転生先はスカさん一家   作:行雲流水

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第六話:理不尽は突然やって来る。

 爽やかな朝の始まりはフェイトさんの悲鳴で幕が上がった。

 

 「な、なんでっ! 何で知らない男の人がゼロと一緒に寝てるのぉぉおおおおおおおお!!!」

 

 涙を流しながらライオットザンバー・カラミティを構えて殺意を前面に押し出しているフェイトさんに気圧されてるロゼさんと私。この台詞の前に放たれた魔法で飛び起きたんだけれど、不思議と怪我とか被害が無かったからフェイトさんが加減をしてくれたのだと思う。

 

 知らない男の人と一緒に寝るような趣味は私には一ミクロンたりともないのだけれど、と自分の横を見てみればロゼさん男性ver.の姿が。しかもロゼさんは裸族。もう一度言う、全裸族なのだ。しかも人間の生態をしらみつぶしに調べ上げて完璧を目指したロゼさんの擬態は無駄に完成度が高いのが今回は仇になっていて。男性特有の朝の生理現象まで再現していたものだから、さぁ大変。私は医療知識とか身に付けててロゼさんのその姿を見てもなんとも思わないし、ロゼさん自身も人間の生態を模しただけであってえっちぃ意味は含まれていない事を知っているからもう慣れてたからいいんだけれども。

 問題は目の前のフェイトさんである。うん、ごめんなさい。多分、見た事がなかったのだと思う。フェイトさんの顔は怒っているけれど、顔も耳も真っ赤だし。そして一番の問題は、ロゼさんの姿をフェイトさんたちは女性の姿でしか見た事がないという事実。私がフェイトさんの立場なら、同じ対応を取っている事は間違いないと思う。幼女と裸の成人男性……どう見たって超不味い現場だよね。

 

 さて、どう弁解をしたものかと考えてロゼさんを横目で見る。視線を例の場所へと向ければ、まだ元気なままのロゼさんのご子息様。取り敢えずその立派なモノにはシーツを掛けてあげて隠してみるんだけれど、シーツが薄いからもっこりしてなくもない気が。まぁそれはさておき。構えた両手剣をまだ元に戻してくれそうもないフェイトさんの様子に頭を抱えるんだけれど、良い策なんて見つかる訳はなく。そういえばロゼさんは色々なものに擬態が出来る事を伝えていなかったな、と頭の隅によぎる。

 

 「小さい子供に……なんてモラハラをっ……! そもそもなんで、抱き心地が良さそうなゼロをどこの誰とも知らない人が一緒に…………」

 

 その役目は私がしたかったのに、と小さく呟きながら瞳のハイライトがだんだんと暗くなっているんだけれど、き、気の所為、絶対に気の所為。ロゼさんが私を抱き枕代わりに寝ることはいつもの事だし、私もロゼさんに抱きかかえられて寝るのは心地いいし微妙な柔らかさをずっと保持してくれてるし、夏場は冷たく涼しいし冬場は適度に温かいっていう快適機能を発揮してくれてるんだもん。以前にスライムさんの姿でロゼさんと一緒に寝ると一度窒息死しかけた事があるから死んじゃいたくはないのでロゼさんには悪いけれど禁則事項になったんだよね。

 ロゼさん曰く『無意識でマスターの身体を包み込んでしまったようです』との事だったので、解決方法を探したら人間に擬態した姿のままを維持してもらっていれば本人も気づかない間に私の身体を覆って包み込む事態にはならないそう。

 

 なのでこうしてベッドで一緒に寝る時はロゼさんには人間の姿になってもらっている訳なんだけれど。それなら今度フェイトさんにもロゼさんの心地よさを理解してもらおうと心に誓うんだけれど、無理かなぁこの状況じゃ。

 

 ――なんで怒られているんだろう。

 

 もちろん正座で。一応慣れているから私は良いけれど、ロゼさんは初めての体験だろうからちょっと辛そう。硬いフローリングの上じゃなくてベッドだからまだマシなんだけれど、この状況は笑えないなぁ。

