NARUTO日向ネジ短篇集   作:風亜

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 イトコの子供は、従甥(じゅうせい) 従姪(じゅうてつ)と言うそうです。


ネジおじさんの休日

「ボルト、ヒマワリ、二人に言っておかないといけない事があるの。三日後に私とお父さん、夫婦そろって出向かなきゃいけない所があって一晩留守にするから、ネジ兄さん…おじさんに来てもらおうと思うの。その日は、休日でもあるからね」

 

「ネジおじさん来てくれるのっ? やった! お勉強見てもらったり、一緒にお菓子とか作りたいな!」

 

「おれはおじさんに修行つけてもらいたいってばさ! あと、最近新しく出たソフトで一緒にゲームするんだっ!」

 

 母親のヒナタの話で、ヒマワリとボルトは喜んだ。

 

ネジはそれなりに忙しい身ではあったが、うずまき一家に何か頼まれ呼ばれると、素直に応じていた。とはいえ、自分からはあまり寄りつこうとはしていなかった。

 

 

 そして、三日後の朝────

 

 

「んじゃ、ボルトとヒマワリの事頼むってばよ、ネジ!」

 

「行ってきます、ネジ兄さん。…ボルト、ヒマワリ、あんまりおじさんを困らせちゃだめよ?」

 

「分かってるってばさ、母ちゃん!」

 

「お父さんも、行ってらっしゃい!」

 

「…二人共、気をつけてな」

 

 ナルトとヒナタを家の前で見送ったあと、ボルトとヒマワリがネジに向かって同時に声を上げた。

 

「おじさん、修行つけてくれってばさっ!」

「おじさん、ヒマにお勉強教えてっ!」

 

「……どちらか一方を先にしてくれると有り難いんだが」

 

「じゃあお兄ちゃん、じゃんけん!」

 

「おう、望むところだってばさ! じゃ~んけ~ん…」

 

「パーっ!」

「チョキー! いぇ~い、兄ちゃんの勝ち~! じゃあおじさん、おれとこの前の修行の続き───」

 

「・・・・・」

 

 負けてしまったヒマワリはちょっと寂しそうな顔で、自分が出したパーの手のひらを見つめている。

 

「あー、おれやっぱあとでいい! ヒマワリ、先におじさんに勉強教えてもらえってばさ?」

 

「え、いいの? ありがとう、お兄ちゃん! じゃあ、算数と漢字のお勉強しよ、おじさんっ!」

 

「あぁ、判った」

 

「…何なら、おれも教えてやろうかヒマワリ?」

 

 妹には何かと甘く、ネジの前で見栄を張りたがるボルト。

 

「え~、お兄ちゃんだといっつも間違いの方教えてもらってるみたいになるもん」

 

「そ、そんなことないってばさ」

 

「………、ボルトも一緒に勉強するか?」

 

「あ、いや、ヒマワリの勉強終わっておじさんと外で修行するまで、ゲームでもしてるってばさ!」

 

 

 ヒマワリとの勉強が一通り終わると、近くの外の開けた場所でネジはボルトの修行に付き合った。

 

白眼を持っていないとはいえ、ボルトは柔拳の基本の型を祖父のヒアシ、今や宗主で叔母のハナビ、そしてネジに時々自主的に教わっていて、筋の良さは折り紙つきだった。

 

 ヒマワリは兄にエールを送りつつ、見ていて自分もやってみたいと言い出し軽くやらせてみると、テンションが上がってきて普段の薄蒼い眼から一時的に白眼になり、一発だけ強力な柔拳が繰り出された。

 

ネジは直前変わり身の術で避けた為事なきを得たが、ヒマワリの白眼から繰り出される柔拳をまともに食らえば、父親のナルトが一日中動けなくなる程の威力を秘めていた。

 

…その事に内心ネジはちょっとした喜びを感じており、このまま教えていけば白眼使いとして目覚ましく成長しそうだとは思ったが、強制は一切せず本人のやりたいようにやらせる事にしていた。

 

 

