「…あなたは、この子…と…千…を…」
「でも、博……」
声が聞こえる…。一人は姉ちゃん、そして、もう一人は…思い出せない。でも、きっと大事な人だった気がする。
「この…と…幸せに…人間…生きて…」
「はい…絶対に…を…」
駄目だ…聞き取れないし、何だか眠い…。
「…千雪!千雪!」
身体が揺れる…。そして、あたしを呼ぶ声がする。耐えきれなくなり目を開ける。
「やっと、起きたか…。もう授業始まるから早く教室に戻れよ?」
「やだ」
あたしは、織斑千雪。ただの悪ガキである。
あたしはたった今懐かしいような夢を見て起きたら、どうやら兄貴の席で膝の上で寝ていたようだ。
ちなみに、兄貴というのはさっきあたしに教室に戻るように言った少年。名は、織斑一夏。
「えぇ!?またか…」
「仕方ないだろう…私達にこの子は手に負えん」
嫌がった兄貴に、呆れたように言った少女は…篠ノ之箒。あたしと兄貴の幼馴染みだ。
「しょうがない…。後、一分だからな?」
「うん。兄貴大好き」
兄貴から許可を貰うと、またホッとして膝の上を堪能した。
何故、教室に戻らないかって?何を隠そう、あたしはぼっちだからだ。
◇◇◇
俺は織斑一夏。今、小さい妹の…千雪の面倒を見ている。
うちに両親は居ない。家族は年の離れた姉と、二つ下の妹だけ。血はつながってないけど、箒や、箒の姉である束さん、そしてその両親…篠ノ之家の皆とは昔から家族のような存在だ。よく世話になってるし。
「どうした?」
「あぁ…。ちょっと、前の事思い出しててさ…」
俺が考え事をしてると箒から声をかけられ、俺はそう答えた。
◇◇◇
一夏が思い出していた事…それは、ある日の掃除の時間の事だった。
「や~い!男女!」
「今日は、木刀持ってないのかよー」
「…竹刀だ」
掃除の時間、箒は男子達に馬鹿にされていた。幼い頃から男のような口調や振る舞いをしていたら為、狙われたのだ。
「しゃべり方も変だもんなー」
「やーい、男女男女~」
「……」
箒はこのような事で怒る性格ではない為、沈黙したままだった。
「うっせーなぁ。暇なら帰れよ。てか、手伝え」
「はたらかざるものくうべからずー」
その時、一夏と千雪(※ぼっちなので勝手に来た)は二人で掃除をしていた。自分以外の当番はサボって帰ってしまったので二人でやっていた。一夏は昔より、誰かがサボれば自分がやる。そんな少年だった。
「何だよ織斑、こいつの事庇うのか?」
「お前男女の味方かよ?てか、なんで妹居んだよ…」
「こいつ、男女の事好きなんじゃね?」
男子達は、一夏の事もからかい始めた。
「掃除の邪魔だ。手伝わないならあっち行け」
鬱陶しそうに掃除を続ける一夏に男子達はさらに絡んだ。ちなみに、千雪はちりとりに溜まったゴミを捨てに行っていた。
「ぷっ。何真面目に掃除してんだか…」
「バカじゃねーの…ぐっ!?」
「痛っ!」
男子の言葉に腹を立てた箒が一人の男子の胸倉を掴み、千雪がちりとりをもう一人の男子に投げつけた。
「真面目にやる事の何が悪い!?お前達のような輩よりは遥かにマシだ!」
「なまけものがえらそーなこといってんじゃねー」
箒は真面目な性格、千雪は働くのは義務という考えからか真面目にやっている人間が不真面目な人間に馬鹿にされる事が我慢ならなかった。
「ム、ムキになんてなってんじゃねえよ。放せ、放せよ!」
「この野郎っ!」
「ちっ、やっぱり夫婦だぜ。こいつら朝からイチャイチャしてるし。この前なんかリボンしてたしな!男女のくせに。馬鹿みてー」
箒に胸倉を掴まれ抵抗する男子、千雪に殴りかかる男子が居る中、最後の一人は箒を標的にし馬鹿にするように笑った。
「ふぎっ!?」
「ぎゃあっ!?」
次の瞬間、男子の頬に一夏の拳が直撃し倒れ、千雪に殴りかかった男子が拳を捌かれ足をかけられ転ばされ倒れた。
「笑える?あいつがリボンしてたらおかしいのかよ。似合ってるだろうが!」
「てめーやりやがったな!」
殴られた事に腹を立てた男子と箒の手を何とか振り払った男子が二人がかりで叩きのめそうとするが、道場や千冬に鍛えられている一夏には歯が立たずあっけなくやられた。そのすぐ近くでは、千雪が男子に馬乗りになってタコなぐりにしていた。箒は喧嘩を止める事もなく、只一夏を見ていた。その時から箒は一夏に惚れたのだ。
