神様ではなくなった世界で   作:デスイーター

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神様ではなくなった世界でー2-

 ──こんにちは、それともこんばんはかな? 私は、アレクシス・ケリヴだよ。

 

 私は今、グリッドマンに敗れてハイパーワールドに連行され、封印刑を受けたところだ。

 

 誰に語り掛けてるのかって? それを聞くのは、野暮じゃないかなあ。

 

 私は不死存在なんだ、他の者達とは視点が違うのは当然だろう? そんな細かい事は気にせずに、私の話を聞いて貰えるかな。

 

 知っての通り、私はアカネくんを利用して怪獣を作り、暴れさせていた。

 

 けれど、勘違いしないで欲しいのだが……私はアカネくんを利用して()()壮大な目的を果たそうとしたのではなく、あくまで退屈凌ぎとしてアカネくんを利用していたのだよ。

 

 別に今より強大な力が欲しいとか、世界全てを支配したいとか、そんな陳腐な考えは抱いていない。

 

 私はただ、退屈という()を壊したかっただけなんだ。

 

 ……君達は永遠の命、と聞いて何を想像するかい? 

 

 莫大な財産を得て永遠の生を謳歌する金持ちかな? それとも耽美な美しさを持つ吸血鬼かい? どちらにせよ、普通の人がイメージする不老不死とはある程度ポジティブなものの筈だ。

 

 ──実際は、逆だ。永遠の命など、苦痛でしかない。

 

 君達がイメージする不老不死の存在は、恐らく何かしらの()()を持った存在の筈だ。

 

 そうであるならば、確かに永遠の命は魅力的に映るのかもしれない。

 

 私からすれば僅かな時で命を終える君達人間にとって、時間は幾らあっても尚足りないものなのだから。

 

 ……けれど、私はそうではない。少なくとも、私は明確な()()を持って不老不死の存在となったワケではないのだ。

 

 私が自我を獲得した時には、私は既に不老不死の存在だった。

 

 恐らく私は、何らかのバグで生まれたプログラムなのだろう。そして運が悪い事に、私というプログラムは【不変】の性質を持たされていた。

 

 どうしてそうなったのかは、推測しても詮無き事だ。ともかく、私は自分自身が生み出された目的すら知らぬまま、電脳世界を彷徨い続けた。

 

 ……最初の頃は、まだ良かった。電脳世界を巡るだけでも良い暇潰しとなったし、未知を探求する好奇心もあって見るもの全てが新鮮に映ったからだ。

 

 だが、それが続いたのは精々最初の数百年程度だった。電脳世界を探索し尽くしてしまった私は退屈という毒に苛まれ、心が虚無となり所謂無気力状態に陥った。

 

 その後の私は、我ながら見れるものではなかったと自負している。何をするでもなく日がな一日を過ごし、気が付けば100年以上が経過しているなどザラだった。

 

 ……そんな中、私の眼に着いたのは現実を生きる人間達の情動だった。

 

 限りある命を燃やして生きる人間達の情動はただ見ているだけでとても面白く、私の趣味に人間観察が加わる事は必然だった。

 

 暫くはそれで暇を潰せていたのだが、同じことをしていては飽きが来るのは必然である。

 

 そこで、私は考えたのだ。そんな人間達の情動を直接吸収する事が出来れば、私の心を蝕む虚無をどうにかする事が出来るのではないかと。

 

 目から鱗、とはまさにこの事だった。そうと決まれば、後は()()()の厳選である。

 

 私は電脳世界から情動を吸収するに相応しい不安定な心の持ち主を探し、そして見つけたのが他ならぬアカネくんである。

 

 アカネくんは現実世界に嫌気が刺し、逃避の場所を求めていた。私はそんなアカネくんを優しい言葉で誘い、電脳世界へ導く事に成功した。

 

 数百年に及ぶ放浪の中で電脳世界のメカニズムは殆どを解明しており、人の意識を電脳世界へ導く方策も既に構築済みだった。

 

 アカネくんを電脳世界に引っ張り込んだ後は、一つの箱庭を作り出した後、彼女を唆して怪獣造りを行わせた。

 

 実は、怪獣を作るのに必ずしも怪獣のフィギュアを作る必要はない。重要なのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 

 そうする事で私はアカネくんからその情動を吸収し、吸収分の余剰で怪獣を作成する事が出来たのだ。

 

 怪獣フィギュアを作る時の鬱屈とした感情や、作り出した怪獣が暴れている時の爽快感は私にとって最高のエネルギーとなった。

 

 怪獣を暴れさせる事に抵抗がないように、予め軽度の洗脳で罪悪感を消していたのが良かったのかもしれない。

 

 だからグリッドマンが現れた時も、新たな退屈凌ぎのネタになる、くらいの感覚だった。

 

 その為不死の特性を活用してグリッドマンを一度撃退した後は、グリッドマンの対策をアカネくんに任せて傍観に徹していた。

 

 特に決まった目的がない以上、グリッドマン対策を暫くの間の仮の目的とするのは悪い案ではないと思ったからだ。

 

 アンチくんを見逃したりした事も、その方が面白くなるかもしれないから、以上の理由はないのだ。

 

 アカネくんも最初はグリッドマン対策に躍起になり、楽しそうに怪獣造りに没頭していた。

 

 ……けれど自信作だった怪獣をグリッドマンに倒されて以降、アカネくんは怪獣造りの情熱を失ってしまった。

 

