ソードアート・オンライン ~時幻の体現者~ 作:☆さくらもち♪
四十八層の草原でくつろぎながら適当に過ごす毎日。
しっかりと攻略自体はしているから誰も文句言わない。
それどころかソロで階層攻略をするプレイヤーを血眼で探している攻略組のが多い。
「ん・・・?」
そんなときメッセージが届く音が鳴った。
SAOでのメッセージは二種類に分かれる。
そのどちらも僕の名を知っていなければ送信出来ず、知っているプレイヤーも少ない。
誰から来たのか予想ついていたが普段夜に伝えて来ることが多い。
メールで送ってくるのは単独では解決出来なかったり、協力者がいるなど事情ありの時だけだ。
「・・・なる、ほど」
送信者は予想通りアルゴから。
内容は圏内で殺人事件が発生したから協力者として手を貸してあげてほしい、と。
だが僕が出来る事など知れている。
「ならなんで?」
アルゴには僕の力量をある程度伝えている。
だから得意不得意は知っているから内容文がすこし変だと感じた。
「探ってみる、か」
分からないのなら自分で見れば早い。
件の問題になった階層は一緒に送られていたのでそこまで転移する。
転移門から出ると多少賑わうものの、どこか不安さが出ていた。
だが、そんな中一つだけ足音が異なる。
耳を澄ませてその音を聴く。
「・・・しっかりとした音」
普通に考えればそんな音どこもかしもかしこも溢れている。
しかしそれはこの階層ではあまり合わない。
不安そうな足取りが殆どだ。
恐らく先に起きた圏内事件での事がもう広まりつつあるのだろう。
絶対的安全といえた圏内で殺人が可能となればかなりの大問題だ。
「・・・覚えた」
足取り、呼吸、仕草。
顔がなくともそれがあれば目的の人物との照合は出来る。
無駄な記憶能力もここでは役に立った。
「さて、事件解決をしようとするプレイヤーを追っておこうっと」
協力者として名をあげるのはお断りだ。
目立つというより視線を浴びるのが好きじゃない。
だからあまり目立たないというよりは他プレイヤーへと向くように仕向けている。
今も階層攻略プレイヤーを探しているも、それは『
それを知るのはアルゴだけだ。
まあ後一人も知っているだろうけれどね。
「ん・・・キリト?なんでここに」
ぶらつきながらプレイヤーを探しているとキリトの姿が見えた。
そこにはユウキ、アスナもいた。
「・・・ヒースクリフ」
立場上はアスナの上司。
血盟騎士団の団長でSAO最強プレイヤーの一人だ。
「と、なると追うのは決まり、か」
《隠蔽》優先に装備を変更してキリト達の後を追っていく。
解決自体は出来るだろう。
元々聡明なプレイヤーだし、正義感は強い。
であるなら何故アルゴは僕を指名したのだろうか。
攻略組が相手に出来ない、もしくはしにくい相手。
「・・・オレンジか」
オレンジやレッドの相手なら僕を指名するのは必然だろうか。
こと対人戦に関してはここで右に出る相手なんてそうそういない。
モンスターを斬る剣と人を斬る剣には決定的な違いがある。
それは同族を斬る事に対する抵抗感。
そしてその嫌悪。
「全く・・・」
しばらくは僕の出番はないだろう。
それまでは適当に後をつけておくことにしよう。
キリト達を尾行してはや数日。
ようやく動きに進展が起きたようで、急いでいる様子があった。
「なるほどね・・・」
転移する際の破片と武具の耐久消失による破片。
それを利用した殺人未遂のトリック。
よく考えついたもんだ。
キリト達に合わせて転移もやっているが、かなりあわただしい。
馬も利用する程だとかなり急いでいるな。
「間に合うか、これ」
《隠蔽》から《速度》へ装備をかえる。
じゃないと間に合わない。
さすがに馬は普通に早いからね。
なんとか後を付けれるようになるとそのまま奥へ見える一本の大樹へと向かっていた。
そこにはプレイヤーの姿も見える。
「・・・いた」
同時に近くにはオレンジプレイヤー。
《索敵》には数人ほど引っ掛かっていた。
麻痺ナイフを取り出すとすぐに投擲する。
命中率なんて考えてない。
投げれば当たるから投げてるだけ。
多分キリト達に気付かれたな。
向こうも話が終わったらしい。
「・・・そこにいるんだろ」
どうやら隠れて居たのもばれてたらしい。
さすがに隠蔽優先装備じゃないと攻略組にはばれるか。
「なんだ、ばれちゃってた」
一触即発。
どっちも動ける感じではない。
「ねえ・・・君って、キョウ?」
そんな中ユウキが僕の名前を的確に当てた。
どうやって?
