【ドルフロ】夜の司令室にて   作:なぁのいも

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 ギャグです。

 UMP9が逆レした後のIFルート的なお話。

 その……色々とお許しください……。

※最新の話がわかりづらいので、試験的に最新話の章を導入してみました。投稿から3日が経過したら適切な章に入れ直すと言う試みです。よかったら最新話と言う章に関してのご意見をください。不評であれば廃止します。


『昼の基地にて』UMP9丑の刻参り(?)するってよ

 草木も生物たちの大半が眠り、月と星々が地表を照らす夜の1時過ぎ。

 

 グリフィンの基地の一つを任された指揮官も眠りにつき、明日への活力を養おうとしているその時間。昔の戦争で亡くなった東の島国では、夜の1時から3時までの時間の事を丑の刻と呼んでいたらしい。

 

 その今は亡き東の島国では丑の刻に行われていた儀式があるとの事。その名を『丑の刻参り』。神社と言う神を祀った施設に植えてある御神木に憎い相手に見立てた藁で作った人形に釘を打ち込んで相手を呪う呪術である。

 

 かつての東の島国では恨みや憎しみ抱いた人達が『丑の刻参り』をしまくるので、御神木は藁人形だらけであったとの記録が206×年の現在の記録に残っている。

 

 だが、その儀式が正しい形で今も残っているとは限らない。そう、『丑の刻参り』も時代に合わせて変化しているのだ。

 

「お邪魔しま~す」

 

 電子ロックを突破し、指揮官の私室へと侵入を果たしたのはUMP9。自分だけに聞こえるような声量でそう呟くと、大きな音が出ないように後ろ手でドアを占める。

 

 UMP45程の電子戦能力は無いモノの、部屋に仕掛けられたセキュリティを解除する位はお茶の子さいさいといった所だ。

 

 抜き足、差し足で音を殺しながらリビングを周って寝室へと向かうと、寝苦しかったのか自分に掛けられた布団を幾らか肌蹴た仰向けの状態で眠る指揮官が。

 

「にひっ♪」

 

 眠りに着く指揮官のもとに、天に瞬く星々のような笑顔を浮かべながら接近する9。

 

 規則的に鼻で呼吸をし、あどけない寝顔でぐっすりと眠る指揮官。普段は絶対に拝むことが出来ない彼の寝顔に9は胸の高鳴りを覚えながら、彼の耳元で内緒話をするように手を当て、そして――

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 と、何度も何度も、経典や魔術書に書かれた呪文を音読するかのように指揮官の耳元で囁き続きた。

 

「う、うーん……」

 

 眠る指揮官も何度も繰り返す『指揮官と9は家族』言葉には不安感を覚えたようでうめき声を漏らして表情を歪める。続けて9からの音波攻撃から逃れようと向きを変えて横向きになってしまう。

 

「あっ、酷いよ指揮官!」

 

 連呼から逃れようとした指揮官のことを思わず大きな声で非難する9。彼の耳元でしていた囁き声の清涼では無く、普段の天真爛漫な9らしい大きな声が出てしまった。そのことに気付いた9が自分の口を押さえて即座に音を殺す。口を封じながら指揮官のことを瞳だけを動かして伺う。指揮官の眠りは深かったようで、起きる気配は無い。

 

 9はホッと一つ息を吐き出して、再び指揮官の耳元に手を当てて先程の呪文を囁く。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 9の行動を見て何となく察した人も出てきたと思う。206×年に伝わった『丑の刻参り』とは、丑の刻と呼ばれる時間に、自分の願望を対象の耳元で延々と言うことで、自分にとって都合のいいことを対象に刷り込む呪術として伝わっているのだ。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

「うーん…ううーん……」

 

 9お手製の超音波から逃れようと指揮官は再び寝相を変える。横向きだったのが再び仰向けになる形で。枕に対して垂直になる形でおまじないを唱えていたので、指揮官と9の顔がほんの数センチで鼻先がぶつかるくらいに近くなる。そのことを意識してしまった9の頬が暗闇の中でもわかる位にぽっと色づき、そのまま指揮官を(性的に)襲ったあの日のように唇を奪いたい衝動に襲われたが、ここはなんとか堪えて、再び指揮官の耳元に手を当ててお呪いを唱える作業を再開。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 なんで9がこんなお呪いを頼っているのかと言うと、それには立派な理由がある。その立派な理由とは『指揮官が家族』になってくれないから、である。

 

 ある時の飲みで、指揮官に『自分達は家族(指揮官と9のみ対象)か?』と聞いたら『家族だ』と答えてくれ、『家族(指揮官と9のみ対象)が好きか?』と聞いたら、『好きだ』と返してくれた。アルコールが入っていたとはいえ、決して聞き間違えでは無い。9の音声ログにもキチンと残っている。それに指揮官と9は(一方的な)想いで結ばれて、(一方的に)肉体の関係も営んだ仲である。これはもう家族と言っても間違いないだろう。

 

