狂犬が如く   作:聖奈

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ヘイ、お待ち!狂犬が如く第三話、災厄ですよ!


三話 災厄

千雪が束にISを見せられてから、しばらく経った。その時から束や高杉、千冬はあまり千雪に構ってくれなくなった。その事に千雪は腹を立てているがそうした所で状況が変わる事はない。

 

(姉ちゃん達、最近構ってくれない…。何なんだよ、ったく…。そんなに忙しいのか…)

 

「ーー雪!千雪ったら!」

 

「あ?」

 

「さっきから、話しかけても無反応だぞ。どうしたんだ」

 

「えっ、ああ。ごめん」

 

一夏から話し掛けられても無反応だったようで千雪は謝罪する。

 

「やっぱ、千冬姉達の事か?」

 

「うん…」

 

「大丈夫だって、用事が済んだら遊んでくれるさ。きっと」

 

「だよな。箒ちゃんは…?」

 

「箒は…」

 

千雪が不安に苛まれていると一夏は頭を撫でながら宥める。

 

「今日はどんなブレンズなんだ!?イエネコか!?アムールドラゴンか!?」

 

「……」

 

「……」

 

箒はテレビを夢中で見ながらアニメの内容が気になるようでブツブツ独り言を連発していた。その様子に一夏と千雪は軽くドン引きする。

 

一夏達が見ているアニメは「のけものブレンズ2」という。動物達が人の姿に変身したキャラが登場するアニメだ。一時期、流行ったアニメで続編が作られたが一期の監督が外され別物になったらしい。

 

「な、なぁ…箒。一期はこの前見せたけど、二期は好きか?」

 

「何を言う!好きに決まってるだろ」

 

箒は何を馬鹿なと言いたげに一夏の質問に答える。

 

「じゃあ、クルルは?」

 

「…………好きだ」

 

「何だ今の間!?」

 

一夏は確信した。箒はクルル(のけものブレンズの人間キャラ)が本当は嫌いだと。

 

(何でこうなった)

 

篠ノ之家ではチャンネル権が基本的に両親にあるので(たまに譲ってくれる)、毎週見れない為、放送時間は毎日織斑家に通っていた。

 

箒がアニメに興味があったので織斑家総出でアニメを布教したらのけものブレンズにドハマリし、他のアニメを見せても同じようにドハマリした。

 

つまり、箒は…アニオタと化したのだ。

 

「あんな奴は許せんッ!私の波紋をーー」

 

「あっ、始まった」

 

クルルへの怒りに燃え、波紋を練ろうとする箒だが千雪がOPと共に始まったと言うと、怒りなど忘れてテレビを食い入るように見つめる。

 

「ジャパンビート!」

 

「うわ…」

 

千雪と一夏はOPを口ずさむ箒を生暖かい目で見つめながら、自分達もテレビを見る。

 

\ウウウウウゥゥッwwwwwウウウウウゥゥッwwwww^^/

 

OPが終わると同時にJアラートが鳴り、テレビの画面にテロップが表示される。

 

「おい!!まだ途中だぞ!!」

 

「ちょ、落ち着けって」

 

「ッ!?な、んだ…これは…」

 

それに箒が怒りテレビを揺らす。一夏が宥めるが、箒は画面を直視した途端に、顔を青ざめ膝を付く。

 

「ど、どうしたんだ!?っ…!」

 

「ぁ…」

 

急に様子が変わった箒を見て驚くが、一夏と千雪もテレビを見ると顔を青くし目を見開く。

 

「緊急ニュースです!日本に向けてミサイルが発射されました!!繰り返します、日本に向けてミサイルが発射されました!!」

 

ニュースのアナウンサーが焦った様子で内容を伝える。そのニュースを見て一夏達はしばらく固まっていた。千雪は思わずチャンネルを変えた。しかし、同じ内容だった。もう一度変えようとすると一夏と箒の手に阻まれた。

 

「……」

 

一夏と箒はもう止めようと言わんばかりに震えながら千雪の方を見て首を横に振った。

 

「っ…!」

 

