戦姫絶唱シンフォギア~I'm thinker~ 作:トライグルー
この作者はなぜ泣き叫んでいるのかが解りません…はい?この際本当は全員生存ルートで行きたかった?発言の意味が不明です。
コホン、とりあえず傭兵の皆様、ブリーフィングは行えませんでしたが私から一言。
とうとう彼女達の物語が動き始めます、よってあなた方が思い描く物語にはならないかもしれません。
ですがそれでもこの作品を読むとなればそれなりのお覚悟を…。
追伸、そもそもこの作者の作品にこの話数にてすでに数十名の傭兵登録(お気に入り登録)があることがおかしいのです…何故です、私が間違っているとでも…?
「ハァ…全く…トラブルとは無縁の地を選びたかったのにさぁ…どうしてこうも…」
「お兄さん!?そんな悠長にしてる場合じゃないですよ!ノイズが押し寄せてきてるんですから早く逃げないと!」
とあるライブ会場、観客及び関係者含めおよそ約十万人近くが入ることができる場所。
その中では大勢の人間が何かから逃げるように出口へと向かいまるで津波のように押し寄せる、だが感傷に浸っているその男は人の波に拐われず逆にライブ会場の中心を見るように立っており付き添いの少女も流されまいと必死に男の腕へとしがみ付いていた。
「でもさぁ~…商店街の福引きでこのライブのチケット当てたのセナりんだよ?」
「だっていきなり大量のノイズが溢れ出てくるなんて思わないじゃないですか!?」
「まぁ、そうだよねぇ…」
そして男は少女に対しここに居る経緯を語りだすがその原因は数日前に遡る。
「おめでとう大当たりだよお嬢さん!」
「えぇ!?」
とある日の買い物の帰り道。少女と男はスーパーでその日使う食材を買い帰路につくなか、その店で偶然貰った福引き券を使い運試しとばかりにその商店街で開催していた福引きを行う。
少女は副賞である高級食材などが当たればいいなと思いハンドルを回すが結果はご覧の通り一等を引き当ててしまった。
「ほら!特賞のツヴァイウィングライブペアチケットさ!まったく運が良いねぇ!」
「ツヴァイウィング?」
「知らないのかい!?今話題歌い手さん達だよ!しかも今度開催するライブはドデカイらしくてね!なんでも予約キャンセル待ちが千件を超えてるんだってよ!」
男と少女は今までの旅をしていたせいかこの国のメディアには乏しくほんの数週間前にこの国へと着いたばかりであり、その事を知らない受付のおじさんは驚きながらも二人に快く説明した。
「それって凄いことですよね!お兄さん行ってみませんか?」
少女は男に期待の眼差しを向けると男はやれやれと首を降りながら答えた。
「まぁいいんじゃない?この国には少し長めに滞在する予定だったしさ。それにセナりんも歌好きでしょ?」
そしてこれが二人のライブに来るまでの経緯である。
★★★★★
「でもさぁオカシイんだよね~」
「な、なにがですか?うわっ!?」
大勢の人間が逃げ誰もいなくなった会場の脇、男は片腕を自身の聖遺物で覆い巨大な腕とし少女を庇いながらもその腕を振るい近寄ってくるノイズ達を薙ぎ倒していく。
「今までの出現パターンからだと本来ならノイズは不特定多数の場所に数匹…多くて数十匹しか出現しないはずなんだけどさぁ…この量はそれを遥かに超えているんだよね~」
「確かに前に見たノイズの量と違いますけどこれだけ広ければそれなりに出てくるんじゃ…」
少女は男の言葉に対しそんなことを呟くが男は惜しいねと言いつつも説明を続ける。
「まぁ、セナりんの言う通り本来ならそう考えるのが妥当なんだけどさぁ…恐らくこの地下で何かしらの実験してたっぽいよ多分…」
「実験?この私達の下でですか?」
「そうそう。本当に聖遺物人間であるこの体ってのはこんな時便利だよ、
