ソードアート・オンライン ~時幻の体現者~   作:☆さくらもち♪

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明朝、件の掃討作戦実行日。

作戦会議があったらしいけれど僕に作戦なんてない。

というかその場を見て立てる方が動きやすい。

それを実行できる実力と思考はある。

人に対する期待も同情もない。

 

「ん、行ってきます」

 

ベッドで僕の隣に寝落ちている愛しい少女。

女性プレイヤーにはこの掃討作戦は伝えられていないからユウキを連れてはいけない。

それに僕とユウキの関係も知る人はいない。

アルゴぐらいには伝えても良いかもしれないけど。

無防備な唇に少しだけ重ねて、家を後にした。

ユウキの親友と言うアスナの元に居るよう言ってはいるから心配はない。

ただ攻略組では鬼と言われるほどの猛者。

中々の女傑なのだろう。

今まで行方知れずだったユウキの事を根掘り葉掘り聞いてクタクタになっていそうだ。

 

「・・・転移、七十二層」

 

その手の情報網から既に潜伏先は詰めてはいた。

ぐうたらと過ごしていた感じだが、暇なときはメッセージでのやり取りで集めていた。

 

「・・・はぁ」

 

そして出てくるため息。

正直攻略組と関わるのは好ましくない。

ローブも着ているが、人目は絶対にある。

既にちらほらと僕を見ているプレイヤーがいる。

 

「ま、いいや」

 

とりあえず掃討作戦の責任者である彼に会いに行くか。

場所は簡単に分かる。

普通に迷宮内を歩いていれば見つかるだろう。

それに索敵使えば表示もされる。

 

「ふぅ・・・」

 

呼吸を整えると、一気に加速する。

先に出発しているのは向こうだ。

さすがに追いつけない可能性もある。

それにオレンジとレッドの混合とはいえ、手慣れがいる。

躊躇いがない熟練者が。

 

「・・・見つけた」

 

走ること数分。

その姿を見る。

そして金属音が虚しく響いていた。

戦闘が始まっていたのだろう。

ということは掃討作戦が裏切り者によって漏れていた。

 

「仕方ない、な」

 

見捨てても良いが、仕事的には助けたのが良いだろう。

ストレージから僕の愛刀を取り出すと、勢いよく引き抜く。

 

「散れ、そして消えろ」

 

仕事で使う普段の声。

冷酷で、無慈悲な宣告。

加速した勢いのままレッドプレイヤーを切り捨てると急な乱入者に両者が止まる。

曲がりなりにも攻略プレイヤー、犯罪プレイヤーはかなりの実力者が多い。

特に犯罪プレイヤーは相手よりも上回る技量やレベルが求められる。

そんな人物が僕の突進を目に入れるどころか、通過されていた。

理解した頃には死んでいるんだから。

 

「逃げても無駄。()()()()()()()()()()()んだから」

 

自然と口角が上がるのが分かった。

どうやら楽しんでるみたい。

 

「や、やれっ!『()()』だ!」

 

僕の異名だ。

暗躍・・・裏で活躍しているのは別口だし、依頼でやったにすぎない。

だけれどその名は今この場では不利じゃないかな。

どうみても犯罪組は怖じけづいてる。

なら今のうちに始末してあげる。

 

「ふっ・・・!」

 

一瞬で相手の視界から逃げるとそのまま、動き回る。

さあ僕を見ろ。

見続け、死んでも離すな。

 

「ど、どこだ!」

 

離せば分かるでしょう?

必死になって目で追いつづけてもすぐに限界はくる。

 

「残念。さようなら」

 

その限界を迎えた順からどんどん犯罪組は消えていく。

いつ、なぜ、どうやって死んだのか。

それも分からず消えていく仲間。

数十分もすれば、犯罪組は全員消えていた。

 

「あーあ。みんな、消えちゃった」

 

攻略組を見やると、警戒心剥き出しで僕を見ていた。

中にはキリトがいた。

 

「なんで、だ・・・なんで殺したんだ」

 

僕が手を下したことがどうやら気になるらしい。

特に理由もないけれど、答えなければいけないんだろう。

 

「理由なんて、所詮自己の理解。なくても良い」

 

「それで殺したのか」

 

「そうだよ」

 

一応僕なりに答えたつもりだ。

あまり納得していないらしく、キリトはまだ俯いている。

 

「仕事はした。帰る」

 

