執事の世界に咲くものは   作:でぃえん

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明けましておめでとうございます!

バンドリ24時間テレビぶっ通しで見ててグロッキーです。


ヒマワリ
1


 初めて会ったときは、遠い世界の人だと思った。

 

  

 

 こころの側で仕えているのは見るからに歳上の女の黒服さんばかりだったので、屋敷の中で紅茶や菓子を優雅な諸作で提供する長身痩躯の執事服の男性を、物珍しく感じた。 

 

 この人はあるときは庭師だったし、あるときは給仕だった。 

 

 

 彼は――針金のような見た目なのに――何だってできる凄腕の執事だった。 

 

 

 こころに振り回されるようになってからは彼とも顔馴染みになった。

 

 

 

 

 

 とはいえ、向こうは他の黒服さんと同じように恭しく私のことを奥沢様と呼んでいたし、彼の名前すらも知らない私も敬語で話していた。 

 

 

 極端に言うと、その頃の私は彼を同じ人間として見ていなかった。 

 

 

 

 

 

彼は何でも出来たし、場を壊さないように微笑みをたたえているだけだったから。 

 

 

だから、私とは違う場所にいる人だと。 

 

 

そんな風に、私は弦巻邸で彼と会うたびに考えていたのだ――。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇ 

 

 

 

 花音さんが消えた。 

 

 …頭がくらくらしてくる。

 

 確かに二人でこころの家に入ったはずだ。

 もうあんなに大きな弦巻邸が目の前にあるのに、ふと横を向くと花音さんはいなかった。 

 …どうなってるんだ。 

 

 まあ、こんなときは慌てず電話を……。

 と、携帯電話を取り出してかける。 

 

 

 ……通じない。 

 電池が切れてるのだろう。 

 

 ……仕方ない。奥の手を使うか。

 

 

 

 

 「……すいませーん!黒服さーん!!」 

 

 「…ここに」 

 

 現れたのは執事の彼だった。 

 

 

 

 「あ、こんにちは。あのですね、実は花音さんが迷子になってて、電話も通じなくて……申し訳ないんですけど見つけたら」 

 

 「なるほど、承知致しました。それでは応接間のほうで」 

 

 

 「あ、いや。悪いですよ、あたしも探すんで!」 

 

 

 「……申し訳ありません、それではお願い致します…

 あー…広い屋敷なので、奥沢様も何かあればこちらに」 

 

 

 彼は少し逡巡したようだったが、結局電話番号を渡して頭を下げた。 

 

 

 「それじゃあ、私はこちらの方から探しますので。多分部屋の中ではないと思うので、よろしくお願いします」 

 

 

 「……なるほど、それでは増援を呼んで参ります」 

 

 

 

 そう言うと彼は携帯電話を取り出して何やら話しはじめた。 

 

 さっさと見つけないと屋敷内が某鬼ごっこ番組みたいな光景になることを察した私は、一刻も早く花音さんを見つけることを心に誓った。 

 

 

 

  

 

◇◇◇ 

 

 「どこにいるの……」 

 

 捜索開始から15分。 

 というかこの屋敷広すぎる。 

 

 向こうも見つかったら電話が来るだろうから進捗はないようだ。 

 

 

 「あら、美咲じゃない!」 

 

 いきなり後ろから声を掛けられる。 

 金の髪を美しく揺らして、屋敷の主(の娘)が現れた。  

 

 「こころ!? ……日直だから残ってるんじゃなかったの?」 

 

 「日誌を出して帰ろうとしたら先生に呼び出されたのよ、不思議よね?」 

 

 なにも不思議じゃないわ! 

 またなんかおかしなことを書いたのだろう。 

 

 

 

 「それで、ここで美咲は何してるの?迷子かしら?」 

 

 「迷子は花音さんだよ…、さっきから探してるんだけどいなくて」 

 

 「花音が?」 

 

 かくかくしかじか。 

 こころに説明しても意味があるかなあ…。 

 

 「あたしも手伝うわ!花音がいないとハロハピの会議をはじめられないもの!」 

 

 おお、頭数になってくれそう。

 

 「じゃあこころ、花音さんがいそうな場所に心当たりない?」

 

 

 「分かるわ! 

 あたし、花音は、きっとここを探検してると思うのよ!」 

 

 やっぱりなかった。 

 

 

 「んなわけないでしょ!」 

 

 「そうかしら?あたしはたまにお家を探検してるわよ?」 

 

 もういいや。 

 

 「それで?探検してるとして、花音さんはどこにいるわけ?」 

 

 「お部屋の中に決まってるじゃない!花音を見つけてくるわね!」  

 

 そう言うとこころは部屋のドアを開ける。 

 あーあーあー。 

 

 

 「花音〜!どこかしら? …ここじゃないみたいね!」 

 

 「ちょっと!こころ!せめて閉めて行って」 

 

 こころは見つけ次第ドアを開けていってはそのままにして奥に消えていった。 

 

 

 ……嵐のようだった。 

 

 

 

 花音さんは、まあ部屋にはいないだろう。 

 迷っていたとしても、勝手によく分からない部屋に入る人ではない。 

 だから廊下を彷徨い歩いているはず…。 

 

 

 

 

 そのとき、部屋の中から何か黒いものが飛び出してくる。 

 

 

 「うわっ!?何これ………… 

 ………あ」 

 

 首輪をつけられた黒猫だった。 

 猫は妙に人懐っこく、私の足元に寄ってきた。 

 

 

 「あんた、確かこの部屋から入ってきたよね?」 

 

 抱き上げても猫のほうは潤んだ瞳でにゃおんにゃおんと媚びてくるだけだった。 

 まあ、そりゃあ猫が答えてくれるわけない。 

 

 

 

 「……これ、流石に戻さなきゃまずいよね」 

 

 猫を戻したらすぐ出ていこう、人の部屋だったら悪いし。 

 不可抗力だから…許してと思いながら私は部屋に入り込む。 

 

 昼の日が差し込んで、部屋の中は電気がついてなくても明るい。 

 

 なんだか部屋もお日様が当たって金色のようで──。 

 

 

 

 

 

 「……………」 

 

 

 そして私は絶句していた。 

 なんだ、この部屋。 

 

 勉強机。そして鞄に学ランに、いくつかの執事服が掛けてある。 

 

 いや、そこじゃない。

 そこは普通なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 問題は壁一面に貼られた写真。 

 

 そこに貼られていた写真は、全て、弦巻こころで。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…見たな?」 

 

 

 

 

 背筋が凍った。 

 

 

 

 

 

 

 錆びついた機械のようにぎこちなく、後ろを振り向く。 

 

 

 ああ、やっぱり、彼だ。  

 

  

 

 

 

 

 そこにいつもの、執事のときに浮かべていた笑みは全くなくて。 

 

 

  

 

 

 

 

 

 目の前のこの人が怖い。 

 

 だって、あのにこやかな顔の裏で、ずっとこの人は。 

 

 こころを………こころを? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて奴だ。 執事の分際(?)で。 

 

 

 

 

 

 「通報します」 

 

 

 「おい! 話くらい聞いてくれ」 

 

 

 「いや、現行犯でしょこれは」 

 

 

 「……それは否定できない!」 

  

 しろよ。

 

 

 

 

 私は、額に汗を滲ませる彼に向き直る。 

 

 

 

 

 …何も知らないこころを、この魔の手から守らなければならない。 

 

 それが出来るのは、私しかいないんだから。 

 




逮捕エンドかな? 

…ちゃんと続きます。 
 
 
 

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