東方煙焔記   作:Amaryllis___

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遅れてすまんな。
今日は文字数多いから許してちょ 


自称最強 vs 他称最強

「…朝か…」

 

目を開けると見覚えのある天井。

流石にまだ見慣れてはいないが、何故かこの天井を見ると心なしかホッとする。

 

ひとまず起き上がり、煙草とジッポライターを手に取って窓を開ける。

春の陽気を感じさせる新鮮な暖かい風を浴びながら煙草に火をつけた。

 

冷たい煙を肺に運びながら外を見やると、遠くの方に見える山に桃色の綺麗な桜が何本か生えていた。

 

「なんだか昔、親父と花見に行った時を思い出すなァ…」

 

 

オレの親父、葛城信治。

オレと同じく元ヤクザで、数年前に突然姿を消した。

組では基本的に事務所で管理する備品や武器の調達、整備を担っていた。

 

例えば、日本の暴力団は拳銃…所謂チャカを仕入れる際、警察の目が届かないように慎重に事を運ばなければならないため、チャカ1本仕入れるのに手間と費用が余分にかかってしまう。

 

だが、親父が組にいた頃は親父が自力で金属を加工し、チャカを組み立てて組に提供していた。

機械工学のエキスパートと呼べるだろう。

 

「…あの野郎、今は何処でなにしてんだろうな。」

 

オレは昔から親父に憧れていた。

ヤクザになったのも、親父の背中を追いかけていたからだ。

 

「立場を汚す理由が父親への羨望たァ、救いようの無ェバカ助だなオレは…」

 

過去の自分を嘲笑し、今吸っていた煙草の火を消してから二本目の煙草に火をつける。

そもそも朝起きて最初にやることが喫煙とは、自分の不健康さを改めて実感する。

 

冷たい煙を吸い込んでいると、部屋の扉がコンコンッとノックされた。

 

咲夜「失礼するわ。」

 

「おう、咲夜か。昨日は色々とあんがとよ。」

 

咲夜「どういたしまして。昨夜はよく寝れた?」

 

「お陰様でな。いいベッドだぜこりゃ。」

 

煙草を吸いながらベッドのシーツを撫でる。

ブランドとかそういうものに関しての知識が全く無いオレでも、触っただけで高級だとわかる程の質感だ。

 

寝心地はもちろん最高。

 

咲夜「朝食の用意ができたから着いてきて頂戴。」

 

「朝食ゥ?そマ?」

 

咲夜「そマ………?とにかく朝食があるのよ。」

 

無償で泊めてくれる上に飯まで用意してくれるなんて、至れり尽くせりとはまさにこの事か。

 

ご好意を無下にするわけにもいきませんので、お言葉に甘えることにいたしました。

 

…ダメだこの口調。

 

「…敬語は苦手です。」

 

咲夜「…寝ぼけてるの?ほら、いくわよ。」

 

 

 

 

咲夜に案内してもらった広い部屋には白い長テーブルがあり、その上にはまさに貴族のような料理が並んでいた。

 

「うっひゃァ…なんじゃこの豪華な朝飯は…」

 

咲夜「お嬢様の計らいよ、感謝する事ね。」

 

「感謝してもしきれねェよ。」

 

「頂きやす!!!」と言いながら手をパンと叩いて、咲夜の作った料理を食べ始めた。

なんだこのフワッフワな柔らか〜い肉は…

今までこんなの食ったことねぇぞ。

 

咲夜「ところで、吸血鬼って何の肉を食べるか知ってる?」

 

「あ?そりゃ人とか……オイ。」

 

まさかこのクッソ柔らかくて美味い肉は人肉なのか…!?

今まで食ったことある肉とは比べ物にならねェぞ…!?

恐るべしカニバリズム。

 

咲夜「…たしかに人肉を食す事もあるけれど、それは牛肉だから安心して…」

 

「…騙しやがったなコノヤロウ。」

 

咲夜にまんまとハメられた。飯だけに(微笑)

悔しがっていると、部屋の扉がガチャっと開いてレミリアが入ってきた。

昨日かぶっていたドアノブのようなナイトキャップは外している。

 

レミリア「おはよう龍二、今日の朝食は豪華でしょう?」

 

「おうレミリア。ありがとな、豪華すぎて一瞬言葉を失ったくらいだぜ。」

 

軽く挨拶を交わした後、レミリアが席に座ったタイミングを見計らって咲夜がレミリアのティーカップに紅茶を注いだ。

 

紅茶を一口飲んで、レミリアが再び口を開いた。

 

レミリア「少しは能力のコントロールできるようになったかしら?」

 

「まァ、それなりにな。とはいえまだまだよ。」

 

そう言って、オレはテーブルの上に置いてあったフォークを宙に浮かせてみせた。

 

