戦姫絶唱シンフォギア~I'm thinker~ 作:トライグルー
ではこれよりブリーフィングを開始します。
前回、暴走を始めた完全聖遺物ことネフィリムを突如現れた巨人…鉄のようなものに覆われている事から仮にACと呼びましょう。
そのACがネフィリムを撃破さらにその際男に助けられた少女セレナは見知らぬ部屋で目覚め、その際男に情報開示を提案します。が男は対価として3つの条件を付け加えました。
さて、内容はどの様なものかは解りませんが彼のことです決してろくなものではないでしょう…。
それではブリーフィングを終了します。
『教えてあげてもいいけど内容は決して良いことばかりじゃないよ?寧ろキミにとっては辛いことかもしれないし』
数日前男が言ったことを思い出す。
あの後男はセレナに対しある条件を出し返事は後日でも構わないと言い残し部屋を出ていった。
だからこそセレナはこの数日間様々な考えを巡らせる。
(辛い事…もしかしてマリア姉さんの事なのかな…?)
「入っても大丈夫かい?」
「あっ、はい!」
(でも…前に進まなきゃダメだよね!)
しかし目覚めてから定期的に行っている問診の時間なのかはたまた彼女の性格故かセレナは答えを決めた。
★★★★★
「…………」
「なにか言いたそうな顔だね。まだ悩んでるのかい?」
「はい…」
いつもの問診が終わり、俯いているセレナの心境を悟ったのか男が声をかける。
「まぁ仕方ないよね。いきなり無理言っちゃったしさ…。それに君はまだ子供だ心の準備ってのも時間が「でも!」ん?」
男はセレナを慰め部屋を出ようとするが彼女はそれを引き留め真剣な表情をし男の目を真っ直ぐに見ながらに言う。
「この数日考えて思ったたんです。このままじゃダメだって!」
「いいのかい?」
「はい…!だから教えてくださいあの後の事を!」
だからなのかセレナの言葉を聞いた男は少し目を見開き驚いた表情をする。
そして男は両手を肩の辺りまで上げ降参したのかベッドの脇にある椅子へと腰掛け直し話始めた。
「いいかい?じゃあ一つ目だ。これは多分内容的には一番軽いと思うけどキミはもうお姉さんとは会えない」
「えっ…じゃあ…マリア姉さんは……」
男はまず彼女に自分の姉とはもう会えないと伝える。
そしてセレナはあの時聞こえた声は本物でもしかしたら自分が生きているのは姉が何かしらの身代わりになり助けてくれたからではと思ってしまう。
「おっと、勘違いしないでくれ?キミのお姉さんは生きてる勿論五体満足でね」
「マリア姉さんは生きてるんですか!?」
「そうさ、会えない事を除いてはね」
だがセレナの心配は杞憂に終わり、男はセレナが落ち着くのを待ち話を続けた。
★★★★★
「と言うわけで二つ目だ。わかってると思うけどここはあの研究所じゃない」
男が二つ目の話が始める。セレナは男が言う此処はあの孤児院ではないという言葉に分かっていたのかコクりと頷く、がある疑問が浮かんだ。
「質問…してもいいですか?」
「なんだい?」
「マリア姉さんと会えないのは私の怪我が治りきってないから、前にいた子達みたいに治療の為に他の所にいるから会えないんですよね?」
セレナは自分が聖遺物の適合者となり、自分の姉を含むあの研究所にいたレセプターチルドレン全員にパッチテストが実施された際、適合しなかった子供は他の施設に連れていかれたことを思い出し自分はその施設の一つにいると思い男に聞くが。
「マムが言ってました居なくなった他の子達は別の研究所に行ったって」
男は首を横に降りながら否定する。
「残念だけど違うよ、ここは俺の隠れ家で施設なんかじゃない。寧ろここが奴らに関係のある場所なら今頃俺は殺されるか実験動物扱いされて此処に居ない」
「殺…される?」
そして男は未だ状況が理解出来ていないセレナに対し自分が何故その様な立場にあるのか説明を続ける。
「そうだ、世界でも数少ない正規適合者が生きていてましてや完全聖遺物のネフィリム倒し、そんな大業をなしたに少女を一研究員でしかない俺が連れ去ったとなれば米国政府も黙ってはいない」
「でも決してわざとじゃないんですよね?なら許してもらえ…「いいや無理だね」どうしてですか!?」
「どうしてって言われてもさぁ…俺体はもう人間じゃないし?」
「なんでそういうことを言うんです!お兄さんはどう見ても人間じゃないですか!そもそも実験動物というのも酷すぎます!だってお兄さんは…っ!?」
そしてセレナは自分の命を救ってくれた男が何故そこまで酷い目に遭わなければならないのか解らず男に問いただす。