 というかミッドに正座の文化はない筈なんだけれど、フェイトさんは何で知っているのーって心の中で愚痴ってたんだけれど、目の前で涙目になっているフェイトさんは海鳴の街に何年か住んでたんだよね、忘れてた。それにリンディさんも地球の文化、特に日本のモノに精通してるんだっけか。緑茶に砂糖をぶち込む暴挙に至ってた気がするけれど、きっと何かの見間違いだろう。

 

 怒りは少し収まったのかバルディッシュさんのザンバーモードは解除されて取り敢えずは一安心なんだけれど、それでもフェイトさんの表情は強張ったままで。フェイトさんの後ろでは、一緒に来訪してたリンティさんが頬に手を当てて『あらあらぁ』って感じで笑ってるし。他人事だと思ってこの状況を楽しんでいるに違いない。というか、フェイトさんの暴走を止めて下さいよ、静観していないで。

 

 「……ゼロ。少し聞きたい事があるんだけれど、いいかな……」

 

 「はい、なんでしょうか……」

 

 私の隣で正座をしているロゼさんはバインドで拘束されて正座を強制させられたのだけれど、その姿が不憫でならない。一応敵意のない人たちには手を出さない様にと伝えてあるんだけれど、この先の展開次第でフェイトさんとの戦闘に発展する可能性があるのだから、火が付いているフェイトさんに油を注ぎこむような事は出来ないので発言には細心の注意を払わなければ。

 

 「とうして"男の人"と……ど、どど同き……一緒に寝てたのかな……?」

 

 口ごもりながらにっこりと笑ってるフェイトさんだけれど、纏っているオーラに負の感情が詰め込まれているのは明らかで。それも超特大のモノです、はぁ。でもまぁ、フェイトさんがこうして怒ってしまったのはロゼさんの擬態についてきちんと伝えてなかった自分の迂闊さが原因だから言い訳もなにもする気になれないけれど、其処まで怒る内容なのか、とも思っちゃう訳で。

 まぁ、いいや。取り敢えず言い訳にならない言い訳を開始しよう、そうしないと状況が改善されそうにもないしね。

 

 「ふぇいとさん、わたしのよこにいるだんせいは ふぇいとさんもしっている ろぜさんです」

 

 「え? 嘘……」

 

 嘘なんて吐くつもりはないんだけれどなぁ。正真正銘私の使い魔のロゼさんである。

 

 「で、で、でも。ロゼは女の人じゃないの?」

 

 ロゼさんには元々性別はありませんから、中性とか無性という分類になりますねぇ。生物学上の意味を考えるのなら、その存在は不思議なもので。性別を持たないイコール子孫を残せない存在だもんね。"種"というものが残せないのだから、生物として矛盾を抱えている存在なのかもしれないけれど。まぁ偶然生まれちゃった存在だから人知れず絶滅する運命なのがロゼさんなのだろう。

 こうして人間の姿に擬態できるようになったのはロゼさん自身の努力の賜物ですので、あまり怒らないでもらえると嬉しいな。と言うか、写真とか見せればその人物を100パーセント完璧に擬態しちゃうのがロゼさんクオリティなのです。

 

 「そんな事が出来るの?」

 

 「できますよ。それじゃぁためしにふぇいとさんにぎたいしてもらいましょうか。ろぜさんおねがいしてもいいですか?」

 

 「了解です、マスター」

 

 ちょっと不機嫌そうに私のお願いを聞いてくれたロゼさんは、バインドされたまま男の人の姿からぬらりとフェイトさんの姿へと変わっていく。その時に骨格が変化してしまったのでバインドから抜け出したロゼさんはしてやったりと悪い顔をしてた。

 

 「ほ、本当に私にそっくり…………」

 

 「あら、凄いわね。コレ」

 

