NARUTO日向ネジ短篇集   作:風亜

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 二部ネジヒナ。


にらめっこしましょ

「ネジ兄さん、にらめっこしませんか?」

 

 

 ネジの家を日中訪れたヒナタは、にこにことそう告げる。

 

 

「──⋯何です、急に」

 

「にーらめっこしーましょ、笑うと負けよ、あっぷっぷ!」

 

 ネジが怪訝そうにしていようとお構い無しに、ヒナタは勝手ににらめっこを始め、自分の両頬を両手で押し付けるようにして顔面を寄せ唇をタコのように突き出し面白い顔をして見せるが、当のネジは眉間にしわを寄せキッと凄んで睨みきかせてくる。

 

「あ、あの、ネジ兄さん……、そんなに、睨まなくても……。面白い顔じゃなくて、怖いです……」

 

 ヒナタは、ネジの機嫌を損ねてしまった気がして内心焦る。

 

 

「あぁ、すみません。──にらめっことは、その名の通り互いに睨み合うものではないのですか?」

 

 若干困った表情で首を傾げるネジ。

 

「ち、違います……! お互い面白い顔をして先に笑った方が負けなんですよ……!」

 

「あぁ……そうでしたっけ。忘れていました。──ところで“あっぷっぷ”って、何なんでしょうね」

 

「お、面白い顔をする時の、合図みたいな掛け声じゃないかな……?」

 

「はぁ……そうですか」

 

 ヒナタから説明を受けてもネジは、大して気にも留めていないようだった。

 

 

「じゃ、じゃあ気を取り直してもう一度……。にーらめっこしーましょ、笑うと負けよ、あっぷっぷ!」

 

 今度は口の中に空気をいっぱい溜めて両頬を膨らませたヒナタに対しネジは、眉は凛々しくキリッと口元は片側の口角だけ上げ決め顔になる。

 

「え……ネジ兄さん、それってドヤ顔ですか??」

 

「じ、自分の面白い顔というのがよく判らないので、とりあえず得意げな顔を──」

 

 ヒナタはつい突っ込みを入れてしまい、せっかくの決め顔が引きつった顔になるネジ。

 

 

「いや、それよりこれは何の真似ですヒナタ様。急に子供じみたにらめっこなど……」

 

「いえ、その……ただ、ネジ兄さんに少しでも笑ってほしくて」

 

「───⋯」

 

 その言葉に、ネジはどう反応していいか分からず目を伏せたところに不意打ちで、ヒナタはネジの両頬をむにゅっとつまむ。

 

 

「にゃ…ッ、にゃにをするんれふか、ヒナふぁさみゃ」

 

 

「ぷっ、ふふ……!」

 

「あにゃひゃぎゃわりゃっひぇ、ろうふりゅんれふ……(あなたが笑って、どうするんです)」

 

 少々強引に両頬の口角を上げられ、口は笑っているように見えてもネジの目元は困っている。

 

「あ……ごめんなさい、今のは私の負けかもしれませんね」

 

 つまんで引き伸ばしていたネジの両頬からヒナタはそっと手を放し、痛かったわけではないがネジは片頬を少しさする。

 

「……勝ったら何か、褒美でもあるんですか?」

 

「え? あ、特別決めてなかったけど……何かして欲しい事ありますか、ネジ兄さん」

 

 

「俺は……好きなんですよ、あなたが──」

 

 

 ふと微笑するネジに、ヒナタは身体中が熱くなって胸の高鳴りを感じた。

 

(えっ、え……!? ネジ兄さんが、急に私に、こく…っ)

 

 

「──淹れてくれる、お茶」

 

 

「あ……はい、そうですよね……ありがとう、ございます……」

 

 その紛らわしい言い回しにヒナタは拍子抜けてしまい、ネジには何故かヒナタが落ち込んだように見えたがその意味するところがよく分からないといった様子で首を傾げている。

 

(俺は何かおかしな事でも言ったのだろうか……?)

 

 

「じゃあ……美味しいお茶、ネジ兄さんの為に淹れますから、台所借りますね……」

 

 大きく期待が外れた反動の為か、若干ふらふらとしながらも台所へ向かうヒナタ。

 

「あ……団子でも買って来て、茶と共にヒナタ様も頂きませんか?」

 

「えっ! はい、そうしましょう!」

 

 ネジの言葉に分り易く反応し、ヒナタは途端に元気を取り戻して意気揚々とお茶の準備を始めた。

 

 

──そしてネジが買ってきた三色団子とヒナタが淹れたお茶と共に縁側で二人は、春の暖かな日差しの中まったりと頂いた。

 

「ヒナタ様が淹れて下さったお茶……やはり美味しいです。ありがとうございます」

 

「いえ、こちらこそお団子買って来て下さってありがとうございます……!」

 

「随分、嬉しそうに食べますね」

 

「ふふ……、だってネジ兄さんも何だか嬉しそうだし、私も嬉しいんです」

 

「フ……、あとになって思い返すと、にらめっこの時のヒナタ様の顔……、悪くはなかったですよ」

 

 目元もにこっとさせ、顔をほころばせるネジにヒナタは思わず見とれて固まる。

 

 

(その笑顔……、は、反則だよネジ兄さん…っ)

 

 

「──どうしました? ヒナタ様」

 

 すぐ隣のネジが顔を覗き込んできたのでヒナタはどぎまぎしてついおかしな行動をとる。

 

「お、お団子食べたせいか、眠くなってきちゃいました……! おやすみなさいっ」

 

 

「……そこで何故、俺の膝の上に寝るんです」

 

「わっ、ごめんなさい!? そんなつもりじゃなくて…っ」

 

 半ば吸い寄せられるようにネジの膝の上に横になって頭を乗せてしまい、瞬間弾かれたように起き上がる。

 

 

「フ、おかしな人ですね……」

 

「──ひゃい?」

 

 不意打ちにヒナタの両頬を優しめにふにゅっとつまむネジ。

 

「にらめっこの時のお返しですよ。……フフ、ヒナタ様のつままれた顔もなかなかですね」

 

「う~、ネジ兄しゃんのいじわりゅ……」

 

「はい、すみませんでした……笑ってしまったので今のは俺の負けですね。──お詫びに、俺の膝の上で休んでも構いませんよ」

 

 ネジはヒナタの両頬から手を放し、今度は膝の上に頭を乗せるよう促す。

 

「え、ほっ、本当に、いいんです、か……?」

 

「えぇ、どうぞ遠慮なく」

 

「じゃあ、失礼します…っ」

 

 

 横になってそっとネジの膝の上に頭を乗せたヒナタがちらっと上に顔を向けると、ネジはこちらを見下ろしとても優しげな微笑を浮かべている。

 

……ヒナタにとって、今この瞬間が酷く儚いものに感じ、言い知れぬ不安を覚える。

 

「このまま少し、眠って構いませんよ」

 

「ネジ兄さん……、私の傍に居て、くれますよね……?」

 

「心配しないで下さい。──あなたの傍に、ちゃんと居ますから」

 

 ヒナタはその静かで落ち着いた声音に安心し、ネジの温もりを感じる膝の上で暫しの間まどろんだ。

 

……この安らかなひと時が、ずっと続いてほしいと願って。

 

 

 

《終》

 

 

 

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