ヴィヴィオさんが機動六課の皆様に保護されたようです。断定が出来ないのは、人伝に聞いただけであって自分の目で確認した訳じゃないから。
短い期間だったけれど、ヴィヴィオさんと一緒に過ごした日々は私にとって大切なものだったらしい。子供が苦手な私だけれど、ヴィヴィオさんはその事に気付く様子もなく生まれてすぐのカルガモの子供みたいに、離れず引っ付いてくるものだから。邪険になんて扱える訳もなく、趣味に没頭していた私の手がしょっちゅう止まってしまったのだった。
――はぁ。
深い溜息が自然に出てた。ちょっと試したい事があって色々と試行錯誤をしている最中なんだけれど、なんだか上手くいかないし全然進まない。ここ最近ヴィヴィオさんが私の研究室に居るのがデフォだったので『遊ぼう』と騒がしかったのが日常化し、それに慣れてしまっていたのか静かなこの場所がなんだか妙な雰囲気を醸し出していて落ち着かない。
開発が進まない事にまた溜息を吐きながらヴィヴィオさんのお相手を務めていたんだけれど、失ってから気付くなんて間抜けだよねぇ、本当。私以外の誰も居ない研究室が寂しく思える時がくるだなんて思ってもみなかった。でも、しょっちゅう泣いていたヴィヴィオさんは未来の親子になるなのはさんの下へ行ったのだから、幸せになるのだから、と自身に言い聞かせて作業をしていた途中の事だった。
「……っ!!」
調合していた試薬が急激な反応を示して爆発。その規模は私の周囲だけだったので、大事には至らなかったのだけれど……。
「お嬢様っ!! 大丈夫ですかっ!?」
爆発音が派手に響いてしまったのか、ウーノさんが血相を変えて研究室へと飛び込んできた。そうして幾ばくの時間も経たずにぞろぞろとスカさん一家が勢揃い。一番最後にはスカさんまで。ナンバーズの皆さんはともかく、スカさんは忙しい筈なんだけれどなぁ。ホテル・アグスタの件で破壊されたガジェットドローンの補給作業とかがあってこんな所で油を売っている暇はスカさんにない筈なんだけれど。
ぞろぞろとやって来た皆さんに心配されながら、怪我はないかと確認されたんだけれど爆発自体は大したことも無くて怪我自体は掠り傷程度なので済んでいた。私の怪我の状態に皆さんから安堵の息が漏れてた。私が居なくなるとご飯を作る人が居なくなるから、それでだと思う。
「……で、何をしていたんだね?」
十二人、と言いたいけれどドゥーエさんはお外で秘密のお仕事中だから十一人の壁をスカさんが割って、ずぃっと私の下までやってきた。ラボの惨状を見てにやにやと仕方ないな、みたいな感じで笑ってる。いや嗤ってる。そんなスカさんの顔を見てちょっとだけムっとなるけれど、まぁ笑われても仕方ない。余所事を考えていて失敗したのは私自身のミスなのだし。だから包み隠さず正直に話す。
爆発が起きてしまった発端は、タダの私の思いつきによる突発的な実験を実行していたから。戦車の装甲を貫く為に使用されている"タングステン"。タングステンは固い素材と言われてて、それよりも固いモノを人工的に作れないかなと発作の様な思いつきで実験を開始した。金属成分やらなんやらを、いろいろと引っ張り出してきて調合してたのだけれど、ヴィヴィオさんの件があって集中力が余り無くて調合量をミスったのか見事に爆発。欲を張って、魔法の技術もぶち込んでどうにかならないものかと実験していたらコレである。いやはや、無事で済んでよかった一歩間違えれば死んでいた所だったし。
「それでこの有り様かね……」
ハイそうです。言い訳の仕様もございません。私の言葉に納得したのか、目を細めながら爆発で大変な惨状になってしまった研究室をスカさんは見渡す。その後に目を閉じたスカさんは何か頭の中で考えている様だけれど天才の考えている事を読む事は不可能。スイッチが入ってしまった様で、ぶつぶつと呟いていて怖いたりゃありゃしない。何かの拍子にスカさんはこうして考え込む事があるんだけれど、その後は碌な事にならない事が多い気がする。
以前にもこうして何かの拍子に考え込んでしばらくだんまりを決め動かないから、皆と相談して放置する事を決定し二・三日経た後に喜々として開発品を披露してくれたスカさんなんだけれど、イロモノ作品過ぎてお蔵入りになった事がある。そんなスカさんを余所に、ナンバーズの皆様は私が無事だった事に安堵して各々訓練やプライベートな時間へと戻っていく。少し騒がしかった研究室は元のように静かになり、取り残されたのはこの部屋の主である私とスカさんだけ。
