ええけつゼルダの誕生日パーティー   作:モアニン

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難産過ぎる・・・(げっそり)
今回はちょっとえっちなのだ。でもオ○ニーくらい中学生でもするやんな、R-15なのかこれは(´・ω・`)

お気に入りと評価ありがとうございます(平伏)

文字数が多いとUA少なくなるんですかね。それとも今回ガバが把握しきれないぐらい多いからなのか。





姦しい

森の小人、コログ族の一人、彼の漕ぐカヌーの上、私達は外套を深く被っていた。

ハイラル城の河川に囲まれた裏手には、脱出用の隠し路がある。そこは地形上多くの敵を配置できるスペースがない。

マスターのその情報を元に、私達が城内の港へ侵入せんと言う所で、外壁にいた一機のガーディアンが私達を捉え、首を上へと伸ばした。

最低限はいるってワケ。

 

「メルトリリス」

 

「揺れるわよ」

 

カヌーの中央からバネのように跳ね上る。

 

「うわっ」

 

「ヒィッ」

 

注意を払ったが大分揺れてしまったか、転覆するのを怖れて縁にしがみついている。

外壁、つまりは崖に踵を突き立て、蹴るように駆け上がって行く。崖の縁手前で突き立てた前足に力を入れ、敵の眼前へ一足に躍り出る。

 

「ふッ」

 

伸ばされた頭部は移動型のそれよりは細く、筋ばった直物を断ち切る手応えと共に首を飛ばした。

見張りの立てる様平面的な岩場まで下り、港の壁に食い込み、人一人通れるほどにせりだした通路から侵入する。

 

ごぃん、がぃん

 

鋭利な重金属が石に突き立つ音。果たして、港を徘徊していた 毒々しい配色の蜥蜴共が、反響する音に此方へ首を一斉に向けた。

露払いだ。

さぁ、楽しみましょう。

 

「ぎゅ――」

 

「げぇッ」

 

首の絞められた様な声を出して頭部と鳴き別れる魔物共。

彼等の駆け出すよりも早く、速く動き、速度に惑うか、見失ったか、鈍い内に仕留めていく。平時なら甚振るが、背後には水上で無防備なマスターがいる。時間は掛けられない。

敵わないと見て、逃げださんとする者を追走する。

 

「逃がさない」

 

ギアを上げ、相手の頭上へ人一人分跳び、首を狩飛ばす。

 

『メルト・・・』

 

しかし、呻き声の様なその声に気を取られ、外してしまう。頭の兜を断ち割られ、一心不乱に何かを叫びながら走り去る蜥蜴から、私はマスターに注意を払うことにした。

 

『粗方終わったわ。どうかしたの、マスター』

 

『・・・』

 

沈黙に、不安がテーブルクロスに出来た染みのように広がっていく。

足を止め、目に留まるモノはないかと探していると、入江付近の水面が黄金色に盛り上がった。魚雷が炸裂したかの様な水飛沫と共に、半身を綺麗に喪った蜥蜴が打ち上げられて行く。

 

『「マスターっ」』

 

水面へ飛び込むと、底は見えるものの、押し退けられて出来た空白に集う水の流れに、深く深く沈んでいくマスターの姿。

手を伸ばす彼女に私は――――

腕は?

駄目だ。手を取れない。

脚は?

論外だ。傷付けてしまう。

人の形を崩すか?

嫌だ、恐い。

 

拭いきれない恐怖に歯噛みする。こんな事をしている場合じゃないのに。

マスターに接近しつつ念話を飛ばす。

 

『私にしがみついて、マスター』

 

薄目のマスターが私の首に弱々しく手を回す。

 

『苦しい・・・』

 

『もう少しよ。気を持って、マスター』

 

水面へと浮上するにつれ、徐々にマスターの力が抜けていく。

遠い。月並みだが、私達サーヴァントの身体能力であれば僅かな距離が、その時ばかりは届き様の無いものに見えた。

力の抜け切った両腕がふわりと浮かんでいく。気の途絶えた合図。つまり、彼女は私の姿が見えていない事の合図だ。

今度こそ躊躇いなく身体を完全流体、液体にすると、霊力によって自分の体積を増やしつつ、周りの水との境界を維持しながらそれを押し広げていく。

 

(重い・・・)

 

膨大な水から生じる水圧に逆らうのを止めずとも、マスターを中心に一度押し広げた身体の密度を上げていく。縮まっていく体に、ともすれば潰されてしまう様な圧力が加わる。

そうして、1cm3辺りの重量を、マスターを大きく超す様に調節すると、彼女の体がみるみる浮かび上がっていく。

彼女が水面に顔を出すと、その体を背負うように人を象った。

 

