転生先はスカさん一家   作:行雲流水

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第十話:例の二人。/ なのはさんvsロゼさん。

 

 無限書庫でのお仕事から帰宅してから一時間くらい経った頃だった。来客を告げるチャイムに今日は誰も来る予定はないから、新聞の勧誘だろうと決めつけてロゼさんにインターフォン越しに対応をお願いしたんだけれど、どうやら違うご様子。私に用があったようで、誰かとロゼさんに聞いてみれば意外な人物の名前が上がって驚いた。

 

 重々しい雰囲気に息を飲む。

 

 ――家はそんなに広くないから、大柄な男性が二人訪れれば狭いなぁ。

 

 というかむさ苦しいなー、って方が本音だったり。だって、だってね。私の対面に座るソファーにはレジアスさんとゼストさんが居るんだよ。この光景をむさ苦しいと言わずして何と言うのだろうか。手土産にクラナガンで有名な洋菓子屋さんのケーキを頂いたのだけれど、レジアスさんがケーキの箱を幼女に渡すって絵面を想像すると可笑しくて可笑しくて、噴出さなかった私を褒めて欲しいくらいだ。

 しかも二人とも饒舌って訳でもないから、自然と沈黙の方が多くなるし。レジアスさんと一緒に家に来たオーリスさんはこの状況に慣れているのか素知らぬ顔をしているのだから、肝の太い人だよ。でも気を使ってレジアスさん達と一緒に来たのだろうから有り難い事だよね。知ってる人達だけれど、密室で男性二人と私だけってのは色々と問題がある気がするし。もちろんロゼさんが居るから間違いなんて起こりえる事はないけれど。

 

 「お前さんの考えた『拳銃型魔法射出装置』を地上本部に配備しようと思う。だが問題が山積みだ……」

 

 渋い顔でレジアスさんが本題を話し始める。レジアスさんがこの話を持って来たという事は、レジアスさんが地上本部に関わる力をまだ有しているという事。本局から地上本部の扱いが劣悪だった為に強硬な手段に走りレジアスさんは罪を犯してしまった人だけれど、決して無能なんかではなくむしろ有能な部類。関わってしまった人が最悪だっただけで、本人自体は無害な人とでも言えばいいだろうか。

 

 で、レジアスさんが危惧する問題点は"盗まれた場合""魔力切れを起こした場合""非殺傷設定を解除された場合"だった。その辺りについては全て対策を取ってある。局員から強奪すると、ID認識させているから自動で機能がOFFになるし、陸特有の縄張り意識を逆手にとって管轄区から一歩でも出るとこれも機能OFFされるから、悪意のある局員が使用する事も防げるはず。魔力切れについてはカートリッジシステムを応用させた予備の魔力電池に切り替えるだけだし、非殺傷設定解除も強制的に術式に介入しようとすると機能OFFになるのと共に一部機構が壊れる仕組みになってるから、専門知識がないと直す事は難しい。

 

 「出会ったのが最高評議会やスカリエッティでは無く、お前さんだったら……と思ってしまうよ」

 

 「レジアス。過去ばかり見ても仕方あるまい。俺たちが成し得なかった事を、彼女はやろうとしている。ならば俺たちが成す事も自ずと決まってくるのではないか?」

 

 ずっと黙って聞いていたゼストさんがレジアスさんに熱く語る姿はちょっと感動ものだった。そうして試験部隊を立ち上げて運用するらしいのだけれどもう一つ問題が上がる。前代未聞の魔導師ランクを取得していない局員が現場に立つのだから、訓練方法から戦術まで白紙状態。そんな事なので、一応調べておいた地球の軍隊の運営方法や基本理念なんかをレジアスさんにデータを渡して参考にしてもらう事に。

 魔導師みたいに専門的に魔法を習わなければならない事はなくて引き金を引くだけだから、撃つ事だけに関しては凄く簡単。あとは命中精度の上昇や残弾数とかの確認や基礎的な事を確立すればいいだろうと思う。それに銃型のデバイスを使う魔導師の人だって居るから、ノウハウは少しくらいはあるんだよね。そんな魔導師の人を引っ張ってきて指導してもらうのもアリだし。どうとでもなるんじゃないかな。

 

 他にもレジアスさんから頼まれ事をいくつか貰って。何か見返りは欲しくないか、と言われたんだけれどそうそう欲しいモノなんてないし。一つだけお願いがあるのなら、設備の整った研究施設を使いたいくらいだったんだけれど自分の城があるんだし他の人が使ってる場所にお邪魔するのも気を遣うから言うのは止めた。

