転生先はスカさん一家   作:行雲流水

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第十四話:善は急げ、急がば回れ。

 ヴィヴィオさんと遊んだり、医療系の魔法を習得したり、デバイスマイスター資格をやっとの事で取得できたりと色々とやれる事が増えてきてはいるものの、身体がついていきません。

 

 四歳児、不便です。

 

 早く大人になりたいなーと願いつつ、陸の嘱託魔導師に仮登録なんてしたものだから各所からの勧誘が凄い事になってるし。荒事には巻き込まれたくなくて、治癒魔法とか補助魔法系しか登録しなかった筈なのにどうしてこんなに引手数多なのか。管理局の人手不足の深刻さに頭を抱えながら、それを改善できるようにと心底思いながら大気中の魔力素を利用した魔導兵器の改修作業を行っているのだけれど、難点が多いんだよね。

 大気中の魔力素が薄い場所じゃ運用がなかなか難しい。チャージするにも時間が掛かるし、連射も出来ない。逆に多すぎても撃てる回数が多くなって砲身が持たないとか……。

 砲身を強化すればいいと思うけれど、それだと持ち運びが難しくなるから余りやりたくないけれど、やらなきゃ撃てないっていうジレンマ。バランスとか考えるのって大変だ。魔素が枯渇して資源がなくなっちゃうと元も子もないし、そのあたりのバランスも難しいよねぇ。でも作ると決めたんだし、採用されなくても形にだけはしておきたい気持ちが大きいから頑張ろう。

 

 この間やっとの事で御披露目会となった試験部隊に配備されている拳銃型魔法射出装置なんだけれど、拳銃型を自動小銃型に変更できるように渡りをつけた。地球の軍隊を参考にした形になるからもしかすれば両方装備するようになるかも知れないし、まだまだ先のことはわからないけれど。もう一つ捕縛用に刺又や投網、捕縛魔法を特定ワードで発動させて犯人を確保する投擲型ボール。これにはイメージ元があって、ポケットモン○ターのモン○ターボールをイメージして作ったんだよね。

 持ち運びに邪魔にならないからたくさん携帯する事事も可能だし。特定ワードでソフトボール大の大きさになって犯人に投げつけて当たると捕縛魔法が作動する。ちなみに特定ワードは『お前に決めた』だ。もちろん、この特定ワードは変更できるからお遊びで付けたもの。配備されるようになれば、皆この事実を知ってとっとと特定ワードを変更すると思うから安心、安心。

 

 「マスター、よろしいでしょうか?」

 

 おや、ロゼさん。珍しいですね。研究室で私が作業をしている時は火急の用か、知り合いや事前にアポのある来客があった時くらいにしか声を掛けてこないというのに。

 

 「申し訳ありません、どうしてもマスターに会いたいという方がいらしてるのですが……」

 

 あまり歯切れのよくないロゼさんのそんな様子は本当に珍しいなと思いつつ、もう家に訪ねているのなら迎えるしかないだろうと思い作業を中断して玄関を目指す。玄関を目指す間しょんぼりしている様子のロゼさんにその理由を聞くと、"追い払いたかったけれど無理だった"との事。これまでは無言の圧力で追い出していたんだけれど、ロゼさん強面中年男性に立ち向かえた人は誰だろうと玄関に目をやる。

 

 ――居留守を使えばよかったなぁ。

 

 そんな事を心の中で愚痴りながら、今私の目の前に立っている人は以前試験部隊御披露目会で初めて出会った中堅デバイス機器メーカーの次期社長さんだった。相変わらず白い高級スーツを纏い、手には小さな白い箱と花束。後ろには護衛だろうガタイの良い黒スーツの男性が二人。取り合わせの違和感が凄くて鳥肌が立つけれど我慢。表情が薄いと言われている私の顔の表情筋を総動員させてどうにか笑顔を張り付ける。

 一度会った事のある男性だけれど流石に家の中に招く訳にはいかず、玄関で対応する事は許してほしい。というか家の中を彼に見せたくないのが本音。どうも前回の接触で苦手意識が植え付けられているんだよね。一方的に話を聞かされるだけだったし。というか何で私の家の住所を知っているのか謎である。

 

 「先日ぶりだ。突然驚いただろう? 私は忙しい身でね、なかなかこうした時間が取れないのだがこうして忙しい間を縫って君に会いに来た訳だ」

 