「見えているのでしょう、ポックリン。この人を引っ張りあげるわ。手伝って」

 

森の小人、ポックリンが――どんな原理かは知れないが――片手に葉を回転させて飛ぶ茎を携えて、浮遊して来た。

 

「でも、僕の力じゃあ・・・」

 

「大丈夫よ。貴方の力があればこの人を救えるの。だから、お願い」

 

「・・・うん」

 

背中のマスターが擦れ落ちないよう背負い直して指示を出す。

 

「先ずはこの人が水中に沈まないように吊り上げて。僅かでも構わないから」

 

「わかったよ」

 

指もあるのか怪しい片手で今にも水面に滑り、沈んで行きそうなマスターの首をポックリンが掴むと、 桟橋の方へと泳いでいく。

そこへ着くと次の指示を出した。

 

「ソコからその人を引き揚げて。少し持たせてくれたらソレで良いの。私も直ぐに手伝うわ」

 

「・・・わかった。やってみる」

 

「良い子ね」

 

彼が懸命にマスターが沈まぬよう留めている内に、私は片足を桟橋に引っ掛け、体を水から出す。急ぎ、体の方向を変え、マスターの身体を両足で上手いこと挟み込んだ。

行ける。

 

「ふっ」

 

その場にマスターを横たえて呼び掛ける。

 

『「マスター、私よ。目を覚まして」』

 

「・・・おひめさま、起きないね」

 

胸元に耳を当てる。何も聞こえない。

 

「良い。ポックリン、此れから私のすること、この人に言っては駄目よ、決して」

 

「・・・うん」

 

身体を再度液体に変えると、彼女の口から体内へと侵入する。

先ずは肺に溜まる水を、私がその空間を占有することで体外へと押し出し、次は体組織の隙間を通り、心臓を直接マッサージする。

 

『起きて、マスター。起きるの』

 

長いのか短いのか、恐らく後者だろう。時間の感覚を失っていた私は、自分が握るのとはズレたタイミングで収縮した心臓に我を取り戻すと、マスターの口から体外へと抜け出した。

 

「げふ、げっほ、っげ・・ふ・ぐ・」

 

直ぐに人型へと戻ると、咳き込むマスターを覗き込む。

 

「『マスター、意識はある』」

 

「・・・え、えぇ。船を転覆されたのに驚いて、水を飲んでしまいました」

 

「わぁ、起きた。おひめさま起きた」

 

「・・・えぇ、一安心よ。助けられたわね」

 

「えへ~」

 

ポックリンの表情は窺えないが、照れ笑いを浮かべているのだろう。短い手で後頭部を擦っている。

体を起こしたマスターに安否を含めて問う。

 

「どう、行けそうかしら」

 

「行けます。行きましょう」

 

決然とした目付き。今までには見せなかった強い光を宿し、マスターは私達の行く先を見ていた。

小人にはここで帰って頂くしかない。

 

「貴方はもう帰りなさい。ここからは危険よ」

 

「僕にだってまだ出来ることはあるよ。おひめさまを助けるんだ」

 

すっかりその気になっている。

どうしたものか。

 

「・・・私と貴方とでは得意な事が違うの。貴方が得意なのは・・・そうね、人を助けること。私が得意なのは、誰かを殺すこと。全くの真逆なの」

 

「殺す・・・」

 

教育が行き届いているのだろう。否定的な雰囲気が滲み出ている。

他の、森の住人は、きっとこの小人の様に優しく育つのだろう。

 

「えぇ、殺すわ。いけない事だとしても、ソレが私に出来る唯一のコト。だから、そんな大事なものを私から取り上げないで」

 

「・・・うん」

 

「・・・話はついた。行くわよ、マスター」

 

「・・・えぇ」

 

大慌てで逃げたのだろう蜥蜴が開けていった隠し通路へと、私達は歩を進めた。

 

 

――――――――――――――

 

 

「誰も・・・見当たりませんね」

 

「人も魔物もね」

 

一言で表せば不気味。

書庫の階段を上り、武器庫を抜け、食堂に隣接した通路に来た時

 

「■■■■■■■■■――」

 

主に白銀の体毛を、次に紫の毒々しい配色、濃紺の(たてがみ)を持つライネルが、食堂側の壁から姿を見せた。石の壁を障子紙でも破るかの様に。

手に携えるのは異様な形をした盾と振るわれつつある片手剣、どちらも金色に近い真鍮の金具が用いられていた。

 

「っぐぅッ」

 