 興味が沸いたのかリンディさんが私たちの会話の中に入ってくる。ですよね、ロゼさんって凄いんですよ。えっへん。今はフェイトさんの外観だけを模しただけなんだけれど、時間を掛けて解析すれば声や胸のサイズや他の人に秘密にしておきたい身体のアレやコレも一ミリの狂いもなく再現できちゃうんですよねぇ。でもそんな事をすればきっと怒られてしまうのは確実なのでやらないけれど。

 

 「へぇ。面白いのねぇ」

 

 にっこりと笑っているリンディさんの心の内はうかがい知れない。まぁ、女性の身でありながら長年管理局に努め提督という立場を手に入れている人なのだから一筋縄ではいかない人なんだろうなぁ。無印でもなのはさんを管理局に引き込む事を成功させているし、闇の書事件の時もはやてさんを管理局に引き込んで、強硬派の闇の書事件の遺族のみんなから守ってもいたのだろうし。あんまり敵に回したくない人物の一人だよね。そんな事を口にしちゃえば『現場から身を引いて久しいから、そんな事はもうしないわよ』って綺麗な笑顔で返されそう。うん、やっぱり敵に回したくない。

 

 ところで、お二人はなんで家に来たんだろう。

 

 「貴女の様子を伺いに来たのよ。もう少し早く訪れるつもりだったのだけれど忙しくて。それと、抜き打ちみたいになってしまった事は、ごめんなさいね?」

 

 「いえ」

 

 うん、本当に。来ること自体に問題はないし、お家の鍵のパスワードを教えてたし、アポなしで入って来る事も問題はないし、ちゃんとお客様としてお迎えするだけなのだから。

 

 リンディさんとカリムさんの上司さんには保護責任者だからお家の鍵のパスワードを伝えてたんだよね。何かあった時に対処できないのは不味いし、緊急用って事もあるだろうし。

 でもまさかフェイトさん怒りのソニックフォームを拝む事になるだなんて思ってなかったけれどねー。酷い目に合う寸前だったと思いつつ、お二人が今日来た用件を聞いてみる。たぶん様子を見に来るついでに何か違う事もある筈だ。

 

 「話が早くて助かるわ」

 

 「母さん……。ゼロは確りしているといってもまだ小さい子供です。無理をさせる訳には……」

 

 おおぅ。こんな所で親子喧嘩を始めないで欲しいな。やるならせめてフェイトさんかリンディさんの家でやって下さいな、と心で思いつつ私は問題ないので話の続きを促す。フェイトさんが渋い顔をしているんだけれども、まぁフェイトさんは甘い部分があるので放置。酷いと思われるだろうし申し訳ないとは思うんだけれど、話が進まないからねぇ。

 

 「貴女の無償奉仕勤務の内容が決まりました。無限書庫はどうだろうと、本局の上層部の人たちが決めたのだけれど、貴女はどう思うかしら?」

 

 戦闘に出る訳でもないし危険な事をする訳でもないので文句なんて全くないです、はい。もちろんその内に魔導師ランクも取得して嘱託魔導師として登録しようと考えてはいるけれど。

 

 「あら、そうなの?」

 

 少し驚いた顔をしたけれど、ちょっと顔が綻んでいるリンディさん。

 

 「だ、駄目だよっ! たしかにゼロの魔力量は凄いけれど、戦闘訓練も積んでいないでしょ!? 母さんも、ゼロを持ち上げるような事は言わないで下さいっ!!」

 

 大丈夫ですよ、そうなるのはまだ少し先でしょうしね。なにより魔力量が合っても身体の成長が追い付いていないから、今の状況で現場に出ても邪魔になるだけなのでもう少しこの身体が成長してからファイトさんの言う様に訓練を積んで、魔導師としての経験を積んでからだ。

 それに今のうちに仕込んでおきたい事もあるから、その為の準備もしなくちゃならないし忙しいから嘱託魔導師なんてまだ何年も先の話だろうと思う。そんな事が許されない状況になるのなら仕方ないけれど、今の状況なら急ぐ必要はないだろうし。だから今しばらくは私のやりたい事をやるつもりだ。もちろん無償奉仕をサボるつもりは無いから、全力を持って事に当たるつもりだよ。

 

 あれ、でも。

 

 ――無限書庫って管理局の中でもブラック中のブラック部署じゃないかな……?

