなってきたな。寝るか…」
落ち着いたら眠気が急に襲ってきたので寝ることにした。
今日はとても濃く、良い一日であったと思う。
あとは瑠美の安否が確認できれば一安心なのだが、世界が違うのでなかなかそうはいかないようだ。
焦っても何もできない。
そう思い、オレは毛布を被って微睡みの中に身を投げた。
今更ですがかなり駄文で申し訳ないです。
これが投稿頻度の代償か…