畳んで盾にした両足が軋むほどの衝撃。石壁にめり込むかという勢いで叩き付けられ、揺れた意識を建て直す頃には第二撃が迫っていた。

兜割りを脇に避け、蹴り裂かんとするも狭い空間への注意から中途半端に終わり、ぷつりと刺さった膝の棘が引かれ、糸のような傷を作る。

巨体であることを差し引いても武器の取り回し易さは向こうが上。広い空間に出たいけれど、直ぐ近くにはマスターが。

軽率だった。そう思うよりも早く閃きが訪れる。

そうだ。

 

『マスター、コイツを――』

 

言われずとも、マスターが手を掲げると、しかし現れた時のごとく、ライネルは壁を突き破って逃走した。

光が収まると、マスターに問う。

 

「どうかしら」

 

「・・・逃がしました、光の内に捕らえた手応えがありません」

 

「・・・厄介ね」

 

『メルトリリス』

 

『何かしら』

 

『私達の会話がガノンに筒抜けかもしれません。ですのでここからは念話で』

 

『了解よ』

 

生き物かすら怪しげな、感情の塊の様な存在に知性を宿す臓器があるのか疑問ではあったものの、ガーディアンを乗っ取るだなんてマネをしたのだ、思考能力が無いとは言えない。そう自分を納得させる。

ところで、外は防衛に適したガーディアンが(たむろ)している。ソレを理由に内部から侵攻する方針だったが、今の如く何度も奇襲されるのではここも安全とは言い難い。一方、ガーディアンは狙いを定めてから、射撃の準備を整える猶予がある。寧ろここは打って出るべきか。

 

『マスター、外に出ましょう。何度も奇襲されるんじゃ堪らないわ。却って外の方が安全なまである』

 

『わかりました』

 

出口の絞られている所から身を晒すのは好ましくない。

 

『マスター。出口の広い所、あるかしら』

 

『なら・・・こちらです』

 

枝分かれしていない、絨毯の敷かれた道を進み、展望室、訓練所の入り口を過ぎ、左手に見える大きな螺旋階段のある部屋へと入った。

 

『ここですね。この階段を上れば外に出ますし、恐らくはガーディアンから狙われにくい場所に出口があります』

 

城というのは要塞の役割を果たしているのか至極複雑になっている。けれど、流石は一城の姫。構造は知り尽くしているらしい。

絨毯が途切れる為に体を霊体化する。私の足音は良く響く上に騒々しいからだ。隠密性の欠片もない。

マスターから少し離れ、先導する様に捻れた階段を上がる。天井がある以外は吹き抜けており、石畳の通路に面している外の風景を目にしたところで、一旦彼女に止まるよう伝える。

外へ出ると何もおらず、・・・待て。良く見ると、風景と同化しているものの、不自然に盛り上がり、一対の点が微かに光っている所が数ヶ所ある。何れもここから離れており、天井等一見気付きにくいものばかりだ。

 

『伏兵がいる。下がって』

 

『えぇ』

 

ソレらに覆い被されて見えにくいが、手元には弓、鏃が普通の金属、僅かに黄色く発行する矢がそれに既に添えられている。

待ち伏せとは随分と計画的だ。

一つの懸念が私の頭を占める。先程ライネルが襲い掛かって来たのもそう、私達の居場所を知っているかの様にピンポイントでの出現だった。

背後のマスターを振り返った私は答えに辿り着いた。何故ならそれが目の前に、マスターの後ろに居たからだ。ブーメランの様な三叉刃をゆっくりと持ち上げて。

 

「ュ――」

 

忠告する間も惜しく、瞬時に移動する。マスターの肩越しにいる蜥蜴、頭部の兜を失った(カメレオン)の額へ、片足の階段に付いてからの実体化、そして足裏の刃を突き込んだ。

 

「――ぃっ」

 

『黙って』

 

マスターの驚く前に、念話を通して激する様に告げる。

武器と盾を垂れ下がる腕から『カラン』落とし、頭から血を噴かせて黒ずんでいく蜴を、尻餅ついたマスターが指差す。

 

『これは・・・』

 

『私達、ずっと尾けられてたのよ。コイツに。それよりも今の音で外の蜴に気付かれたかもしれないわ。ゆっくり後退して』

 

『・・・えぇ』

 

落ちた武器と盾を彼女は拾い上げ、再び霊体化した私と気持ち速めの忍び足で降りていく。

螺旋階段を降り切り、踊り場に出た私とマスターは肩を下ろした。

 

『リザルフォスには擬態能力があるとは存じていましたが、こうも近くでも気付けないなんて』

 

『でも、これで不可解な奇襲も無くなるわ』

 