そして男が新たな反応を感じ取りその方向を向く、すると二人からはかなりの距離に位置するがステージ上では片や青色、片や朱色のギアを纏った少女二人がそれぞれノイズを屠り対応しているのが見える。
「あの娘…あれ結構ヤバイかもね……」
だが男だけは二人の装者とは別に瓦礫の間を縫って逃げる一人の幼い少女に気付きそう呟くのであった。
★★★★★
『翼、奏くん!悪いがこちらも避難民の誘導で手が放せん!だからノイズへの対応は各自臨機応変に挑んでくれ!それから、了子君の話では近くに微弱ながら聖遺物の反応もあるとの報告だ。とりあえず再度言うが観客の避難が完了するまでノイズの相手を頼む!』
「わかりました司令!」
「わかってるよ弦十郎のダンナ!それじゃどんどん行くぞ翼!」
ボーカルユニット、ツヴァイウィングの広大な特設ライブ会場。そこでは弦十郎と呼ばれる上司からの通信を受け、二人のシンフォギア装者がそれぞれアームドギアを展開し出現した大量のノイズを倒してゆく。
「やあぁぁ!」
「たりゃぁぁ!!」
奏と呼ばれる少女は槍でノイズの群を突き崩し、翼と呼ばれた少女は一体一体を的確に刀で斬り倒す。
しかし一見ノイズの軍勢に対し優勢に見られる二人だがそうではなかった。
「ハァ……ハァ……クソッ!時限式はここまでだってのか!?」
「奏!?」
それは奏が戦闘によるダメージなどを除けばまだ戦える翼に対し、彼女は肩で息をするほど疲弊していたからだ。そんな中…。
「いやあぁぁぁ!?」
「「っ!?」」
二人は逃げ遅れたであろう一人の少女が数匹のノイズに襲われそうになっているのを目撃し、少女に一番近かった奏は即座に走り出す。
「ぐっ…」
そして奏は身を挺して少女の盾となりノイズからの攻撃を防ぐが。
「……えっ」
攻撃を受け砕け散ったギアの欠片が少女の胸へと直撃する。
「おい死ぬなッ!?頼む目を開けてくれッ!」
少女は自分に何が起こったかも判らずその場に倒れ込み胸の鋭い痛みを感じながらも意識を遠退かせていくが。
「生きるのを諦めるな!」
少女にはその言葉が確かに聞こえたのだった。
★★★★★
所変わって男と少女がいる会場の脇。男はこの国の組織になるべくバレないよう彼女達が討ち漏らしたノイズを攻撃し、外にいる観客の所へ行かぬよう足止めしていた。
(しかし…聖遺物の実験とはいえノイズの量が異常すぎる……まさか米国の連中ソロモンの杖を?あのネフィリムでさえダメだった奴らが?)
男は連れの少女を庇いながらも中央の状況や出現しているノイズの量を見ながら様々な考えを巡らせる。
(まさかこの会場で行われた実験は完全聖遺物の起動か?だとしたらなぜ失敗した?そもそも逆にこの国が完全聖遺物を所有していたとしてその実験を失敗させる理由がどこにある?)
しかし男には検討がつかなかった。彼は少女と旅をする前、所属していた組織から自分のIDが消えない内に出来る限りの情報を引きずり出している。だからこそこの国の所有しているであろう聖遺物の情報も多少持っていたのだが。
「お兄さん!」
「どしたのセナりん?」
「あの人もしかして絶唱を使う気なんじゃないですか!?だとしたら止めないと!」
連れの少女に呼び止められ男は一旦思考を放棄する。
少女は男がノイズを倒しながら移動していた際、自分達の位置がステージの中央に近くなったのか先ほど彼だけが見えていたものを視認する。
そして朱色が特徴のシンフォギアを纏う少女の状態を見てもしかしてと思い声をあげた。
「でもセナりんを置いてきぼりにしたら誰がノイズから守るんだい?」
「それならお兄さんから貰ったお守りがあります!それにあんな状態で絶唱なんて使ったら!?」
少女はノイズに対しそれなりの防衛手段があるのか男に彼女達の元へ向かうよう提案する。
「いいや…アレだけはダメだ。約束しただろう?俺が居ない状況でノイズ共から逃げれずどうしてもという場合でしか使ってはダメだと」
「それでも!このままでは後ろにいるあの娘まで死んでしまいます!」