 その代わりに、以前に造ったものを改良して完全に魔力で動く巨大ロボット兵器要らないって持ちかけてみたけれど、管理世界の人たちにとって私の発想が突飛過ぎるのか即行で却下されちゃった。仮に地上本部の正門に配備すれば市民の皆様が混乱するだろうし、操縦者の育成にもお金が掛かるんだから量産できない物は不要だって。言い分は分かるけれど、レジアスさん達に浪漫は理解できないみたいで残念。

 

 「本質はあの男と変わらんな」

 

 「……」

 

 レジアスさん何気に酷い台詞じゃないかな、ソレ。私はスカさんにそっくりですが、中身まで似たつもりはないです。うーん、横でレジアスさんの言葉に無言で頷いていたゼストさんが微妙な顔をしてる。なんでさ。

 

 それとゼストさんはめでたく管理局員に戻ることが出来るそうだ。配属は教導隊かなって思ってたんだけれど首都防衛隊なので古巣に戻るみたい。ちょっと嬉しそうなゼストさんの顔は以前の険しさは全くないから心配は無さそう。レジアスさんに似ても似つかない娘さんのオーリスさんも再就職先が決まったそうで、皆新しい道にそれぞれ進み始めてる。そんな姿を見てると自分ももっと頑張らないとなーって気合が自然と入る。

 

 ――色々とやる事はあるし、出来る事もまだまだあるよね。

 

 家を後にした三人の背中を見ながら、自然に笑みが出た。

 

 ◇

 

 ――へくち。

 

 ここ数日、回数の多くなったくしゃみにずずずと鼻をすすって息を整える。なんだろう花粉でも飛んでいるのかなぁ。だとしたら嫌だなぁ、アレルギー持ちになっちゃうのか。前世で体験した事はないので関わる事はないかなーって軽く考えてたのがいけなかったのかしら。取り敢えず酷くなる感じはしないから当分の間は様子見しよう。病院はあんまり好きじゃないし、お金が掛かっちゃうから行きたくないし。

 

 やる事は沢山あるんだけれど、この身は一つなので出来る事は限られる。分身でも出来れば作業効率が一気によくなるけれど、魔法で分身した所で不都合が生じるのでゆっくりだけれど少しずつ自分に課せられた課題を片づけてる最中だ。

 

 家の庭に建設中の魔法練習場ももうすぐ完成するし、無限書庫での無償奉仕も慣れてきて役に立っていると思いたい。聖王教会にも医療技術や医療魔法の提唱を色々と持っていってるし、地上本部にも拳銃型魔法射出装置の納入がそろそろ出来そうだし、簡易型バリアジャケットも数を揃えてる最中だ。

 

 もう一つやりたい事があって魔導師ランクの取得ができれば嬉しいんだけれども、四歳って歳が邪魔をしている所為なのか周囲の人たちがそれを許してくれない。でも魔法を使う事には慣れておけと言われ、管理局と聖王教会が主催する子供向けの魔法講座に行ってみてはと助言を頂いたのだけれど、幼児向けの講座は私の心が全力でそれを拒否したから断った。

 で、断った代わりに何故だか、なのはさんとフェイトさんによる魔法講座が開催されるハメになっちゃったのである。しかもお二人が非番の日に。プライベートの貴重な時間を奪ってしまう事に申し訳なさで一杯になるのだけれど、何故かノリノリのお二人の勢いに押される形になってしまいついにその日が来てしまった。それでもって場所は適当な公共魔法練習場って思ってたのだけれど、リンディさん辺りが無茶を通したのだろう本局の訓練場を貸してもらえたそうだ。

 

 「いらっしゃい、ゼロ」

 

 「久しぶりだね、元気にしてた?」

 

 非番だけれど職場だからか制服姿のお二人。制服姿を見るのは六課でお世話になっていた頃だけでその後は私服姿だったからお二人の制服姿を新鮮に感じる。本当時間が流れるのは早いもので、既に五ヶ月近くも経ってる。

 

 「ゼロー!!」

 

 お二人の陰からひょっこりと現れたヴィヴィオさんも一緒に魔法講座を受けるみたい。何度も会っているけれど、偶に日数が空いて久しぶりと挨拶を交わす事が偶にある。私に抱きついてくるヴィヴィオさんなんだけれど、体重を預けられると支えきれない。一応二歳差くらいはあるので成長著しい幼児だとその体格の差は大きいから倒れそうになって危ない。 

 

 「マスター」

 

 そういう時はこうしてロゼさんが当たり前のように私の背中を支えてくれて、最終的にはヴィヴィオさんを私から引っぺがす事が常態化してる。

 