 それなのに指揮官は『いやその……こんなに私と9で意識の差があるとは思わなかった…!』とはぐらかすし、指揮官の私室で待機してても追い出されてしまうし、家族になるための書類を仕事の書類に混ぜたら翌日は資源再生ゴミに出されているしで踏んだり蹴ったりなのだ。

 

 (指揮官と9は)家族だと一度は認めたのに、また素知らぬ振りをして元の関係に戻ろうとする指揮官に痺れを切らし、9は決意したのだ。どんな方法であっても指揮官と家族になるのだと。

 

 そのために9はあらゆる方法を調べた。まず最初に既成事実。これは確かに使えるが、彼と既成事実を作っている戦術人形は多数いる。これを材料に使ったら、9を皮切りに他の戦術人形も仕掛けてくる可能性が高いため廃案。

 

 次に考え付いたのは、婚姻届けや遺族を模した人形の所有に関する届け出だ。この二つに関しては、9が自分の経歴などを何とかして偽造し、指揮官のサインさえ貰えれば文句なしに家族となる事が可能だが、先程言った通り仕事の書類に紛れ込ませてみたら、翌日には資源再生ゴミとして出されていたので失敗。

 

 懇願してみても迫ってもダメ、既成事実も無理、書類も失敗。そうなった9には何が残されていたのかと言うと、古来から伝わるお呪いである。

 

 9は指揮官と家族になるためなら手段を選ぶつもりは無かったので、思いつく限りのお呪いを試してみた。料理に9の念を注いだ人口血液を仕込んでみたり、敷地内の花を壊滅させる勢いで花占いをやってみたり、指揮官の持つ端末の壁紙を指揮官と9の映る写真に変えてみたり、指揮官の姿を思い浮かべて呪文を唱えてみたり、とやれる限りを尽くしてみたが全滅。

 

 諦めかけた所で、指揮官の祖先が居たとされる東の島国の独特なお呪いのことを思い出し、それを調べ上げ実践することにしてみたのだ。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

「うぅ……うーん……」

 

 その結果がこの丑の刻参り。眠る相手の耳元で自分の願望を丑の刻の間に何度も何度も言い聞かせることで、深層心理に刷り込ませ自分の願いを成就させる、というお呪いだと出てきた。

 

 これは一ヶ月位は毎日欠かさずやらないといけないお呪いらしいが、お呪いの成功者は『合コンで狙っていた男をおとせた』、『ケチな顧客がよくお金をおとしてくれる上客になってくれた』、『モルモ――被検体となってくれた』、『私は完璧よ』等の感想を残していることからそれなりに高い効果を発揮していることがわかる。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 寝相を変えて9のお呪いから逃れようとする指揮官に合わせて、9もお呪いを言い聞かせてあげる。確かに、このお呪いは難易度が高いモノだ。なんせ二時間近くも間、指揮官の耳元で願望を言い聞かせないといけないのだから。

 

 しかし、一ヶ月頑張るだけで、指揮官と永遠に家族になることが出来るのかも知れないのだ。そう考えると、たったの一ヶ月、それも二時間の言い聞かせなどとるに足らない物だ。都合がいいことに9は戦術人形だ。繰り返しの作業ならまさに適任だ。

 

「うぅぅ……」

 

 まるでうなされているかのような指揮官の様子に9はほくそ笑む。少しお呪いが効いているのかもしれないと思うと、嬉しくもなるだろう。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 ――家族になろうね指揮官♪

 

 9はいつものような朗らかな笑みを浮べながら、お呪いを唱え続けた。

 

 

 

 その日から9は夜な夜な指揮官の部屋に通い詰めてはお呪いを唱えた。

 

「指揮官と9は家族」

 

 晴れの日も曇りの日も雨の日も、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 毎日毎日通い詰めては自分の悲願を果たすために、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 彼の深層心理に自分の願望を刷り込ませるために、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 お呪いを実行し続けた。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 お呪いの効果を図るために何度か指揮官の家族構成を聞いてみたりした。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 最初の内は、指揮官は自分の家族構成は祖父と両親だけだと言い切っていたのだが、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 半月を経過した位から聞かれる度に顎に手を置いて、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 本当にそれだけであったか?と言うように考える仕種を取るようになって

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 9は確かな効果を実感した。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 お呪いも参照した文献のアドバイスに従って、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 単純に願望を言い聞かせるのではなく、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 ある程度の効果を実感した段階で嘘のエピソードも盛り込んでみることにした。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 例えば、昔からの仲であるとか、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 例えば、笑顔が素敵であると言ったとか、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 例えば、頑張り屋やなところがいいと褒めてくれたとか、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 あたかも昔から親密な仲であるようなエピソードも語ってみることで、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 指揮官の深層意識に9の願望がより自然に馴染むように仕向けたのだ。

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 そして、9のお呪いが一ヶ月続き、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 達成することが出来た翌日に、

 

「指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族指揮官と9は家族」

 

 指揮官から全ての人形は多目的ルームに集まるようにとの通達が出された。

 

 

 