辺りが突然揺れる。

パラパラと砂埃が落ちてくる。

 

『揺れてる・・・』

 

『何・・・』

 

「ゲゲエッ」

 

「ギャッギャッ」

 

震動に注意を持っていかれた私達の意識の間隙を縫うように、音もなく、上にいた蜴達が既に降りて来ていた。

 

「マスター、私の後ろに――」

 

「メルト――」

 

一際強烈な揺れ。轟音。

天井を砕き、私達の間に落下して来たのは――納得と言うべきか――火の粉を纏った半人半獣の魔物、ライネルだった。

 

「■■■■ーーーーーーーー」

 

(――またなの)

 

反射的に繰り出した刃が脇腹を裂き、腹筋に止められる。

だから筋ばったアメトイは好きになれない。

両腕を背に回され引き寄せられ、万力のごとく抱き締められる。ベアハッグ、熊式鯖折りだ。

 

「が・・ぁ″っ″・・」

 

瓦礫と舞い上がった塵から差し込む光に反応したライネルが駆けた。

 

「暑苦しい男は・・っ″・嫌いよッ」

 

自由な下半身で膝の棘を突き刺すが、何分勢いが無く、深くには至らない。

 

(なら――――)

 

そこまで考えた瞬間、横手にある木柵ごとその向こうへ、ライネルが私を抱えて身を投げ出した。

背筋が冷や汗を噴き出し、総毛立つ浮遊感の後、私は遥か奈落へと落ちて行った。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

『「――メルト、メルトっ」』

 

リザルフォスを祓うと、即座に彼女の霊力を追い、駆け出した。

先程この部屋に入らなければ真っ直ぐだった道を走り、突き当たりを左手に曲がると凡そ20m先に外へと続く出口が。そして右手には落下防止を防ぐ為の木製の手摺が、壊れている。

地下の牢屋へと通じる巨大な縦穴。その遥か下を覗く為に身をせり出した。

 

『「メルトっ、大事はありませんか」』

 

『足が頑丈で命拾いしたわ。・・・霊力を頂戴』

飄々とした彼女の調子に安堵する。

待て、以前彼女が霊力が欲しいと言った時、彼女の身に何が起こった。

あの時の感覚を思い出せ。

メルトリリスとの繋がりを意識し、彼女の体内をイメージする。

 

(・・・)

 

私が取り乱したら彼女はどうなる。落ち着け、落ち着け。

心臓の脈打つペースは天井知らずに、破裂しそうな程なのに、じっとりと汗ばんだ指先は冷たい。

 

『・・・運が良いわ。コイツ、私にご執心みたい。ここは私が引き付けるから、行って』

 

『貴女の体は私が治します。戦いに専念して』

 

『・・・行って』

 

『行きません』

 

『行くの』

 

『「・・・大事な人を、これ以上失いたくないんです」』

 

止めようのない涙に乗って流れて尚も、抑えようのない激情が喉を震わせた。

 

 

――――――――――――――

 

 

どうか。

 

お願い。

 

死なないで。

 

胸が締め付けられる。

鼻水が出る。

目許がじわりと熱を持つ。

 

何だ、これは。

 

「・・・勝手に、殺さないでくれるかしら」

 

気管が塞がってしまいそうな程の血を、俯けて口から流していく。

反射で咳き込む事が無いのは、本当は息をする必要がないから。結局、私は人を模しているに過ぎないのだから、そういった機能が存在しないのも当然だ。

なのに、これは、何。

 

『・・・第一に優先するのは貴女の身の安全。気を此方に割き過ぎない・・・約束して』

 

『・・・はい』

 

嘘だ。証拠に傷が治る速度が落ちるどころか増している。

私が時間を掛ければ掛けるほど、彼女に危機の及ぶ率が上がる。

猶予は無いが、急いては事を仕損じる。

焦燥感を捩じ伏せ、体内に意識を集中させる。最低限、相手が身動ぎすれば気づくほどには余力を残す。

上半身は放って置き、急場で先ずは裂けた股を修復していく。本来あり得ぬ方向へ曲がった足を戻し、砕けた股関節を一点に引き寄せてくっ付け、根本から断裂した筋肉を紡ぎ、張り直していく。

マスターの助力もあり、間に合ったのはそこまで。

折れた棘を脇腹から背へ貫通させたライネルが身を起こす。

その一刺し以外に、特に目立つ傷は無い。呆れた強堅ぶりである。

腹筋と背筋を杜撰ながらも治し、平行して両足を地に突き立て、それを支えに上半身を起こしつつ立ち上がる。

 

「・・・貴方が倒すべきは私じゃない。違うかしら」

 