その後、一夏と千雪は駆けつけた教師にやり過ぎだと叱られ、その日は何もなく三人は箒の実家の道場へ行き鍛錬をしていた。
「……お前達は馬鹿だ」
「俺達は馬鹿じゃねえよ」
「あたしも…」
箒の一言に抗議するように二人は不服そうな顔をして言った。
「あんな事をすれば後で面倒になるとは考えないのか?馬鹿にされていたのは私でお前達は無関係じゃないか」
箒の言う通り後日、間違いなくやられた男子達の親が怒鳴り込んでくる事間違い無しである。
「考えねぇよ。複数で嫌がらせするってのが気に入らねぇ。そんなの男がやる事じゃない」
「あたしは、喧嘩がしたかったからやっただけだし」
一夏と千雪の言葉を黙って聞く。千雪は一夏と同じ言葉ではないが、よく見れば少し頬が赤く目を逸らしたり挙動不審であり、箒は彼女が自分以上に素直でない事を知っていた為、同じ理由だと解釈した。
「だからさ、あいつらの言ってる事なんて気にせず…前付けてたリボン似合ってるから、また付けろよ」
笑顔でそう言った一夏に箒は顔を赤らめ彼が好きだという自覚した。
「ふんっ。付けるか付けないかは私の勝手だ!」
「ふーん。ま、良いけどさ」
特に箒の真意に気付く事もなく、一夏はそう言った。唐変木である。
「…あたしは付けた方が良いと思う」
「え?」
千雪が口を開いて言うと箒は意外そうに首を傾げる。
「箒は、あたしみたいにからだうごかしたり、けんかしかできないわけじゃないし…顔も、いいから…その…」
「ふふ…そうか。ありがとう。だが、お前の顔は綺麗だと思うぞ」
「……!!?」
箒が微笑んでそっと頭を撫でて、言うと千雪は顔を真っ赤にして俯いた。
「篠ノ之。そういう事言うと照れるぞ、千雪は」
「…照れてない」
一夏の援護射撃が命中し千雪を見事拗ねさせた。
「……だ」
「えっ?」
「私の名は箒だ。いい加減覚えろ。父も母も姉も篠ノ之では紛らわしいだろ。次からは名前で呼べ。いいな?」
「分かったよ。じゃあ、俺の事も一夏って呼べよな」
「な、なに?」
「だから名前だよ、千雪はともかく千冬姉と俺は名字呼びじゃ紛らしいし、一夏って呼べよな」
お互いが自分の名前を呼ぶように言っていた。
「あ、ああ…」
「よし、箒」
「い、一夏」
あっさり一夏は名前が言えたが箒は照れながら言い少し時間が掛かった。
「(つか、今まで名前で呼び合ってなかったのか…)」
その二人を見て千雪は首を傾げるばかりだった。
◇◇◇
「なんて事もあったよな。にしても、あの時より前は俺達そんなに仲良くなかったな…千雪は違ったけど」
「そうだな。まぁ、あの子は結構道場の掃除とか、かなり手伝ってくれてたし私にとって印象が良かったのだろう。それに、あの時より前から年上として面倒見ていたからな」
俺が思い出話をしていると箒は相づちを打ちながら聞いてくれたし、箒も何があったか思い出すように話している。箒とは昔は馬が合わなくて仲があまり良くなかった。
「確かにそんな感じだったな。後、俺が箒に勝ちたくてよく挑んでたな。箒は体術でよく千雪に挑んでいたような…」
俺は当時、箒に剣道の試合を何度も申し込んでいたが全く勝てなかった。今では多分、実力差はそんなにない。しかし、俺も箒も体術だけなら千雪には全く敵わない。
「そうだな。もうお前には追い付かれてしまったが…。負けたくないからな…剣道なら勝てるのだが」
困ったように箒は言った。実際、困るよな。妹より弱い兄から脱却しないと…。
「やっぱ、箒から見てもそう思うか。俺もさ…」
\キンコンカンコーン^^/
俺が続きを話そうとするとチャイムが鳴った。
「おい、チャイムが鳴った。早く教室戻れよ?」
「んぁ…もうそんな時間。ばいばい」
今まで熟睡してたようで眠そうに目を擦りながら俺の膝から降りて教室から出て行った。頑張れ、矢部先生(千雪のクラスの担任)。
と、こんな感じに…ワンサマーも存在させる事にしました。話の流れは一部除いてほぼ、リメイク前と同じです。
リメイク前はシャルと簪不在の予定でしたが、今作では出します。