【ドルフロ】夜の司令室にて   作:なぁのいも

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よくわかるUMPシリーズの特徴講座 補講 『UMP45 UMP9 UMP40』

※現時点で未実装キャラのUMP40が居ます。中途半端なキャラ把握なので注意を。それが嫌な方はブラウザバックをお願いします

 

  ♦  ♦  ♦

 

 ……お久しぶりだね君たち。

 

 なぜかよくわからないけど、この講座が結構反響があったみたいでまた私が呼ばれたわけです。

 

 うん……。本当に楽しみにしてくれたみたいだね。拍手が前回の講習の時よりも迫力があるね……。

 

 言葉遣い丁寧なのはやめたんですか、って?

 

 程よく丁寧語使うぐらいがちょうどよく思えてきたんだよ。教えるべきことを教えるときは敬語を使うけど、それ以外は私語で行くから宜しく。

 

 というわけで今回もよろしく頼みます。講師は私、レン――いや、多分、みんな忘れると思うからいう意味がないかな?スライドに書いてあるからそれを覚えてください。これです。これ。

 

 えーと……。今回も質問タイムを多めにとりたいと思いますが、前回のような『教官は性的な被害にどれだけ合われたのですか?』という感じの質問をした生徒は、この講習の出席点をゼロにするから、覚悟するように。

 

 と、あいさつはここまで。今回私が教えるのは――はいやっぱりUMPシリーズ三人についてです。

 

 というか、私はあの三人以外は語れないですしね。

 

 うん?なんで戦術人形を体じゃなくて人と数えるのか?

 

 ……それは、君たちが戦術人形を指揮できるようになってから自ずとわかってくるよ。

 

 というわけで、今回もUMPシリーズについて語っていきます。

 

 前回、私は最後に接し方に気を付けるようにと語ったと思います。

 

 それは何故か?それは人間関係が悪化したときの様に悲劇的な事態が起こるからです。

 

 そして、私はそれを体験しました。鬼畜マッドサイエンティスト、ペ――とある研究者の実験に付き合う形で。

 

 簡単に言えば、誓約をした人形に莫大なストレスを与えること、彼女たちのメンタルモデルにどのような影響を及ぼすかの実験に付き合わされることになりました。具体的に言うと、彼女たちに誓約の破棄を迫ったわけです。

 

 ……ええ、私もやりたくなかったのですが、どうしても逆らうことが出来なかったので。

 

 皆には言い忘れてましたけど、私は『UMP45』、『UMP9』、『UMP40』の三人と誓約しております。多分、君たちは引っかかるものがあると思います。一人の夫に一人の妻と決められた世界で生きてきたと思いますから。

 

 なんで私が三人と誓約したかは今回は割愛します。質問タイムでも答えるつもりは無いから、覚えとくように。聞いてきたら、罰掃除をさせますので覚悟するように。

 

 というわけで、私が付き合うことになった実験を行った結果どうなったのか、ちゃんと研究者の方からも許可をもらったのでお話ししたいと思います。と言うよりも、それを話せと言われましたので。

 

 ……いつか絶対ペルシカさんにぎゃふんといわせなくては。

 

  ♦  ♦  ♦

 

  まず最初にUMP45がどんな反応をしたのかを言おうかと思います。

 

  はい、皆大好き『UMPの依存させてくる方』ですね。

 

  私は日替わりか、週代わり、まぁ、その彼女たちの気分次第で副官を交代させてるのですが、その時の副官が45だったわけです。

 

  それで、彼女に何気なく言いました。

 

「誓約を解消して欲しい」

 

  と。

 

  正面を切って言うべきでしょうが、心臓はもう飛び跳ねそうな勢いでしたし、口はもう縫い付けられたように動かなかったです。何気なく言わないと言葉として口に出なかったと思います。

 

  誓約を解消してくれと言われた45は

 

「ふ~ん」

 

  と、素っ気ない反応を返してきました。

 

  あれ?とは思いましたね。

 

  あまりにも素っ気ないので、私は彼女に飽きられたのかと思いましたね。

 