帰ろうとすると手を捕まれた。

おそらくキリトだろう。

何となく分かる。

 

「なんか、用」

 

「・・・お前を易々と見逃すわけじゃない」

 

「人、待たせてる」

 

「なら俺も連れていけ」

 

ユウキの場所は常に追跡できるから迎えはすぐだ。

だけど僕との関係がばれる。

キリトやアスナにそれを伝えて良いのか、分からない。

信用に値するのか、僕自身が見てきたわけじゃないから。

 

「・・・その首、飛ばされても文句は言えない」

 

「ああ」

 

「・・・六十一層。好きにしたら良い」

 

勝手について来る分には構わない。

振り切るほどでもないだろうから。

ユウキが信用する親友とキリトは仲が良いらしい。

 

「転移、六十一層」

 

淡い光に呑まれ、視界は移ろう。

迷宮の景色は、六十一層特有の城塞都市へ変わる。

ユウキのいる場所まで歩いているとキリトもついてきているのか、距離を持って歩いて来ている。

 

「ん、ここか」

 

マップ表示に妙なプレイヤーマークがあった。

わざわざ《隠蔽》で隠れている。

 

「・・・ま、いい」

 

目的のハウスに着くと扉をノックする。

少し待っていると扉は開かれ、そこには亜麻色の髪の女性が出てくる。

 

「あなた、誰?」

 

そういえばアスナとはまともに面識がなかった。

ユウキが来ないとどう言おうか迷う。

 

「ユウキの迎え」

 

「・・・ホントに?」

 

「ん・・・近くに、キリトもいる。呼ぶ?」

 

しばし思考をして、キリトも一緒ならということで家へと入れることになった。

 

「キリト君、あの人って・・・」

 

「・・・()()だよ。向こうで居合わせた」

 

「そう・・・」

 

家の家具はなかなか良いものを使っているようで、ソファーもふかふかしている。

 

「それで、ユウキの迎えだって言う、君は何者?」

 

「呼んだのが、早いけど」

 

「妙な事をしたら」

 

無言の圧力をかけてくるアスナ。

やはり中々の人物だ。

というか・・・彼女の雰囲気は普通の人じゃない。

良いとこのお嬢様だろう。

 

「ユウキー!」

 

「はいはーい?」

 

ばたばたと駆ける足音。

このハウス2階あるのか・・・。

初めて知った。

上から下りてくるのは僕の大好きな人。

僕がいると分かると、周りそっちのけに僕に飛びついてくる。

 

「どぉ~ん!」

 

「ん、戻ってきた」

 

「うんっ!」

 

離れてた時間なんて少しだけなのに、やっぱり寂しく感じる。

さすがに二人の目があるから大胆に出来ない。

 

「え、えっと」

 

「ユウキ、二人見てる」

 

「む~・・・」

 

渋々といった感じでユウキは剥がれた。

左手にはユウキの右手が重なっており、指も絡んでいる。

 

「それで、お二人はどういう・・・関係なの?」

 

「ボクね、結婚したんだ」

 

「えっ?」

 

ユウキの左手の薬指には銀輪が輝いていた。

淡い緑色の宝石が嵌め込まれており、美しく輝く。

 

「ユウキ・・・もしかして」

 

「うん。相手はこの人だよ」

 

そういい、ユウキは僕を見る。

だが僕の正体というか容姿を見る人は殆どいない。

ユウキだけだろう、今のところ。

 

「本当?」

 

「ホントだよ」

 

「相手は・・・その、()()よ?」

 

まあ懸念しているのは僕がユウキを取り込んで利用しているんじゃないか、だろう。

あとは危険性か。

死神という異名は文字通り、対人戦において死を齎す事からつけられたんだろうか。

見逃しはしないし、レッドかオレンジぐらいしか始末はしていない。

真っ当なプレイヤーからすれば畏怖される。

 

「怖くなんかないよ。ボクの生き方を示してくれた。デスゲームだって伝えられた日に」

 

「・・・それは」

 

「それにねっ?すっごく可愛くて綺麗なんだよ!男の子なのに」

 

男に対して可愛いとか綺麗と言われても嬉しいと思う人は少なそう。

現にキリトも少しばつが悪そうな表情をしているし。

 

「ん・・・ローブ、取る?」

 

「う~・・・分かった」

 