レミリア「ふふ、2日目にしては上出来じゃない。」

 

レミリア「そうそう、朝食が終わったら門の外に行ってほしいの。我が紅魔館が誇る最強の門番に会わせるわ。」

 

「門番…紅美鈴って奴か?咲夜から話だけは聞いてるぜ。なんでも、中国拳法の使い手だとかなァ。」

 

“門番”と聞いて、昨日咲夜から聞いた話を思い出した。

根っからの喧嘩太郎であったオレからしたら、とても会ってみたい存在だったのだ。

 

レミリア「それなら話が早いわね。その美鈴から格闘の稽古をつけてもらってほしいのよ。」

 

稽古。そういえばレミリアはオレの事を強くしたいらしい。

パチュリーから聞いただけだったので、まだ理由を説明されていなかったことを思い出した。

 

「なァレミリアよ。お前はなんでオレを強くしようとしてるんだ?」

 

素直に気になったので、率直に聞いてみることにした。

 

レミリア「…貴方が背負っている運命を乗り越えるには、それ相応の“力”が必要なのよ。」

 

「どんだけ大層な運命なんだかね…」

 

やはりレミリアは一筋縄では教えてくれないようだ。

だが昨日の話を聞いた感じだと、レミリアはオレに対して悪意ある事は考えていないようだった。

 

現にレミリアは微笑んでいるが、心なしか少し不安と心配の混じったような目をしていた。

 

 

 

 

レミリアとの朝食を終え、オレは紅魔館の門に向かうことにした。

昨日、今日で少しはこの建物の構造を覚えることができたと思う。

昨日入った玄関から館の外に出て、広い中庭を抜けてオレは門の前に辿り着いた。

 

「しっかし、とんでもねェ館だよなぁ…デーモン閣下もビックリだ。」

 

「お前を吸血鬼にしてやろうか!」と呟きながら木製の大きな門を開いた。

 

美鈴「初めまして龍二さん、私が紅美鈴です。お嬢様から話は聞いてますよ。」

 

「おう、よろしくな。一度挨拶したかったのと、稽古をつけてもらいに来たぜ。」

 

門の外を見ると、オレンジの長髪をたなびかせ、緑色の帽子を被り、緑色のチャイナドレスのようなものを着たスレンダーな女性が立っていた。帽子には“龍”と書いてある。

 

美鈴「勿論です!ですがその前に現段階での実力を見ておきたいので、軽く手合わせ願えますか?」

 

おお、早速本格的だな。

パチュリーも呼吸をするように魔法を発動していたし、美鈴も相当な手練なんだろうな。

そもそもレミリアが「紅魔館が誇る最強の門番」って言っていたくらいだからな。

 

美鈴「そうそう、能力と魔法の練習も兼ねるそうなのでルールは無しです。私にダメージを与えてみせてください。いつでもいいですよ。」

 

「おう?随分ナメられたもんだなァ…」

 

相当自信があるのだろう。

美鈴は不敵な笑みを浮かべてオレを見据えている。

美鈴の姿勢は一見自然体に見えるが、色々な奴らと喧嘩してきたオレにはわかる。

あれは武闘家特有の構えだ。腕は無造作に下ろしているが、どの方向にも動けるような足の配置になっている。

 

「っしゃオラァッッッ!!」

 

美鈴がどれほどの腕前なのかは知らないが、最初から能力や魔法を使うのは些か癪なので躊躇った。

だからオレは敢えて真っ直ぐに突っ込み、敢えて大きく腕を引いた。

 

美鈴「動きがわかりやすいですよッ!」

 

「そんなもんわかってらァよ。」

 

大きく引いた右腕は前に出さず、オレは右足を前に強く振り上げた。

だが、美鈴はこれを足で受け止めた。

流石格闘家。

小細工は通用しないようだ。

 

美鈴「…流石のフェイントです。龍二さん、とんでもないバカ力ですね。私は妖怪ですが、貴方のキックはとても骨に響きましたよ。」

 

「皮肉なんだか褒めてんだかわかんねェな。」

 

不意打ちは無用。

美鈴に止められた足を戻し、反対側の足を軸に回転して回し蹴りを加えた。

もう一度蹴りがくるとは思わなかったのか、美鈴はこれを手で止めた。

 

その片手が塞がった隙を見て右ストレート。

それを止めるため、もう片方の手を使った美鈴に左ストレートを放った。

 

「もらったぜ…ッ!?」

 

絶対に決まったと思ったのだが、美鈴は後ろに大きく仰け反ってこれを回避。

その反動でムーンサルトを放ってきた。

片足飛びでムーンサルトなんてできるんだな。

 

しかも威力がハンパではない。

ハンマーで強く打たれたような衝撃がオレを襲った。

恐るべし紅魔の門番、侮れない。

 

