水神戦記伝   作:羽沢ちゅぐみ

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異世界ものアニメって面白いよね 見てたら書いてみたくなる


私の力

あれから何日経っただろうか。私は今だに洞窟の中を彷徨っていた。モンスターに捕食されないだけマシだと思うがそろそろまともなご飯が食べたい、覚えている限りでは薬草か蛇のようなモンスターの肉しか食べてない。

力を手に入れて色々と試しついでにモンスターを片っ端から狩り、色々なことがわかった。どうやらこの世界にはスキルや魔法といったものが存在する。私には元々、左手で触れた物やモンスターの情報やスキルを盗み取る事ができるスキルが備わっていたらしく実際に炎を吐くトカゲや洞窟内に潜んでいたコウモリに触れたところ、炎系スキルや超音波が使えるようになり、更には蝙蝠の翼で自由に飛行できるようになった。だが1番の驚きはポセイドンの力をも自由に使いこなすことができたことだ。体に鱗を纏わせることが出来、水を自由に操る力を手に入れた。その鱗は強度はどんな岩でも岩を軽々と砕き、炎の熱さなど微塵も感じない優れもの。私はそれらを駆使してモンスターを狩り、スキルをどんどん獲得していった。蜘蛛の糸にゴーレムの腕力、更には洞窟の祭壇でこの世界の古代の言葉も覚えた。

「あぁ...けどそろそろ外に出たいな...一生こんな場所で1人は寂しいよ」

食料にはそこまで困りはしないもののずっと薄暗い洞窟内で生活するのはいささか精神的にきつい。風の通りがあるので必ず外には出られるはずだが出口が一向に見つからない。

(そういえば超音波使えたよね?これでどこから出られるかわからないかな?)

私は精神を集中させ洞窟内に超音波を使い、空気を振動させる。

(これは...足音?3人かな?)

私がいる場所から右手の入り組んだ道の奥から微かに何か動くのを感じた。モンスターではないのは確かだ。

道を進んだ先には何もいなかった。しかし何か燃えたような匂いが漂っていた。それを辿っていくと奥に光が見えてきた。

(あれ、出口だよね!)

私はやっとの思いで洞窟から初めて外へと出ることに成功した。

外は森の中だった。明るく、少し先に川が見える。

「いいにおーい!気持ちいい〜!」

肌寒くて薄暗く岩の匂いしかしなかった洞窟内とは違い、外はとても暖かく空気がおいしかった。私はごろんと横になり陽の光をいっぱいに浴びる。とても暖かい、そのまま眠ってしまいそうだった。

「んん〜!んっ?」

寝転んでいると何か柔らかいものが手に触れた。見上げると青いぷにぷにとしたものがぴょんぴょんと跳ねている。

「スライム?可愛いー!」

私はスライムを持ち上げると抱きしめたり伸ばしたりして遊んだ。すべすべしているのに柔らかくちぎっても元に戻るのが面白くてたまらなかった。

「あなた、自己再生を持ってるのね!それに自然治癒に麻痺、毒、熱耐性かー、とても小さいのに凄いわ」

もはや触っただけでそのモンスターの持っているスキルが分かるようにまでなっていた。

「何これ?捕食?へえー!便利そうね!」

スライムからは様々なスキルを習得することが出来た。恐らく相当強いモンスターなのだろう。だが聖水と氷には滅法弱いらしくすぐに溶けて消えてしまったり凍ってそのまま動けなくなるらしい。

私がそのままスライムを抱えて森を歩いていると-、

「た、助けてくれえー!!!」

どこからか大声が聞こえてきた。私は超音波で確認すると右手奥から人が3人、それを、追いかけるようにモンスターが1匹こちらに走ってくる。

「あっ...スライム...」

危機を察してかスライムは私の手から離れ、どこかへ逃げてしまった。

「むぅ...許さない...」

私はこちらへと走ってくるモンスターに標準を定める。3人の姿が見えてきた。硬そうな物を身につけている、重そうだというのはわかった。

「おい!女の子だ!おい!危ないぞ!」

「ちょっと!早く逃げて!」

「もう帰りたいですーー!!」

私に何か言っているのはわかったが悲しみと怒りで私はモンスターにしか意識が向いていなかった。モンスターは小型の恐竜のような姿、弱そうだな、というのが印象だった。

「はぁぁぁ!!!」

私はモンスターを逃がさないように水の結界を張る。モンスターは水の壁にぶつかり一瞬こちらを睨みつけた後、壁に体当たりをしている。

「私のスライム!返して!!」

私は突き出した手のひらをギュッと握った。すると結界が一瞬にして小さくなり、モンスターはそれに押しつぶされて死んでしまった。

「えっ!?」

「なんだよ...この子...」

「今の...魔法、ですよね?しかも、最上位の...」

3人は呆然としている。私はモンスターの死体を一瞥して捕食スキルを使ってみることにした。腕が一瞬にしてドロっと溶け、モンスターの死体を包み込んだ。

「ひっ...!?」

3人のうちの1人が小さな悲鳴をあげたが気にせず続ける。死体を溶かし終わると腕を元に戻した。なるほど、このモンスターはティラライナーという小型の肉食獣らしい。無限にスタミナが尽きないランナーと死体でも普通の肉と変わらない味で食べられるようになる死肉捕食を獲得することが出来た。