「・・・」

 

変わらず、言葉を発する為の空間、空気の通り路を体内に確保する為に、喋り終えては顔を俯して血を排出する。

中途半端に再現された故に感じる雷の様な、明滅する痛み。きっと私はこれに意識を逸らされずには戦えない。だから、今は時間を稼ぐ。

 

「どうして私に――」

 

「■■■■■■■■――」

 

その先を口にする事は許されなかった。食い縛られた牙が剥かれ、眦を吊り上げ、額に皺が表れる程に眉間を寄せ、黒い眼球に血管が見える程熱り立ったその顔に刻んだ一本傷、恥辱を振り払い、拭わんとするその怒号。

仇敵に向ける殺意をぶち撒けるかの様な怒号。彼を真ん中に、砂塵に波模様が出来る。

私は本当にどうしようもない女だ。今私は命を奪われようとしているのに――――

 

「ねぇ、貴女」

 

ライネルが折れた剣を拾い上げた時、互いの視線が両者の瞳を捉える。僅かに出来た空白。

 

「御機嫌は如何かしら」

 

――――感じてしまう(イってしまった)

 

「■■■■■■■■■■■■」

 

理性をかなぐり捨てた獣が、剣を片手に殴り掛かった。

一歩下がれば、拳に穿たれた大地に皹が広がり、砂塵が浮く。

我慢が出来ず、喘ぎ(蹴撃)が口を衝いて漏れる(出る)

 

「んッ」

 

スぷり

 

体を薄く切った。それだけの感覚が、爪先から灼けるような甘い熱に生まれ変わる。体の震えて、捩れて仕舞うほどに熱く、痺れる快感(疼き)

 

もっと蹴りたい(はしたない)

もっと蹴りたい(恥ずかしい)

もっと蹴りたい(弄りたい)

もっと蹴りたい(気持ち良い)

もっと蹴りたい(止めなくちゃ)

もっと蹴りたい(ああでもイってしまいたい)

 

「っは、はぁッ、ぁっ、はァっ――――」

 

(性器)の気持ちの良さと昂りに蹴って(カクついて)しまう。

もっと早く、もっと強く()れば、気持ちよくなるのだろうか。

 

 

「■■■■■■■■■■■」

 

痛みと快楽に理性が蕩けてしまいそう。けれど、あと少し(もっと)、もう一寸(もっと)

この行為とこの快感に水を差されぬ様に、頭の隅に残された理性で反撃を避ける。

骨を断ち割る感触のする度に、小波の様に絶頂が訪れる。

 

 

――――――――――――――

 

「■■■■■■■■■■■」

 

魔物の頂点たる己が蔑まれている。

攻撃の一切が空振り、一方で相手のそれは尽く体を切り付けていく。

敵の攻撃は軽い。力の入らぬほどに()が抜けていかねばその輩に勝算はない。だが自身の攻撃は重い。一度当たれば蝋燭の灯の如く掻き消せるだろう。

相手の動きは今までに無いほど直線的だ。冷静に腕を振るえば、それだけで己の勝利は不動の物となる。

 

 

ぱきり

 

乾いた小枝の折れる音がする。

縦横無尽に、地を、壁を、我が身を足場に跳ねる、速度の落ちる一瞬を捉え、予測して攻撃を置くのでやっとだと言うのに、それすらも躱されてしまうのに。

 

ぱきり。ぱきり。

 

この痛みに動きを止めてしまえば、目の前にある筈の勝利が遠退く。

そんな事は許されない、許してなるものか。

胃が燃え盛るようだ。全身を奔る怒りに身を強張らせ、胃液を煮沸かす気炎が口を衝いて迸る。

 

「■■■■■■■■■■■■」

 

これしかない。

総身の怒気を刃が赤熱する程に注ぎ込み、地に叩き付けた。

灼光が()ぜる。

大地が風に吹かれた藁の如く捲れ上がっていく。

火を体内に産み出せる程に耐性を持つ己の視界が白く焼き付く。

それが収まる頃には、『ピクリ』叩かれた羽虫の如く怨敵が地に這いつくばっていた。

胸が空く。良い気分だ。爽快とは正にこの事を指すのだろう。

それでも、まだ足りない。余りにも呆気ない。数打が己の怒りに釣り合うかは全く疑問だが、文字通り虫の息だ。この一撃で最後になるのだろう。

足を踏み出す

 

べしゃり

 

段差を踏み外したかの様に体が傾く。

下を見た己は目を疑った。

溶けた前足が水溜まりになっていたのだから。

 

 

――――――――――――――

 

 

