簡易オールスターと言うよりは、ある種、指揮官のキャラストなので、オマケ扱いです。
多分、皆様が想像したことがあるルートだと思います……。
今回は特にキャラ崩壊注意です!
人は夢を見る。
例えば、楽しい思い出。或いは、ハチャメチャな映像。もしかしたら、悲しい出来事。それとも過去の思い出。
夢にも様々な種類があるのだ。喜怒哀楽は千差万別、混沌としたものまで様々な。
そう、夢。彼は多分夢を見ているのだろう。
「指揮官、私と一緒に飲みましょう」
桜の花の様な髪色の戦術人形、STAR-15が彼にグラスを差し出す。グラスから漂うのは甘酸っぱいサクランボの香り。普段は表情の変化が少ない彼女がほんのりと頬を染めてお酒を差し出す姿をお目にかかるのは、何とも新鮮だ。
「指揮官は私と飲むのよ。私は指揮官の好みを完璧に把握してるわ」
完璧主義な腰まである浅葱色の髪と左目の下に涙のようなタトゥーを入れた戦術人形、HK416も対抗するように彼にグラスを差し出す。彼女のグラスに入っているのは、かつて日本にあったと言う固有のお酒を模した密造酒。はたまた、押収品から勝手に持ち出したのだろうか。
「指揮官は私と飲むんだから邪魔しないで。はいっ、指揮官」
顔を顰めた表情を二人に向けてから瞬時に晴れやかな表情に変えてグラスを差し出したのは、昆布茶色の髪をサイドテールにし左目に傷痕を残す金眼の戦術人形、UMP45。彼女の手に持ったグラスからは爽やかな柑橘系の香りとシュワシュワと弾ける炭酸の音が指揮官の耳を楽しませる
「あっとその……」
彼は困った様にはにかみながら両手を前に掲げて三人に待ってくれとジェスチャーする。
そう、指揮官は気づいていた。これは夢だ。夢でなければ、こんな美女たちから飲みに誘われる筈が無いと。
三人が持っているグラスに入っているのがアルコールだと何故かわかる。何故か?それは彼のみてる夢だからと、彼は答えるだろう。
これが夢じゃ無かったら何か?美人局としか言いようが無いだろう。しかし、彼には強請られる理由は無い。
それに、彼を包み込むこの非現実的な甘ったるい倦怠感は現実では感じた事は無い。だから、彼は自分に言い聞かせているのだ。これは夢であると。
「いえいえ、今日はジュースで爽やかに楽しみましょう」
金色の髪をポニーテールにしてまとめたバンダナの戦術人形、SV-98がグラスの中に黒色のジュースとアルコールを注ぐ。そのジュースは戦前から世界的に愛され、指揮官にも馴染み深かったもの。好物の飲み物で割られたアルコールは食指を動かすのに十分。
「あの……一緒に飲みませんか?」
彼の袖をちょこんと摘んで上目遣いに誘う金髪碧眼の小柄な戦術人形はスオミ。彼女は他の四人と違ってグラスとつまみとなる物を掲げて彼に期待の視線を向けている。
「あたしと飲も……?」
彼の脚に腰を下ろし、見上げるようにねだるのは灰色の髪を跳ね放題にさせた小柄な戦術人形G11。彼女は五人と違って空のグラスを両手で持っている。酒は彼に入れて欲しいという事だろう。
六人は牽制し合うかの様に睨みあう。
「ちょ、ちょっと……」
彼はおどおど手の平を大きく振るう。夢とは言え、美女・美少女から飲まないかと誘われるのは光栄なことだ。彼女達が戦術人形であって、人間とは違う存在なのは彼にも理解している。でも、外見も声も人間のそれとなんら変わらない。寧ろ、人間よりも美しく感じる。
そんな存在達に迫られれば、男としてたじろぐのは多少理解は出来るだろう。
「「「「「「誰と飲むんですか?」」」」」」
この空気は皆で飲もうと提案する事が許される状態で無い事は、夢の中の彼にもよくわかっている。その言葉を口にした瞬間、次にあるのは終末を呼ぶ戦争か、鮮血の結末しかない。
彼はなんとか考える。天国の様な地獄の牢獄の中で、何とか平和に終われる方法が無いかと。
そんな風に考え込んで答えの出ない彼に痺れを切らせたのか、六人の衣服は突如として消え去った。
「ひぇっ!?」
突然の事に彼は情けない声をあげる。突然服が消え去り、下着に包まれた裸体が現れれば、歓声よりも悲鳴が出るのは納得だ。
「仕方がないです」
「私が完璧なのよ」
「ふっふ~ん♪どの子ネコちゃんが好みかにゃ~?」
「そこまで答えが出ないんでしたら」
「少し恥ずかしいですけど……」
「あたし達の身体で判断して貰うよ」
身体で判断とは文字通りの言葉なのだろう。豊満な体から、滑らかに整った体と様々な体型が指揮官の前に晒される。
その光景は、凡百な男であればすぐにでも飛びつきたくなる様な世紀の絶景であるのかもしれないが、彼の脚はそれとは逆に後退を選んでいた。
何故なら、彼の瞳は六人のハイライトを失った瞳をしっかりと捉えていたから。
「お、おぉ……」
逃げると言う判断は出来ない。六人と共に平和に飲むと言う提案は許されていない。
それでもと、それでも何とか平和的に済ませる手段は無いかと思考を重ねる。
ここで諦めるのが潔いのかも知れない。だけれど、彼の本能は夢の中でこう訴えているのだ。『諦めたらヤられる』と。
ふと、六人の瞳に光が戻る。それに気づいた彼は、一筋の光明を得たかに思えたが、彼女らに宿された光は野獣のそれであった。
「お、おぉぉぉ……」
