転生先はスカさん一家   作:行雲流水

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 おまけの話が行き詰ったので、しれっと完結させておきます。申し訳ございません。言い訳は後書きにて。


第十一話:Epilogue

 

 ――人類の進化は二歩と半分。

 

 私が()()を生み出した理由はただの気紛れだ。もちろん私の純粋なクローンとして、もしもの時の為に私の意思を継ぐべき者だと考え造りだした経緯もあるが、特に何の感慨も無く造りだしただけだった。

私の体細胞を取り出し遺伝子を操作した個体。クローン技術は既に確立している為に安易な事だった。すぐにアレは培養槽へと移され、小さな胎児の形を得て育っていった。私の意思を継ぐ者ならば、優秀でなくてはならない。だからこそ持てる知識・技術の全てをつぎ込み最高の私を創ったのだ。ある程度育てば脳に直接知識を詰め込み私と同じレベルの知識を持たせ、魔法についても学ばせた。アルハザードについても、くだらない事を続けている人間の歴史も、管理局の成り立ちも全て、全て。そうして十月(とつき)が経とうとする頃、奇跡が起きる。

 

 ――アレが目を覚ましたのだっ!

 

 そう、目を覚ましたのだ。目の覚める筈の無い培養槽の中で。これで驚くなと言う方が無理である。本来ならばある程度の年齢を培養槽の中で重ねさせ知識と偽の記憶を流し込ませ、人間として馴染ませてから覚醒させるつもりだったのだが。

……いやはや、この世に神が居るのならば感謝するよ。こんなにも私の心を躍らせてくれたのだから。しかしながら私は赤子など育てた事は無いし、本心を言えば邪魔な存在ではある。いくら私のクローンで知識を持ち得ていても、理性は存在しない。泣くであろうし、排泄もすれば、食事もする。そんなくだらない事に私は時間を割く暇は無いのだから、アレの世話はウーノ達に言い含め私はしばらく様子を見る事にした。

 

 ウーノからの報告を聞けば、どうやらアレは一切泣かぬそうだ。腹を空かせても泣かぬし、機嫌を損ねても泣かぬ。排泄をすれば泣かずに、そうした事を襁褓に触れて訴える。普通とは全く違い、一切手の掛からぬ嬰児であった。

 はてさて、これはどうしたものか。そのようにする事は培養槽で知識を植え付けたとはいえ、教えてはいない。自ら学び、実践するにはまだまだ早い段階である。面倒な事ではあるが、人間一人が成長するにはかなりの時間を要するのだから。そんなアレの様子に興味を抱き、目覚めてから一切接触していなかったのだが部屋へと行きベッドの上に大人しくしていたアレの顔を見た。

 

 ――……。

 

 言葉にならなかった。小さな瞳が私を射抜き、小さな手を私に差し出した。だがその手を私が握る事は無く、無表情のまま私は部屋を出たのだった。伸ばされたアレの手を何故握る事が出来ようか、そんな事の為にアレを生み出したわけじゃないのだから。初めて抱いた知らぬ感情に戸惑いはしたものの不快感は無く、むしろ心地よい物だった。

のちにそれが父性と知るのだが、この時の私が知る由もないのは仕方ない、何せ物心がついた時から研究に没頭してきた人間なのだ無理もなかろう。芽生えた感情に温かな物を覚えながら、一年が過ぎた。そうしてその頃にはつたないものではあるが歩き始めた。だが、調べた知識によるとこの頃から単語で言葉を話し始めるようになるらしいのだが、その傾向が見られない。

何故、と疑問が湧いたが専門家でもない私が答えなど出せる筈もなく、また暫く時が経つ。そうして漸くアレは喋るようになるのだが、かなり拙い喋り方だったのだ。またそれが可愛らしさを誘うのだが、この時の私もその理由が解らなかった。あの感情を理解していれば、きっと映像データとして記録を残していた事だろう。いや、むしろレリックに映像を流し込み永遠に消えぬものとして残しておけばよかったと今更ながら思う。

 

 そうしてまた暫く時間が経ちアレがどうにか喋るようになれば、一番最初に私に要求したものは『台所』だった。はて、何故そんなものをと考えたのだが答えは浮かばず。何故ならこの時の私は食事に関しては興味が無く、栄養を摂取出来れば良いと考えており口にする事すら面倒になれば栄養剤の点滴で済ませていたのだから。私以外のナンバーズたちもアレのその言葉の意味をよく理解していなかったようだが。