焼けた肌が空気に触れる。針山にでもなったかの様な心地だった。

苦痛に縮こまり、蹲った体は小動(こゆるぎ)も出来ない。

目だけを動かし、下半身の溶け切った毒々しい沼男が視界に入る。

 

「・・・体に、悪そうね、貴女」

 

「――――――――」

 

水音を喧しく立て、何か喚けば管を空気が通る音だけが鳴る。

剣を振り上げれば、腕が引っこ抜かれた芋づるの如く飛んで行き、壁に模様を作る。

口腔に火を充溢させれば垂れた表皮に口を塞がれ、行き場を失った爆炎に頭が爆ぜた。

今頃になって自慢のウイルスが効くとは悍ましいほどの頑健さだ。つくづく驚かされる。

これを身体に取り込めば、負わされた傷も大分治ることだろう。しかし、体が動けば、の話だが。それに、養分にするには余り気の進まない色をしている。焦げ付いたぶどうジャムか粘ついた黴の様な、腹を下す前に体が拒否反応を起こして吐いてしまうだろう色合いである。

 

 

『・・・マスター、私を見ないで』

 

『メルトっ、どうかしたんですか、メルト』

 

体も顔も焼け爛れた私を、化け物に変身する私を、人間じゃない私を見ないで。

体を液状に移行させる。

形を保てなくなった液体は広がり、接触した所から遺骸を吸収していく。

 

『今そちらへ向かっています、持ちこたえてください』

 

最悪だ。

 

『やめて、来ないで』

 

私を見たら、貴女は――――。

 

「――メルトっ」

 

先程の獣人の一撃により、脆くなっていた石壁が一部崩れる。

とうとう見られてしまった。

 

「どこですか、メルトっ」

 

目の前にいるではないか。

そこまで考え気付く、彼女にはこの姿を見せたことはなかったか。

 

『・・・マスターがいた所に向かっているわ』

 

『・・・』

 

彼女が荒げた呼吸を収めて目を閉じる事少し。

彼女の視線がこちらを向いた。

 

「嘘は、良くありませんよ。メルト」

 

『・・・』

 

何故。疑問の表情のマスターが私の前で屈んだ。

 

『醜い私を、見ないで』

 

背ける顔面もない為に、彼女の顔が嫌でも目に入る。こんな自信の持てない姿を晒してしまう事の、なんという恥ずかしさか。受け入れられる事を望んでいながらも、拒むことしか出来ない、それが今の私だ。

そんな私に対し、彼女は気まずそうに言った。

 

「・・・今更、というか。先程のが・・・その、余りに強烈で」

 

『・・・』

 

先程、先程のとは、あの痴態の事だろうか。省みると、前例の無いあの感じはマスターと感覚を共有した結果なのだろうか。

だとしたら。

いや、そうであって欲しくない。

尽きかけの気力を振り絞り、冷静に努める。

 

『何か、感じたの』

 

「あの・・・はい。凄く、気持ち――――」

 

『いいわ。止めて。結構よ』

 

赤らむ尖った耳に覚る。

死んでしまいたい。

 

『冗談でしょ・・・』

 

『・・・その、すみません』

 

羞恥心が収まると、今度は諦念と絶念に声が震え始めた。

 

『・・・私、気持ち悪いでしょ。オカシイわ、こんなの』

 

「・・・変わった嗜好だとは思います。けど、メルトも女の子ですから、気持ちいい事を気持ちいいと感じるのは可笑しくありませんよ」

 

『・・・何よ、それ。答えになってないわ』

 

今だけは人でなくて良かったと感じる。泣いていたのがきっとバレてしまうから。

 

 

――――――――――――――

 

 

 

幽かに声が聞こえる。呼び掛けるような、奮励させるようなそれ。延々と一定の音とリズムを刻むそれは、獣人の戯言(怨言)と断じていた私の興味を引いた。

 

私は体を支えられ、転落する直前の通路にマスターと戻って来ていた。

 

「・・・マスター、何か聞こえるわ」

 

「・・・私には、何も」

 

 

目を瞑り、余った感覚を他へと集中、尖らせる。

 

 

――――此方(こなた)へ集え、魔の雄共よ。

剣の者は息を絶った。

封を施す女を殺めよ。

臥薪嘗胆の日々を没せよ。

人の世にお前達が帳を下ろすのだ。

 

「・・・私の頭がまだ正常なら義勇兵募ってるわよ、あの猪」

 

「・・・急ぎましょう」

 

目の前の出口から一旦城外へ出ると、城壁の外へと続く、夕日を反射する草原に目が眩んだ。

 

「・・・メルト、あれは」

 