 

 

 ───昼時になり、家に戻って昼食を作ったネジは元々ヒナタと同様に料理が上手く、身体を思いきり動かした事も相まってお昼ごはんがとても美味しく感じられたボルトとヒマワリだった。

 

 ネジが後片付けを終えてふと二人の方を見ると、居間のソファでボルトとヒマワリが肩と頭を寄せ合い、小さな寝息を立てていた。

 

昼前によく身体を動かしたのと、昼ごはんをいっぱい食べたから眠くなったのだろう。ネジは微笑みを浮かべ、二人にそっとタオルケットを掛けてあげた。

 

……あどけない寝顔のボルトとヒマワリを見ていると、何ともいえない愛おしさが胸の内に広がる。

 

それと共に、ふわふわした眠気を覚えたネジは、ボルトの横の空いているスペースに腕と頭を乗せ床に座った姿勢で、ボルトとヒマワリと一緒に心安らかな眠りに落ちるのだった。

 

 

 

「───おじさん…、ネジおじさん、起きるってばさ!」

 

「ん…? ナルトか、どうした? また随分背が縮んだな……」

 

 ネジは微笑しながら、間近の金髪の少年の頭に手を置いて優しくぽんぽんした。

 

「な、なに寝ぼけてるんだよ。ナルトは父ちゃんだろっ? おれはボルト! それより、ハナビのおばさんが家に来てくれたってばさ……あ」

 

「ボルト~、誰が"オバサン"だって?」

 

 床に座ってソファに寄りかかっていたネジが寝ぼけ眼で見上げると、いつの間にか従妹の日向ハナビが家の中で仁王立ちしていた。

 

「ハナビのお姉ちゃんがね、お夕飯の材料買って来てくれて、今から作ってくれるんだって!」

 

「何だと? ハナビが、夕飯を───」

 

 ヒマワリの話から、ネジは嫌な予感がして目が冴えた。

 

「兄様、お昼寝にしては長いわね? 窓の外を見なさいよ、もう夕方よ? 姉様とナルトが夫婦そろって一晩居ないのは聞いてたし、夕食何にしようとしてたか知らないけど、色々買って来てあげたから私が作るわね~」

 

「ちょ、ちょっと待てハナビ。お前が料理をするとロクな事には…!」

 

「大丈夫だいじょうぶ、任せなさいって!」

 

 止めようとするネジをよそに、意気揚々とハナビは単独で夕食作りを始めたが────

 

 

「…痛っ!」

 

「あ、おばさ…じゃない、ハナビ姉ちゃん大丈夫か?」

 

 食材を切っていたハナビからちょっとした声が上がり、居間で妹とおじさんとトランプしていたボルトが心配して声をかけた。

 

「平気よへーき! ちょっと指切っちゃっただけ…」

 

「ほら、見せてみろ。───絆創膏を貼ろう」

 

 こうなる事は分かっていたらしいネジがすぐ救急箱から取り出して、ハナビの指に手際よく絆創膏を巻いた。

 

「あ、ありがとう兄様」

 

「…食材を切るのは俺に任せて、ハナビは火にかけた材料を焦がさないように混ぜていてくれないか」

 

「ヒマとお兄ちゃんもお手伝いする~!」

 

「いや、気持ちは嬉しいが安全の為に、二人は台所に近づかない方がいい」

 

「何よそれ! まるで私が台所の危険物みたいじゃないの───あ゛っつう?!」

 

 言ってる傍から火にかけた材料を混ぜるヘラを持つ手に力が入り過ぎ、熱せられた中身が少し飛び散ってしまう。

 

「……ハナビ、やはり夕食の支度は俺に任せてくれ。このままだと惨事になりかねない」

 

「もう、大げさよ兄様ってば! じゃあせめて食器を出して───あぁ!?」

 

 棚から大きめの皿を取り出そうとして手がすべり、床に落ちる寸前ネジがキャッチして事なきを得た。

 

「ハナビ様、ボルトとヒマワリと一緒に居間でゲームでもして大人しくしていて下さいね?」

 