「…………わかったよ…だが約束は絶対に守ること。あとあの子達を助けに行くのは君を外へ避難させてあとだいいね?」
「はい!」
しかし男は男はその提案を却下し彼女の護衛を優先するが最終的に押し負けたのか不服そうな顔をしながらも彼女を抱え会場の外へと急ぐのであった。
★★★★★
戦い始めてからどのくらい経っただろうか。まだ何十匹
もいるノイズの大群を前に奏は色々なことを思ってしまう。
「よかった……生きていてくれて…」
生きるのを諦めるな。自分の力不足が原因で負傷してしまった少女に言葉を掛け、目を開けてくれた時どれだけ安心しただろうか。
「…いつか心と身体全部空っぽにして歌ってみたかったんだよな」
「奏?」
それに自分の半身とも言えるほど仲の良い友達にこれからどれだけ悲しい思いをさせるのだろうか。
そんなことを胸に秘め奏は翼から不安な眼差しを受けながらも彼女は今自分の発した言葉とは真逆の事をしようとしている。
「今日はこんなに沢山の連中が聞いてくれるんだ。だからアタシも出し惜しみなしで行く…」
そして自らのアームドギアである槍を掲げ。
「………絶唱…」
自らの犠牲を顧みず禁断の歌を口ずさむ。
『Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el baral zizzl-』
「そんなッ!?奏!歌ってはダメぇぇ!!」
『Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl-』
自分は死ぬ。喉の奥から血が込み上げてくるのを感じる。だがそれでも彼女は最後に笑っていた
★★★★★
「会場内のフォニックゲイン値急激に上昇!?奏さんのバイタルサインロスト!?確認できません!?」
「まさか奏くんは!?おい翼返事をしろッ!一体何があった!?」
『いやッ!奏!奏ぇぇ!』
「司令!大変です!会場の脇にいたノイズの残党が一斉に翼さんのもとへ!」
「なんだと!?」
ライブ会場の地下、そこにいる特異災害対策機動部の面々は今起きている状況の対応に追われている。
彼らは当初このツヴァイウィングのライブを利用し、完全聖遺物ネフシュタンの起動を目論んでいた。
しかし実験は失敗しネフシュタンより発せられたエネルギーが暴走、爆発を起こしたのだ。
しかも暴走したエネルギーの余波に感化されたのか運悪くノイズが大量発生し、対応にあたっていた装者のうち一人が死亡したこともあり危機的状況に陥っていた。
「翼!今すぐ撤退しろッ!そこにノイズの残党が向かっている!……ダメか!」
特異災害対策機動部二課の司令である風鳴弦十郎は翼に急ぎ通信を送り撤退するよう命じる。しかし先ほど目の前で親友を失った翼は悲しみのあまり回りが見えておらず彼の声も届いてはいなかった。
「こうなれば……!あおいくん!避難状況は!」
「ほぼ完了しています!しかしどうするつもりですか!?」
「俺が翼を回収してくる!」
「無茶です!?いくら司令と言えど翼さんを抱えなかがらノイズ群を回避するんですよ!?」
「だがこのままでは貴重なシンフォギア装者を二人も失うはめになる!なら俺の命など安いものだッ!」
弦十郎はインカムを付け司令室から出ると急ぎ翼の元へと駆け出し彼女がいる場所へ難なく到着する。
「これはッ……!?」
彼はその場で泣きじゃくり衰弱したせいかギアが解除されている翼と胸から血を流している瀕死の少女の姿を確認し状況を悟る。
(もしかして奏くんはこの娘を守るために絶唱をッ……!)
そして弦十郎はせめてもと翼を気絶させ、二人を抱え振り向くが。
「遅かったかっ…!?」
すでに彼らの周りには先ほど報告にあったノイズの残党が取り囲みジリジリと距離を詰めてゆく。
(どうする!一、二匹ならなんとかいなせるがこの量ではッ…!?)