 舌足らずではあるがあまりのアレの熱意に押されてアジトの一角にその設備を設ける事とした。敷地の中には余り余裕が無かった為に最奥の遠い場所で狭いものであったが、文句も言わず『ありがとう』と珍しく笑っていた。その瞬間を記録に残していなかった私の失態を恨むが、今更嘆いた所で仕方ないのだが。

そうして『台所』が完成した瞬間に食材を要求されて、物が揃えば調理を始め料理を作っていた――つたない動きで調理する姿や味見をする姿はそそるものがある――のだが、完成した食事は自身の為ではなくどうやら私たちが食すべく作ったそう。調理の知識を教えた覚えがないのだが、その理由を聞いてみれば調べて作ったとの事だ。アレ曰く食事は大事な物で栄養はバランスよくきちんと取るべきで、栄養剤やビタミン剤だのは問題外と憤っていた。一体何処の母親なのだろうと思ったが、私に母は存在しない。だが悪いものではないと知り、私が叱られる事などプレシア以来で懐かしいものだった。

 

 私たちの食事を用意するようになったアレだが、同時に私の研究にも興味を持ち始めた。 初めは隣で見ている事の許可を求め大人しく私の傍で研究や開発する姿を見ていたのだが、暫く時が経ち気になる事があれば質問や疑問を飛ばしてくるようになっていた。

知識に貪欲で吸収も早い。私はその試しとして大学に通わせ、論文や基礎理論を提唱させた。そうして提出された物は、その分野に新たな改革を起こすものとして大きく学会を揺るがせていたのだから痛快だった。そうして間もなく課程修了の報せをアレから聞いた。それからというもの私の見よう見真似でガジェットドローンを完璧に造り始め、しまいにはアレが自身で考えた別系統の魔導兵を造りだした。私が以前に提唱した理論を応用したものだが、発想そのものはアレ自身のオリジナルと言っていいだろう。私には考え付く事が出来ないものを生み出したのだから。

 

 ――面白い。

 

 一人でずっと行ってきた研究に張り合いが出た。何年も孤高に高みを求めてきたが、隣に並ぶべき存在が出来たのだから心躍らない訳はない。そうして有意義な時間が訪れる。研究に行き詰ればひょっこりと顔を出して私に助言をくれ、また逆に私もアレに助言や指摘をよくしたものだ。意見が合わなければ当然議論する事になる、科学者としてのセンスが違えば見方も違う。

はは、嗚呼そうだ。やはり私は楽しかったのだ。アレと科学を突き詰めていく事が。私もアレに感化され影響を受け、アレもまた私に感化され影響をおおいに受けてそこらに居る科学者には太刀打ちできない程のレベルにまで直ぐに育った。そしてまた月日は経ちアレは完全にオリジナルの仕組みを打ち出し新たな物を造りだした。アレは造りだした魔導兵もどきを“二足歩行兵器”と言い、何故機械を人間のように歩行させるのかと聞けば“ロマン”を追い求める事に価値があるだとか。

私には少し理解し難いものだが、アレが言いたい事の理解は出来た。研究や実験には並みならぬ熱意が必要だ。その理由が何であれどんなものであれ、その事に貴賤はないのだから。そうして完成した二足歩行兵器を無人世界へと持ち出し、起動実験を行った。結果は無残な物になってしまったが、成果は確実に得た。アレは悔しさで泣いていたが、科学者にとって失敗は勲章である。そう諭せば一つ頷き、涙を拭っていた。しかしアレの泣いた所など初めて見た。培養槽から目覚め赤子同然の状態ですら、泣かないアレがである。確かにアレの感情の起伏は通常の子供よりも乏しい、いや無いと言っても過言ではない。

だからこそアレの表情に惹かれたのかもしれない。私も私が作りだした戦闘機人たちも。嗚呼そうか、理解した。私はアレの事をどうやら娘として見ていたようだ。急にこんな事を言い出せば、気でも狂ってしまったのかと脳髄共に言われてしまいそうだが。 はっ、それでもかまわんさ。理解してしまったのだ、ずっと抱いていた自身の感情の疑問を。まだ泣き止まぬアレが爆発の影響で付いてしまった煤や埃を払うのを見て思う。

 

 ――泣き顔の私の娘、次元世界一超可愛いぃぃいいいい!