 

 そんな気がするのは気の所為なのかしら。永遠と増え続ける情報という名の書の山。あれーーおかしいよ。一瞬楽な部署だよねーと思ったのが一転、お先真っ暗な未来しか見えない気がする。でも今考えても仕方ないし、なるようになるハズだ。大体、司書長はユーノさんだからきっと大丈夫だよね、ね?

 

 リンディさんとフェイトさんとの面談ではロゼさんの事が問題に上がった。内容は男性版ロゼさんは流石に問題があり過ぎる、と。家の中だけなら問題はないけれど、外に出る時とかは禁止だってさ。

 

 先程の事を思い出してしまったのか、フェイトさんが顔を真っ赤にしてるけれど。

 

 何故なら最近の世間様の目は厳しい、と。私と男性版ロゼさんが一緒に外を歩けば懐疑の目を向けられる事は少なからずあるだろうから、問題を引き起こしてしまう前に対策を取っておこうって。まぁ、ご近所さんへの挨拶も女性版のロゼさんと一緒に行ったから、周囲の人たちから変な目で見られるのは避けたいし、ロゼさんには申し訳ないけれど外出する時は女性の姿になってもらう事になった。

 本当、世知辛い世の中になったものだよね。変な事件が多い所為もあるのだろうけれど。でも無関心を貫き通されるよりは良いんじゃないのかな、知らんぷりをして事件が起こってしまったって方が寝覚めが悪いものね。

 

 「あ、そうだ。なのはとヴィヴィオがね、ゼロのお家を訪ねたいって言ってたんだけれど大丈夫かな?」

 

 全然問題はありませんし、歓迎しますよ。そういえばなのはさんとヴィヴィオさんは養子になったのか気になるけれど、私が踏み込んで良い事じゃないしフェイトさんに聞くのも筋違いだろうから興味本位で聞くのは止めておこう。フェイトさんもリンディさんも笑っているからきっと悪い話じゃない事は推測ができるし、何かあるのなら出来る事は少ないけれど微力ながらも何かしたいし。

 

 「ゼロさん、これを」

 

 「……これは?」

 

 名前を呼ばれてリンディさんを見てみれば、バッグの中から小さな機械を取り出して私に手渡してくれた。

 

 「本当はもっと早く渡すべきだってんでしょうけれど、通信端末です。機動六課の皆の連絡先や保護者のみなさんの連絡先が登録されているから、何かあれば遠慮なく使ってね?」

 

 「ありがとうございます、りんでぃさん」

 

 そう言って頭を下げる。両手で持ってもちょと持て余してる通信端末は市販されているオーソドックスなもの、だと思う。固辞しても最終的には押し付けられるだろうから、遠慮なく受け取ったんだよね。皆の連絡先を聞ける身分でもないし、自分から連絡を取る事もないだろうと考えていたし公衆電話とか一応あるから気にも留めてなかったし、必要とも考えていなかったから購入する気はなかったんだけれど、リンディさんは気を利かせてくれたみたいだ。

 後、GPS機能も付与させてあるから肌身離さず持っていてくれると嬉しいって。何が起こるか分からない世の中だし、私の身の安全も考えてだそうだ。小さいし持ち運びに不便はないから、お出かけするときは言われた通りに持っていよう。

 

 「困ったらすぐに連絡していいんだからね? ゼロは遠慮してる所があるから心配だよ」

 

 眉をハの字にさせてフェイトさんが困り顔で私を見つめる。んー、困る事がそうそうにないからこの端末を使用する機会は無さそうなんだよね。ロゼさんの力を借りれば大体の事は解決できちゃうもん。でも、気持ちは嬉しいから素直に受け取っておこう。

 

 「はい、ふぇいとさんもありがとうございます」

 

