ソードアート・オンライン ~時幻の体現者~   作:☆さくらもち♪

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手繰り寄せる希望

SAO事件から数週間。

身も削るほどのリハビリや運動により、僕の身体は健康的になった。

髪の毛は面倒だからそのままだが。

 

「確か、ここ」

 

見た目こそ小学五年生だが、戸籍上はれっきとした成人。

釘宮の力というのは中々強力で、国際的にも大きな発言力を持つほど。

つまるところ、上流階級と呼ばれる家で。

釘宮家の現当主でもある僕を付け狙うご令嬢が多かった。

無論僕はただ一人しか愛さないし、他を愛せる気も無い。

興味自体がなくて、女性的な身体の誘惑をしているんだと分かってもそれに惹かれはしない。

彼女以外に魅力を感じないというのが大きい。

 

「あの」

 

「はい?どうかしましたか?」

 

受付に立つのは女性。

見た目子供の僕は迷子だと勘違いされている気もするが気にしない。

 

「紺野木綿季って女の子の面会したいのですが」

 

「えっとー・・・少し待ってくださいね」

 

ここにきた理由なんて一つ。

彼女に会いに来るため。

家の力を使って探させたが、外出情報など一切見つからない。

となると病院にいるというのが大きかったので入院しているだろう場所に来た。

受付の女性を待っていると代わりにやってきたのはどこか若く見える男性。

白衣を着ている事からも医者だと分かる。

 

「君かな?木綿季くんに面会を希望しているのは」

 

「はい」

 

「あの子に面会者などいない者だと思っていたが・・・少し話を出来ないだろうか」

 

「構いませんよ」

 

恐らくこの医者は木綿季の担当医なのだろう。

面会者がいない、というのも理解はしている。

木綿季の家族は先に逝ってしまっている。

親戚はそんな木綿季に残された遺産や財産目当てに引き取ろうと打算していたが、彼が守っていたのだろう。

こういう裏の関係も分かるのが家の力の強みだろう。

彼に案内されたのはとある一室。

小話をするにはちょうど良いぐらいの大きさだろうか。

 

「私は木綿季くんの担当医の倉橋というんだ」

 

「釘宮響、と申します」

 

さすがに礼儀としては良すぎたかと思ったが、この男性が今や木綿季の保護者的存在。

好印象は今からでも良いだろう。

 

「では響くん、と。それであの子とはどういう?」

 

「SAOで知り合った一人・・・ですね。あの世界では結婚もした夫婦でした」

 

「夫婦・・・」

 

「SAOがクリアされたときに会えるよう、お互いの本名を明かし合いました」

 

「なるほど。それで木綿季くんに会いにきたというわけですか」

 

「そういうことになります」

 

こういう場は慣れているのもあってか、緊張はさほどない。

名のある家や社長、令嬢に令息など腹の探り合いはうんざりするほどにしている。

足をすくわれまいと身につけた社交術だが、案外役に立っている。

 

「とても言いにくいのですが。実は木綿季くんは未だに起きていないんです」

 

「起きていない・・・?」

 

その事実は驚いた。

SAO事件が終わって数週間だが情報自体まだ僕が聞き及んでいない部分もあった。

溜まっていた釘宮の書類や、退院祝いの手紙の返事など実際にはリハビリよりもそちらのが時間をかけていたのが大きい。

 

「まだ報道はされていないのですが、全国の病院を合わせて千人ほどは未だに起きていないというのは事実です」

 

「千人・・・」

 

「原因の究明はされているのですが、何も分からないというが現状ですね。なので僕ら医者としても現状維持なんです」

 

「分かりました・・・。ですが会うこと自体にはどうなんでしょう」

 

「面会自体は問題ありません。面会者用のカードを受け取れば大丈夫ですので」

 

彼は白衣のポケットから紐がついたカードを僕の前に置いた。

そこには0523室と書かれていた。

 

「これが木綿季くんの病室のカードです。響くんが来たと分かればあの子も喜ぶでしょう」

 

「ありがとうございます」

 

そのカードを受け取ると、倉橋に話は済んだのか病室に行くよう促された。

ここでの面談が木綿季の面会者を見極めるポイントなのだろう。

ろくな親戚がいないとよく分かる。

書類だけでは分からないこともあるものだから。

部屋を出てエレベーターで5階へと上がる。

5階に着くと左右に道が分かれるがエレベーターの外の近くに5階地図の見取り図があった。

 

「23は・・・ここ」

 