 「ぶぅー! ロゼのケチっ!」

 

 「では、マスターに抱きつくのはお止め下さい」

 

 ロゼさん、ロゼさん。身長差がヴィヴィオさんととっても有るので知らない人が見ると、滅茶苦茶大人げない発言ですよ。ロゼさんはヴィヴィオさんよりも後に生まれましたが、使い魔だから成長速度は人間と違うのですからもう少し大人になりましょう。あ、ちょロゼさん、そんなしょぼくれた顔をしなくても良いじゃないですか。怒っている訳ではありませんから、ね。

 

 そんなやり取りをしながら、なのはさんとフェイトさんから魔法についての基礎講座が始まった。

 ヴィヴィオさんが居る為に分かりやすいように噛み砕いて説明してくれているのだけれど、そういえば魔法の基礎なんて受けずに独学で魔法を使ってたから基礎を習うには丁度いい機会だったかも。この世界の魔法の成り立ち、歴史、魔法体系や基礎術式とか色々と結構濃密な内容で。ヴィヴィオさんはついていけてるのかなーって心配して横を見ると、真剣な表情で聞いているから取り越し苦労だった。

 

 しばらくして実技に入って色々と魔法を教わったけれども、危険だし使いどころの判断とかはまだ難しいだろうからって攻撃魔法をお二人から習う事は出来なかったけれど、代わりに防御魔法を教えてもらった。なのはさんの防御は固いと言われるだけあって、魔法術式はかなり確りしたものだった。原作無印で天才って言われてたけれど、その上に努力まで重ねた真面目な人だから術式は完璧で突っ込みどころなんて全くない。でも私には向いてない部分もあるから後からちょっとだけ手直しをしよう。

 授業開始から一時間ほどしてヴィヴィオさんの集中力が切れたのか疲れたのか、小さい子供特有の飽きた仕草を見せ始めた。それを察知したなのはさんとフェイトさんはちょっと休憩しようかってなって、小休止。フェイトさんが一瞬で四人分の飲み物を買いに行って手渡してくれた。この近くに自動販売機なんてあったかなーって思ったけれど野暮な事は言うまい。

 

 「タカマチ一尉。頼みがあります」

 

 「うん? 珍しいねロゼから話しかけてくれるなんて。あ、あと"なのは"でいいからね?」

 

 なのはさんの言う通り、ロゼさんが誰かに自分から話しかけるなんて珍しい。後半部分の言葉をロゼさんは華麗にスルーして本題をなのはさんに伝える。それは"貴女と模擬戦をしてみたい"とぽつりとロゼさんは言い、その言葉を受け取ったなのはさんは一瞬だけきょとんとした表情を浮かべ、次の瞬間には目に闘志を浮かべてる。

 

 ――バスターの件が後を引いてるのかな。

 

 模擬戦だから訓練用の魔法に切り替えるので問題はないけれど、なのはさん強いしロゼさんは大丈夫かなと不安がよぎる。フェイトさんはフェイトさんで"なのはが羨ましい"だなんて小声で零しているし、バトルジャンキーな皆様には敵わない。

 

 「えっと、模擬戦をするなら映像データを取りたいんだけれどいいかな? あとそのデータを教材として使う事にもなるかも知れないから、その許可も欲しいかなぁ」

 

 ん、それはロゼさん次第だと思うので……どうしますか、ロゼさん。

 

 「マスターが構わないのであれば、私は気にしませんが」

 

 なら問題は無いでしょうかね。

 

 「わぁ、ありがとう。二人とも。それじゃぁ準備しよっか」

 

 そうしてコントロールルームへと軽い足取りで向かうなのはさんの背中に炎が宿っているのは気のせいでしょうかね。きっと気のせいでしょうね。そしてウチのロゼさんは生きて帰れるのでしょうか。一応なのはさんのバスターを凌いだ実績はありますが、魔導師対魔導師の戦闘経験はほぼないと言っていいロゼさん。

 ナンバーズの皆さんと一緒に訓練に勤しんでいましたが、あの方たちも正確に言えば魔導師ではないですからねぇ。なので一抹の不安があるのですがこれも経験かな、と思い腹を括ろう。ロゼさんが負けてる所なんて想像したくないけれど、相手はなのはさんで主人公でSランクオーバーの魔導師さんだもの。心配しないはずは無い。

 

 「ヴィヴィオとゼロは危ないから、こっちに行こうか」

 