彼は最悪自分の命と引き換えに彼女らをなんとか助けるため知恵を絞ろうとする。しかしそんな彼にある音が聞こえた。
「この音……ジェット音…?まさかミサイルか!?」
それはまるで戦闘機のようなジェット音で彼は今回明らかにノイズの量は異常だがそれに対して政府がたいして効果のない兵器での攻撃に転じたかと思い焦りだす。
だが彼の目の前に現れたのは体長三メートル近くの鉄の巨人であり。
「手こずっているようだな……手を貸そう…」
――ASSAULT ARMOR
そう発言すると巨人はノイズの群れへと突撃しヤツを中心に青白い光が輝きノイズを一瞬で全滅させる。
『司令……聞こえ……か!そこ…当初確認され…いた未確認の聖…物反応が!』
「なに!?まさかコイツが!?おい待て!?」
そしてその光景を見ていた彼の通信機に途切れながらも部下からの通信が入り、コイツが災害発生時確認されていた微弱な聖遺物反応の正体だと知り驚くが、巨人は目的を達したのか再びジェット音を響かせ地平線の彼方へと消えて行くのであった。
『二件の録音音声を発見。再生します』
『始まったな…よし。俺は特異災害対策機動部二課、風鳴弦十郎だ。
時刻は深夜零時過ぎ、場所は町外れの廃工場。この音声は例のライブ事件のあと部下から取引をしたい拒否すれば機密内容をリークするという脅迫電話を受けた報告があり現在その取引現場にいる。第一に俺も警戒はしているが何が起こるかわからない。
だからもし誰かがこのメッセージを見つけたのなら政府の風鳴 八紘という男に渡してもらいたい。ではこれから工場に入るが録音を続けたままにする』
(道を進み扉を開ける音
『まずは初めましてだな。緒川……俺の部下から聞いているがアンタが取引を持ちかけてきた人物か?』
『あぁ、そういうことになるが約束は守ってくれたか?』
『もちろんだ!丸腰に加え誰一人として連れてきてはいない!』
『それはよかった。なら本題に入ろう』
『いいだろう。確か取引内容は此方の機密をバラさない代わりにアンタらの身柄を保護することだったな?』
『そうだ、俺と……もう一人ツレがいるんだが今現在俺達は訳アリでね。言わば密入国に近い形でこの国にいるんだ』
『それで、この国で何をする気だ?生憎とテロ行為を見逃すほど俺は甘くないぞ?』
『いいや、訳アリなのは俺だけさ』
(鈍い機械音
『それはッ!?あの時現れたのはお前だったのか!?』
『まぁそうだな。しかしすまないと思っているよ、貴重な装者が亡くなったことに対しては。俺がもっと早く行動していれば犠牲は少なかっただろうに』
『そんなことを言うな。アンタのせいじゃない彼女のことに関しては俺のミスだ。それより話を戻すが要求内容は身柄の保護のみでいいのか?』
『構わない。だが強いて言うならこの国での戸籍がほしい上できれば簡単な職が欲しい。あとはこの国にいるであろう櫻井了子女史にコンタクトをとりたいんだが可能か?』
『……わかった。上に問いかけてみよう『それから』ん?』
『脅して悪いがアンタのその胸ポケットに入っているボイスレコーダはこちらに譲ってもらう。俺に関する情報はなるべく残したくないんでね』
『バレていたか……まぁ構わんさ』
『音声はここで途切れています。続いて二件目を再生します』
『あー、あー、この音声はあの男。たしか弦十郎が持っていたボイスレコーダに話しかけている。そんで今日は前回の取引の結果を聞くためこの前の廃工場にいる。もちろん前回の会話内容はコピーして別の媒体に写しこの本体のデータは消去済みだ。おっと来たみたいだ』
『3日ぶりだな。前回の取引の答えだが案外上手く行きそうだ』
『それは上々だ。それで?』
『戸籍の方は簡単だこれでキャンプ生活からおさらばできるぞ?そして職と了子くんとの面会の方だが……上と話し合った結果俺が所属する特異災害対策機動部二課に来てもらうことにした』
『なるほど…確かにそれなら俺を監視できるうえ予防策もこうじられる。だが櫻井女史になんの関係が?』
『一応了子くんはうちの組織に所属していてな。アンタの要件を叶えるのに一石二鳥というわけさ』
『なるほどねぇ…』
『それと話を続けるがアンタはうちの組織にノイズの研究者として入ってもらう。ちょうど主任の席が空いていたから都合が良かったと言うのもあるがな』
『いいのかい?そんなポストに俺を当てはめて』
『大丈夫だある意味ノイズ研究は死と隣り合わせで人気がなく人員不足だからな。あと連れの彼女…確か名前は……『セナ。セナ・マグノリア・イブ』そうセナくんは新人オペレーターとして入ってもらうこととするが、以上の内容に何か質問はあるか?』
『いいや、申し分ない結果だよありがとう』
『気にするな、此方も切羽詰まっていたが命を助けてもらった身だ。というわけで今後ともよろしく頼む!主任』
『了解しましたよ風鳴司令官殿。あとこれは返しておくよ』
『録音音声は以上です』