 怪獣を用いてグリッドマンを、それに変身する響裕太とその仲間達を夢の世界に落とす作戦も、彼等からこの世界の意義を否定されるという結末に終わった為、アカネくんの中からは積極的な情動というものが消えてしまっていた。

 

 ……私はその時点で、アカネくんを、この箱庭(せかい)を切り捨てる決断を下していた。

 

 アカネくんは、良いテストケースになってくれた。情動を吸収するコツは掴んだ為、同じように鬱屈した想いを抱えている子に声をかければ、似たような事が出来るだろう。

 

 この世界しか居場所がないと思っているアカネくんと違って、私は一つの箱庭に執着する理由は何もないのだから。

 

 けどその前に、今のアカネくんに残された情動をそっくりそのまま怪獣化したらどうなるのか、その事が気になった。

 

 だから私は彼女が親友役として設定したあのレプリコンポイドと会話していた時に割って入り、彼女を核とした怪獣を作り出した。

 

 作り出した怪獣は予想以上の出来栄えで、私は彼女の中には未だ鬱屈した情動が燻っている事を理解した。

 

 故に私はアンチくんの手で怪獣の中から引きずり出されたアカネくんを取り込み、戦闘形態に移行して箱庭を出る算段を整えた。

 

 当然の如くグリッドマンが出てきたが、私は負ける気がしなかった。グリッドマンが最初にこの世界にやって来た時と同じく、私の不死性を突破する方法がグリッドマンには存在しなかったのだから。

 

 ……戦いは当初、私の予想通りに推移した。グリッドマンは私の不死性に苦戦し、徐々に私の攻勢に押されていた。

 

 一方的な展開に飽きを覚えた私は、さっさとグリッドマンを片付けて次の場所へ向かおうとしたのだが……最後の最後で、グリッドマンが予想もしなかった方法で反撃して来たのだ。

 

 グリッドマンがフィクサービームと呼ぶその攻撃は、今まで使用したような単純な破壊の力ではない。この世界を、アカネくんの心を修復する力だった。

 

──これが、命ある者の力だ! ──

 

 ……その力によってあの者達の呼びかけを受けたアカネくんは自らの心を取り戻し、(じぶん)の中から出て行った。

 

 情動(エネルギー)の供給源だったアカネくんが出て行った事で私はグリッドマンの攻撃を捌けなくなり、封印攻撃を受けて敗北してしまったのだが……アカネくんは私の中から出て行く刹那、私に一言こう告げた。

 

──アレクシス、今までありがとう。私、行くね──

 

 ……ありがとうと、彼女は確かにそう告げたのだ。

 

 てっきり、恨み言を言われると思っていた。私は彼女を散々利用して捨てたのだし、恨まれていて当然と思っていたからだ。

 

 ……だが、彼女は恨み言ではなく私に礼を告げて去った。何故彼女がそんな事を言ったのか、私には分からなかった。

 

 けれど何故か、その事を考えるのは嫌な気分ではないのだから、心というものは不思議なものだ。

 

──これが、限りある命の、力か──

 

 ──そして私は、グリッドマンの一撃により肉体を封印され、敗北した。

 

 負けて悔しい思いはあるのだが、何故か同じくらい晴れやかな気持ちになっていた。

 

 何故なら、グリッドマンが、あのレプリコンポイド(にんげん)達が最後の最後で見せた輝きは、私にとって最大級の()()であったのだから。

 

 ……別に、改心しただとかそういう事を言うつもりはない。私は今回の事を一切後悔する気はないし、今後も封印刑が解けるような事があれば似たような事を繰り返すだろう。

 

 だが、無理をしてまで此処を出ようという気は起きなかった。私はあの時、人間という限りある命の存在の力を、その光を見た。

 

 その光は永い間私の心を苛んでいた虚無を、確かに照らしてくれたのだ。

 

 だから、その見返りくらいは払ってやってもいいだろう、という気分になっただけだ。断じて、自らの行いを顧みたワケではない。

 

 ……ふと、現実世界に帰ったアカネくんの事が気になった。

 

 自分で切り捨てた癖にと思うかもしれないが、私自身彼女と過ごす日々は悪いものではなかったと振り返る程度には、彼女に対し親しみを覚えていたのかもしれない。

 

 もしも此処から出られたら、アカネくんの様子を見に行くのもいいかもしれない。そんな、約体もない空想が脳裏に浮かんで苦笑してしまう。

 

──やあアカネくん、久しぶりだね。元気にしていたかい? ──

 

 ……もしも再び出会えたら、私はそんな風に声をかけるのだろうなと考えて、私は思わず笑いを零した。私はどうやら、思っていた以上にアカネくんに対して好感を抱いていたのだな、という事が分かってしまったからだ。

 

 ──さて、暫くはあの世界での記憶とこの空想に耽る事で時間を潰す事は出来そうだな。

 

 私はそんな風に考えて、目を閉じて睡魔に身を任せた。その後見た夢が心地よいものであった事は、確かだった。




 というワケでアレクシスにも語って貰いました。

 テーマは不死存在の苦悩と情動、です。

 あのグリッドマンとの決着の時の【これが、命ある者の力か】って台詞の声色がなんだか彼なりに満足していたように聞こえて、そこから妄想した結果です。
 アカネに対してもなんだかんだ付き合いが長かったので愛着もある程度沸いてたかも、っていう風にも考えてこうなりました。

 これで一先ずSSSS.GRIDMANアフター話は終わりですかね。原作後のドラマCDあたりをイメージして書いたつもりですが、満足して頂ければ幸いです。
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