ばれるようなヘマはしてないはずだけれど。
「キョウ・・・だよね?」
「・・・さあ?」
そういえばユウキって妙に鋭いんだっけ。
勘が良いのか・・・。
ばれたところで些か問題はないのだけれど。
「まあ・・・そうだね」
さすがにこんな場所で狐の化かし合いなど疲れる。
平和で行けるなら平和で行きたいものだ。
武器をしまって何気なくユウキに近づく。
「ユウキっ、危険かもしれないんだよ!?」
「えへへ、大丈夫だよ」
何が大丈夫なんだか。
もし僕がユウキを殺そうとするかもしれない可能性を考えるならばアスナの言い分はもっともだろう。
そのつもりはないけれど。
「別に。手、出すだけ無駄」
アルゴへの報告はそのうち誰かを通じてされるだろう。
勝手に向こうからやってくるだろうし。
ユウキ達と歩きながら街へ戻っているとメッセージが飛んできた。
誰からと開けばまさかのユウキ。
内容はハラスメント警告は切ってる、と。
・・・なんで?
ユウキの顔を見ればニコニコしていて全然意図が汲み取れない。
「はぁ・・・」
なんでかなあ。
そういったような事はしてないつもりだったけど。
いつの間にかわかりやすいまでに向けられてるなんてね。
誰も知らないんだろうね。
『絶剣』ユウキには想い人がいて、その相手が僕だとは。
恋愛感情なんてとうの昔に枯れたと思っていたけれど・・・。
まだ恥ずかしいというか照れがある程度には残ってるらしい、僕にも。
「ねえ、キョウ」
ずっと思考しているとボソッと耳元で囁かれた。
「ひゃっ」
さすがに突然だったから変な声が出る。
キリトやアスナには聞かれてなかったけどユウキにはバッチリ聞こえていたみたいで。
「耳弱いんだ?」
「う、うるさい・・・」
男性側のハラスメントを何故つけなかったのか。
今になって悔やまれる。
してやったりな顔をするユウキだが、そこまで嫌でもない。
元々ユウキ自体は好ましいとは思えた。
性格というのもあるが、僕の内面をしっかりと見ている。
恐らくそれで看破されたんだろう。
第一層以外では会ったことなんて殆どないはずだ。
ソロ活動ばっかして、時々姿は見るも声までかけてない。
「・・・街、か」
主街区にいつの間にかついていたようで、そのまま僕は宿に行く。
今の状態でキリト達と会話するのはつらい。
頭の処理がだいぶ止まっている。
「どこに行くの?」
「・・・宿」
「ボクもそうしようかな」
絶対言うと思ったよ。
なんなら予想できたよ。
会話っていう会話は全然なかったと思うけど。
ここまでぞっこんなの・・・。
「・・・好きにすれば」
だがユウキを嫌っているわけではないし、その感情は微笑ましいものだ。
だけど単純に怖いだけなんだろう。
誰かを好きになってそれが成就したことはない。
元々の僕は臆病者だ。
それをカバー出来る技術を使っているだけで。
「キョウ?どうかした?」
「・・・別に」
ここまで真っすぐに想ってくれるのが嬉しくても。
臆病者の僕にはやっぱり怖い。
フラフラとしながら宿を取るとそのままベッドにダイブする。
そういえば・・・二人部屋にしてたんだっけ・・・。
「キョウ・・・?大丈夫・・・?!」
「だい、じょぶ」
そんな心配そうにしなくても・・・。
こんなの慣れてるよ。
誰かと居たら寂しくなっただけなんて言えるものか。
少し弱気になってたら誰かに抱きしめられるような暖かい感じ。
情けなくも僕はその暖かさで意識がうつらうつらとしてきた。
「・・・あり、がとね」
「ううん。どういたしまして」
好意をずっと向けているとその相手は段々と好きになってくるらしい。
どうやら僕もそれに漏れなかったようだ。
寂しさと急な感情をごまかすように手を握られてそのまま寝付いた。
「好きだよ・・・キョウ」
何か聞こえた気がしたけれど、もう夢の中。
昔もこんなのあったような。
そんなまどろみをずっと感じた。