千雪はリモコンを置いて画面を見つめるしかなかった。今もミサイルが飛んでおり、ミサイルがCGや合成ではないのは明らかだ。

 

「もうだめだ、おしまいだ…」

 

千雪は恐怖した。ミサイルが直撃したらどのように死ぬのかを。殴られた感じか、火傷したような痛みで苦しんで死ぬのかなと。

 

「おじさんの所に行こう…」

 

「待て、外に出ている間に直撃したら…!」

 

「でも、大人が居ないとどうしたらいいか…」

 

一夏は恐怖し涙を流す千雪を見ると指で拭いながら立てるかと手を取り箒に言う。しかし、箒は箒で少しでも安全な方が良いと思い、一夏に反対した。一夏は迷いながらも葛藤していた。

 

(俺は…どうしたら良いんだ…)

 

テレビにはミサイルの数は2341発と書かれている。どう考えても助かる見込みは0に近い。

 

「あれは…!?」

 

すると、テレビから驚いた声がすると一夏達はテレビを見た。なんと、そこにはミサイルを剣で落とす謎の飛行物体と銃でミサイルを撃ち落とす謎の飛行物体の存在があった。

 

(何だ、あれ…凄い…。これはまるで…)

 

その様はまるで、テレビに出てくる悪者をやっつけるヒーローのように千雪には映った。リポーターが何か言ってるが今の一夏達には耳から通り抜けていき分からない。そして、謎の飛行物体がミサイルを全て落とし終わると戦闘機や戦車が飛行物体に攻撃を仕掛けるがあっさりと撃破してしまった。

 

「今のうちに行こう!」

 

「ああ、父さんや母さんが心配している。今なら大丈夫だ!」

 

箒は千雪の手を引くと篠ノ之家へ一夏と共に向かった。

 

「うわっ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

行く途中に巨大な影が通り過ぎて一夏達は驚く。見上げるとこには白い騎士のような飛行物体と紅い騎士のような飛行物体があった。

 

「綺麗…」

 

「だな…」

 

そう呟いていると一夏と千雪の方へと何か小さく光る物が落ちてきた。

 

「危ねえッ!ぐあぁッ、つっ…うぅ…!」

 

「痛ッ…!!ぁ、ぐっ…」

 

その小さく光る物を眺めていると、一夏が守るように千雪を抱き締めると一夏の肩を貫通して、返り血が千雪や辺りに飛び散り千雪の左頬にそれが掠り鋭い痛みが二人の身体に走り二人はうずくまった。

 

「千雪!?一夏…!?しっかりしろ…!」

 

「一夏君!?千雪君!?」

 

箒が驚くと同時に二人に駆け寄り、千雪を脇に抱えて傷の深い一夏に肩を貸して神社へ急いで向かおうとした所、柳韻も織斑家に向かおうとしていたのか気付いて駆け寄り、救急車を呼んだ。

 

それから、しばらくして一夏と千雪は運ばれた。

 

「彼は命に別状はありませんが…手術が必要かと…。彼女の方は残念ですが、傷が深くて消せそうには…」

 

「そんな…」

 

声の主は箒の母親と医者だった。

 

(頬について?なら、別にいいや…死にやしないんだし)

 

「千雪!一夏!大丈夫か!?」

 

「頬を切っただけだから平気」

 

「ごめん、ちゃんと守れなかった…。俺…」

 

「良いんだ、お前達が無事ならば」

 

そんな事を思っていると千冬が病室に血相を変えて入ってきた。二人が言うと千冬は一夏と千雪を抱き締めた。その時、ミサイルの時の恐怖がぶり返して来たのか一夏と千雪は沢山泣いた。

 

 

この事件は後に、『紅白騎士事件』と呼ばれ歴史に残った。

 

 

しかし、一夏達はまだ知らなかった。この事件は大きな爪痕を残し、これから先に多くの人間が不幸になり世界が狂い始めたという事を。

 

 

 

 




だいぶ遅れてしまいましたね…。とりあえず、書き方は色々試行錯誤しましたが鎌の勇者の方でやってる方式を採用します。

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