00:02
視界の隅に見える時計の時間。
これから始まる波に対して身構える。
00:00
ビキン!
世界に響く大きな音。
次の瞬間には景色が変わる。
無事に転送されたようだ。
「空が…………」
空には大きな亀裂が入り不気味な赤に染まっている。
知識としては知っていたが実際に見ると不気味さが際立つ。
「リアス、ユリア。ここが何処だかわかるか?」
現在地と近くにある町や村の情報が欲しい。
「おそらく王国の南東にあるカナデア平原です。この近くには街と村が一つ存在します」
街と村が一つって事は戦力の分散は避けられないか。
「村と街のどちらに多くモンスターは向かっているかわかるか?」
「おそらくは村の方かと。また、街であれば防壁がありそれなりの数の兵士もいるかと」
ならば最優先は村の方から。
「騎士団と冒険者の代表はいるか」
「はっ!」
「おう。いるぞ」
鎧を着た壮年の騎士と強面のおじさんがこちらにくる。
自己紹介はされていたな。
「信号弾は上げたな。これから村と街の双方に救援を送る。優先するのは防衛力のない村の方だ。俺も先ずは村に向かったん後に根源を叩く。人員を別ける事になるが意見はあるか」
「はい。街よりも村の方が距離があります。私達騎士団の騎馬隊が向かうべきかと。」
「そうだな。馬に歩行で付いて行くのは厳しい。俺達冒険者は街の防衛に向かうぜ」
「それが良さそうだな。騎馬隊の人数はどれだけになる」
「30程ですね。騎馬隊が先行します。歩兵隊の内100は街の防衛に。残りは私達の後続とします」
「それで行こう。セシリア」
俺の声でドラゴンに戻るセシリアとその背中に乗る仲間達。
セシリアには低空飛行を頼むと空中から地上に向けて攻撃を放ちながら突き進む。
それに少し遅れて付いてくる騎馬隊に後詰めの歩兵隊。
街の方も心配だが出来るだけ早く村の周囲のモンスターを狩り殺ろして根源に向かわないとな。
ユリアの案内の元に村に到着すると幸いな事にまだモンスター達は村に到着してはいなかった。
後は騎士団の人間がくるまで目の前のモンスター隊を出来る限り倒すだけだ。
「セシリアはドラゴンのまま上空から攻撃を続けてくれ。行くぞ」
「はい」
「ベリアルクロー」
広範囲を凪ぎ払う爪の一撃にモンスターの進軍が暫く止まる。
その間に仲間達が動く。
セシリアは上空に飛び空から後続のモンスター達を焼き払い、俺達はモンスター達に突貫する。レベルの上がったカノンとリィンはモンスター達を叩き潰して行く。
鎧袖一触と敵を蹴散らす俺達を恐れたのか回り込むように動くモンスター達にはリアスとユリアの魔法が轟く。
思ったよりも波のモンスターが弱いな。
だけど数が多い。
殺しても殺しても涌いてくる。
合間合間でモンスターを吸収しているが地面がモンスターの死体で埋まっていくぞこれは。
「勇者様!援護いたします!」
馬の嘶きと共に聞こえる騎士達の声。
どうやら追い付いて着たか。
俺達の取りこぼしたモンスター達へと突貫する騎馬隊。
これならばこの場を任せられるな。
ならばだ。
「セシリア!来い。カノンとリィンもだ。俺達は波の根源に向かう。リアスとユリアは騎士団と協力して村の防衛に務めろ」
「はい」
「了解」
騎馬隊が到着したとはいえ歩兵隊が来るまではまだ時間がかかりそうだからな。
騎士団の人間が傷ついた時に回復出来る二人にこの場を任せる。
俺の元に降りて着たセシリアの背に乗りカノンとリィンをつれて根源に向かう。
割れた空の下にいるのは巨大な鯨。
え、鯨?
次元の白鯨Lv60
Lv60って最初に戦うボスのレベルじゃないだろ。
それに下にはまだまだ多くのモンスターが。
ってこの鯨、モンスターを吐き出しているのかよ!
「カズマ様!」
「わかっている。あの鯨を倒さないといくらでもモンスターが出てくる訳だろ」
「いくぞセシリア!」
『承知』
大きく羽ばたき鯨へと突撃するセシリアの背に乗り己の爪に覇気を集中。
長引かせるつもりはない一撃で倒す。
「フェンリルクローⅤ」
覇気を受けて漆黒に染まった爪よりも放たれた巨大な爪撃が鯨を引き裂く。
「……………………凄い」
ボスの撃破は完了している。
だけどまだ空の亀裂は治らない。
波の向こう側から敵が出てくるのか?
いやその気配はないか。
「カズマ様。波の向かうからくる敵の数が減っています」
「波が終息に向かっていると考えるべきか。なら後はこの場にいるモンスターを倒せばおしまいか」
「………殲滅」
魔物達の掃討をしてしばらくすると空は元の青空に変わる。これで本当に波が終わったか。
「カズマ様。少し質問をしても良いかな?」
モンスターを倒し終わりセシリアは人の姿へと戻っている。現在は素材の回収中たがもうすぐ終わる。終われば村に行ってリアス達を回収して街の被害を確認する予定だ。
「どうしたセシリア?」
「何故タクト達を倒した力を使わなかったのだ?今回の戦闘に使った爪よりも明らかあれの方が強いだろう」
デカログスクローのことね。
確かに今回は使わなかったかった。
「使う必要がなかったということで納得してくれ。あの爪に頼り過ぎるのは避けたいんだ」
確かにあれを使えば一人で掃討できただろうけどね。咲きを考えると騎士団や仲間達に経験を積ませたいと考えた。それこそ波の被害が大きくなるとしてもだ。
俺はこの世界でのイレギュラーな訳だしな。
「わかった」
「悪いな。それより、そろそろ村に戻るぞ」
「了解だ」
こうして俺は初めての厄災の波を乗り越えたのだった。
デカログスはチート過ぎるので自重。
能力解放済みで強化もしまくったので他の爪の強化に移っています。