  ですが、私は一つの可能性にたどり着きました。それは、『冗談だと思われた』ということ。彼女は賢いので、これが何かしらの意図があっての行為だと思ってくれたのでは無いかって。

 

  ここで、これは実験のための嘘だと言えればよかったのですがね……。残念ながら、研究者には『絶対に大きな揺らぎがでる。具体的にいうと凄いリアクションを示す筈。それが表に出てくるまで、これが実験だと言ってはいけない』と念を押されてしまってまして……。言うことが出来なかったんですよ。

 

  でも、彼女からの反応はなかったんです。『もし反応がなかったときは、3日様子をみて欲しい。それでも反応が出なかったら中止していい』と言われました。

 

  その日はいつも通り仕事をして、終業を迎えてそれぞれの部屋に帰って、一日を終えました。

 

  45はあの言葉の裏にあるものを感じ取ったのか、それとも、本当に私に飽きてしまったのか。

 

  不安と緊張を胸になかなか寝れずにいて、気がついたら寝たような感じで翌朝を迎えると――体の芯から冷え込む感覚がして、目が覚めたんです。

 

  冷え込んで固まった筋肉を動かして起きてみると、そこは――簡単な寝具と簡易トイレしかない真っ暗で冷たい床の懲罰房だったんです。

 

「!?」

 

  飛び起きましたよ。それはそれは飛び起きますって。なんせ、身に覚えも、懲罰房に入れられる記憶もありません。

 

「目が覚めた?しきか~ん?」

 

  混乱の中にいると、懲罰房の外から甘ったるい声が聞こえたんです。微かに光が漏れる懲罰房の鉄の扉、その窓の部分に45が顔を出していたんです。

 

「45!なんでこんなことを!!」

 

  そう糺す私に45は首を傾げて、

 

「なんでって、指揮官がいけないんでしょ?私と誓約を解消しようって言うから」

 

  そう、心当たりを一つありました。それは某鬼畜研究員の実験について。

 

  45は扉の鍵を開けて入室してきました。入れ替わるようにして逃げようとも思いましたが、それを、彼女の心を傷つけたまま逃げようとする事が許せなかったのと、そもそも足に枷が付けられていて脱出は不可能でした。

 

「私ね……。他の誰からも嫌われても構わないんだ。私は、そういう存在だから」

 

  迫る45が私の頬に触れます。寂しげな儚げな表情を浮かべて。

 

「でもね。指揮官から嫌われるのだけは許せない!私の居場所を与えてくれた指揮官から嫌われるのだけは!!」

 

  かと思えば憤怒の形相を浮かべて、私の頬に爪を立ててきます。自分の中の怒りの感情を表すように。

 

「ようやく得た私の居場所!!それを奪うのは指揮官だって許せない」

 

  語気を荒くして興奮しきった様子の45がポケットから注射器を取り出します。あの針が凄く細くて痛くないタイプの奴です。でも、中に入ってる液体が、ケバケバしいピンク色をしてたのですよ。

 

「だから……指揮官。そんなことを考えないように、考えることが出来ないようにしてあげる。うふふ……」

 

  恍惚の笑みを浮かべて注射器を押し付けようとして来たのです。注射器の中身は知ってます。鉄血の研究施設で見つけた、ハニートラップ用の洗脳を目的とした危険な薬物です。

 

「う、嘘なんだ!これは!誓約は破棄しない本当だ!」

 

  限界だと判断した私は思わず白状しました。本心から。でも、これがいけなかったですね。言葉足らずでした。研究者から頼まれた実験なのだと言葉を足しておくべきでした。

 

「嘘……?ふふ、ふふふふ!あはははは!!!」

 

  嘘だと伝えられた45は口をぽかんと開けましたがらすぐさま笑いだします。えぇ、恐怖を感じる狂喜的なそれです。

 

「だったら……!尚更考えないようにしないといけないわ!!そんな嘘が二度とつけないように躾ないと!!」

 

  45が私を押し倒します。そして、息を荒くして私の首筋に注射器を押し当てて、万事休すかと思ったところで。

 