私は3人の方へ顔をむける。3人ともかなり怯えた表情をしている、よほどモンスターに追われたのが怖かったのだろう。

「お、おい、どうするんだよ...こっち見たぞ」

「あんた男でしょ...何とかしなさいよ!」

「知るかよ!」

2人は何か言い合いをしている。座ってこちらを見つめている人はうるさくないし仲良くしてくれそう。私はその人の前まで行ってしゃがんだ。

「あ...あの、君は?」

かなり怯えた表情で体が震えている。寒いのかな?と思った私はギュッとその人を抱きしめてあげて言った。

「私はマナ!へえ、あなたはミナって言うのね!」

「ど、どうして...私の名前をっ!」

「うーん、わかんないけど触ったものの事がわかるの。ミナは氷魔法が得意なのね、けどまだ強い魔法は持ってないみたいね...スキルも無いみたいだし」

「なんだよ...それ...」

一緒にいた男の人が震える声で私を睨んで、なんだか嫌な雰囲気を出している。

「ちょっと、アインやめなさいよ!」

「うるせえ!こいつは...!こいつは!バケモノだ!」

そう言ってアインと呼ばれた男は私に少し長い刃物で切りかかってきた。私は腕に鱗を纏いそれを軽々と受け止めた。そして男の腹に手を当てて情報とスキルを盗みとる。こいつも大したスキルは持ってないな、と呟きそのまま力を込めた。

「がはっ!?」

男の腹に水の槍が貫通し、血飛沫を撒き散らしながら絶命した。ミナともう1人の女の人は恐怖で顔を引き攣らせ、悲鳴も出せずただ死体を見つめているだけだった。

「ミナ!この人何?いきなり殺そうとしてきたから殺しちゃったよ」

私はミナに言ったが返事は返ってこない。

「逃げるよ!ミナ!」

女の人がミナの腕を引きどこかへ連れていく。

「あっ...」

また逃げた、と私はしょんぼりとして辺りを見渡す。まだ日は高いがやることも無い。そういえばさっきミナからこの近くに街があるという情報を得ていた。試しに行ってみようなーっと思っていたところに、

「あの!お願いします!助けてください!」

と、私の前にいつの間にか角の生えた小さな子が地面に頭をつけて座っていた。

 

「ようこそ、オーガ族の村へ」

私は子どもについて行き、オーガの村へと入った。オーガは鬼のような風貌で衣服はあまり纏わず、腰にのみ布を巻いている。

「へえー、大きい!」

私が連れてこられたのは村の中で1番大きな屋敷だった。中に入ると胸の大きなオーガの女2人に出迎えられ、奥の部屋へと通された。

「ご訪問感謝する。私がこの村の村長及び軍の若大将だ、よろしく頼む」

「私はマナ!よろしくね!」

(この人、凄い)

がっちりと握手を交わす。どうやらこのオーガは村長ということだけあってかなりの実力者のようだ。スキルは剣技系のスキルを多く獲得できた。更には千里眼の持ち主だったらしく遠くの物まで超音波を使わずに見れるようになった。

「こちらは私の妹、そしてこっちは私の剣の師匠だ」

左の胸の大きなオーガは優しそうに笑って握手を交わす。さっきの入口で出迎えてくれたうちの1人だった。このオーガは回復魔法が多くなんと蘇生魔法まで使えるらしかった。そして左の老人、こちらをじっと見て仕方なさそうに握手をした。村長よりも多くの剣術、更に気配を消すハイド、罠や地雷を仕掛けるトラップ、影を自在に操り移動出来る影打ちという珍しいスキルを獲得できた。

「それで、早速本題に入らせていただきます」

私はうんうんと頷く。

「私たちオーガ族は見た目通り戦闘を好む種族ですが、長らくは平和で比較的大人しい生活を送っていました。しかし数ヶ月前の事です、突然人間達が襲ってきて村は壊滅状態にまで陥りました。なんとか持ち前の戦闘力で追い返しはしましたが村のオーガの大半が戦死してしまいました」

「うーん、それは大変...だったね?」

あまり理解できなかったがとりあえずたくさんの人が殺されたことだけはわかった。

「はい、それで私達はなんとか今の状態まで持ち直したのですが、また襲撃があるという情報を耳に致しまして...偵察を出したところ、あなた様を見かけてその強さが本物だと報告を受けてお声をかけさせていただいた、という次第です」