 ん。いつもお世話になってばかりだから、感謝の言葉はちゃんと伝えないと。嗚呼、フェイトさん抱きしめてくれるのは嬉しいのですが、力加減をして下さい。柔らかい胸に挟まれて苦しいんです。死にはしないけれど見た目に反してフェイトさんの腕力があるんだよね。流石Sランク魔導師、伊達な鍛え方はしてない。

 

 「それじゃぁ、そろそろ。……フェイト、行きましょうか」

 

 「あ、はい。母さん」

 

 また来るからね、とフェイトさんとリンディさんは言い残して家を後にした。玄関先で今度お泊りしたいんだけれどいいかなって聞かれたので了解ですと答えておいたよ。狭いけれどゲストルームはあるから一人くらいなら全然困らないので断る理由はないし、大勢いる方が楽しい時間を過ごせるしね。お二人の姿が見えなくなるまでロゼさんと一緒に見送って、いそいそと研究室にまた引き篭もる私だった。

 

 ◇

 

 さて、やりたい事があるので大学の講義を受けながらちょくちょくと進めてたのだかれど、少しづつ形になって来たのかなーって思う。研究室の机の上には自動式拳銃が一丁置かれている。もちろん、管理外世界である地球の代物じゃなくて私が一から設計して作った魔法由来による兵器なので、質量兵器じゃない事は確か。狙いは陸士部隊の魔導師ランクを取得していない一般局員の人たちに戦力の底上げという名目で装備してもらう為だ。あと低ランクの魔導師の人たち用にも、かな。

 

 魔法由来なので拳銃単体で運用って訳にはいかず、オプションも付けなければならないのだけれど、大分小型軽量化を図ってみたので魔力を保持していない女性にも撃てるようになってるはず。機能や威力は、直射魔法一つしかないけれども威力はAランク相当のモノが撃てる。だから、魔導師の少数精鋭部隊というよりも、同じ事しか出来ない大多数を揃えた部隊構成って感じになるけれど、運用次第で犯罪者に対応できるかなーって。

 後は撃った時の反動とかを失くしたいけれど、この辺りは魔法構築に掛かってるかな。あまり反動がないのも考え物だから、多少は撃った感触を手に残しておかないと。動力依存しているから無限に撃てる訳でもないので、弾数管理は必須項目だからね。何発撃ったのか音や感触で判るようにしておかないとだし、色々と考えなきゃいけない事が沢山あるから難しい。

 

 スカジアさん改良型納入と共に、これを地上本部に売り込むつもりだよ。本当は質量兵器を導入してもらうのが一番手っ取り早いし安価に済むのだけれど、質量兵器アレルギーを引き起こしている管理局だから到底無理だろうしね。それなら徐々に慣れていってもらうのが良いかなと考えて"拳銃"の形にした。本当なら、杖でもなんでもいいんだよね。魔法を撃つだけの装置でしかないのだから。

 でも自動式拳銃型にしたのは利点が結構あるから、行きつく先がソレになってしまったてのもある。魔法を発動させるトリガー、そして魔法を射出させる銃口、グリップの内部には弾倉ではなく色々と魔法仕掛けの装置を入れてあるし。

 

 厨二病が発動しちゃうのなら銃剣型とかもカッコいいから試作品を一応作っては見たものの、お蔵入りが決定してた。そもそも拳銃自体が遠距離攻撃なんだし、魔力を所持していない人が接近武器を持つのって危険極まりないんだもん。

 怪我や死んじゃう可能性が跳ね上がるから却下。それなら防弾チョッキみたいに魔法を防いでくれる着用型のなにかも考えたし作ってはみたけれど、今の所燃費が悪すぎて難航中。パワードスーツも捨てがたいけれど、地上本部の台所事情を考えるとちょっと大掛かり過ぎるからそれも保留、というよりも私の家の研究室の設備だと大掛かりな代物は作れないので無理なんだな。

 

 そんなこんなで目の前にある"拳銃型魔法射出装置(仮称)"をお試しする事にした。相手が必要なのでロゼさんにお願いして庭に出てみる。

 

 「この辺りでよろしいでしょうか、マスター」

 