「指揮官!」

 

「45!何してるの!」

 

  9と40が救出しに来てくれました。

 

 

 

  ええ、これが45の反応ですね。

 

  ……凄く怖かったです。流石の『UMPの依存させてくる方』です……。

 

  ぶっちゃけると多分漏らしてました。45の迫真の表情が怖すぎて……。

 

  二人が助けに来なかったら今頃どうなってたか……。

 

  でも……45から愛されてるとわかって嬉しかったな……。普段はそんなそぶりを見せてくれないから……。

 

  余談を言うと、その日に16LABのサーバーがダウンしたそうです。

 

  なんででしょうね?

 

 

  ♦  ♦  ♦

 

 

  お次はUMP9です。

 

  45の時と同じように執務中に言ってみました。立ちながら、その日の書類を執務室で確認してるときに。

 

「誓約を破棄して欲しい」

 

  って。

 

  はい。このときの声、かなり震えてたと思います。それはそれは、45の時のことがフラッシュバックしてきましてね……。

 

  で、9が返した来た反応というのが、口を栗みたいに三角に開いた後に。

 

「へぇ~。指揮官、私との誓約を破棄したいんだ~」

 

  って、口ずさむように返答してきたんですよ。見かけ的にはショックを受けているように全く思えませんね。何処か楽しんでいるようにも見えますね。何処かからかうように。

 

「ふ~ん……」

 

  と思ってた時期が少しありました。その後、9は笑ったんですよ。

 

「そっか~」

 

  って、ゆるーく言いながら。

 

  そしたらですよ。次の瞬間、机に押し倒されてました。

 

  一瞬で私の視界から書類が消えて、天井を向いてたので、何が起こったのか訳がわからなかったんです。

 

  慌てて上半身を起こすと、そこにはニタリと理不尽な契約を突き付ける悪徳商人のように、悪どい笑みを浮かべる9が私の顔を覗きこんできたわけですよ。

 

「ねぇ、指揮官。私達は家族だよね?」

 

「そ、そうだな……」

 

  震える声帯をなんとかコントロールして言葉を発する私。設定を守るのなら、『もう家族じゃない』とキッパリと否定するべきなのでしょうけど、彼女に圧倒されてそんなこと言えません。

 

  もし言い返せるなら見てみたいです。

 

「んふふ~♪そうだよね~♪」

 

  可愛らしく鼻唄を奏でて上機嫌に喜ぶ9。その表情は凄く可愛らしいのですが、

 

「じゃあ、指揮官?」

 

「う、うん?」

 

  9は急に真顔になって、

 

「どうして家族に酷いことを言うの?」

 

  私の腹の底に響くような声で、抑揚の無い声で、彼女がそう言ってきたのです。

 

  9は私と鼻先がくっつくくらい顔を寄せると、抑揚の無い声で淡々と言ってきたんです。

 

「ねぇ、指揮官。指揮官と私は家族なんだよ?家族が家族を悲しませちゃダメだよね?」

 

  そう言うと9は私に口づけをしてきました。それもただの口づけではありません。ディープなダイヴなキスです。私の口の中を蹂躙するようなキスです。彼女の舌が滅茶苦茶に、怪獣のように暴れまわって、私の脳をシェイクするような、暴力的な深層映写なキスです。

 

  そんなキスをされたら透明な橋がかかりますよね?その橋を架けながら9は口を離したのです。

 

「見て、指揮官。これは家族の証だよ」

 

  多分、透明な橋の事でしょうね。それを9は家族の証と称したのでしょう。

 

「私と指揮官の繋がりだよ?それを指揮官は――」

 

  透明な橋が、崩れました。

 

「壊そうとするの?」

 

  まるで、私のことを支配するような低い声で、彼女は脅してきました。

 

  もう限界でした。見ての通り、もう十分メンタルモデルの揺らぎを計測できただろうと判断しました。だから、伝えました。

 

「う、嘘なんだ……!誓約破棄はしないから……!」

 