 多目的ルームには一糸乱れず整列する戦術人形達が指揮官の言葉を待っていた。

 

 重大な作戦の発表かと、緊張感が漂う中で、ニコニコと笑みを絶やさない9。その笑顔の理由は、彼女だけは何故指揮官が多目的ルームに戦術人形を集めたのかを理解しているからだ。

 

「皆に聞いて欲しいことがある。私には戦術人形の家族がいたんだ!!」

 

 指揮官からの衝撃の告白に、ざわざわと騒ぎ立てる戦術人形達。そんな中でも、9だけが笑みを浮かべている。

 

「なんでずっと忘れていたかはわからない。でも、確かにこの基地にいる戦術人形の中に、私の家族が居る!!」

 

 45がまさかと言わんばかりに、隣にいる9の表情を伺うと、9は相変わらず笑みを絶やさないでいる。

 

「そう。昔からの仲で――」

 

 だって、笑わずには居られないだろう。

 

「笑顔が素敵で――」

 

 自分の悲願が今ここで果たされるのだから、

 

「頑張り屋な――」

 

 ようやく願いに願った、指揮官と家族になると言う願いが。

 

「その戦術人形は――」

 

 指揮官がツカツカと足音を立てて戦術人形達の列の中を歩む。

 

 なにをしたのだ、と視線だけで問い詰める姉に、9は沈みゆく上限の月のように口許を歪めて、笑みを作る。

 

 それは、勝利宣言の笑み。姉に対してだけでなく、ここにいる人形全てに対してだ。

 

 指揮官の足音が近くなる。後は彼からの指名を受けるだけ。

 

 妖しい笑みを浮かべるのをやめ、いつも彼女が浮かべる朗らかな笑みを浮かべて指揮官を待ち構える。

 

 ――後は待つだけ。指揮官が私のことを家族だと言うのを

 

 指揮官が9の傍で歩みを止める。勝利の鐘を鳴らす準備は整った。後は、彼の口から忘れ去られた家族の正体を告げられるだけ。

 

「私の忘れていた家族とは――」

 

 そう言って、指揮官は9の手をとった――

 

「君だ!!」

 

 ―――正確に言うと、UMP9の隣の列に並んでいた9の手を取った。

 

「えええええっ!?」

 

 突如手を取られて、驚愕の声をあげたのはFNP9。建造・入手のしやすさから指揮官が配属されたばかりの頃から基地に居た昔からの中で、アイドルとして笑顔が素敵で、どんなステージでも手を抜かない頑張り屋さんなハンドガン。

 

「ええええっ!?」

 

 9の隣に居た45も驚きの声をあげる。まさか、9がFNP9と指揮官が家族の関係であったのを知ってたのかと言うように。

 

「「「「「えええええええええぇぇぇぇっ!!!!!」」」」」

 

 多目的ホールに居た戦術人形達がどよめく。指揮官とFNP9がそんな密接な関係であったことを初めて知ったと言わんばかりに。

 

「違う……」

 

 9は顔を床に向けながら、手の平に力を入れてプルプルと震えながら拳を作る。なんで、どうしてこうなったのかと言うように。

 

 確かに指揮官に『指揮官と9は家族』と言い聞かせたし、『昔からの仲』、『笑顔が素敵』、『頑張り屋』と言うキーワードも刷り込ませた。まさか、刷り込ませた結果、自分より別の戦術人形の方と条件が合致してしまうなんて思いもしなかった。誤算だった。それも、大誤算だ。まさかこんな事になるなんて。

 

「ちがーーーう!!!!!!!!」

 

 9の心からの叫びが天井に当たって多目的ホール全体へと響き渡るのであった。

 

 








 と言った感じの戦術人形が見る筈の無い夢を見た9は、全身に纏わりつような悪寒と異常な位に排出された疑似汗液によって目を覚ます。

「な、なんかとてつもないものを見た気がする!!!」

 思わず上半身を起こして、大声を出してしまった9。

 夢の内容は何一つ覚えていないが、せっかく継続させて成就までいったお呪いが台無しになったかのようなとんだ茶番を見せられた様な気はしている9。

 そんな茶番が現実にならないようにする為の方法は簡単。

「指揮官には『指揮官と『UMP』9は家族』って言い聞かせないと……!!」

 今の丑の刻参りの経過日数は半月ほど。効果も僅かばかりだが表面にも出始めた頃合い。お呪いの内容を変えることでこの半月の成果が無駄になるかもしれないが、先程までのとんでもない茶番が現実になるよりかはもう一ヶ月実践した方が勿論いいだろう。今のまま続けても無駄になってしまいそうな気がするから。

「言葉ははっきりとわかりやすく伝えないと駄目だよね……」

 言葉の曖昧さと言うものを認識しつつ、明日からはお呪いの内容を変えようと決意した9は、バクバクと跳ね上がる機関部を辺りを手で抑えつけながら再び布団を被るのであった。

 9のお呪いが無事成就したのかどうかは、一か月後の9達のみが知ることである。

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