 適当で大丈夫ですよー、その為にお庭のかなり広い家を購入したんだし。取り敢えず自分の魔力を使わずに"拳銃"が撃てる事と、仮に失敗してご近所さんにご迷惑が掛からなければそれで良いし。

 それじゃぁ、防御魔法をロゼさんに発動してもらって、的はロゼさんが張ってくれてる防御魔法だ。危なくない様に拳銃の出力は最低にまで落として設定して、取り敢えず数発試射をしてみた。ロゼさんの防御魔法は、なのはさんのディバインバスターを防いだ実績があるので大抵のものは大丈夫だろう。そう思って遠慮なく撃ち込む。

 

 「この位であれば、何ともありませんので続けて下さい」

 

 ロゼさんの頼もしい言葉に更に遠慮なく撃ち込んで連射する。耐久度も確かめたいから、早々に撃ち終えるつもりなんてなかったけれど、そろそろ銃身が魔法エネルギーによってヘタってきそうな感じがヒシヒシと。それでもまだ撃てるので、カートリッジシステムを応用した魔力蓄電装置が空になるまで撃ち尽くしてみないとね。

 

 ――あ、なんだかデジャブってる。

 

 そんな事を頭の中によぎらせた瞬間、拳銃型魔法射出装置が爆発、ついでに魔力蓄電装置も一緒に爆発。いやはや、限界をいつの間にか超えていたようで全然気が付かなかった。被害は小規模で私の身体が煤けているくらいなので大したことにはならなくて良かった。もう少し耐久性を持たせないと駄目だな、コレ。

 

 「ま、マスター……」

 

 ああ、大丈夫ですからそんなに心配しないで下さいロゼさん。しかしまぁ、あんなに魔法をポンポン撃つ事がないから、トリガーハッピー状態にでもなってたかな。魔法を使った事がない人が今の私のようになる可能性もある事も踏まえなきゃいけないかなぁ。対策をどうしようか、一度撃ち尽くすだけ撃ち尽くして飽きさせる、とかかなぁ。それとも連射機構をオミットさせるとか。

 出来る事は沢山あるし、お披露目までにはまだまだ時間はあるしもっと確りとした改良を加えよう。安全が確保できていないなんて兵器として終わっているし、使う人から信頼を得られない物なんて普及していく事はないからね。

 

 「嗚呼、マスターの綺麗な髪がっ」

 

 むむ、私の髪がどうしたのでしょうか。珍しくしょんぼりしているろぜさんの様子が気になる。

 

 「……マスターこれを」

 

 身体の一部を硬化させて反射板のようになったロゼさんが、鏡代わりに差し出してくれた腕。そのロゼさんに映る自分の姿を覗き見る。

 

 ――ありゃりゃ。

 

 見事なチリ毛になっている私の髪。なんだろうこのギャグ時空と思いつつ爆発の熱が影響したのか、四年間切っていなかった私の髪がチリヂリに縮れてる。一応、私服のままバリアジャケットを展開させていたから身体自身は無事で傷一つないけれど。

 仕方ないから髪を切りに行こう。そういえば美容院ってどこにあったかなぁ。自分で切る事も出来るだろうけれど、プロ並みに切れるって技術は私にはないから諦めてこの辺りで予約なしでカットしてくれる所を探さなきゃ。

 

 さっそく家に戻って検索を掛けて近場の美容院を探す。そうしたら何件かヒットしたのでもっとも近場の美容院に連絡を入れて今からカットできるのか聞いてみればOKだって。なのでロゼさんと一緒に出掛けて、チリ毛になった部分をカットしてもらった。美容師さんになんでこんな事になったのか不思議に思われたけれど、初歩的な魔法を練習してたら暴発したって嘘を吐いたら信じてもらえた。嘘を吐いた事に申し訳なさを覚えるけれど、仕方ないよね。真実を伝えても理解してもらえない気がするし。

 

 大分さっぱりした髪の襟足を撫でてシャンプーが楽だなぁ、なんて軽く考えていた。

 




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