  そのまま、これは研究者に頼まれ(脅され)てやってることを白状しようとしました。45の時の反省を踏まえて。

 

  が、恐怖で怯んだ私では二の句が継げれませんでした。

 

「うそぉ?へぇ~、うそなんだ~♪」

 

  にこにこと微笑む9に若干の安心感を覚えました。色々と怖い面が目立つ9ですが、根は素直なので、わかってくれたのだと。話せばわかるという言葉は名言だと確信した瞬間です。

 

「いひひ~♥️」

 

  が、その確信は刹那で砕け散りました。何故なら9が口付けをしてきたからです。

 

  それだけでは私が絶望する理由がわからないかも知れませんが、この後続けてきた行動が重要です。

 

  彼女は唇に吸い付いてきました。ディープなアレではないですよ?ただただ、唇を吸ってきたんです。

 

  が、それが尋常ではありませんでした。私の唇が腫れるような勢いで、私のソウルを吸いとって亡者にするかの如き勢いで吸うのです。9が私の上唇に前歯を突き立てます。痛みで眉を歪めますが、私が痛みに歪む表情は9には見えてないことでしょう。傷つけた唇をまた吸って、満足したように口を離すと、私の血を口紅代わりにするように、自分の唇に馴染ませ始めたのです。

 

「じゃあ~、そんな嘘がつけなくなるように、しっかりと家族を教育しないと行けないね♥️」

 

「ひ、ヒェ……」

 

  私の口から出たのは、そんな悲鳴でした。

 

  その後記憶に残ってるのは、執務室にロックをかけた9が終業時間まで誰も入室出来ないようにしたここと、恍惚の表情で乱れる9と許しを乞う私の事だけですね。

 

  流石、『UMPの依存してくる方』でした。

 

  うん?45と40は助けに来なかったか?

 

  40は助けようとしてくれたみたいだけど、45に止められたみたいです。

 

  まぁその……因果応報だと思って受け止めました……。

 

  でも、9が私のことをあんなに愛してくれてたなんて嬉しい限りだったよ……。

 

  うん?どうかしたのかな?なんで、顔から血の気が引いてるんだ君達?

 

  どうして喜べてるんですか?器が大きすぎる?そんなこと無いと思うけどなぁ……。

 

  ちなみに、この数日後16LABへ着払いの形でジャガイモ500kgが届いたらしいぞ。ちゃんと注文元は16LABになってたから、大騒ぎになったらしい。何でだろうな?

 

 

  ♦  ♦  ♦

 

  さて、最後は『UMP40』です。そう、『UMPの依存したくなる方』です。

 

  二人の時と同じように執務中に言ってみました。その日の書類を立ちながら、執務室で確認してるときに。

 

「悪いんだが、私との誓約を破棄して欲しい」

 

  っといった感じに。

 

  ぶっちゃけ、もうやりたくなかったです。怖いし心が痛むし寿命を縮めるしで……。

 

  でも、やらざるを得ませんでした。やらないと40が――関係ない話なので省きます。質問タイムにこの事を聞いた人は、罰としてラビットタンクをやらせます。そう、あのMGと同じ重さのリュック背負ってうさぎ跳びするやつな?酷いことしたときの罰としてしかやらせないやつな?覚悟しておくように。

 

  話が逸れましたね。とにかく、私は40に誓約の破棄を言ってみたんです。それはもう、吐血するような勢いで。

 

 40がとった反応というのが、

 

「そっか~」

 

 というあっさりと軽く流すようなものでした。

 

 ……はい。嫌な予感がしますね。あの子を思い出しますね。そう、『UMPの依存させてくる方』です。

 

 続けて、

 

「ふ~ん。そっか~」

 

 って言うんです。

 

 …………はい、凄く嫌な予感がしますね。これは、あれです。『依存させてくる方』と『依存してくる方』のハイブリッドな反応です。

 

 私はこの瞬間に過呼吸を起こしそうでした。前の二人のアレが、トラウマというかPTSDと言うか……。とにかく、はい。怯えてました。

 