彼は小さく慟哭する。気づいてしまったのだ。彼には選択肢など始めから無い。あったのは、いつ彼と言う供物を平らげて欲しいかという身勝手な猶予だった。
「「「「「「さぁ、誰と飲むんですか?」」」」」」
迫りくる六人。
「ひ、ひぇ……」
思わず後ずさる彼。六人はそれをスタートの合図代わりだと言うかのように、一斉に彼に飛びかかった。
そこで彼は目を覚ました。全身は汗まみれで気持ち悪く、頭の中ははっきりとしている。
不思議と先程まで見ていた夢はすべて覚えていた。夢とわかっている夢は、起きてるときには忘れているとよく聞くが、今回の彼の夢はそうでは無かったようだ。
彼は記憶を整理する。
そう、彼はグリフィンに就職することが成功し、明日、指揮官候補育成施設へと向かうのだ。そこで指揮官候補生として数か月勉強し、そこから基地へと配属される。
第三次世界大戦で荒れた世界の中では比較的安泰な職業。両親は複雑そうな表情をしていたが、指揮官となると大企業に就職するのと変わらない倍率なので、よく就職出来たなと褒めてくれた。
それに夢に出てきた戦術人形たちはグリフィンと提携しているIOP社の戦術人形たち。殆ど姿形も知らない六体の名前を何故はっきりと思い浮かべれたのかはわからないが、恐らくあんな戦術人形たちが居るのだろう。
――ああ、今こんな事を思い浮べてる場合じゃないな。明日、グリフィンへ物資を納品する車に乗せて貰ってグリフィンに向かうんだ。早く寝ないと。
そう思って、枕元に置いてある父が就職祝として譲ってくれた貴重な戦前の高級時計を手に取る。彼の視界は真っ暗だが、一応時間の確認はしたかった。
手に取って盤面を確認するがなんだか掠れていて、文字が良く読めない。どうやら視界がはっきりとしないらしい。
視界のぼやけを解消する為に目を擦ったその時、彼は――指揮官は気が付いた。夢の中で夢を見ていた事に。
指揮官は腕時計を持った手を視界から退けて、上半身を起こす。
ぐるりと見渡した視界に映るのは戦闘の指揮の為に必要な機材が並んだ司令室と、服をシーツと布団代わりにして指揮官を囲うようにスリープモードに入った六人の戦術人形たち。
その瞬間、夢の中で感じていた倦怠感の正体を理解し、指揮官は全てを思い出した。
今日も司令室で一人で飲もうと思い司令室へと入ったら、指揮官が想像していたよりも司令室のドアの解除コードはフリー素材になっていたようで、件の六人が既におっぱじめていた。
それだけならまだよかった。一人飲みの気分ではあったが、多人数で飲むのも嫌いでは無いので、その時は混ぜて貰おうと思ったのだ。
しかし、それは間違いであった。最初こそは六人はある程度仲良く飲んでいたのだろうが、指揮官が入って来た時には誰が指揮官の中で一番か若干揉め始めていたのだ。
そんな時にやって来た指揮官は六人にとって供物でしかない。
有無を言わさず指揮官を執務室に引き摺り込むと、連携のとれた動きで司令室をロックし、誰が指揮官の一番であるか詰め寄ったのだ。
しかし、指揮官が答えれる筈もなく、痺れを切らした六人は――後は、想像に難くないだろう。
指揮官は震える。夢であって欲しかったことが、夢で無かった事実に。
同時に過去の夢を思い出して更に震えが大きくなる。何故なら、彼がグリフィンの指揮官候補育成施設に行く前に見た夢は、少なくとも今の人数の十倍近くが居たから。
「あは……」
六人から襲われた事実。これから待ち受ける苦悩、
「ははは……」
それらを受け止める為の器にひび割れが入ってしまった指揮官は適当に服を着ると――
「ムワアアァァァァ!!!!!」
六人を起こさないように口を閉じて悲鳴をあげながら、腕時計を持って執務室から一目散に駆け出した。
指揮官は突如として一週間の有給休暇を申請し、グリフィンから一時的に去った。
朝起きたら部屋の前に指揮官からの有給申請の書類が置いてあったヘリアンとカリーナ曰く、申請する日数と理由には『暖かさと夢に溢れる実家に帰りたくなりました』と書いてあったと言う。
当然、そんな適当(と思われる様)な理由で指揮官が基地から離れる事を許されなかったが、一部の過激な人形たちが指揮官は誘拐されたと言う身も蓋も無い陰謀説を唱えて基地が騒然となった為、指揮官の苦悩を理解したヘリアンが気を効かせて三日後には帰ってくるようにと指揮官に連絡を入れる運びとなった。
三日後、何故か9A-91を引き連れた指揮官がゲッソリとした面持ちで帰って来た。
噂によると、基地へ補給物資を届け終えた車両の荷台に匿って貰ったようだが、何故か9A-91も紛れており、そして荷台の上で居住区に着くまで――と言われている。9A-91曰く、「離れようとしたから悪いんです」との事。結局、(貞操の危険による迷惑がかかるので)実家には帰れず、実家周辺のホテルに泊まる事になったせいでますます危なかったそうな。
指揮官が突如として実家に帰りたくなった理由、そして、指揮官がゲッソリとした面持ちで帰還した理由。それは当事者達のみが知ることだろう。
指揮官はハーレム願望は特にありません。
貞操観念に対しては普通と言った感じなので、集団逆レされたし、昔見た夢が実態を帯びてきてると気づいたらそうなるよねって感じのお話でした(適当)