 

 そうして私はアレを……いや、娘を抱き上げ無人世界を後にした。

 

 ◇

 

 娘がアジト内の生活環境を整えた事で、副産物が生まれた。とは言っても微々たるものではあるが、その効果に私は驚いた。まずは、先にも言った通り食事である。一日三食、娘が用意したバランスの良い食事を摂る事。

今迄は食べる時間すら惜しくサプリメントや栄養剤で済ませ、それで満足していたのだが……娘が食べぬと怒るので仕方なく食べ、仕方なく食後の珈琲を飲んだ。そうして暫く、便通が良くなり食欲も増した。相変わらずの寝不足ではあるが、身体の調子が良いのだから研究も捗り良い結果も出ているのだから、食事に時間を取られる事に文句を言えなくなってしまった。娘はウーノにも調理を仕込み始め、ウーノ本人も楽しそうに娘から教わっているのである。私の計画に支障が出るのならば止めねばならぬが、あの娘はウーノの空いている時間を見つけだしあっさりと調理についての全ての工程を教え終えていたのだから驚いたものだ。

 

 次に風呂。風呂自体は珍しいものではない。バスタブとシャワーが併設されたバスルームは一般的なのだから。だが娘は入り方に言及したのだ。

我々、特にミッドチルダにはバスタブに浸かるという文化はあまりなじみが無く、身体の汚れさえ落とすことが出来れば十分と思っていた私を殴ってやりたい。入浴方法を熱く語りながら娘が考え設計した風呂は、大きな浴槽と幾つかのシャワーが設置され一度に何人も入れる風呂であった。そうして娘が提唱した入浴方法を試してみる。初めは湯の温度が熱く直ぐに浴槽から上がってしまったのだが、慣れるとこれが病み付きになる。そうして娘が何処からともなく持って来たビールが美味で。風呂上りの一杯のビールが最高だった。

普段はワインであるが、風呂上りはコレに尽きる。一度飲み過ぎて失態を晒してしまったが、まぁ一度の失敗など幾らでも有るだろう。再び同じことを犯さない事が大事なのだから。

 

 次に睡眠だった。しかしこればかりは娘の意見に従う訳にはいかぬ。研究とは一瞬の閃きと、それに向かい突き進む勢いが大事なのである。もしもその途中で寝てしまうなど愚行を犯しては科学者として風上におけない。おけないのだが、私は平気で五日間から七日間程寝ないのだ。若かりし頃はほぼ不眠不休と言っても良い一日二時間睡眠で研究を続け、一月後には全身に湿疹ができ痒みに襲われ仕方ない状態になってしまった事もあったが、流石に今になっては無理である。

 余談はさておき、まぁ一週間連続で私はほぼ寝ないのだ。そういう時、今までは止める者など居なかったのだが、娘は違った。拙い言葉使いで“おとうたま ねてくだちゃい”等と言われれば寝ぬ親など居るものか、いや居ないに違いない。だが、流石に長時間は寝られず直ぐに起きまた研究へと赴くのであるが、それを知った娘は最終手段と言わんばかりに“延髄打ち”を放った。いやはや、これはお手上げだったよ。強制的に眠りへと誘われるのだからね。だが目覚めた後は何故か無性に頭がすっきりとしているのだから不思議だ。そして私は悟ったのだ。これは、愛の力なのだと。娘の愛が私に極上の眠りを捧げてくれるのだと。嗚呼、娘よ。徹夜をする父を止めてくれてありがとう。お陰で研究が更に捗ったのだから、文句など一つも無いのだよ。

 

 また暫く時が経ち、娘はパワードスーツなるモノや小型化させた二足歩行兵器にAIを搭載したモノを造りだしていた。パワードスーツはリンカーコアを持たない人間用に開発したらしいのだが、生憎と被検体を手に入れる事が出来ず暫くお蔵入りとなってしまったが。嗚呼、すまない娘よ。

リンカーコアを所持していない人間を拉致してくれば良かったのだが、アジトに無能は必要ないのだよ。その事は口にはしていないが、あっさりと諦めていた娘には、清々しい物があった。そんな事なので、AIを搭載した二足歩行兵器に注力していたようだ。そうして暫く、形になったと言って私に報告してきた娘は珍しく嬉しそうな顔をしていた。

 

 ある日、ベルカを滅ぼしてしまった兵器も斯くやあらんとばかりの言葉が私を襲った。

 

 ――……そう言えば、お嬢の事は何て呼べばいいんッスかね?

