「メルロマルクが勇者召喚を行いました」
告げられた言葉自体に驚く人はいない。
四聖の勇者召喚をする事自体はすでに決まった事。
なので勇者召喚をした事にはなんの問題もない。
問題なのはメルロマルクが他の国よりも先に召喚を行ったこと。
「勇者召喚はまずフォーブレイが行うはずであったな」
勇者召喚を行う順番は決まっており、更に言えばどの勇者を喚ぶのかも決まっているはずだった。
「はい。それにも関わらず勇者召喚を独断で行い、勇者召喚にも成功しております」
「それで、四聖の内の誰が召喚されたのですか?メルロマルクであれば盾の勇者様を召喚することはないでしょうが」
「全員です」
「………………なんだと?」
呆気にとられたような声が上がる。
四聖の勇者の独占。そんな事をすれば他国に喧嘩を売るようなものだというのに。
「全員です。メルロマルクは四聖の勇者様を全員召喚いたしました」
この発言に会議室は大きくざわめく。
俺からすれば原作通り。いや原作通りに進んでいる事を確認出来る情報だな。
「バカな。メルロマルクは四聖の勇者様を独占するつもりか」
「叡智の賢王は何を考えているのだ」
まぁ、騒いでいるのは仕方ないとしてだ。
「……………国王様。メルロマルクと他国が戦争になる可能性ってあるか?」
「…………………」
俺の発言で会議室が静まる。
原作では女王の尽力により戦争にはならなかったがこの世界ではどうだ?
「盾の勇者様を召喚した事でシルトヴェルトとの間で戦争に発展する可能性はあります」
「更に言えば本来は一番最初に召喚を行うはずであったフォーブレイも面白くはないでしょう」
「他国に攻められる可能性があるにも関わらず勇者召喚を行うとは………」
この頃の王様ってただのクズだし考えなしだったのだろうな。
「いえ、他国と戦争になった上で勝利する算段があるのでは」
「バカな。いかに叡智の賢王とてそんなものは」
「………ありえます」
あるのか?
ん?俺の方を見ているがどうかしたか?
「皆さんもカズマ様の実力はご存知のはずです。カズマ様と同等の力を持ったお方が四人もいらっしゃれば戦争となっても勝利する可能性はあるかと。更に言えば賢王は杖の勇者でもあられる。五人の勇者様を相手にするのはいささか危険です」
「………………」
場が沈黙する。
なまじ俺の実力を知ってるからこそ脅威に思う訳か。
フオーブレイにしても鞭の勇者の実力は知ってる。
その辺も戦争にならなかった理由なのかね。
勇者を特別視してるからこそ手出しを控える事になってる訳か。
「メルロマルクとシルトヴェルトの中は悪いと聞いている。もしもメルロマルクがシルトヴェルトを攻めた場合はシルトヴェルトに味方してメルロマルクの勇者を倒すという方針で良いのか?」
確かこの国はシルトヴェルトとは同盟国のはずだ。
そのわりには亜人の奴隷が普通にいるけど。まぁ、奴隷は人間でも普通にいるけど。
「…………そうですな。その場合は同盟国としてシルトヴェルトに協力する事となります。………勝てますかな?」
不安気に聞かれているが多少は安心させるか。
「断言は出来ない。だけど今の俺なら鞭の勇者と同レベルなら五人いても何とかなる」
「おお!」
周りの反応は悪くない。
鞭の勇者とその仲間を俺が倒したことは知られているからな。それに、鞭の勇者はレベルが高いだけで勇者の加護とかがあった訳ではないし。
普通に勝てそう。
四聖の勇者も原作通りならば鳳凰と戦う辺りまでは敵ではないだろう。
とはいえ、こちらから幾らか介入する必要がありそうだけどな。
この世界が書籍版とweb版のどちらかを見極める必要があるし。
三勇教は滅べと思う。
因みにこの国の宗教は七星の内の爪を崇めているがシルトヴェルトで崇めている盾の信者もいたりするし他の七星武器を崇めている人間もいる。
盾だから悪魔とかそんな馬鹿な考えは持たない。
というかそれが普通だと思うのだ。
まぁ、主人公は大変だろうな。
「メルロマルクの勇者についての情報を集る必要があります。監視の目を送る事にしましょう」
「そうですな」
「カズマ様。もしもの時はお願いいたします」
「了解。ただ、出来ればこちらからは手を出さないようにしてくれ。それと勇者達の強さやその動向についてはの情報は欲しい。場合によってはメルロマルクに行く事も考えるからその時はフォローを頼む」
原作であった剣の勇者が倒すドラゴンや槍の勇者が封印を解くバイオプラントの種やら欲しい物が幾らかあるからな。転移で戻るならば一瞬だし。取りに行くことを考えている。
「はい。わかりました。その時はお任せ下さい」
メルロマルクとの戦争か原作ではなかった事ではあるけどな。
フォーブレイがどう動くかだ。
タクトを倒した事で動きが変わる可能性が高いし他の七星の動きも気になる。
それに波の向こうの敵の事もあるしな。
さてどうなるやら。