しかしセレナは男が白衣の下に着ているシャツをずらしたことで男の言葉を理解する。
それは心臓に近い場所に翼のような形をしたモノが完全に男の肉体と融合しており、微かに脈打って見えたからだ。
「言葉として表すなら…完全な融合症例ってやつかな?」
「融合…症例?」
申し訳なさそうに笑顔を作り男はセレナに説明する。
「そうそう、難しい話になるけど本来完全聖遺物の起動のためには膨大なフォニックゲインが必要でね。それこそ機械や一人分の歌じゃまず無理だ…例外を除いてね」
「じゃあなんであの怪物は起動できたんですか?」
「ネフィリムってのは元々ネフィルという複数の存在が集合したモノでさぁ、意外にもネフィル単体でのフォニックゲイン値は意外と低いんだよ…ホラ、皆で歌の練習をしたことがあっただろう?機械の前でさ」
「あっ!」
勿論セレナは覚えていたあの怪物が現れた日、何時もの訓練を繰り越してまで行った歌の練習を。
「けど奴ら油断したのかネフィル単体の起動には成功したが共食いをし統一体であるネフィリムを扱いきれなかったんだろうねぇ…愚かなことだよホント」
「じゃあ…お兄さんはもう…」
「そうだねぇ…残念だけどそんな完全聖遺物と融合しちゃってる俺は戻ったら即モルモットになっちゃうから君はともかく俺は絶賛逃亡中ってわけ」
だからこそセレナは思ってしまう。
もし、私達があの怪物を起こさなければあんなことにはならなかったのではと。
「ごめんなさい…」
「気にすることないさ、とりあえず最後の話だけど場所を変えようか…」
そして男はポツリと呟かれた一言に対して慰みの言葉を返すと彼女を背負い部屋からでるのであった。
★★★★★
「さて、まずはキミの容態から説明しようか」
「容態ですか?」
男は隠れ家と言うだけあり一見民家のような廊下を歩きながらセレナに彼女の体がどうなってしまったのかを話始める。
「そうだ、あの戦闘の後キミの体は酷く衰弱してね、全身打撲に骨折複数。更には無茶な戦闘によるバックファイア…下手をすれば死んでいたかもしれないほどキミの体はボロボロだった」
そして恐らく隠されていたであろう階段を下り薄暗い地下室へと進み。
「申し訳ないと思ったよ。こんな大人のゴタゴタに巻き込まれて…こんな幼い命が失われていいのかって」
「お兄さん!これって!?」
男は大きな円柱状の水槽の前で足を止めるがセレナはその水槽の中身を見て驚かずにはいられなかった。
「初めに話しただろう?しばらくお姉さんと会えないのってさ。本当に…悪いと思ってるさ…恨んでくれてもいい」
何故ならその中には自分と瓜二つの少女が呼吸器をつけ浮いているからである。
「あの戦いの後あの施設ではキミを救えないと思った俺は急ぎこの隠れ家へと向かいキミをこの医療ポットへと入れた。そして半年も経たない内に体の治療は終わったんだが…肝心のキミ自身が目覚めなかった…」
男はセレナを近くの椅子へと座らせると彼女の前にしゃがみ、セレナが半年もの間意識が目覚めなかった事やこの隠れ家の存在する理由、あの施設であった事の全てを話してゆく。
「だから外法だが俺のこの聖遺物の能力で作った体へ一時的にキミの精神のみを移し目覚めさせる足掛かりにしようとしたんだ」
「でもどうやって私の意識だけを?」
「それはね、これさ」
男はセレナの疑問に対しまるで待機状態のギアのような黒いペンダントを白衣のポケットから取り出し彼女に見せる。
「これはキミの本体とその体を繋ぐ架け橋、言わばアンテナみたいなものさ」
そして男はペンダントをセレナの首へ掛けてあげると話を続けた。
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「さて、仕上げだ治療に半年もかけたが…正直あとはキミがあの体へ戻るだけでそのほとんどが完了する」
「戻るだけで?」
「あぁ、後はリハビリに短くても約一年~二年。それが終わればキミは自由だ、だから最初に言ったように施設に戻ってキミのお姉さんに会うもよし。ここから新たな人生を始めるもよしだ勿論その場合はある程度の援助もさせてもらうけどね、だからそっから先は君次第だよ」
医療ポットの前で液晶パネルを弄くりながら男はセレナに話しかける。
「リハビリが終わったらお兄さんはどうするんですか?」
だがセレナは自分はともかく男が今後どうなるのか気になり質問する。
すると男はセレナの質問に対し答えた。
「俺かい?そうだねぇ~…ちょっと世界を見て回ろうかなって思ってるよ。こう、自由にブラブラとさ!」
「世界…ですか?」