「・・・」

 

マスターの力の抜けきった声に認識を改める。

あれは、平原を隙間なく埋め尽くす白銀(魔物)の群れだ。

死闘を演じる羽目になった獣人、そこに散見される同族達が私達を目敏く見つけた。先頭集団の、その先頭の一体が剣を掲げて鬨を上げた。

万を遥かに超す雄叫びに大気を伝わり肌が痺れる。乱暴な行軍に大地が上下に揺り動かされる。

活火山の噴火。その先触れの現象を前にした私達の間に慌ただしい空気はなかった。

 

「・・・マスターは先にあの畜生の所へ行って頂戴。私が全部丸呑みにするわ」

 

それは一体どういうことか。マスターが葛藤と不安の同居した顔をする。まるで信用されていない。

有象無象の発する騒音の中でも彼女に届くよう声を張って宣言する。

 

「封印が終わろうと貴女の生は終わらない。私には貴女の拠り所として、護り人としての義務がある」

 

自分以外の誰かの為に笑った経験は、これが初めてになる。きっと上手く出来てはいないだろう。

 

「私は貴女を置いて死ぬつもりはないわ、マスター」

 

「行って」それだけ告げ、マスターを置いて私は駆け出した。あの場に留まり、返事を待てば一悶着あるのは想像に難くない。

彼女がそうする理由を思えば、悪い気はしないけれど。

 

「邪魔者には御退場願おうかしら」

 

アレを発動するには何処が最適か。脳内地図にヒットした地点へと私は急ぐ。

 

――――――――――――――

 

 

私は途方に暮れていた。

 

あの希望の絶たれる光景を目の前にして、何とか出来ると嘯く者を誰が信用できようか。

私達の今しがた出てきた前面だけでない。侵入して来た裏手にもガノンの呪詛(魔力)に変性した輩がいる。私達は退路をも絶たれたのだ。

私の力だって万能ではない。不意を突かれれば私は無防備であるし、飛来する矢ごと魔物を封印できるのでもない。あの大軍全てに対処し切る前に力の底に着かないという保証もない。

その夥しい魔物を相手にするのは誰だ。

それを扇動するものは誰か。

 

揺れがずんと一段強くなり、立っていられず躓く。

城のあちらこちらから間欠泉の如く水が噴く。 水。きっとメルトだろう。城下町に侵攻する白銀の絨毯が津波に覆われていく。

規模が確かにあれならどうにか出来るかもしれない。けれどあの勢いを維持できるとも限らない。

揺れの収まったのを潮合いに、私は本丸への道を駆け昇る。

 

――――――――――――――

 

 

弁財天五弦琵琶(サラスヴァティー・メルトアウト)。一つの文明圏に暮らす人々の凡てを溶かし、養分にする悪辣な宝具。だからこその対文明、対界宝具。

城内にいた魔物は激流に浚われ、城下では津波に同族と押し合い圧し合いしながら磨り潰されていく。裏手の港口からは、勢いの増した水流に抗えずに陸地の生物同様の扱いを受ける。

遍く生命の形は快楽の内に溶解する。

引き波は私の元へ理性も本能も融けた血肉を運ぶ。

尽くを飲み下す。

 

「・・・ふぅ」

 

今では明確にあの魔猪の呼び声がする。

第二軍を投入するらしい。

 

「・・・根比べってワケ。いいわ、付き合ってあげる」

 

養分としては申し分無い。しかし、混入した大量の異物(呪い)に自身が侵されていく。

これ以上は、既に、明らかに分水嶺にまで来てしまっている。制御が効かなくなる前に、せめてもう一度。

 

「調度良いわ。貴方達で陶芸でもしようかしら」

 

お願い。

死なないで。

そう願われたのだから、私に命を散らすつもりはない。だが、約束の履行が私にこの後出来るのか。私は正気を保っていられるのだろうか。

ならば、今器を作ってしまおう。これは保険だ等と、弱気になる自分を嘲笑った。

 

―――――――――――――――

 

 

 

どういうことだ。

発掘された、殊に体躯の大きいガーディアン。五体の内の一体。ガノンを追ってやって来れば、何故これが本丸にあるのか。

橙ではない、ガーディアンが薄紅の明かりを体に灯した事で疑問は氷解する。

これを依り代に、城を登って逃げて来たのだ。

すると新しい疑問が生まれる。これに取り付く考えは分かる。その体は、彼にとって自身を打倒した兵器の最高峰なのだから。その強さは彼が一番身を以て知っている筈だ。けれども、封印の力を宿した私を目前に逃げない理由とは何だ。

 