 感謝したまえと言いたげに彼は両手を広げて肩をすくめたんだけれど、一方的過ぎな理由で返事をどう返したものかと悩む。そして何故我が家の住所が判ったのか、これが一番の問題だった。

 

 「……どうして住所が分かったか? いろいろと手を回させてもらった。少し時間が掛かってしまったが、何、分からぬ事はない。君も調べようとすれば特定の人物の個人情報などいくらでも手に入る立場だろう?」

 

 ええ、そうですね。伝手やお金を厭わなければ出来る事ですが、せめてアポを取って欲しかったですよ。住所も割れているのなら、連絡先もしっているでしょうに。それなら家ではなく外で会っていたでしょうし。

 

 「君の事情は理解しているつもりだ。かの次元犯罪者"ジェイル・スカリエッティ"のクローンでその能力を余すことなく引き受けた君。……そして先日の試験部隊設立の立役者。聞けば彼等の装備は全て君の発案だと言うじゃないかっ!」

 

 やっぱり私がスカさんのクローンだって事実は調べる人が調べれば直ぐにバレるのか。管理局や聖王教会の誰かがワザと漏らしている可能性もあるんだけれど、今の所は追及する気はない。というか私はバレちゃっても一向に構わないし、スカさんや刑務所組の人たちや厚生施設組の人たちと面会してるし、見る人が見れば私が彼等の関係者だと推測するのは簡単だもん。そのうちに周知の事実になってそうだなぁ、コレ。ま、それは置いておいて。

 

 確かに装備の売り込みは私ですが、それでも試験部隊が設立されたのは色々な方々の助力と部隊の方々の努力の賜物ですよ。部隊に選抜されたメンバーは立候補者とデスクワーク主体の非魔導師の職員を引き抜いたと聞いていますから、あそこまでの形になったのは部隊の人たちの努力です。

 

 「そうかそうか、君は謙遜する子なのだねっ! これは結構。不遜な人間は私は大嫌いなのだよ。ははは、やはり君は逸材だ。私が目を付けただけの事はあるっ!」

 

 んー。手に持っている花束と小さな箱が彼の大仰な身振り手振りで振り回されて可哀そうになってくる。渡すために持って来たのじゃないかと思うけれど、未だに手渡す素振りはなく。……余計な事を言うと墓穴を掘りそうなのでお花と小箱の中身には悪いのだけれど黙っておこう。

 

 「で、だ。なにか進展はあったかね?」

 

 ちょ、気が早すぎるでしょう。私の目の前に立つ青年は。あのお披露目会から三週間しかたっていないし、風邪も引いてぶっ倒れていたから手がけている作業は進捗なんてしてないし、考える時間さえなかったのだから。現状はあのお披露目会から何も変わっていないんだよね。それを伝えると彼は顔をしかめて、だんだん不機嫌オーラをだしてるんだよね。困ったなぁ、と心の中で深い溜息を吐きながらも嘘は言えないから。嘘を吐いちゃうと回り回って自分に返ってくるからなるべく言いたくないんだ。それは前世のやさぐれていた子供時代に経験積みで痛い思いをしたので反省してる点なんだな。

 

 「ごめんなさい」

 

 「…………っ!」 

 

 ぺこり、と私が頭を下げれば一応は納得してくれたのか言葉をぐっと飲み込んだ、ように見えた。

 

 「わ、分かった。だがしかし、私も忙しい身でね。早々に君の下に何度も訪れることは出来んのだよ。だからこそ急いて欲しいと言っているのだが……」

 

 無理ですよ。私は便利な猫型ロボットでもないから、一晩寝て完成なんて荒業は出来ない。なんの変哲もない日常の一瞬で、ふと思いついたネタを吟味して考えて試行錯誤して形にし、試験運用をしてやっと誰かに手渡せる状態に持って行かなきゃ。開発と設計だけを行って、あとのバグ取りはそっちでよろしくね、と中途半端な事もしたくはないし。そんな事をして誰かが怪我を負ったりすれば、私はこうしてスカさんの真似事なんてしなくなるだろう。

 

 「だが君にはその力がある。私の為、いや、この世界の為なんだよ。リンカーコアを持ち選ばれた人間が不条理を受けなければならない現状をなんとも思わないのか、君は」

 

