NARUTO日向ネジ短篇集   作:風亜

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「めぐり逢う螺旋」の続き物。アニメBORUTOの136話を元にしていますが、内容は大分違います。


螺旋の彼方へ

「──さん、……ネジ兄さん?」

 

「──⋯え、あ……何でしょうか、ヒナタ様」

 

「その……どうかしたんですか? 何だか、さっきから上の空みたいで」

 

「そう、でしたか。すみません」

 

「い、いえ、謝ることなんて……」

 

 ネジとヒナタは日向家で修業の休憩時、縁側で共にお茶を飲んでいた。

 

 

「ヒナタ様は……、あの旅芸人の少年をどう思いますか」

 

「え? 旅芸人の、少年……?」

 

 

「前の共同任務の際にナルトが連れ立っていた、ナルトに似た少年というか……」

 

「えっと、そんな人……いましたか?」

 

「覚えて……いないのですか?」

 

「ご、ごめんなさい……思い、出せないです。ナルトくんに、似た人なんて……」

 

 嘘をついている様子もなく、困った表情をしているヒナタ。

 

「──俺の、見間違いだったかもしれません。今のは忘れて下さい」

 

「え、でも、ネジ兄さんが見間違えるなんて……」

 

「お茶を淹れて下さって、ありがとうございました。……今日は、これで失礼します」

 

「あ、ネジ兄さん……!」

 

 ネジは何か思い立ったように日向本家を足早に後にし、ヒナタはそれを見送るしか出来なかった。

 

 

 

(見間違いな……はずはない。俺は確かに、あいつと───)

 

 歩きながらそう考えている間にも、旅芸人の少年がどんな容姿だったか思い出せなくなってくる。

 

(旅芸人……、そもそも旅芸人だったのか、その少年は。少年……、誰の、事だ?)

 

 人気のない道端で、ネジは顰め面のままふと歩みを止める。

 

(忘れては、いけないような……いや、忘れるべきなのか。だが───)

 

 

 ネジは思わず白眼を発動し、薄れゆく面影を追った。……その存在は、背の高いもう一人の存在と里の外れの森にいるようだった。向かい合わせで、ナルトとその師匠の自来也も居る事が分かる。

 

──脚は既にその場に向かって駆け出していた。

 

 

 

「お? ネジじゃねーか、お前もボルトと旅芸人のおっちゃん見送りに来たのか?」

 

 ナルトが真っ先にネジに声を掛けて“その名”を口にし、ボルト本人は複雑な表情をする。

 

「……! ネジ、さん」

 

「ボルト……、ボルト、というのか……お前の名は」

 

「そう、だよ。オレは……ボルト、っていうんだ」

 

「ボルト……、そうか。悪くない名だ」

 

 

「そりゃ、そうだよ。だって、オレの名は──」

 

「……そこまでにしておけ」

 

 師匠のサスケに言葉で遮られるボルト。

 

 

「何だってばよ、ネジに名前教えてなかったのかボルト?」

 

「……すまんのう、わしらはこやつらを覚えておくわけにはいかんのだ。お主なら……わしらの記憶を消す事くらい出来るのだろう?」

 

 サスケを見据える自来也。

 

「あぁ、俺の術なら。……だがここに来るまでに前もって、ナルトとあんた以外に俺達と関わった者達の記憶を消しておいたはずだが、ネジは……完全には忘れられなかったらしいな」

 

「あぁ……ヒナタ様は覚えていないようだったが、俺は微かな記憶を辿って旅芸人の少年……ボルトを追ってここまで来てしまった。もっと、強く術を掛けておいてくれ。──二度と、“旅芸人の二人”を思い出せないように」

 

(……ネジ、おじさん)

 

 

「おいおい何のことだってばよ! 記憶を消すって──」

 

「ボルト、お前と少しの間でも話す事が出来て良かったよ。……達者でな」

 

「オレも……、オレも、嬉しかったよネジ…さんと話せて。ありがとうだってばさ」

 

 ネジとボルトは互いに笑みを交わし、その直後、一部の記憶を消すサスケの術がナルトと自来也、ネジに及び、三人は糸の切れた人形のように仰向けやうつ伏せになって倒れた。

 

「──これでいい。俺達の元の時代に帰るぞ、ボルト」

 

「ちょっと、待ってくれってばさ……サスケのおっちゃん」

 

 ボルトは自分の首飾りを外し、仰向けに意識無く倒れているネジの手元にそっと、螺の形状の首飾りを添える。

 

「ボルト、お前……」

 

「ごめん……けど、許してほしいんだ。これしか……思い浮かばなくて」

 

 サスケはそれ以上何も言わず、ボルトは師匠のサスケと共に元の時代へと帰って行った。

 

 

 

 

「──さん、ネジ兄さん目を覚まして……!」

 

「……! ヒナタ、様……?」

 

 呼び声に目覚めると、従妹のヒナタが心配そうに顔を覗き込んできていた。

 

「お、ネジ起きたか? なぁ、オレ達なんだってこんな森の中で倒れてたんだ?? エロ仙人もここで何があったか全然覚えてねーって言うしよ……」

 

 ナルトと自来也は不思議そうに首を傾げている。

 

「ヒナタ様は、どうしてここに」

 

「ネジ兄さんの様子が気になったから、捜しに来たら……ナルトくんと自来也様と倒れていたのを見つけて───」

 

「そうでしたか、心配を掛けました。……俺なら、大丈夫です」

 

 ネジはぎこちない笑みをヒナタに向ける。

 

「よかったです……。あの、ネジ兄さん……片手に握ってる物って」

 

「え? ──あ」

 

 握りしめていた片手の平をそっと開いてみると、それは見覚えの無い、螺のような形状の首飾りだった。

 

「何だろう、それ……」

 

「さぁ……、俺にも分かりません。ですが、持っていようと思います。……何故だか、大切な物のように感じますから」

 

 

 

 

 

 

 

 

(───⋯何だよ、結局ネジのおじさん、死んじまったままじゃんか。オレってば……何期待してたんだろ)

 

 元の時代に帰ったボルトは、真っ先に家に戻って母親のヒナタにネジおじさんが今どうしているか聴いた。

 

……しかし、返ってきた言葉は、亡くなっているという変わらない事実だけだった。

 

螺の形状の首飾りに関しては、ネジおじさんは身につけこそしなかったがお守りとして持っていたらしく、しかし大戦時には持って行かずに自分の家に大切に保管していたそうで、ナルトとヒナタが結ばれボルトが生まれたのを機にボルト自身が譲り受ける形になったという。

 

(直接返して、もらいたかったのに……これじゃただ、首飾りだけ戻ってきただけじゃん)

 

 自分の机の上に無造作に置かれた螺の形状の首飾りを前に、ボルトは項垂れる。

 

 

「……どうしたってばよボルト、元気ねぇじゃねーか」

 

 父のナルトがいつの間にか部屋に来ていた。

 

「なんだ、父ちゃん帰ってたのかよ」

 

「まぁひと段落ついたんでな。……その首飾り、外しちまったのか?」

 

「別に、外したくて外したわけじゃないってばさ」

 

「そうか……、じゃあ俺がつけ直してやるってばよ、ほら」

 

 向かい合ったままナルトは身を屈めてボルトの首元に螺の形状の首飾りをつけ直した。

 

「なぁ父ちゃん……ネジの、おじさんは」

 

「──ネジの意思は、死んじゃいねぇ。だから、俺達が繋いで行くんだってばよ。……そうだろ、“ボルト”」

 

 

 

 

《終》

 

 

 

 

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