 

 ウェンディ君。君は時折ぽんこつではあるが、まさかこの時真の力に覚醒したとは。いやはや私も驚いたのだよ。そう、そうなのである。娘であるアレに、命の言祝ぎである名を付けていなかったのだから。神の悪戯なのか、この時まで忘れていた理由は定かではないが確かな事は娘が自身の名を望まなかった事もある。

だが望んでいないとは言え、これは親として責任を果たせていないだろう。だからこそ素敵な名を送らねば。悩んでいる私を余所に娘は『ジュエル』と呟くが、それだけは認められない。いくら偽造ID用の名前とは言え、あの脳髄共が考えたものなのだから。 私の気も知らないで、周りの皆の視線がだんだんと冷えていく、が。そう、そうだ。『ゼロ』はどうかね。本来ならば彼女には『13』を与える事が筋であるが、私の完全なクローン体である。であるならばウーノを差し置いても問題はあるまいし、何より数学的にも天文的にも大事な数字である事は確かである。ならば、そう、やはりソレしかあるまい。何故か周りの娘たちは不思議そうな顔をしていたが、私の完璧な思考に追い付けていないだけなのであろう。それにゼロは少し嬉しそうなのだから、何も問題はあるまい。

 

 ◇

 

 「何故、あんな事を……」

 

 長い金糸の髪を揺らしながらプロジェクトフェイトの遺産である一人が私に問いかける。やれやれ愚問をと心で失笑しつつ、この場では私は何も出来ず暇な身なのだから、怒りを露わにしている小型犬の様な彼女に教えて差し上げようではないか。いやはや、私も丸くなったものである。

 

 人類の進化は二歩と半分。有史以来、諍い事が絶えぬ年月は堂々巡りの悪循環であろう。だからこそ人間は可能性を見つけ何処までもその果てを追い求め、そうして死を迎え朽ち果てて逝きそしてまた振出しに戻り、諍い事へと発展する。何も学ばぬ人間に進化などおこがましいとでも言うべきか、それならばいっそ退化こそが究極の美であるのかも知れんと、私は思うのだが君はどうだね?

 

 急にこんな質問をされれば答えられぬか。まぁ、良い。私は君の答えなど求めてはおらぬし、興味も無いのだからね。おお、怖い怖い、そう怒らないでくれ給え物事には順序というものが必要だ。答えだけを求めて正解をしても、過程を知らねば意味は無いだろう。それと同じ事なのだよ、この話はね。

 

 先にも言ったが、人間とは愚かなものだ。同じことを何度も繰り返し学ばない。進化している様に見えて実の所、進化などしておらず停滞している。では、どうすれば良いのだろうねぇ、人類は誰も変えようとしなかったのだから。それならばいっその事私が変えて見せようと思った訳なのだよ。“恐怖”に支配される世界をね。

 

 リンカーコアを持たない人間だろうが、魔導師だろうが、私の生み出したモノに支配されし世界で二歩と半分より先の世界に進める事を確約したと言うのに。

 

 「そんな事、誰も望んでいませんっ!」

  

 ならば君は、二歩と半分しか進めなかった世界で停滞していれば良い。それだけの事だ。もう用は無いだろう?

 

 「待ってください、質問に答えて頂いていませんっ!」

 

 これで判らぬと言うのなら、この話はおしまいだ。帰りたまえ、御嬢さん。出口はあちらだ。……やれやれ。プレシアの娘は諦めの悪い……。まぁ、母親そっくりではあるが。だが如何せん、夢を見過ぎな所もあるな。嗚呼、やはりプレシアに似ているのか。

 

 全く今日は忙しい。また面会とは。一体誰だと言うのだね……。

 

 「お久しぶりです、父さん」

 

 嗚呼、本当に久しぶりだ。我が娘よ。忙しかったのだろうか、何時もより時間が空いたね。怒っているわけではないのだが、私の楽しみを奪われた気がしてね。気分を害してしまったのなら済まない。それといつも差し入れを済まないね、何分此処には娯楽が無くてね。君が来る事や差し入れがささやかな私の喜びなのだよ。おや、暫く見ないうちにまた綺麗になったのではないのかね。なに謙遜など要らん、心からの賛美であるのだから受け取ってくれねば困るのだよ。