 なんだろう、どんな言葉を彼に投げても無限ループをしそうな気がしてきた。私の話を聞いてくれているのか聞いてくれていないのか解らないまま、彼は彼の持論を垂れ流す。面倒になってきて彼の扱いがぞんざいになってしまってるのは、悪い気がするんだけれども。後ろの護衛の人たちも彼の演説に呆れ返っているから、何時もの事なのかもしれない。喋るだけ喋って満足したのか『また来る』と言って欲しくない一番の台詞を残して白い高級スーツの青年は立ち去って行く。

 

 「マスター」

 

 「もどりましょう、ろぜさん」

 

 後姿を見送った後、ロゼさんが心配そうに私の顔を覗きこむけれどなにもない事を願うばかりだ。もし彼が暴走するなら管理局のお偉いさんに声を掛けて暴走を止めてもらおう。私は誰かを傷つけられる程の強さを持っていないから、他の人に丸投げだけれど。

 

 ――そういえば彼が手に持っていた花束と白い小さな箱は何だったのだろう。

 

 謎は謎のままで終わってしまったなぁ。

 

 ◇

 

 地上本部から"拳銃型魔法発射装置"を量産配備をしたいんだけれど調達生産を私の所で任せても構わないかと、問い合わせが来た。お話の内容自体についてはすごく嬉しいことでも、自前の研究室の設備で大量生産は不可能と返答しておいた。そんな理由からなのか、それじゃぁライセンス生産をしたいから利権を売ってくれないかと相談を持ちかけられたついでに、それが可能ならば業者さんの選定はどうしようかって相談を受けたんだよね。正直ここまで関わると思っていなかったので驚いていたんだけれど、自分で手掛けたものの行く末は見届けたいからアドバイザーって立ち位置で最近は地上本部に結構顔を出してた。

 

 「何度も足を運んでもらって済まないね」

 

 現中将さんが苦笑いをしながら私に謝ってくれるんだけれど、気にしないで欲しい。試験部隊結成後あまり試験部隊の有用性も実用性も立証していないまま量産配備に踏み切ったのは偏に目の前の中年の小父さんのおかげなんだから。どうも目の前の人は、現場に立たなければならない非魔導師の人たちの事を憂いていたみたい。犯人とかとばったり鉢合わせした時などは、丸腰で立たなきゃならないのは危険極まりないし人質に取られる可能性がぐんと上がっちゃう。それなら少しでも身を守る術として拳銃型魔法発射装置を配備したいんだそうな。あと現場からも声が上がっていることも配備を急く理由の一つみたいで。

 そりゃ誰だって足手まといにはなりたくはないだろうし、身を守る術が少しでもあるのなら武器を持ちたいよね。管理世界は質量兵器が禁止されているから、ナイフ等は魔法技術を応用したものだから非殺傷設定が付与されている為に武器にならないもんね。違法で手に入れることもできるんだけれど、法を守らなきゃいけない管理局がソレをやっちゃえば世間様から厳しい目で見られるのは当然だし。

 

 「だいじょうぶです」

 

 だって、ここまで関わっても良い事に感謝しなきゃ。ライセンス生産をとり行う業者さんや企業さんが手を抜けば出来上がるものは欠陥品だから、選定はゆっくりじっくり吟味して慎重にね。そうして地上本部のとある一室で陸の高官の人たちと私が選定した複数の業者さんたちで入札をしてもらう予定。最高評議会の件もあるので、クリーンな企業さんを選ばねばーと躍起になってる陸の人たちを余所に私はのんびりと書類に目を通してた。

 この後はこの後で、ピックアップした会社の工場見学と名目をうった下見がある。個人的には書類による選考よりも、こっちの方が気になってるんだ。設備が不十分だとマトモなものは作れないし、無いならないで設備投資が可能かどうかも知っておかなきゃならないからね。

 

 陸の高官の人たちは私の視点も含めて他にも気にしなきゃならないことが多いみたい。ブラック企業じゃないかとか、法を遵守してるかとか、社会貢献度とか、資本規模とか色々と。ぶっちゃけしがらみがあり過ぎて面倒臭いなと言ってしまいそうになるけれど、無視出来ない大事な事なんだよね。まぁ、ブラック企業中のブラック企業と言ってもおかしくはない管理局に其処を突かれるのは向こうからすれば嫌かも知れないけれど。管理局は公の機関なので、お給料や福利厚生あたりはしっかりしているんだけれど、忙しすぎてなかなか取れていない人が多いってのが現状らしい。だから陸の高官の人たちもどうにかできないかーって苦心している訳で。