この状態のスカさんは自分の世界に引き篭もったままで暫く戻って来ないだろうから、そのままの状態で放置しておく。酷いと思われるかもしれないけれど、無理矢理戻したとしてもまた直ぐに思考の海に沈みこんでしまうから無駄なんだよね。あと三十分後にでも戻れば早い方かな。スカさんの頭の中では色々な事が浮かび、それを整理して再構築しているのだろう。魔導師としてもそれなりに優秀なスカさんなのでマルチタスクはお手の物だし、普通の人よりも脳味噌の皺が沢山ある傑物だから思考回路は超早いんだけれど、思考量が多すぎるのか常人よりも戻ってくるのに時間が掛かる訳で。仕方のない人だよね。
「?」
立ちすくんでいるスカさんを横目にしながら、研究室で引き起こしてしまった爆発の中心地には何やら黒い液体が。私が用意した液量よりもずいぶんと容積が増えている気がするんだけれど気の所為なのかなと思うけれど気の所為じゃない。側に近寄って観察していると、ただの液体の筈なのに微妙に振動している。ちょっと気持ち悪い。はてさて、これはどうしたものかと考える。タングステンより硬い金属成分をと考えて、その為に試行錯誤を繰り返して余り働かない頭を使って実験していた訳なんだけれど得体の知れないモノが出来上がってしまった。全く予想していなかった、偶然の産物が出来上がってしまった事に驚きと動揺を隠せない私。興味深いからまだまだ観察を続ける。ぬめむめと行動範囲を広げて研究室の中を所せましと動き回る液体は、前世のゲームでよく見たスライムみたいで。なので私は心の中で黒い液体を『スライムさん』と仮称する事に。
スライムさんは最初こそ振動しているだけだったのだけれど、伸縮運動や上下に動いて形を変えて最初に居た場所から随分と動いている。意識は持っていないのかも知れないけれど、生物的活動は起こせているみたいだった。しっかし、タングステンってこんなに柔軟性があったっけって思う。タングステン単体だと柔らかいから、そこに他の金属成分を含有させて合金となり凄く硬くなるわけなんだけれど、このスライムさんは実験道具のガラス棒でつついてみると柔らかい。
うーん、うーーーんと唸りながら腕を組んで考えを捻っても、答えなんて出てこない。
考えても何も浮かばないから仕方ないので、違う事や何か発見がないかなと思い観察を続ける。スライムさんは気ままに研究室内をウロウロしていて、その行動に一貫性はなく無闇矢鱈と動いているだけの様で。スライムさんのイメージって、ゴミとか落ちている物を何でも食べるって固定概念あるけど、このスライムさんはその行動を起こさない。個体差があるのかもしれないし一概には言えないけれど、床を這いずりまわっても床が綺麗になる事なんて無かったし、落ちているゴミを拾っては体内に入れてはいるんだけれど暫く経つとポイっと食べたものを吐き捨ててる。
まるでそれは、食べられないモノを口にしてしまったヒキガエルのよう。彼等ヒキガエルは視力が悪い為に、動かずじっと待ち伏せを続けて耐え目の前に現れた虫などを食べるそうなんだけれど、間違って食べられないモノを口にした時はペッと吐き出すそうだ。その様子を実際に見た事はないけれど、想像するに同じように見えて仕方ない。そんな事だから、意思は無さそうなんだけれどちょっと可愛く思えてきたし。見た目、黒光りをしている粘性生物なんだけれど、不思議だよね。
いつもなら失敗した事はさっさと忘れて、散らかった部屋を片付けて次に移る訳なんだけれど、不可思議な行動を起こすスライムさんに興味を引かれて観察をまだまだ続行する。意味なく行動しているスライムさんはとある場所で立ち止まった。それは未だに思考の海の中に沈み込んでいるままのスカさんの足元。じっとしたままで動かなくなってしまったから、嗚呼、死んだのかと思ったんだけれどまた動き出して形をかえていく。少しの上下運動と横軸の移動しかしなかったスライムさんなんだけれど、段々と天井に向かって縦に伸びていく。
少し待つとスカさんと同じ高さとなって、今度は横に広がり始めた。スライムさんが何を持って行動しているのかは理解不能だけれど、意図があり何かをしようとしているのは解る。行動自体は無意味なものかも知れないけれど、生物として進化や成長するためには大事な事。
模倣……したの?