ガタガタと部品の接触に音を奏でていたガーディアンがばらばらと浮かび上がる。

部品を取り込み、魔力で構成された二本の足、体で立ち上がり、古代兵器を兵装として身に纏ったガノンが私を睥睨した。

天井まで届くのではというその巨躯は、歴史書に綴られた、時の勇者と相対した時の姿を連想させる。

 

彼の一挙手一投足に全霊で注意を傾けていた私は、水のガーディアンの持つ槍を地に突き、片足立てて跪くガノンにすら怯んでしまう。

 

『ハイラルの姫巫女よ。今が好機です』

 

「貴方は・・・」

 

ガノンの額に、第三の赤い瞳が現れる。それを境にガノンが呻き始め、彼の体が硬直する。

 

『説明する御時間は御座いません。さぁ、早く』

 

彼の言う通り、これは千載一遇の機会だ。我に戻った私は封印の力を行使する。

これ以上、あなたに誰も脅かさせはしない。

光がガノンを呑む。しかし、その形は未だ保たれていた。

突然、私の頭を鋭い痛みが貫く。ただ一人の個人が蓄えたとはとても思えぬ程の呪詛(怨み)、その情報が私の処理能力(許容量)を遥かに超えて送り込まれていた。

 

「―――ぐっ、ぅがぁ」

 

押し潰されそうな圧に今度は私が膝を突く。

ガノンの抵抗が熾烈に過ぎる。猛烈なそれに此方が飲み込まれてしまいそうだ。

激痛に掻き乱される頭の中。現状を打開する為の思考が、岩も削り取る様な奔流に擦られた生乾きのインクになる。

鼻の奥から唇へ温かいものが滴る。鉄の味がする。視界が何時ぞや見せてもらった、付きかけの電灯の如く明滅する。

腕が落ちるその時、誰かがそれを支えた。

 

「それでも貴女、私のマスターかしら」

 

「・・・メルト」

 

凍てつく吹雪の緞帳が過ぎ、晴天の空が広がったかの様だった。

頭のはっきりしない私は言葉も思い付かず彼女をぼうと眺めるだけだ。

口元を袖で拭われる。

 

「・・・遅れてごめんなさい。貴女は私の心を守ってくれた、今度は私がマスターを守る番よ」

 

何故髪の色が変わったのか。目の色が紫色なのか。

益体もない疑問が浮かぶ。思考が全く纏まらない。けれども、考えることが出来る。

目と鼻の先にいるメルトリリス、彼女の髪の色素が抜け落ちていき、目の色は元来の青ではなく赤に染まっていく。更には赤い脈が彼女の首から登っていく。とても肯定的に受け取れる様子ではない。

 

「・・・メルト」

 

「大丈夫よ。私が怪物でも貴女は傍にいてくれる。私を守ってくれる」

 

そうでしょう、マスター。

 

そうだ。私がメルトを守るのだ。鼓動の速まる心臓、そこに灯る温もりが腕の血管を通り、掌に達した時、光が黄昏色に染まっていく。

ガノンが光に削られる。

 

「――――――――」

 

叫ぶ。全身に残る力を余さず絞り出す。体を脱力感が占めていく。構うものか。

後先考えぬ全身全霊を掛けた一撃に、一旦怯んだ彼の体が波にさらわれる砂城の様に解けて崩れ去っていく。限界が近かったのは私だけではなかったらしい。

 

「―――■、■■ォオオオ」

 

『これは・・・』

 

ガノンの体を青い光が繭の様に包んでいく。シーカー族の技術の特色であるそれは、私に不吉な予感を抱かせるには充分だった。

焦りを露にした男の声がこの場に反響する。

 

『ガノンは自己修復機能に付随する防壁を利用する算段です。一度始まってしまえば止める術は・・・』

 

何て機能を付けてくれたのか。

こんな所まで来て。

悪態をつく暇すら惜しみ、考えを巡らせる。仮にそれが成ってしまえば彼を実質的に押し留む事の出来る人間がいなくなるということだ。 ここにいる私達皆死んでしまう。

 

「あーーーっ、もう」

 

「マスターっ」

 

『姫巫女殿っ』

 

そんな都合良く、手っ取り早く良策が思い付くわけがない。

背後で呼び止める声を無視し、形を変えて宙に浮かぶ水の心臓へと私は突っ込んだ。

 

 

 









シーカー族の人:ダイワ・サトル
コログ:ポックリン・リリィ

不快に思うことがあったら自分の力量不足なので、キャラに罪はないとご了承ください。

デイジーは楽しいから皆も使おう。コントローラーはプロコンが、良いぞ。(joy-con×2逝去)
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