 昔のように敬語に戻ったネジの口調は穏やかそうでいて怖さを含んでいたので、ハナビはすごすごと言われた通りにした。

 

 

 

 

「…ねぇねぇハナビお姉ちゃん、スキな人できた?」

 

「う~ん、それがねぇヒマワリ、なかなかいい人見つからないのよ。私ったらいつまで婚期逃せばいいのかしら」

 

 結局ネジが作った美味しい夕食後に、居間でまったりしながらハナビはヒマワリの問いに遠くを見るような目をした。

 

女として強さと美しさを兼ね備えたハナビだが、致命的に料理が出来ず、それがネックになっている訳ではないがなかなか良縁に恵まれていなかった。

 

「───でも私がこのまま結婚しないで子供が出来なくても、日向の仕来たりは昔に比べてずっと楽になってるし、日向の中で優秀な者を次期宗主に決めればいいからそんなに焦る必要ないのよ。まぁ、父上にはそこの所心配されてはいるけど」

 

「じゃあハナビ姉ちゃん、おじさんとケッコンすれば? イトコ同士はケッコン出来るって聞いたことあるってばさ」

 

「そうねぇ、私もネジ兄様もいい歳だし……結婚しちゃう?」

 

「ダメだよお姉ちゃん、おじさんは将来ヒマとケッコンするのっ!」

 

 ヒマワリはひしっとネジの片腕にしがみついた。…その場で断ってもヒマワリがムキになるので、ネジは一応何も返さない事にしていた。

 

「あら、予約済み? 残念ねぇ…」

 

「……誰かと付き合いはしても、ほとんどハナビの方から振っているそうじゃないか」

 

「だって、私の眼にかなう男じゃないんだもの、しょうがないでしょ? 兄様だったら無条件なんだけどねぇ、料理も出来るし」

 

「…ハナビお姉ちゃんがおじさんのこと、兄さまって呼んでるのいいなぁ。ヒマは、"ネジおじさま"って呼ぼうかな!」

 

「お、おじさま……?」

 

 その響きに、ネジは少しばかり悦に入ってしまった。

 

「それならヒマワリ! おれのこと、"お兄さま"って呼んでみてくれってばさ…!」

 

「え~? お兄ちゃんはお兄ちゃんでいいじゃない。もっと大人になってカッコよくなったら、呼んであげてもいいよ」

 

「よっしゃ! ヒマワリに"お兄さま"って呼んでもらうために、カッコいい大人になってみせるってばさ!!」

 

「ボルト、俺も協力を惜しまないぞ」

 

「おぉ、さすがネジおじさま…!」

 

「…何かおかしな方向行ってるわよあんた達。まぁ、"お兄さん"としては似たような立場だものねぇ。───さぁて、ヒマワリとボルトはそろそろ寝なさいよ~。ここからは、"大人の時間"だから」

 

「あれ、ハナビ姉ちゃん日向の家帰んないの?」

 

「あ~大丈夫、もしかしたら泊まってくかもって言ってあるから」

 

「宗主がそんな事でいいのか? 何なら俺が送って行くが」

 

「私だって家柄とかから解放されたい時くらいあるの! お互い、いい歳なんだし大人の時間楽しもうよ。(お酒、買ってあるし)」

 

 最後の方はネジの耳元でささやくハナビ。

 

「……悪いが俺は飲まないぞ」

 

「何よ、飲めないわけじゃないくせに相っ変わらず付き合い悪いわねぇ」

 

「いいなぁ、ヒマも大人の時間してみたい……」

 

「とか言ってすごい眠そうだってばさヒマワリ。ふわぁ……おれも眠いけど。んじゃ、おやすみーネジおじさん、ハナビおば…姉ちゃんっ」 

 

「おじさん、お姉ちゃん、おやすみなさ~い」

 

「はい、お休み~」

 

「お休みボルト、ヒマワリ」

 

 甥っ子と姪っ子が二階へ上がるのを見送るハナビとネジ。

 