段々と人間の姿に似ていき、少し時間は掛かったものの細部までスカさんそっくりな真っ黒スカさんが出来上がっていた。その光景はとてもシュールで、スカさんが動くとスライムさんも一緒の行動を取って真似をしている。何だかもう一人スカさんが増えてしまって大変そうって思っちゃったけれど、暫く真似して満足して飽きたのかスカさんの模倣を止めて、元の黒い粘性生物に戻っていた。
思考の海に入り浸ったままのスカさんの姿になったスライムさんは、何を持ってスカさんと全く同じに模倣したのか。訳の解らない領域になりそう。生物学は専門じゃないし、こんなことなら齧っておけば良かった。詳しい人がいれば、その人に聞けばいいんだけれど私たちは世間様にとって犯罪者だから。モグリの生物学者なんて居ないだろうし、早々に諦める。
「……おや、これはなんだね?」
ようやく思考の海から上がってきたスカさんは黒いスライムさん気が付いて放った一言がソレである。正体不明のモノなのに落ち着き払っていて動じていないのは、経験の差なのかな。色々とスライムさんがやらかしていた事は露知らず、呑気にそんな事を聞いてきた。質問を投げかけられれば、このアジトの最高責任者であるスカさんには答えなければならないので、素直に先程まで起こっていた事を全て話したよ。そうしたらスカさんは愉快そうに笑って、失敗から偶然に未知の出来事が起こる事はままあるってさ。
「私も何度か経験した事がある。予期していなかったとはいえど、やはり楽しいものだ。科学というものはね」
そうしてスカさんと一緒に観察をしながら未知のスライムさんについて議論してたんだけれど、結局は偶然に誕生してしまった代物だからあんまり有意義なものにならなくて、スライムさんの存在は謎のまま。スカさんとの議論でどのくらいの時間が経っていたんだろうか。スカさんと私はクローンというだけあって、熱中しちゃうと周りが見えなくなる癖は同じだから、スカさんと話し込んで夜が明けてたなんて事もあった。そんな二人なので、研究室の掛け時計に目をやれば結構な時間が過ぎていて。そろそろ食事の時間だから皆お腹を空かせて待っているだろうと考え始めた頃、研究室の中をウロウロしていたスライムさんから元気がなくなってるみたいで。
「ふむ。そろそろ力が尽きてしまうのかね。いやはや偶然の産物にしては楽しませてもらった。……これで"終わり"か」
なんだつまらん、と言いたげに侮蔑した視線でスライムさんを見下ろすスカさん。私的にはスライムさんな存在の黒い物体エックスに何を求めてるのだろうって思うんだけれど、スカさんの期待は大きかったみたいで、残念そうに嗤ってる。こういう所を見ちゃうと、嗚呼、普通の感性なんてものは持っていないんだなって実感しちゃうよ。スカさんは。
嘲笑らっているスカさんに反骨心を抱いて触発されたのか、元気がなくなって動かなくなったスライムさんが最後の気力を振り絞ったみたいで、激しく動き始めた。何をしたいのか何を求めているのか、何故スカさんの言葉に反応を示したのか、興味が湧いてくる。嗚呼、私もあんまりスカさんの事は言えないかも、と思ってしまいテンションゲージが少し下がったのは秘密だ。
『シ……ニタク、ナイ…………』
「……ほぅ」
かなり低い声を出してスカさんがすんごい悪い顔をしてるっ。嫌な感じがひしひしするよ。こんな顔をした時のスカさんは悪事を働く秘密結社のボスの如く、碌な事を仕出かさないから付き合わされるこっちはたまったものじゃない。って、スカさんは悪の秘密結社のボスそのものだった。いかんせん愉快な場面を見過ぎている所為かその感覚が薄くなる時があるから、ちゃんと頭の隅にでも置いて意識しておかないと痛い目を見そう。
「よろしい! よろしい!! よろしいっ!!! その感覚は生物として至極まっとうな感覚だっ!! ならば、生きようではないか。誰にも知られず認められず、ひっそりと死に逝く命よっ! だがっ、今生は愚かにも死にたまえっ!」
ええ……、今さっきスカさんは生きろって言ったじゃないか、なんで死ねなんて言ってるのさぁ。酷いにも程があるんだけれど、徹夜明けでもないのにアッパーなテンションに突入したスカさんは一人で勝手に"ははは"と高笑いを始めちゃった。しこたま笑うって作業は結構体力を使う筈なんだけれども、引き篭もりで運動なんてものは全然していない人が、ずっと笑いながら声量が落ちないって異常なんだけれど、肺活量が尋常でない程大きいのかなぁ。じゃないとこんなに長い時間笑っていられないんだもの。
