将来の伴侶に達也を求めたら却下されたので四葉から家出します 作:僅かな希望
作中に出てくる魔法ですが、原作であまり触れられていない魔法や初登場の魔法には後書きで軽く説明を入れてあります。
1/15) 各章毎の区切りを見やすくするため、サブタイトルをプロローグⅡに変更しました。
さて、勢いで家出したのは良いが正直なところ暇である。四葉家秘伝の『フラッシュ・キャスト』さえあれば勉強も試験も合格は間違い無しなのだ。
だが私はここで閃いてしまった。
第一高校には深雪さんも入学するのではなかっただろうか。深雪さんは四葉家内では私と張り合える数少ない人物だ。
ということはつまり、こういう流れが出来上がるのではないか。
深雪さんを倒して主席合格→深雪より上だなんて凄いじゃないか、と達也に褒められる→結婚。
━━我ながら完璧な流れだ……。そうと決まればまずは司波家にご挨拶へと向かわなければならない。思い立ったが吉日だ。
*
思い立ったが吉日、という言葉はどうやら嘘らしい。
『瞬間移動』で達也の隣に行こうとしたが行けないのだ。
と言っても原因はわかりきっている。達也本人が拒絶しているのだ。流石の私も好きな人から拒絶されるのは悲しいらしい。
そもそも『瞬間移動』というのは、相手の隣に自分がいる、という状態を創って初めて可能となる魔法だ。つまりはその前提となる定義付けを破壊されてしまったら私は移動出来ない。
なので私も本気を出すことにした。恋する乙女の本気を舐めてもらっては困る。
そもそも定義付けが一つだからいけないのだ。これを破壊出来るのは達也一人、つまり物量作戦こそが正義!
まずは達也の周りに十個定義付けをする。そして同時に魔法発動、をしようとしたらまた破壊されてしまった。
正直言って、いい加減諦めて欲しい。この魔法を同時発動するときの私の脳内をぜひ想像してみて欲しい。
定義付け一つの場合だと達也の隣に私は一人だ。
しかし、定義付けが十個の場合は達也の隣に私が十人ということになる。
一体なんの悪夢だと言うのだ。達也は私一人のものであって、いくら私であろうと流石に譲ることは出来ない。
流石にこれ以上の悪夢を許容することが出来ない私は今日は、諦めるのだった。
*
「ふう、とりあえずは落ち着いたか……」
「ご無事ですか、お兄様?」
「あぁ。だが叔母上から緊急で連絡が来た際には何があったのかと身構えたが、すぐに意味を理解できたよ……」
「……?それはどういう意味でしょうか?」
「いや、何でもないさ。それより深雪、入試ももうすぐだ。油断してうっかりミスをしてはいけないからね、俺と一緒に最後の確認でもしておこう」
「はいお兄様!」
この場では上手く誤魔化すことに成功した達也だったが内心ではかなり冷や汗をかいていた。
当主である真夜からの連絡で
"望夢さんがそちらに嫁撃するかもしれません"
何か突撃という言葉とは違った気もするが、こんな言葉を急に聞かされ達也は驚いた。しかし彼はすぐに理解することとなる。
この連絡の少し後、自分の周りに何かが定義されていくのを感じたからだ。
思わず『
なんと今度は自分の周りに十人の望夢が形成されていく。この時達也の脳裏に浮かんだのは地獄だった。
達也は元より、望夢の自分に対する感情が何かがおかしいと感じていた。その感情が何かまではわからない。だがこのままにした場合、深雪視点では達也の周りに突如十人の女性が現れていることになる。
━━その先は地獄である。このご近所一帯が季節外れの吹雪になることは想像に難くない。それだけは何が何でも阻止しなくてはならない。
幸い真夜の忠告のお陰でCADは準備万端だ。深雪に何も悟らせてはならない、ただその一心で彼は自分の持ち得る限界の速度で定義を破綻させた。
「どうだ、深雪。勉強は順調か?何かわからないことがあったらすぐに聞くんだぞ」
「━━お兄様……!深雪のためにそんなにも……」
こちらはこちらで奇妙な事態になったが、達也は胃がキリキリと痛みながらも、無事にこの日を乗り越えたのだった。
嫁撃はこれから入学まで毎日続きます。
原作では深雪で大変だった達也ですが、今回は望夢もいるので彼の苦労は計り知れませんね…。
↓作中の魔法の説明
『フラッシュ・キャスト』→記憶領域にイメージ記憶として起動式を刻む技術。本来ならば起動式はCADを通す必要があるが、その一工程を省略しているため魔法の発動速度が速くなるというメリットがある。
『瞬間移動』→自分の存在を特定の場所にいる、と定義付けすることで自分の存在をその場所に創るという魔法。対象の場所さえわかれば移動することが可能。作中では達也の場所は知らないが愛の力で達也の場所ならいつでもわかる。
ふわっと解説しておきます。わからない部分などあれば感想ください。