「まぁね~。実は俺さぁ今の職場に対して結構不満持っててさぁ、もし辞める事ができたら世界旅行でもいこうかなって思ってたんだよね~あそこ口止め料も含め給料だけはいいから」
まぁ、安住の地を探すって意味もあるけど、と付け加え男は楽しそうに話す。
だからこそセレナ少し悩んだ、もし自分がこのままリハビリを終え自分の姉や皆の所へ戻ったとしてこの男はどうなるのか。
また、その場合自分はもう二度と会えないかもしれない彼になにも返せないのではないかと。
だからこそ…。
「あの!」
「ん?」
「私も連れてって行ってください!」
「は?」
セレナはそう言い男は操作していた手を止め唖然とする。
それもそうだ、男は彼女に自分の姉の所へ戻るか第二の人生を歩ませ自分とは今後関わらせない様に選択肢を与えたのにも関わらず彼女は自分に着いてくると言い出したのだから。
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「今…何て言った?ついてくるって言ったかい?」
「はい!」
男の問いに対してセレナは真っ直ぐに答える。
「アハハッ、冗談が上手いね嬢ちゃんは……」
「冗談なんかじゃありません!私はまだお兄さんになにも返せてないんです!だからっ!」
「……着いてきてどうするつもりだい?」
「それは…解らないですけど…なにかできることがあると思います!」
セレナの性格を知っているのか、それとも彼女の意思に押し負けたのか男は諦めまた指を三本立てる。
「………ハァ。じゃあまた条件を3つ決めよう」
「条件ですか?」
「そ、条件。一つ着いてきたければリハビリを一年以内に終わらせること、タイムリミットは嬢ちゃんがこの体へ戻ってリハビリを開始した瞬間からでね。もしその期間を過ぎたら…教授に連絡してキミを迎えに来てもらってサヨナラだ」
「はい!」
「二つ。決して無茶はしないこと。俺も時間がある訳じゃないからまた怪我をされても困るしね」
男は一つ一つ条件を出しなが指を折ってゆくそして三本目の指を折る直前彼は今までのへらへらとした表情から一転しセレナをまるで睨んでいるかのようなキツイ表情になり彼女に問いた。
「3つ。その決断はもう二度と皆とは会えないってわかってるんだろうな?」
「それは…」
男はセレナにどうしても聞きたかった、自分に着いてくると言うことはそういうことだと。
「嬢ちゃんはまだ13だ色々と判断するには早すぎる年なんだよ「でも!」でもじゃない。お泊まり会じゃないんだよ…だからこの一年でよく考えるんだ…」
「……はい…」
――一年後
とある一人の少女が自分の背よりも少し大きいバックを背負い隣にいる男と見慣れない町を歩く。
「お兄さん!あそこに行ってみましょう!」
「ハイハイ、全く元気だねえ」
だがその少女の顔はとても明るく楽しげだった。
『メッセージログを再生します』
『え?もう始まってる!?コホン、拝啓マリア姉さんや皆へこのログが見つかったということは多分この場所が誰かにバレたということです。
えっと、その…これを聞いているのがマリア姉さんかは解りません、でももしそうなら私からのワガママを一つだけ聞いてください。
私はこの人に二度も助けてもらいました…けどまだなにも返せてません。だからこの人に着いていくことにします!もちろんまた再会できたときいっぱいしかってくれてもいい。その代わり私はいっぱいの思い出話を用意しているからマリア姉さん、切歌ちゃん、調ちゃん、マム。また会う日までお元気で!
セレナ・カデンツァヴナ・イブより』
『メッセージログを終了します』
『追伸通話ログが一件存在。再生します』
『どうも教授お久しぶりです。実は彼女…セレナのことなのですが…肉体へのダメージも酷くまだ眠っています…恐らく半年はかかるでしょう。
えぇ、彼女のお姉さんにはなんと……なるほど死亡したと…。
ギアの方は…ダメでしたか…わかりました。俺ですか?そうですね…彼女の治療が終わり次第、世界を少し回った後日本にいる櫻井女史の元を訪ねてみようかと。
はい、セレナちゃんには悪いですが彼女には最悪第二の人生を歩んでもらうことになりますね。
俺の連れに?ご冗談を…それは雛鳥の刷り込みにすぎません…それに彼女は俺の嘘に簡単に騙されてしまうほど世の中を知らないだから……ハァ…わかりました…ですが貴女だけはマリアちゃん達に恨まれることはしないように…。
あの時、あの崩落時。貴女やマリアちゃんが無傷で生還できたから良いもの下手をすればあの瓦礫の下敷きになっていたのは…いや、考えるのは止めましょう。ではそうですねまた会う日までお元気で』
『通話ログを終了します』