 フェイトさんに手を引かれてガラス越しに訓練所を見渡す事ができる控室に通された。コンクリートで囲われた訓練所の中心には開始線が一応引かれてあるから、その線に沿ってなのはさんとロゼさんが立っている。なのはさんはバリアジャケットを纏い左手にはレイジングハートさんを握りしめて。一方のロゼさんは無手で突っ立って数度跳躍して身体の具合を確かめる。

 こんな事ならロゼさん用にデバイスを組んでおくべきだったと頭を抱えるけれど、もう遅い。フェイトさんにロゼさんの勝率はどれくらいあるでしょう、と聞いてみたんだけれど……。

 

 「うーん。ロゼの魔導師としての資質を知らないから何とも言えないかなぁ。ゼロには悪いけれど、魔導師ランクでいえばなのはが勝っちゃうだろうし……」

 

 やっぱりそうですよねぇ。ロゼさんに勝ち目がある気がしないんですもん。

 

 「ゼロが信じてあげなきゃ、ロゼも頑張る事ができないよ?」

 

 もちろん、ロゼさんが強いのは知ってますし、信じているんですけれど。戦い慣れたなのはさんに勝つ未来が見えないだけで、出来る事ならば勝って欲しいって願ってますよ。

 

 「そっか。…………それじゃぁなのは、ロゼ。準備は良いかな?」

 

 控室に設置させているマイクを手にフェイトさんが訓練所内の二人に問いかける。既に二人は戦闘モードに入っているのかフェイトさんの言葉に声を出す事は無く、一つ頷くだけ。

それを見届けたフェイトさんは、大きく息を吸って開始の合図を声高にただ短く『開始』とだけマイクに向かって叫んだ。

 

 ――数瞬だけ遅れたフェイトさんの声が訓練所にも響いて、模擬戦は始まった。

 

 合図早々、なのはさんは空中へと飛翔しロゼさんは大きく後ろに二・三度跳躍して距離を取る。砲撃、ようするに遠距離攻撃主体のなのはさんにロゼさんの行動は悪手なのではと思うけれど、何か策はあるのだろうか。

 

 「なのはママ~! がんばれ~!」

 

 「……どっちも頑張れ~」

 

 無邪気になのはさんを応援するヴィヴィオさんと気を使ってくれているフェイトさんを余所に、私は気が気じゃない思いを抱えていた。なのはさんに勝つ方法って存在するのかなぁ。どうにも活路を見出す事が出来そうにない未来に、何か良い方法ってないのかなーって考えてるけれど、私って戦闘向きじゃないし戦術とか戦略を学んだ訳でもないからロゼさん自身の力や機転に期待するしかないんだろう。

 

 『さて、行こうか。レイジングハート』

 

 《――All right, my master!》

 

 集音されて控室にあるスピーカーからはなのはさんとレイジングハートさんの声が響く。その声を合図に桃色の魔方陣がなのはさんの足元に大きく展開して、なのはさんのリンカーコアが活性化する。ゆりかごでバスターを撃たれた時になのはさんの魔導師としての凄さって余りわからなかったけれど、近くで見ると気圧される感じがする。多分私の横でこの状況を見ているフェイトさんも同じくらいに強いだろうし、はやてさんは魔力量だけで言うなら最多量を誇る人だから末恐ろしい人たちだと思う。

 そしてなおも強くなろうとしてるのだから、本当に凄いよね。スカさんはこんな人たちに挑んでたんだねって思うし、無謀な事をしたなぁ。十年でも早く行動を起こしていれば、もしかすればスカさんが目指した恐怖の管理世界っていうのを実現できたかもしれないね。

 

 《――Accel Shooter》

 

 レイジングハートさんの声と共に発射台が現れて十二個の誘導弾が次々に動き始める。そうして三発の誘導弾が地面に立ったままのロゼさんに向かって加速し、着弾。立ち込める土煙にロゼさんの様子が判らなくなるけれど、小手調べだろうしこんな事くらいで早々に倒れてしまう程ロゼさんは柔じゃない。

 

 右手を伸ばして防御魔法を展開していたロゼさんは傷一つなく無事。そしてその展開させた防御魔法はさっきなのはさんから教わった魔法で、術式もなのはさんと全く同じものを使ってる。にやり、と口を歪にゆがめたロゼさんは展開させた防御魔法を霧散させ、身体強化魔法を自身の足に纏わせてなのはさんに向かって開いた距離を一瞬で詰めるほどの跳躍を。

 

 『っ!』

 

 なのはさんの一瞬の隙をついたロゼさんは右ストレートを容赦なく顏に向けて放つ。インパクト直前に顔近くに小さく展開された魔法陣に阻まれてロゼさんの渾身のストレートが炸裂する事はなく。