「バカ力ってオメェも人の事言えねえじゃんかよ…」

 

美鈴「そりゃ私は妖怪ですし。次は私からいきますよ。」

 

妖怪ってなんでもありかよ。

そう返す暇も無く、美鈴は強く地面を蹴ってオレに殴りかかってきた。

地面を蹴った勢いも上乗せされた強い拳だ。

 

だがオレは避けるのが苦手だ。

筋肉にものを言わせて、つい受け止めようとしてしまう癖がある。

この妖怪(美鈴)の拳も、自身の放つ拳で相殺できると勝手な自信を抱いていた。自身だけに(微笑)

 

昨日刀を止めようとして斬られたのに未だ懲りていないのだ。

 

「オラァッッ!!!」

 

強く右腕を引いて、美鈴の拳が放たれるタイミングでオレも右ストレートを放った。

何故か、いつもと比べてかなり力が漲っている気がする。

 

オレにとって“最高の拳”を美鈴にお見舞いしてやる。

 

オレの“最高の拳”と妖怪の拳がぶつかり合う。

拳を重ねた衝撃で空気が強く鳴動した。

 

美鈴「ッ!!ホンットにバカ力すぎませんか…!?」

 

「バカバカ言ってんじゃねェよ照れんだろ…!!オレは最強の男なンだよ…!!!」

 

美鈴「そんなの初めて聞きましたよッ!!」

 

「あたりめェだろ!今考えたんだからよ!」

 

空気の鳴動は止み、紅魔の門前には鳥のさえずりが戻ってきた。

美鈴の拳はオレの拳と重なり、ピタリと止まっている。

オレは妖怪の拳を止めたのだ。

筋肉は裏切らない。う〜ん煙草が吸いたい(禁断症状)

 

美鈴「…今のパンチ、私結構本気でやりましたよ?」

 

「そうかそうか。オレは最強のマッチョだからな、もっと持ち上げてくれていいんだぞ。」

 

最強の男だとか最強のマッチョだとか、オレは最強という単語が好きなようだ。

妖怪である美鈴の拳を止められたことが嬉しくてついついドヤってしまう。そりゃドヤりたくもなるだろう。

 

美鈴「貴方の体格を見た時からかなりマッチョだとは思いましたが…いくらマッチョでも、人間が妖怪の拳を止めるなんて普通できませんよ…」

 

「オレくらいの筋肉になれば有り得るんじゃね?」

 

美鈴「無理です!そこで思ったんですけど、幻想郷に来る前からずっと鍛えてました?」

 

オレの発言を完全否定されたところで、美鈴が面白い質問をしてきた。

オレが本格的に鍛え始めたのは20歳の時…あのボケナス親父が居なくなってからだ。

目標としてた人物が突然消えて焦ったんだろう。

ワソパソマソもビックリなメニューでトレーニングしていた。

 

「そうだな、7年くらい前から鍛えてるぜ。」

 

すると美鈴が「うーん…」と唸りはじめた。

筋トレのメニューでも考案してくれているのだろうか。

 

美鈴「幻想郷は魔力が豊かな地です。幻想郷の地に宿る魔力が、元来から所有している秀でた点をインフレーションさせてしまうことが稀にあるらしいです。」

 

「ほう?その話面白そうだな。」

 

美鈴「パチュリー様は幻想郷に来てから魔力の増幅が著しいらしいですし、龍二さんの場合は筋肉が異常に発達してしまったのかもしれませんね。」

 

「ヘェ…なるほどねェ…」

 

幻想郷という世界はつくづく面白い。

その地に立ち入るだけで得る恩恵があまりにも大きすぎる。

今思えば幻想郷に来てすぐ妖怪に襲われた時、妖怪を殴ったら異常な程ぶっ飛んだのもそれが理由だろう。

 

元いた世界とは違って、幻想郷には妖怪や自然の脅威が大きい。

だからその対価や対策として恩恵が与えられるのは、ある意味当然と言えるかもしれない。

 

「じゃあオレもう怖いもん無いんじゃねーか?」

 

美鈴「どれほど身体的特徴が優れていても体術を習得していなければ、ただの木偶の坊ですよ。」

 

「…お前ってちょいちょい毒吐くよな。まァ、これからよろしくな。」

 

美鈴「ふふふっ、こちらこそよろしくお願いしますよ!」

 

こうしてオレはレミリアの計らいによって、魔法や能力をパチュリーに、体術を美鈴に教わることになった。

 

依然レミリアの狙いはわからないままだが、ここまで親切にしてもらってるんだ。

他意があろうと構わない。

何かしらの形でこの大きな借りを返さなければならない。

 

そう思いながら、オレは紅魔館での生活を続けたのだった。

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