スカさんはスライムさんを焚き付けてどうするつもりなんだろうか。一度死ぬ事を望んでるみたいだから、このまま命が尽きるまで放置する事が確定っぽいんだけれど。その後にどうするんだろうか。まさか食べて自分の血肉にするなんて、そんなオカルトめいた事を科学者がやる訳ないし、どうやって生き返すつもりなのやら。死者蘇生の魔法は禁忌の領域だし、誰も達成した事がないそう。魔導師が何人も集まって大魔法術式を試みても無理だったと魔法の歴史書に残っているので、スカさんと私だけじゃ絶対に無理だろうし。
スカさんが高笑いをしている間に、スライムさんは力尽きてしまいべっとりと床に黒い液体が広がっていた。その色が赤ければ、死体の無い鮮血が広がった凄惨な事件現場と化していた所。これ、どうやって片付けようかな。はっきりいってあまり意識の無いまま実験をしていたので、制作過程があいまいなんだよね。そんな事だから、偶然に有害物質とか毒物に変化してる可能性も有るから、むやみに触っちゃうと危険だもん。
うーーん。今度、解析系の魔法知識を深めておかないと。便利だから簡易的な解析魔法は使用できるものの、詳しく調べるとなるともっと複雑な術式と魔力と時間が必要になるから。自分で厄介なものを生産しちゃった時の対処法として使えるようにならなきゃね。後始末も大事な仕事の内である。
「さて、準備は整ったようだ。では、始めようっ!」
高らかに宣言して両手を広げて上げるスカさん。様にはなっているんだけれども、説明が無いから私はさっぱり事態を把握できずにいる。こんな事だから、コミュ症だって言われるんだよ。自分の頭の中で話が完結していて、口から出る言葉は思考の中で完結した後の話がでちゃうものだから、周りの人間はスカさんの意図を把握できなくて、簡潔に述べられた言葉を理解できないんだよね。
そう思っているだけじゃ仕方ないので、ちゃんとスカさんに何をするのか聞いてみれば『使い魔契約』だってさ。使い魔契約って動物を相手に結ぶものだと把握していたんだけれど、どうやら脳が存在している生物とならば可能みたいで。だから"シニタクナイ"と遺言を残して逝ってしまったスライムさんと契約をする、と。
何で言いだしっぺのスカさんとスライムさんと契約しないのか不思議に思い問うてみると、スライムさんを製造した責任は私にあるから、その方が妥当だろうって。でも、使い魔契約なんて全く興味が無くて知らないからやり方が分からないと伝えると、きっちりと教えるから大丈夫って。スカさん本当にオールマイティに何でも出来るのだから、感心する。マッドとか変態だとか言ってはいるけれど、チラホラと良い部分が見えるので侮れない。というか色々な分野に手を出し過ぎている気がする。まぁだからこそ天才って言われるんだろう。
「命名をよろしくお願いします。マイマスター」
「ふむ。契約はきちんと履行されたみたいだね」
そんなこんなでスカさんから手解きを受けて私とスライムさんの使い魔契約を終えていた。ねっちょりと床に張り付いていた黒い液体は、粘性を取り戻してうにょうにょと動いていて。私とスライムさんとの魔力ラインが繋がっているのが解るし、スライムさんに私のリンカーコアから魔力が流れていっているのも解るから上手くいったのかな。ゲームとかでよく見るスライムの形をした黒いスライムさんは、発声器官なんてあるはずがないのにきっちりと流暢なミッドチルダ語を駆使してそんな事を言い、言いだしっぺのスカさんは使い魔契約が成功した事に一つ頷いて満足げにしている。なんだか私だけが状況に追い付けなくて、目を白黒させているんだけれど。製造責任と使い魔契約をした責任をキッチリと果たしましょうかね。
けれども名前を付けてくれと急に言われても何も浮かんでこない。くるくると頭を回転させて考えてはいるのだけれど、浮かんでくる名前は"ポチ"や"タマ"。犬や猫に付ける訳じゃないんだし、恐らくきっと長い付き合いになるんだからそんな名前じゃなぁ。
「……早く名前を付けなければ、契約として成り立たん。このままでは、コレはまた命を失うハメになるが?」
そうせっつかれてもちゃんとした名前を付けてあげたいと思うのが親心ってものである。でも、スカさんの言葉に急かされてちょっと焦っている自分が居るのもまた事実。頭の回転が速いスカさんのクローンと言えども得意な事が出来るだけってだけなので、こういう時は普通の人よりも劣っているかもしれない。でも、適当に名前を付けるだなんて出来ないから、時間の許す限り一生懸命頭の中で考える。