 ちっと舌打ちをしたロゼさんを尻目に、にこりと笑ってなのはさんは言葉を紡いだ。

 

 『へぇ……! 重い攻撃だ、ねっ! 油断してると危なかったよ、ロゼっ!! アクセルっ!』

 

 防がれる事をわかっていたのか、ロゼさんは一瞬にしてまた距離を取り、残り九発のアクセルシューターから逃れようと訓練所の床をぴょんぴょんと跳ねて避ける。速度に緩急を付けたシューターがなのはさんの意思を乗せ自由に飛び回りロゼさんを追い詰め、逃げ場のない訓練場の端に追いやる。リングを使用して競技するボクシングや格闘技なんかに例えればロープ際に追い込んだ絶好のチャンスを、なのはさんが看過する訳もなく。チャンスとばかりに九発のアクセルシューターが逃げ場のない様に間隔をあけてロゼさんへと向かった。

 

 『……うそー! そんなのアリなのーー!!』

 

 セインさんのディープダイバーの下位互換スキルであるロゼさんの壁潜りが発動して、床へと消えるロゼさん。ちょっと奇妙な光景に驚くけれど、すぐに慣れるから問題はない。これは魔法というよりも稀少技能(レアスキル)に相当するものだから、なのはさんの驚きは不思議でもないんだけれど知らないとやっぱりびっくりするよね。

 

 「ロゼの稀少技能みたいだから、そのまま続行だね」

 

 フェイトさんの落ち着いた状況判定になのはさんが『そんなー!』と叫んで嘆いていた。しばらくして床からにょっきりと生えたロゼさんは訓練場に姿を現してすました顔をしてるし。ロゼさん、ちょっと意地悪な部分も持ってるお茶目さんだから、なのはさんをびっくりさせたかったんだろうな多分。本気で倒すつもりならなのはさんの直下にでも現れて、そのまま反撃に移る事も出来るから。それを行わなかったのはロゼさんなりのプライドなんだろうなぁ。

 

 そうしてなのはさんとロゼさんの攻防は拮抗したまま続いて、このまま永遠に模擬戦が終わらないのではと思い始めた頃だった。濃密に散りばめられた二人の魔力素が訓練所内に充満している。

 

 ――あ、コレってフラグじゃない。

 

 「なのは……撃つつもりなの……?」

 

 お互い一か所で立ち止まり、肩で息をする姿はこの戦いが終盤にもつれ込んだ事を如実に表していて。フェイトさんの言葉に確信する。

 

 『レイジングハート……!』

 

 《――Ok,my master》

 

 うわ、ゆりかごでスターライトブレイカーを撃つ寸での所までは見てたけれど、まさか模擬戦で見る羽目になるとは思ってなかった。ロゼさんもロゼさんで引き下がる気はない様で、足元には大きな丸いミッドチルダ式の魔方陣が現れているし。

 というか、私の魔力がロゼさんに吸い込まれていってるし。まぁ、私は魔力を消費しても問題はないから良いけれど。あれ、よくないよっ。ロゼさんにごっそり魔力を持っていかれると自分で防御魔法も張れないじゃないかっ。

 

 『スターライトォ……』

 

 『……ダークライト』

 

 「……え、あ、駄目だよ、駄目、駄目っ! ちょっと待ってっ!!! 落ち着いて二人ともっ!! そんなの撃っちゃたら訓練場が吹っ飛ぶよっ!!! ヴィヴィオ、ゼロ私の後ろに隠れてっ!!」

 

 あまりのフェイトさんの必死さに驚いて、言われるままに行動する。バルディッシュさんを起動させたフェイトさんは防御魔法を展開。あまりの忙しなさに頭が一瞬回らなくなるけれど不味い状況だって事だけは理解出来た。

 

 『ブレイカーーーーー!!』

 

 《――Starlight Breaker!》

 

 『ブレイカー』

 

 訓練所一杯に広がるロゼさんの黒色の魔力光に私の赤黒い魔力光が混じった少々汚い色と、なのはさんの魔力光である桃色がぶつかりあう。正直模擬戦で使う魔力量ではないし、二人とも大人げないと言うかなんと言うか。

 フェイトさんの防御魔法の陰に隠れてはいるものの、二人の魔力の熱量が凄すぎて室内の気温が少しだけ上がってる。二人の魔力光によって塞がれた視界は暫く晴れる事はないまま、私たちが居る控室までには被害はなかったんだけれど訓練場の様子が解るまで少しの時間を要した。

 

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