 ソコで私が開発した拳銃型魔法発射装置が目についたそうだ。非魔導師の人たちを訓練して、正規の魔導師と非魔導師の人たちの混成部隊を作ってみようって意見があるみたい。その辺りの兼ね合いから、私が納入する分だけでは間に合わない為に今回の助っ人要求だったりするんだよね。もちろん現場に出る非魔導師の人たちにも配備する事も急いでるみたいだけれども。

 

 「さて、次に行こう」

 

 老眼鏡を掛けて書類審査をしていた中将さんが丁寧に書類を揃えて机の端に置いて席を立つ。それを見た他の人たちも彼に倣ってぞろぞろと席を立った。私も遅れて椅子から下りようとするんだけれど、なにぶん体が小さい為に時間が他の人たちよりも掛かってしまう。そんな様子を見てこの部屋に居た人たちが扉の傍で立ち止まり微笑ましく笑っているんだけれど、恥ずかしいなぁ。

 そうしてそれよりも恥ずかしいのがロゼさんに抱っこされて移動する事だ。大人の歩幅と私の歩幅だと全然違うから、普通に歩くとかなりの差がついちゃって遅れるし迷惑を掛けるだけなので移動はロゼさんに任せているんだけれど。これまた微笑ましそうに見られて恥ずかしいったらありゃしないよ。自分で歩きたい所では有るんだけれど、皆さん忙しい身分の人たちだし個人の我儘でその時間を奪っちゃうのはもっと駄目だろうから。

 

 お値段が張りそうな黒色の公用車に乗り込んでクラナガンの街を御上りさんのように眺めながら、大手デバイス機器メーカーの工場に着く。さっき言った通り、これから視察が始まるんだよね。きっと流れ作業だろうから職人技とか見たければ中小企業に行くべきだろうけれど、本日の視察には残念ながら含まれてはいない。けれども得るものがあるだろうし楽しみにしている所の一つ。

 大手って凄いんだよね。効率化を図るために立ち位置とか立幅とか決められてて、一分一秒でも短くするための努力がそこらかしこに見られるから。そういうのを探すのも楽しいし、教えてもらうのもまた一興で。どんな発見があるのかなーって今からわくわくしてるんだ。

 

 企業のお偉いさんと綺麗どころの受付嬢さんが笑顔で査察隊一行を笑顔で出迎えてくれるんだけれど、きっと鬱陶しいんだろうなぁ。私が逆の立場なら早く帰れって気持ちを抱いている事だろうし。それでもお仕事はお仕事なので、きちんと勤めを果たさなきゃいけないのがサラリーマンの辛い所。笑顔の仮面を張り付けて私たちを迎えてくれて、さっそく工場見学開始。一人ちんまいのが居るために驚いた様子を見せたけれど、誰も突っ込みを入れないのは優しさなのか、それとも私が陸の高官さんたちの誰かの子供だとでも勘違いしているのだろうか。ちょっと腑に落ちない心を持ちつつも、大病院の院長回診よろしく大人数で工場に入ってラインで作業する従業員の人たちを見ればその気持ちは直ぐにどこかに吹っ飛んでいた。

 

 ――流石、大企業。

 

 どこを見ても整理整頓されているし綺麗で安全面も配慮されているし流石だねぇ、と一人で納得してた。ラインでも熟練者さんと初心者さんの人がすぐにわかるように腕章で色分けされているし、慣れてない人には指導員が付いている。

 さっくりとラインを見た後は、企画開発部をちょろっと覗かせて貰えたんだよね。見ちゃ不味いものとかは隠してあるだろうけれど、見る人が見れば内容がわかっちゃうからハラハラしていたんだけれど、重要な事とかはちゃんと何処かに仕舞いこんでたみたいで深い溜息を一つ吐いた。気になるものを見ちゃうとスカさん譲りの血が騒いじゃうから、危ない危ない。その会社のトップシークレットを知らず知らずのうちに盗んでいたとか洒落にならないんだもん。

 本当、管理がきちんと行き届いている会社で良かったよ。訴えられると確実に負けそうだし。残りの時間は企業のお偉いさんたちとの雑談で。これまた私の存在を誰も突っ込まずスルーされてたんだけれど、これが普通なのかなぁ。触らぬ神にたたりなしと思われているのか、誰かが社会見学ついでに子供を連れて来たと思われているのか本当に謎。