 それで、そのままビクビクとしたまま、肉食獣が通り過ぎるのを擬態しながら待つ小動物のような気分で待っていたのですが――何も起こりませんでした。

 

 ええ、そうです。全く何も起こらなかったのです。45の様に聞き流したように仕事を再開する事も無ければ、9の様に豹変した様子も無いんです。

 

 怖くて俯いてて40の顔を見れなかったのですが、勇気を出して顔を上げて見るとそこには――先程の私の様に俯いてるのです。

 

 そんな彼女の様子を見て、何も言えずに固まっていると、40の顎を伝う透明な一滴が。

 

「そっか~指揮官、あたいのこと必要無くなっちゃたか~」

 

 40がそう言いながら顔を上げたんです。涙を流して、くしゃくしゃになった顔で笑う40が、そこには居たんです。

 

「指揮官、あたいのこと、必要ないって言うんだね……」

 

 その言葉と共に顔を手で覆って泣き崩れる40。疑似感情モジュールの処理が限界に達したんだと思います。

 

 前回までの二人の反応が狂気的過ぎたので、暫し呆気にとられてたのですが、40の状態を見て、途端に、発作を起こしたように心臓が痛みを発しました。

 

 そう。普段は明朗快活に天真爛漫に振る舞う彼女ですが、彼女のバックグラウンドを知っていると、彼女の居場所を奪う様なこの行為は、絶対にやるべきでないのです。

 

「ごめんね指揮官……!あたい、そういう距離感とか上手くわからなくて……。あたい、迷惑かけてばっかりじゃ無かった……?」

 

 目元を真っ赤にして両手で必死に押さえて、擦って、涙を止めようと、それでも、私に迷惑をかけないように必死に笑って見せて明るく振る舞う40。

 

 限界でした。私はもうこれ以上、人間の我儘で彼女を傷つけたくありませんでした。

 

「本当にすまない40!誓約解消は嘘なんだ!これはIOP社にやれと依頼された事なんだ!」

 

 今回は恐怖心はありませんでした。ただただ、申し訳ない気持ちと、この胸の痛みを取り除きたくて必死で、必要な事を全て言いました。

 

「……えっ?」

 

 私の告白に、思わず泣くのをやめて驚きの表情を浮かべる彼女に今回の経緯を説明します。

 

 主に、鬼畜ケモ耳研究員にやれと命令されたのだと。

 

 その説明を聞き終えた40は、泣きじゃくられた顔をみられたのが恥ずかしいのとか、誓約の解消が嘘なのが嬉しいのと、騙された怒りが交わって顔を赤くして――

 

「指揮官!あたい怒ったからね!」

 

 最終的には頬を膨らませて怒ってしまいました……。

 

 おかげで暫くは口を聞いてくれませんでした。おのれペル――某研究員ッ!!!!!

 

 しかも最悪なことに、40の人脈はかなり広いです。それはもう、基地の皆と仲良しと言っていいくらいに。UMPの中では異端な社交性ですが、それが40の一番の魅力でしょう。

 

 話を戻します。それが、最悪の結果を生みだしました。具体的に言うと、基地の皆から『あの40を指揮官が泣かせた』、『40を悲しませた』と言ったうわさが色々な尾ひれがついて広まりました。

 

 しかも、このような事態に陥った顛末をしっている先の被害者である45と9から「サイテー」、「40姉を泣かせるなんてヒドイよ!」と糾弾される始末です。

 

 いや、確かに私が悪いんですけど、納得できるような、その……。

 

 とにかく、大変でした。

 

 ただ、その後は一週間は40に対して誠実に対応することで、何とか機嫌を直してもらいました。おかげで財布の中身が真っ黒になりましたが、40の心に染み入る様な溌剌な笑みが見れると思えばこの位何ともありません。

 

 流石、『UMPの依存したくなる方』。彼女の笑顔が見れるなら安い易い。

 

 でも、彼女の不安を煽る様な真似をしたのは本当に反省しないと……。あんなに不安を抱えてたなんてちょっと予想外だったんだ……。

 

 はぁ……40に甘えすぎてるのかも知れない。

 