ユウキの小さな独占欲が出てくるも、それはすぐに治まる。

この二人ならまだいいと思うんだろう。

それだけ信じてるんだろうね。

ローブを見た目から外すと、白髪が降ろされる。

僕の容姿を見て大体は嫌悪感か好奇心、そして性目的だ。

それが嫌でずっと隠していたのだけれど。

 

「それが・・・正体なのか」

 

「ん、そう」

 

「綺麗・・・ね」

 

「でしょ?触るとさらさらなんだ~」

 

ユウキだけは僕の髪でうっとりしてる。

あまりというか、ユウキぐらいだろう。

髪に触らせるのは元々好きじゃない。

心地好い触り方をするユウキだから良い。

 

「二人は家持ってるのか?」

 

「持ってる。場所は、秘密」

 

「秘密って・・・」

 

教えてもよかった。

だけど聞き耳を立ててる奴が居る。

《隠蔽》で隠れていようが気配が駄々漏れ。

徐に立ち上がった僕は玄関の扉に近づく。

愛刀はしっかり握られている状態で。

 

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静かにスキルを立ち上げる。

音はしない。

ただ武器はスキルの光を持つ。

勢いよく扉を開くと同時に斬り上げるも、感触はない。

耳を立てれば必死に逃げる足音が聞こえる。

 

「キョウ!?ど、どうしたの?」

 

「・・・ちっ」

 

珍しく舌打ちが出てしまった。

意外にも避けられると思わなかった。

本気でやったわけでもないし、ここは圏内だからダメージは与えられない。

恐怖感は持てただろうが。

 

「アスナ。護衛とか、いる?」

 

「えっ?ご、護衛・・・同じギルドの『クラディール』がそうよ」

 

姿こそは見えなかったが、近くでこちら・・・というよりアスナの様子を伺っていた。

私邸まで護衛する必要もないだろうし。

 

「その護衛、外したのが良い」

 

「え、ええ?」

 

「なんかあったの?」

 

「珍しい、《聞き耳》持ち。ご丁寧に《隠蔽》も」

 

これで僕とユウキの結婚は表に出ることだろう。

だが、犯罪プレイヤーがまだ残っていたのは驚き。

もうしばらくというか活動すら危険になるほど組織は壊滅しているのに。

 

「・・・変な、感じ」

 

「なんで分かったんだ?俺やアスナでも分からなかったのに」

 

「ん・・・なんでって、言われても。気配ある」

 

こればかりはなんとも説明しにくい。

経験から基づいた直感。

先天的な直感もあるが、経験が大きい。

そこに気配があると分かる。

呼吸も、息遣いも分かる。

常に無意識で行ってる自己防衛のようなもの。

 

「そう、か」

 

「ん・・・曖昧。ごめん」

 

「いや、そういうのは信じるんだ。気にしなくて良い」

 

「ありがとう。気をつけるようにするね。えっと・・・」

 

「ん、キョウで、いい」

 

異名で呼ばれるのは少しこそばゆい。

二人は知っているべきだから教えておく。

 

「今日はもうお仕事終わったの?」

 

「ん、終わってる」

 

「じゃっ、帰ろ?」

 

どうやら僕のお姫様は早くお家に帰りたいらしい。

アスナとキリトにそれを告げるとフレンド交換をしておくことになった。

これで僕のフレンドは四人。

多くても困るからこれぐらいでいい。

 

「それじゃまたねー!」

 

「ん、また」

 

転移結晶で家がある四十八層へ飛ぶとそのまま家に入り込む。

時間は真っ暗だったが、月光が照らされる。

僕とユウキの寝室からは布の擦れる音が響く。

 

「ねぇ・・・響」

 

甘く蕩けたユウキの声。

その呼ぶ名前に僕はビクッと反応した。

ひびき、とは僕の本名。

なんでその名を呼んだんだろう。

 

「えへへぇ・・・響~」

 

「な、に。木綿季」

 

「してもいい、かな」

 

なにを、と聞くまでもない。

身体はお互いすごく熱くなっている。

元より彼女のが欲求は高いのだ。

 

「したい?」

 

意地悪く聞けば素直に頷く。

やり過ぎると癖になりそうで、今までも一度しかしていない。

だけど木綿季はもう我慢できないらしい。

もう少し焦らしてあげたかったけど、僕も抑えるのが辛い。

ずっとしたかったのを僕もまた我慢してた。

お互い重なり合う今宵の夜は、まだまだ長くなりそうだ。

 

 

 

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