「なるほどねー、それで私は何を殺せばいいの?」

老人がこちらを鋭い眼光で睨んだ気がしたが、私はそんなのを意にも介さない。

「お願い致します、私たちと共に人間共を追っ払ってほしいのです!」

追っ払うとはどういうことなのだろうか。言葉の意味がまだよく分からないがとりあえず私が必要とされていることくらいはわかる。

「うん!いいよ!」

「ちょっと待てい!」

しゃがれた声だが大きな声を老人が発した。凄い気迫を放っていて明らかに敵意を向けている。

「その小娘、どこからどう見てもあの忌々しい人間共と同じ容姿ではあるまいか。しかも着ているものもみすぼらしくとてもこやつ1人加わったからと言ってどうこうできるようには思わなんだ」

「だが爺や、この者は人間の偵察を1人、いとも簡単に殺していたとの報告だ。しかも最上位クラスの魔法を詠唱無しで使う事もできるらしい。その力があれば人間ごとき-」

「若様、お言葉ですがそんな簡単に人間を信用してはなりません。そこまで言われるなら、わたくしめにその力を見せてもらいましょう」

そうして私は老人と一騎打ちをするとこになった。

 

「立ち会いは村長である私が務める。どちらかが先に一撃でも入れればその時点でその者の勝ちだ」

私も老人も一振の剣を携え、互いに向き合う。

「小娘よ、手を抜いたら容赦なくその首をはねる。本気でこられよ」

圧倒的なオーラを纏い、剣を構える。私は凄いなーって思いながら剣を見た。今にも折れそうな細い剣で、こんなものに頼らないでいいやとそれを放り捨てる。

「ふむ...」

「...どういうおつもりかな?」

老人は静かにこちらを睨んで言う。

「だって弱そうなんだもん。わたしはこっちでいいよ」

私は魔法で水の塊から先ほどより強靭な魔剣を作り出す。その剣は薄く光りを纏っていて、刀身には不気味な装飾が刻まれている。

「ぬぅ...なんと禍々しい魔剣じゃ」

老人は警戒心を強くして唸る。さっきから侮っていたのか余裕を少し見せていたが完全にそれは無くなった。

(なんだ今のは...水から魔剣を作り上げた?そんな魔法聞いたことないぞ)

村長や群がってきた村人達もその奇妙な光景に度肝を抜かれている。

「そ、それでは、はじめ!」

合図と共に私は老人の周りに水柱を立て動きを制限する。

「その程度でわしが怯むとでも思うか」

そう言葉を残し影の中へ消えていく。影打ちを使って影の中を移動しているのだろう。

「消えちゃった!すごーい!」

私は面白くてきゃっきゃと笑う。

「ならこれはどうかな!」

そして野次馬は入らないように炎の結界を張り、水柱から炎柱へと変える。

「小癪な!せいっ!」

背後から飛び出してきた老人は一刀、目にも止まらぬ速さで薙ぎ払う。

「何ぃッ!?」

しかしその刀は私の首を切り落とすことは無かった。硬い鱗に弾かれ、逆にその刃が砕け折れた。

「あらら、折れちゃったね」

「爺や!」

「小娘...これならどうじゃ」

そう言って何か呪文を唱える。ただ魔法の情報なら全て把握済み、私に何か通用するなんてことはない。私の周りに粉が漂い始め、私は場違いにおーっと感心する。

「はぁっ!!!」

一喝。するとその瞬間、結界内で大爆発が起きた。

「どうじゃ...これがわしの使える最大威力の魔法じゃ」

「凄いけど私には効かないよ」

老人が振り向いた時には、彼の右腕は肩元から無くなっていた。鮮血が飛び散り、老人と村人の悲鳴が村に響いた。

「そこまで!そこまでだ!」

村長の声が聞こえ、私は結界を消す。村人達が倒れている老人の元へと一斉に駆け寄って行った。

「爺や!大丈夫か!?爺や!」

老人は虫の息で肩からは大量に血が流れでている。

「ふっ...若様、お見苦しいお姿を...見せてしまい申し訳ない」

「いい!喋るな!」

村長は泣きながら老人の左手を握る。他の村人も泣いている中、私はその中をかき分け、2人の前まで歩み寄る。

「今回は私の負けだね、あれを避けられるなんて凄いね」

「ふっふっ......何を、言うとるんじゃ...わしの刃を折り、魔法に耐え、右腕まで切り落としてくれおって...」

「そもそも一撃当てた方が勝ちなんだから私は刃を砕いたとはいえあそこで負けてた、でしょ?」

「お前さんは本当にわからん奴じゃな...言葉を理解しておるのかおらぬのか...何にせよわしはもうここまでのよう-」

「あ、ごめんごめん。今治してあげるから」

私はそう言って老人に手をかざす。すると薄い緑色の光に包まれ、切り落とされた腕は治り、完全に回復した。

「これでよし、これはあげるよ」

私は魔剣を渡すと屋敷へと戻る道を歩く。オーガ達は呆気に取られて言葉も出ない様子でただ私の後ろ姿を見送っていた。


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