NARUTO日向ネジ短篇集   作:風亜

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 二部ネジ、ハナビ。


暮れなずむ淡き想い

 日向家にて。

 

「──えっ、兄さま明後日から長期任務なの?」

 

「ええ。……何か、問題でも?」

 

「別に、何もないけど……」

 

 上忍の従兄のネジが長期任務になるのは何も珍しい事ではないが、その時のハナビはつい、残念そうな表情と口調になってしまう。

 

(わたしの、誕生日……去年も確か兄さまは任務だったよね……。仕方ないけど、今年もかぁ)

 

 

「ハナビ様、今から修行をつけて差し上げましょうか?」

 

 小さく溜め息をついたところに、従兄が何の気なしな表情で聞いてくる。

 

「え、いいの? 長期任務前で忙しいんじゃ──」

 

「前日の明日に準備を整えるので問題ありません。……ハナビ様にその気がないなら、修行はやめておきましょう」

 

「ううん、ネジ兄さまと修行する。…じゃあ、お願いします!」

 

「判りました。では、始めましょう」

 

 日向家敷地内の開けた場所で、ネジとハナビは修行を開始した。

 

 

「──八卦掌、回て…わっ!?」

 

 ある程度組手を行ってから、ハナビはネジから指導を受けつつ回天を繰り返すが、まだ安定には程遠く何度もバランスを崩しては尻もちをついてしまう。

 

「……ここまでにしておきましょう、ハナビ様」

 

 ネジが手を差し伸べ、ハナビを引き起こす。

 

「はぁ、はぁ……。まだまだだね、わたし……。早く父上やネジ兄さまみたいに、回天を使いこなせるようにならなきゃ……!」

 

「焦らずとも、ハナビ様ならそう遠くないうちにきっと使いこなせるようになりますよ」

 

 ネジは微笑しつつそっと、ハナビの頭部に片手を添えた。

 

「え…、兄さま、今わたしの頭撫でた……?」

 

 

「いえ、糸くずのようなものが付いていたので」

 

 

 ハナビは顔が熱くなるのを感じたが、直後の従兄の言葉で一気に気持ちが萎えてしまう。

 

(糸くずって、つまりゴミが頭に付いてたってことでしょ……。もう、勘違いさせないでよっ)

 

 

「ハナビ様、少し早いですが今のうちに言っておきますね。──誕生日、おめでとうございます」

 

 

「え? ……えっ? 急に、なに…!?」

 

 不意打ちを食らって思わず声がうわずるハナビ。

 

「明日は長期任務前の準備をしなければいけませんし、当日は早朝に出てゆかねばならないので今のうちに……。それとも、俺の勘違いでしたか? ハナビ様の誕生日が近いのは……」

 

「そ、そうなの! わたしの誕生日、もうすぐ…! お、覚えててくれたんだ、ありがとう……」

 

「いえ、去年は任務で普通に忘れていましたし、その前までは気にも留めていなかったので、今年くらいは──」

 

 僅かに恥じ入った様子でネジは顔を逸らす。

 

 

「ではハナビ様、俺はこれで失礼します」

 

「あ、うん……。ネジ兄さま、長期任務がんばってね。兄さまなら心配いらないと思うけど……気を付けてねっ」

 

「ええ、──それでは」

 

 

(? あれ、頭に何か……)

 

 ネジが去ったあと、ハナビがふと気づいて片側の頭に手をやると、何か硬いものが当たっので取ってみる。

 

(三日月の、髪飾り……!)

 

 優しい黄色味の三日月形の髪飾りを、ネジはそっとハナビに付けてくれていたらしい。

 

(糸くずのようなものが付いてた、なんて嘘ついちゃって……。粋なことしてくれるじゃない、ネジ兄さま)

 

 ハナビは自分が思ってる以上に嬉しく感じているのを抑えきれず、顔をほころばせた。

 

 

 

───────

 

 

 

「ハナビお姉ちゃん、その髪飾りキレイだね!」

 

「ふふ、そうでしょう? 私の大切な人から貰った物なのよ」

 

 三日月の宵に、日向家の縁側で姪っ子のヒマワリに自慢げに見せるハナビ。

 

「あー、もしかして……ハナビお姉ちゃんの好きな人からもらったんでしょ!」

 

「ふふ……、まぁね~」

 

「ねぇねぇ、どんなひとー?」

 

「秘密よ、ひ・み・つ」

 

「えー、ハナビお姉ちゃんずるーいっ!」

 

「ヒマワリがもう少し大きくなったら、教えてあげようかな~?」

 

「ほんと!? やくそくだからね、ハナビお姉ちゃん!」

 

「ええ、約束──⋯」

 

 

 

(ネジ兄さま、ヒナタ姉さまと一緒に必ず帰って来てよね! 約束だよ?)

 

(判っています、ハナビ様。必ず帰って───)

 

 

 

「……お姉ちゃん? ハナビお姉ちゃん!」

 

「──え?」

 

 ヒマワリの声で我に返るハナビ。

 

「泣いてるよ……だいじょうぶ? ハナビお姉ちゃん」

 

「あ……だ、大丈夫よヒマワリ。心配させちゃってごめんね……」

 

 知らぬ間に頬を流れ落ちていた涙を、ハナビはそっと拭う。

 

 

(ネジ兄様……私、本当は───)

 

 

「ハナビお姉ちゃん……ヒマがついてるから、さみしくなんかないからね?」

 

 ヒマワリがぎゅっと抱きしめてきてくれる。

 

「そう……ね。ヒマワリ、ありがとう……」

 

 ハナビもぎゅっと抱き返す。

 

 

(この子の血にも……、あの子の……ボルトの血にも、ネジ兄様の血が受け継がれてる……。ヒナタ姉様とナルト義兄さんを身を挺して守った兄様の分まで、私がこの子達を守っていくから……。どうか、見守っていて、ネジ兄様───)

 

 

 

《終》

 

 

 

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