 

 この企業が終われば、また違う企業に赴く。今度は中堅メーカーさんで本社も工場も併設されてて、さっきの企業とは全く違う趣で。違いを比べるの楽しいよね、と気楽に小父さまたちの後姿にくっついて行っていると見知った顔に出会ってしまった。

 

 「ん、君は……。何故、此処に?」

 

 白い高級スーツを着込んだ中堅デバイス機器メーカーの次期社長さんだった。私も同じ台詞を彼に言い返したい所だけれど、嗚呼、そうだったと思い出す。この会社、彼の所だったんだ。ぬかったなぁ、と頭を抱えても時すでに遅し。あんまり会いたくなかったんだけれど、会いたくない人物に出会ってしまうのは万物の法則みたいで。

 

 「おひさしぶり……でもないですが、こんにちは」

 

 偶然だったのか必然だったのかはわからないけれど、挨拶を交わして一礼する私。驚いた様子を見せているから知らなかった可能性の方が高いかな。彼の場合、知っていたら喜々として最初に出迎えてくれそうだし。

 

 「嗚呼、そうだな。先日振りだ。それよりも進捗はどうだね?」

 

 中将さんが彼の言葉を訝しむように聞いているんだけれど、私たちの会話に割り込むような無粋をするような人ではないので突込みは入らないんだけれど、結構厳しい顔をしてるんだよね。今は手一杯だから彼が言う事は全く持って手つかずのまま取り掛かってもないから、彼の勇み足なんだけれども。

 んーどう答えたものか。何も進んでないと返答すれば、彼はまた自分の持論をこの場で長々と繰り広げそうなんだよね。それを中将さんを始めとした人たちは、場の空気の変化に怪訝な顔をしてる。

 

 「なにをしているっ!」

 

 と足早に私たちの下へとやって来たのは、くたびれたツナギを着込んだ白髪交じりの男性だった。次期社長にそんな台詞とどうどうと吐ける人は限られてくるから、身内の人なのかな。すぐさま『失礼しました』と深く頭を下げる男性は油まみれの手を彼の頭の上に置いて無理矢理に一緒に頭を下げた。

 

 「愚息が失礼を。申し訳ありません」

 

 申し訳なさそうに中将さんに言うツナギ姿の小父さまは、彼を何処かにやりそのまま工場の説明に入ってくれた。社長さんだっていうのに今だ社員さんたちと一緒に工場に入っているそうで、一緒に開発やら生産に携わり四苦八苦しているんだって。

 機材の新設なんかもやりたいそうなんだけれど、従業員を抱えている最中だからなかなか踏み切れないでいるらしい。こういう声を聞くと大企業と中小企業の差がでてくるよなーって。下請け事業も受けているだろうから、大手に逆らう事は中々できる業ではないから。取引先の無理を聞かなきゃならない事もあるだろうし、会社運営って大変だ。

 

 そんな社長さんは、職人としての腕は超一流。手先は器用だし、デバイス機器についての知識も豊富。豊富な知識からの新しい技術や革新へ繋げる発想も聞いてて面白い。この会社が一代でここまで大きくなれたのは偏に、ボロボロのツナギを着込んだ社長さんの手腕なんだろうね。無理を言われる事もあるみたいだけれど、働いている人たちが楽しそうなんだもん。

 いいなぁ、こういう雰囲気と目を細めながら眺めていたら『次に行こう』と中将さんの一声が。もう少し見ていたかったのだけれど仕方ないか。結構、スケジュールを詰めているみたいだし私の我儘で忙しい中将さんたちが困る事になってもいけないし。

 

 落札する企業がどこになるのかはわからないけれど、こういう人の所なら安心して任せられそうだなぁ。

 

 

 

 




8138字

 一代目は有能。二代目は無能ってどうして現実でも創作でも良くある事なんでしょうねぇ。彼はなにをやってのけてくれるのやら。

 厚生組が厚生施設を卒業して海上保護施設に移った時期がよくわからないorz
 Vividまでにはナカジマ家や教会組になるんだろうけれど。あ、SSXの時期は既に保護施設は卒業してるのか。

 あともう一つ。ストックなくなっちゃいました。てへぺろ(・ω<) 頑張って続きを書かねば。更新が遅くなったり、文章量が短くなったりしたら申し訳ない限りです。逃亡と削除はしないつもりです。
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