キングクリムゾン!
召喚されてから二週間後…………………
炎を纏う拳と氷を纏う二筋の剣線を受け、大きな猿のモンスターが倒れた。
「カズマ様。主の撃破に成功しました」
こちらに笑顔を向ける紅い髪でウルフヘアーのグラマラスな美女。
その側にはこちらを静かに見詰める銀色の美少女。
二人の特徴としてはやはり頭に映えた獣の耳と尻尾だろう。その存在が彼女達が人間ではなく獣人である事を主張しているのだから。
「うん、お見事。二人とも強くなったね」
拍手しながら彼女達、俺の奴隷であるカノンとリィンを迎える。
幼かった彼女達は僅か二週間でレベルを上げて見た目も大きく変わっていた。今のカノンとリィンは高校生くらいに見える。
「とてもあの幼かった少女達とは思えませんね」
「流石は勇者様です。彼女達は伝承にある勇者様のお仲間の通りの強さを得ています」
俺の側には俺と一緒に戦いを眺めていたリアスとユリアが控えている。
リアスとユリアもドロップで手に入れた装備を纏いクラスアップも済ませたので以前よりも遥かに強くなっている。
まぁ、奴隷使いの爪の効果でステータスと成長率に補正を受けたうえで資質向上というレベルを減らして能力を上げる強化方を行っているカノンとリィンの方が強くなっているのだが。
あれから二週間で二人は森の奥に住む主と呼ばれるモンスターを倒せるまでにまでに強くなっている。
因みに俺も一度単独で倒している。
思った以上に強くなれていると思う。
「そろそろ、狩り場を変えるか」
装備の類いもドロップで強化したがこの場所ではこれ以上は難しい気がするしな。
「そうですね。今の私達ならばより高レベルなモンスターと戦えるでしょう」
「はい。私も信じられないくらい強くなっています」
「………………勇者の力、規格外」
「ここまで強くなれるとは驚きです」
全員がたった二週間で劇的に強くなった事に驚いている。俺自身も強化方がようやく効果を表してきたのかかなり強くなれたと思うしな。
タクトという外敵がいる以上は油断は出来ないが。
しかし、まだ先のことだが仲間を強くするためには竜帝の力が必要なんだったよな。
という訳で聞いて見た。
「ドラゴンですか?……確かエルゴー山脈にいるという噂を聞いた事が……」
いるのか。都合が良い。
ちょうど強いモンスターの棲息地に向かう予定だったし。それに山の中で鉱石を得られる期待もある。
そんな訳で馬車を用意してもらってエルゴー山脈に。
山では今まで見なかったモンスターも多く幾つもの爪の解放に成功する。
同時にレベルも上がって50前後に。
敵モンスターが強いからだけど二週間でレベルがここまで上がる事は普通は無いそうだ。
そうだよな。
原作でも主人公のヒロイン達がクラスアップしたのは2回目の波の後だったし。
ああ、でも主人公以外の勇者の仲間は2回目の波の時点でクラスアップしていたのか?
わからないな。
だけど主人公達はクラスアップを三勇教会に拒否されていた。
少なくとも主人公以外の勇者達はその前にクラスアップを済ませたはず。それこそ一度目の波の時点でクラスアップしていても不思議ではない。
まぁ、低いレベルで高いレベルの敵モンスターを倒していたからレベルアップが早かったと思っておくか。
実際、森の主とかレベルが60位ある敵だったし。
それよりもだ。
「また沸いて来ましたね」
モンスターの数が多い。
これは竜帝の縄張りにでも入ったのか?
前方から大量の敵モンスターが押し寄せて来てる。
そこまで強くはないが数が多いので苦労する。
経験値的には美味しいのだか。
「変だな」
「ええ。まるで何かから逃げるようにこちらに向かって来ています」
強いモンスター同士が奥の方で争っているのか?
素材を回収しつつ奥の方に向かうとちらほらとモンスターの死体が散乱しているのが見つかる。
「これは………」
「モンスター同士が戦ったにしては妙ですね」
モンスターの死体には明らかに武器や魔法を使って付けられた傷がある。
死体は検分しつつ爪に吸わせているが数が多い。
タダで手に入れたと考えればお得ではあるのか。
そんなことを考えながらモンスター達が逃げてきた方へと向かうと炎の爆ぜる音や何かの叫び声が聞こる。
これは戦闘中か?
「カズマ様」
「ああ、わかってる。慎重に進もう」
そしてたどり着いた場所にいるのは金髪に青い目をした鞭を持つ青年とその取り巻きらしい女達。
それに相対する竜。
「あれは、鞭の勇者様?」
どうやらユリアはタクトの事を知っているらしい。
まぁ、世界一の大国の勇者で天才と言われている人間だからな。何処かで顔を見ることもあったのだろう。
偽勇者のタクトとその一向か。
竜と戦っている事を考えると竜帝の欠片が目的か。
もしくは、俺を殺しにきたついでとかか。
「あちらも勇者様であるのならば声をかけて見ますか」
「そうですね。今後を考えれば同じ勇者同士で交流を持つべきかもしれません」
あー、タクトが敵と知らなければそうなるか。
かといって勇者を敵と断じるのも問題があるか。
どうする?
「…………………カズマ?」
俺が沈黙している事に気づいて怪訝な顔をされている。
「………ただの勘だがあいつらからは嫌な感じがする。出来れば関わりたくないな」
「?相手も勇者様ですしそういうわけには」
「わかってる。とりあえず接触はする。だけど俺が爪の勇者である事は内緒にしてくれ」
真剣な表情で言えば他の皆も頷いてもらえた。
奴隷である二人は問題ないしメイドをしているユリアならば守秘義務などは守るだろう。リアスがボロを出さないか心配だが隠れていても仕方ない。
とはいえ、黒髪で黒目の俺を見て日本人だと気づく可能性が高いよな。
「誰だ!」
近付いて来る俺達に気づいて声を上げるタクト達。
武器を構えてはいるが此方を下に見ているのだろう余裕綽々といった感じだ。
「初めましてタクト様。私達はこの国の冒険者。山に異変が起きていると聞いてその調査に来たものです」
嘘ではないな。
異変の原因はこいつらだろうけどさ。
しかし、此方を見るタクトの視線。
明らかにリアス達を値踏みしているよな。
はぁ、勇者との初邂逅がこれか。
何事もなく終わればいいのだけれどな。
現在は原作の前。
元々の爪の勇者はタクトに殺害されています。
本来ならば奪われたままなのですが勇者召喚が行われた際にタクトの元から爪は逃れて主人公の元へ。
波の黒幕である女神の力よりもカズマを転生させた神の力の方が強いために爪はタクトから逃れました。
シルトヴェルトでは爪の勇者が死亡した後にカズマの物となったのだろうと考えられています。