ソードアート・オンライン ~時幻の体現者~   作:☆さくらもち♪

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工房の条件

のんびり横になって寝転がっている日々。

とはいつつもやることはやっている。

 

「ん・・・」

 

適当に過ごしていれば気がつけばもう一年ほどか。

SAOも長く攻略され続けているものだ。

あの日から一年、階層は五十を超えた攻略。

随分と躍進したのだろう。

僕は攻略組ではないから分からないが。

 

「もう、時間か」

 

ごろ寝しているとお昼の時間になっていた。

この時間なら行けるか。

転移結晶を取り出すと行きたい階層を呟く。

 

「転移、四十八層」

 

転移結晶の転移方法は簡単で、掲げて行きたい階層を言うだけ。

階層ではなく街の名前を言えばその街の転移門に転送される。

 

「確か・・・こっちだっけ」

 

四十八層は比較的平和な階層だ。

そこらかしこに水車があり、のどかな雰囲気がある。

モンスターの出現も少ないから住居にする人も多かったりする。

 

「ん、あれか」

 

そんな中、一つの建物を見つける。

看板には『リズベッド武具店』。

目的の店を見つけると中へ早速入った。

 

「いらっしゃーい!リズベッド武具店へようこそ!」

 

店の奥から聞こえてくる声ははきはきとしており聞き取りやすい。

その自信は武器にも出ており、立て掛けられている販売品も業物が多かった。

 

「ごめんくださーい」

 

「はいはーい!」

 

「金属の買い取りってやってますか?」

 

奥から出てきたのはピンク髪の少女。

そばかすがあり、どちらかというと愛嬌がある。

何故ここで金属を売るのか。

それはどの鍛冶プレイヤーがぶち当たる問題。

武器や防具を作るには材料が必要になり、その材料は金属。

よって安価で高品質な金属を仕入れる技術も必要になる。

 

「やってますが・・・その・・・うちは低い金属は買い取れないので」

 

僕の身なりはローブで身体を隠している状態だ。

それでいて身長も小学生ほどだから子供だと思われたのだろう。

こういうとき第一印象になる容姿が整っている人が羨ましい。

 

「一応見てもらっても・・・良いですか?」

 

とりあえずで、適当に金属を取り出す。

それを彼女に渡すと一瞬にして目の色が変わる。

それもそうだろう。

今最前線は第六十ニ層だ。

その前線より一つ下の層で取れた金属。

まだ市場に殆ど出回っておらず、入手できる者も限られている。

 

「こ、これ・・・」

 

「どうですか?」

 

「・・・うちじゃまだ扱ったことのない物だから分からないわね」

 

どうやら初めての金属に敬語も消えているようだ。

正直気にはしないのでいいが。

 

「それで、どうしてこんな金属をうちで?」

 

さすがに察したらしい。

鍛冶プレイヤーに渡せば大業物が出来るだろう件の金属を易々と見せている時点で何か裏があると勘繰る。

それこそ僕が求めていたから良いのだけれどね。

 

「これから金属をここで卸すかわりに工房を借りたいんです」

 

「ふうん・・・」

 

一応僕は《鍛冶》スキルを最大まで育てているが、必要になるのが工房。

携帯できる簡易的な工房では精々武具の整備と金属の精製ぐらい。

実際に造るにはちゃんとした工房がいる。

そしてそれを買うと金額がばかにならない。

なのでこうやって交渉をしているわけだ。

 

「あんた、名前は?」

 

「キョウといいます」

 

「その条件飲むわ。だけれど工房はちゃんと使ってちょうだい」

 

「分かりました」

 

無事成立したので、持ち合わせている金属を適当にストレージから取り出しておく。

この交渉もあったが、金属自体持ち歩くとストレージが圧迫される。

保管できる場所も欲しかった。

 

「うわ、うわわわ」

 

「金属自体は好きに使ってもらっていいです。その時の売上のいくらかを渡してもらえれば」

 

「それは構わないけど・・・この量どんだけあるのよ」

 

僕なりに高品質な金属を保管していたが、それでも3桁はある量だ。

ストレージの七割を圧迫していたが、それも今日で解決出来る。

 

「今日はこれで失礼しますね」

 

「使わないの?工房」

 

「今はまだ大丈夫です。必要になったら言います」

 

「分かったわ。金属は纏めておくから」

 

「はい。では」

 

店を後にしようと扉に手をかけた瞬間。

ノブが動いた。

誰かがここに入ってくる。

 

「リズー!来たよー!」

 

入ってきたのは亜麻色の髪が印象的な少女。

どことなく見たことがある気がする。

 

「っとと、ごめんね。出るところ」

 

「・・・いえ。気にしないでください」

 

「・・・ねえ」

 

「なに、か」

 

「あなたどっかで会ったこと・・・ある?」

 

この声どっかで聞いたことのある。

いつ、どこで。

膨大にある記憶からその一点に絞り込む。

僅かな時間でその答えは見つかった。

 

「・・・なる、ほど」

 

あの時はフードを被っていたから分からなかった。

ただ女性と細剣使いとだけ。

今となっては有名プレイヤーであり攻略組。

異名は『閃光』のアスナ。

 

「まずいな」

 

今の僕は攻略組と関わるとあまりよろしくない。

犯罪ギリギリを行っている身としては、強者が集う攻略組に好んで関わるのは避けたいが・・・。

 

「いえ、会ったことは・・・ないかもしれないです。記憶にないので・・・」

 

動揺を見せない声で、それでいて戸惑うような感じに。

知らないフリをするだけだ。

 

「そう・・・ごめんね。変なこと聞いて」

 

「いえ・・・ではリズベッドさん失礼しますね」

 

そのまま脱兎の如く逃げ出す。

よりにもよって攻略組のメンバーで会いたくない相手だ。

アスナは攻略組幹部でもあるが、それと同時にSAO最大級のギルド『血盟騎士団』の副団長。

人望もあり、異名が付けられるほど裏打ちされた実力者。

相手にするのは中々面倒だ。

 

「・・・まだゴミ仕事終わってないんだけどなあ」

 

早めに終わらせておきたかったが、終わる前に攻略組と会うなど運がない。

 

「残りは・・・3人か」

 

頭の中で出てくるのは知る人は知るプレイヤー。

その3人を始末すれば気楽な物だ。

 

「ん・・・そういえば《竜使い》があれを求めてたんだっけか」

 

どうにかして始末する方法を模索しているとふと思い出した。

芋づる式・・・とはいかないが、出来ればの希望的観測だ。

やるだけやって見る価値はあるだろう。

 

「問題は・・・攻略組がいる・・・」

 

《竜使い》が求める品自体は僕も持っている。

だが、それを自分の手で入手するのが厳しい。

生憎それを手助けするお人よしがいるが。

 

「・・・異名3人との戦闘も視野に入れとく・・・かあ」

 

戦闘したくないが、可能性は広げておいて損はない。

面倒になりそうと思いながら転移結晶を掲げた。

 

「転移、四十七層」

 

花が咲き誇る美しい階層。

そのとある場所には()()()()()と呼ばれるところがあり、そこにはビーストテイマー関係の品がある。

行くのも難しくはないが、その関係品が高額な取引で闇プレイヤーに狙われやすい傾向がある。

 

「今日が、命日になるといい」

 

棺桶から出てきたのならまた放り込んでやろう。

邪魔なゴミは捨ててしまわないとな。

 

 

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