───すっかり、夜も更けてきた。

 

 

 

 

「私達も歳とるわけだよねぇ、あんな可愛い甥っ子と姪っ子が居るんだもの」

 

「…そうだな」

 

 ハナビは缶から直接お酒を口にし、ネジの方はあくまでお茶だった。ハナビは酒豪ではないが、お酒はそこそこ嗜める。

 

ネジといえば、宴席などでは付き合いとして飲む事にしているが、それ以外好んで酒を口にする事はしなかった。

 

「ボルトはちょっと生意気になってきたけど……いいな~、私も子供ほしいかも。なぁんて、ね。…兄様は、自分の子供ほしいとか思わない?」

 

「ボルトとヒマワリが居れば、俺は充分だ」

 

「ふ~ん…。ネジ兄様は未だにモテるのに、告白されても全て断ってるそうじゃない。少しは付き合ってみようとか、思わないの?」

 

「俺は誰とも結ばれるつもりはないんだ」

 

「───ナルトに姉様を取られたから?」

 

「そういう事じゃない。…あの二人が結ばれた事は、むしろ俺にとって望ましかったんだ」

 

「兄様は愛のキューピッドだねぇ。自分の幸せ投げうってまで、姉様とナルトの幸せ優先しちゃうんだから」

 

「そんな事はない。今の俺は、充分幸せだ」

 

「そう? ならいいけど。……表立って言われてるわけじゃないけどさ、日向家では望まれているのよ。私と兄様が結ばれる事」

 

「─────」

 

 ネジは、ハナビの話に答えない代わりに茶をすすった。

 

「まぁそりゃそうよね、日向の天才と現宗主の私が結ばれたら……それこそ日向の才を色濃く受け継いだ子が生まれそうだもの」

 

「…………」

 

「でもそういうのは、もういいのよ。確かに私はネジ兄様があくまで拒んだ宗主になったけど、日向にこだわる必要はないの。───ヒナタ姉様とナルトが結ばれて、火影になったナルトのお陰で日向は変わったから」

 

 ネジは黙ったままだが、目線は下向き加減にしつつ僅かに口元は微笑んでいるようだった。

 

「兄様の気持ちも、意志も、自由なんだもの。だから私も自由に……この先も良縁に恵まれなくても、私は今ある大切な家族の為に生きようと思うの。ネジ兄様もきっと、そういう気持ちなんだよね」

 

「───もちろん」

 

 先程まで下向き加減だったネジが、そこでようやく目線をハナビに合わせて顔をほころばせた。

 

「……!! 兄様、それ反則…っ」

 

「どうしたハナビ、顔が真っ赤だぞ。酔いが回り過ぎたんじゃないか?」

 

「そ、そうね~。私もう寝ようかな~? お客さん用の部屋借りるね! あっ、けどそうなると兄様が…」

 

「俺はソファで充分だから、気にするな」

 

「そっか。…じゃあ、お休みなさい、ネジ兄様」

 

「あぁ。お休み、ハナビ」

 

 

 

 ────翌朝、ちょっとした二日酔いでハナビは少し頭が痛かったが大した事ではなく、ボルトとヒマワリが手伝ったネジの作った朝食をしっかり頂いた後、ネジが家まで送ると言ってくれたが、ハナビは昨晩の事を思い出し気恥ずかしくなって断り、日向家へ1人帰って行った。

 

……昼前になってナルトとヒナタ夫妻が揃って帰って来たので、ネジはうずまき一家をおいとまする事にした。

 

その際、ヒマワリから近い内に今度はお兄ちゃんと一緒におじさんの家に遊びに行くからね!と言われて抱きつかれ、ボルトからはまた修行の続き頼むってばさ!と言われ、互いの片手のひらをパチッと合わせた。

 

ナルトとヒナタからも、いつでも家に来てほしいと笑顔で言われ、ネジの方も笑みを返し、こうしておじさんの休日はつつがなく過ぎていったのだった。

 

 

 

 

《終》

 

 

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