左へ曲がって少し歩くと0523室『紺野木綿季様』のプレートがある。

一応念のため三回ノックをしてみるも反応はない。

扉を開けると無機質な機械音が聞こえた。

奥にはベッドで横たわる木綿季の姿。

頭にはナーヴギアが装着されており、その瞼は固く閉じられていた。

ゆっくりと、木綿季の身体に触ると痩せ細った肉体。

体温こそあるも、決して高くはない。

どちらかというと低い方だろうか。

それでも生きていることは分かる。

木綿季の左手に指を絡めて握る。

反応なんてない。

僅かな木綿季自身の温度が感じれる程度。

 

「ごめんね」

 

あの時独りぼっちにすべきではなかったのではないかと。

ずっと悩んでいた。

キリトが気付いていたのは確実だったろうが、勝利できたのかは別問題。

五分五分だろう。

だからこそ絶対的な確実に死んだと分かる方法を取った。

 

「っ・・・」

 

気付いたらポロポロと涙が落ちていた。

こんなに僕は馬鹿だったんだなって。

ようやく見つけた僕の唯一。

なんで自分から手放すようなことをしたのか。

 

「木綿季・・・」

 

名前を呼んでも。

あの元気で明るい声は僕を呼んでくれない。

それがすごく悔しくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し泣いて。

木綿季の病室で時間を潰していると、携帯が振動した。

マナーモードにしていたので少し驚いたが画面を見ると、『楓』と表示されていた。

 

「・・・はい」

 

『もしもし?』

 

画面の向こうから聞こえるのは、大人びた女性の声。

釘宮楓。

れっきとした釘宮家の血筋であり、本来の当主。

本人が嫌がり、僕がいたから僕が当主になったのだけれど。

 

『・・・もう夕方よ』

 

「そう、ですね」

 

『帰ってきなさい』

 

「・・・もう少し、したら」

 

まだ帰りたくはなかった。

木綿季が入院しているこの病院は車かバイクでも使わないと気軽には来れない。

片道30分以上かかるので毎日往復となると燃料代が馬鹿にならない。

 

『響』

 

少し真面目そうに。

それでも心配なんだろう。

優しい声色だった。

 

「・・・は、い」

 

『今どこにいるの?』

 

「・・・病院、でしょうか」

 

『ふーん。そう』

 

釘宮楓という女性は、義理の姉だ。

仲は良い方だろう。

よそ者の僕を邪険には扱わなかったし、自分のやりたいことを貫くために僕に当主の椅子を譲るほどだ。

優しい姉だったし、厳しいというよりは甘い。

 

『ねえ、響』

 

「・・・はい」

 

『レクト、って知ってるかしら』

 

「・・・一応は」

 

『その会社、潰すか掌握したいの』

 

何故、と思った。

楓はそういうことに興味を持たないし、どちらかというと嫌悪している。

なのに自ら動くのは不自然と感じた。

楓の勤めている仕事も考えると。

何かあるのでは、と。

 

『私ね、妹が欲しかったの』

 

「え、えっと」

 

『義理の妹でもね。だから響の事を助けてあげようと思ったのよ』

 

「・・・分かりました」

 

『こっちは証拠でもあればいつでも。あとは響がどうにかしてちょうだい』

 

それだけを言い残して電話が切れた。

まさか楓が協力してくれるとは思わなかった。

だけど協力してくれるのはかなり強み。

 

「ん・・・」

 

木綿季の手を離すと病室を出る。

面会者カードを返却すると、乗ってきた車で家に戻る。

今からやる事は簡単。

レクトの裏を探ることだ。

それが結果的に木綿季を救うことになる。

あんな別れ方でさよならはしたくない。

片道30分以上かけて釘宮の屋敷へ着く。

中にはメイドがいるから綺麗になっている。

基本的にここにいることは少ないけれどやることはしないとダメだから。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 

「ん、ただいま」

 

「本日は何か・・・?」

 

珍しく屋敷に帰ってきたのもあって驚いていた。

だけど興味津々。

ここで雇っているメイドは全員一般人ではない。

護衛や隠密など、それぞれが得意とする特技を活かした技術を専門にするプロの殺し屋や暗殺者。

元は僕がそういう子を見つけて雇って、本人達が希望したからそういう仕事をしているのだけれどね。

 

「レクト社。調べて。とりあえず情報が欲しい」

 

「分かりました。他には?」

 

「楓姉さんが、手伝ってくれる。そのための、証拠含めて。期日は・・・一週」

 

「了解致しました。期待に添える物を」

 

それだけ言ってどこかへ消えていく。

この屋敷には数十名ほど人がいるが、その全員がメイド。

本業はメイドだが、副業も楽しんでいるらしい。

 

「んぁ・・・ぅ~・・・」

 

少し動いたからか、身体を伸ばすと少し眠くなった。

たまにはこっちで寝るのも良いかな。

僕用の寝室にふらふらしながら向かうとそのままベッドに潜り込む。

ふかふかで暖かい。

人肌ではないけれど、僕はそのままぐっすりと眠ってしまった。

 

 

 

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