さて、今日も私の暇つぶしに付き合ってくれるのだろう? 時間は有限で、私の欲望の様に無限ではないのだからね。早くしたまえ。ほぅ、これは……、面白い事を考え付いたものだ。嗚呼、面白い。音も無く心が振るう。ふむ、ふむ、ふむ。しかしこの理論では穴がある。

 

 娘が提唱した論に面会時間ぎりぎりまで討論するのは、すこぶる楽しい。彼女の頭は冴えており、相変わらず私が考えもしない視点から発想し具現化させようとする。ただ、時折一人では無理な事もありこうして私に助けを求めてくるのだから、愛おしくて仕方ない。科学者としてならば彼女は愚を犯しているのだろうが、私を師と仰いでいるのだから何ら問題は無い。

 

 「ねぇ、父さん。いい加減、意地を張るのは止しませんか?」

 

 意地など張ってはおらぬのだがね。ただこの世の人間が凡骨過ぎて話にならないだけなのだよ。それに私の命もあと僅かだろう。嗚呼、そんな顔をしないでくれ、私は私の理想を掲げそれに向かって進み事を成したのだから、この人生に後悔など無い。さぁ、そろそろ面会時間も終了だろう。早く帰りなさい、些か此処は交通の便が悪いだろうからね。では、まただ。

 

 一つ、後悔があるとするならばもう一度皆で食卓を囲みたかった。ただそれだけだ。だが君たちと一緒に過ごした時間は、私にとって穏やかで楽しい物だったよ。家族など必要の無いものだと思っていた私が良い物だと知れたのだから。ありがとう、夢の様な日々を私に与えてくれて。

 

 ――嗚呼、そうだ。

 

 生まれてこなければ良かったと思った事もあった。君たちのお陰でかけがえの無いものを手に入れられたよ。無限の欲望などと呼ばれた私が、唯一満足したものなのだから。

 

 

 ◇

 

 ――二十年後

 

 『世紀の大犯罪者ジェイル・スカリエッティ獄中死』と大きく新聞の一面に踊った字は、次元世界に住んでいる人達には吉報だっただろう。この新聞が刊行される前日、私はスカさんの訃報を知らされていた。何故だかその時は実感が湧かなくて。

 

 「マスター……」

 

 ごめんなさい、ロゼさん。少しだけ胸を借りて良いですか。

 

 「はい」

 

 事件に巻き込まれた人たちの事を考えれば、泣く資格なんて無いのかも知れない。でも今はロゼさん以外誰も居ないから、誰も見ていないのだから少しの間だけ許してほしい。この世界に死刑制度は無い。一番重い罰は終身刑だ。だけれど、スカさんの力ならその才覚を以てして世間に貢献すればきっと恩赦で出所出来た事に違いない。でも彼はそれをしなかった。

悪は悪のまま、彼の人生を終えた。その人生が良い物だったのか、それはスカさんにしか判断出来ない事なんだろう。ずっと恩赦を嘆願してきた私やナンバーズの皆の願いは届く事は無かった。残念だけれど、スカさんらしいとも思う。

 

 それから半年、ウーノさんドゥーエさんトーレさん、そしてクアットロさんの出所が決まった。スカさんが亡くなってから憑き物でも落ちたかのように事件の真相をとつとつと語り始めた事と、私たちの嘆願がようやく届いたようで。

 

 ――おかえりなさい。

 

 時間は掛かってしまったけれど……また一緒に……ご飯食べられますね。

 

 




 
 皆様お久しぶりです。全く筆が進まず『完結』とさせて頂いた言い訳をだらだらと書き残しておきます。

 おまけの話でやりたかった事はノーヴェさんの不完全燃焼をどうにかしたい、という思いが強く書きはじめつつ、漫画版vividを最終巻まで読んでみたら『ノーヴェさんに格闘選手としての心残りなんて全くないじゃないか』という結論に至ると、もう書けませんでした。だれか救済したい人居ないかなと探してみたものの、誰も居ない。
 このまま書いてもオリ主マンセーしか残せない気がしますし、以前に投げたエピローグをうpして完結とさせて頂きます。ふと何か電波を受信してまたこの作品を更新するかもしれませんが、その時はよろしくお願いします。┏○))ペコ


 

 
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