 因みに40に誓約解消を伝えた数日後に16LABは大規模なクラックを仕掛けられて、一週間分の研究データが消去されると言う大損害を被ったそうな。

 

 データが入ってたディレクトリには『私はオマエのものでは無い』というメッセージが残されてたそうで。

 

 不幸が続いてるけど大丈夫かIOP社……。

 

 

 

 

  ♦  ♦  ♦

 

 

 ―――

 

 これにて今回の講義は終わりとします。

 

 はい、君は余計なことを質問したから宣言通り、罰掃除をして貰うよ。二階の廊下の窓ふきと雑巾がけ、朝と夜に一週間ね。

 

 後、そこの君はラビットタンクの刑だ。監視にはハイネ教官について貰うから覚悟して置け。

 

 人の話を聞かないのは勝手だし、覚えてないことは悪い事では無いが、警告したことを蒸し返すのは野暮だ。得られた情報を活かすことを指揮官には重要だ。よく覚えて置く様に。

 

 じゃあ、今度こそ最後だ。

 

 UMPシリーズは確かに人気だが、説明した通り扱いが難しい戦術人形だ。それをよく心得ておくように。

 

 

誓約を破棄したいと言うと、精神的に追い詰めてくるのが『UMPの依存させてくる方』、肉体的に追い詰めてくるのが『UMPの依存してくる方』、社会的に追い詰めてくるのが『UMPの依存したくなる方』。これだけは覚えて置くように!

 

 以上。善き指揮官と慣れるよう、努めてくれ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ♦  ♦  ♦

 

 

 指揮官候補育成施設の廊下を歩み、彼の護衛を務める戦術人形達が待つ部屋へとわき目も振らずに向かった。

 

「ただいまー」

 

 気の抜けた挨拶をすると、中に居たUMP45、UMP9、UMP40の三人が緊張を解き、それぞれ柔和な笑みを浮かべる。

 

「おかえりなさい」

 

「おっかえりー!」

 

「おかえりー!」

 

 それぞれ座していた椅子から飛び上がるように立ち上がると、彼の元へと駆け寄る三人。

 

「今日は街でいいものを見つけたから」

 

「指揮官にあげようと思ったんだ!」

 

 9と40に促され、45が手に持った袋から街で見つけたプレゼントを取り出す。

 

「うんそれは?」

 

 彼女が取り出した、黒の短いベルトの様な物。

 

「チョーカー。指揮官、たまにはお洒落してみたらどうかなって」

 

「成程……」

 

 確かに指揮官は私物も少ない。普段から袖を通すのはグリフィン支給の制服ばかり。

 

 彼女達は結構お洒落だから、パートナーのオシャレにも気を遣うのだろう。

 

「着けて貰えるか?」

 

「もちろん♪」

 

 45は裏の無い笑顔で指揮官の首にチョーカーを着けてやる。

 

 チョーカーを装着された指揮官の首輪を見て、三人が思わず息を漏らす。

 

「おぉ!合ってるあってる!」

 

「いいね、指揮官!」

 

「うん。よく似合ってるよ」

 

 感嘆の声をあげる9。手を叩いて明朗な笑みを浮かべる40。満足したようにうんうんと頷く45。

 

「そうかな?」

 

 気恥ずかしそうに頬を掻く指揮官に、賛美の言葉を贈る三人。

 

 三人は指揮官へと贈ったチョーカーにある『5・0・9's』とある銀の刺繍を見て、満足そうに――どこか狂気的に――姉妹らしいよく似た笑みをうかべるのであった。




 これで講座はネタ切れです……。まだ読みたい方は誰かアイディアかリクエストをか活動報告に……。

追記

因みにペルなんとかケモミミマッドサイエンティストの依頼を渋々引き受けた理由は、『受けないと40がどうなってもいいのか?』と恐喝されたからです。彼女の経緯は概ね『何処にも行かないで 寄り添って』と同じなのです。

40の後に16LABに残ってたメッセージは『私はオマエのものではない』。果たしてどういう意味だったのでしょうかねぇ……?

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