いろいろと浮かんだ名前をあーでもないこーでもないと吟味しながら、捻りだそうとする私……。誰かに名前を付けるって魔法術式を構築するよりも難しいね。子供に名前を付ける為に一生懸命悩んでいる人たちを尊敬するよ。
――ぽく、ぽく、ぽく、ちーーん。
何処かで聞いた事があるような微妙で古臭い擬音を頭の中で流しながら、ふと思う。
「……ろぜ」
"ロゼ"。まぁ、"ゼロ"を逆さまに呼んだだけの簡単なものなんだけれど"ポチ"や"タマ"と付けちゃうよりも幾分かマシなのかなって。スライムさん改め、ロゼさんが自分の名前を噛みしめているようで、ぽよんぽよんと自分の身体を跳ねさせているのでどうやら気に入ってくれたようで一安心。ロゼさんの横でスカさんがうんうんと頷いているんだけれど、よくよく考えれば私のネーミングセンスもスカさんと同じレベルなのかも。流石クローンだって冗談で思ってたんだけれど、ナンバーズの皆さんからもセンスが似ていると言われてしまい少し凹んでしまったのは、また別の話。
ロゼさんと使い魔契約を果たして数日。どんどんと駄目人間になっていく自覚が確実にあるのですが、どうしましょうか。それというのも、このスライムであるロゼさんはいろいろと私に足りていない部分を補ってくれる。三歳児という身なので高い場所の物が取れないのは日常茶飯事で、スカさんやナンバーズの皆様をそんな些末な事で呼び出す訳にはいかないから自分で結構無茶をしてどうにかしていたんだけれど。
そんな私の姿を見てロゼさんは無言でスライムの身体の一部分を伸ばして器用に必要な物を取ってくれたり、食事を忘れて研究に没頭していると『マスター、そろそろ栄養摂取を』と告げてくれる。ご飯を食べましょうと言わず"栄養摂取"と言っちゃうのはなんともロゼさんらしい。
他にもロゼさんはベッドやソファーに擬態してくれて寝そべっていると、すんごく気持ちいいんだよね。作業をしてた時に最初座る場所が無くて困ってたら、自身に座って下さいと言いだした。スライムさんだから自由に形を変える事が出来るのだけれど、スライム姿のままのロゼさんに遠慮してたらいつの間にか完璧な椅子の形を模していた。そんな事がいつ出来るようになったのか聞いてみれば、最初からできるそうで。どうやら生まれたばかりの時にスカさんの形に模した事が影響しているみたいだった。
重いだろうし、長時間は辛いだろうから遠慮するって言ったんだけれど、マスターは小柄で軽いですから問題は何もありませんと押し切られ座ってみると、あら不思議、座り心地の良い事。椅子として大切な機能である弾力性もあるし、座った時に感じる独特のひんやりしたあの感じとか全くなくて不思議に思っていると、どうや温度調節をしてくれてた。他にもマッサージ機能とかもあるから驚きだ。
椅子だけじゃなくてベッドやソファーにも擬態出来ちゃうから、研究室で寝落ちした私をいつの間にかベッドとなったロゼさんの上に寝かされていた事もある。誰が寝かせたのと聞いてみれば『私がやりました』と短く返事が。
どうもウーノさんとクアットロさんから『お嬢様はドクターと同様に無茶をするから、その時は止めろ』とロゼさんに伝えたみたいで。そしてロゼさんもその言葉を了承しちゃったみたいで。自分で自制が効かないのは自覚しているし、ロゼさんは良いストッパー役になってくれていると思う。
それでもやっぱりなるべくロゼさんに頼らないように頑張っているんだけれど、使い魔契約の時に感情リンクを切るのを忘れていて私が疲れているとか眠いとかお腹空いているとかがロゼさんにバレバレ。スライムさんの姿だから表情何て判らないけれど、心配そうにされるとやっぱり気になっちゃうから無理が出来なくて。それでも。
――うん、ロゼさんと使い魔契約をして良かった。
私の身の回りのお世話を甲斐甲斐しくしてくれているロゼさんなのですが、普段はスライムの姿で読書をしている。本を読む事で知識を吸収して色々な事を学んでいるそうで、楽しいし面白いとの事。人間じゃないから疲れないそうだし、動物って訳でもないから無理に眠る必要も食事を摂る必要もないそうで、私の魔力に完全依存しているから永遠に読書を続けていても平気だそうだ。
私の使い魔なので、魔法も使用できるし魔導師としての訓練も欠かしていない。練習相手にはナンバーズの武闘派の皆様が相手になってくれている。でもスライムの姿のままだとやり辛いと苦情が出たので、人の形になってもらってる。人の姿となる事で、研究のお手伝いにも顔を出すようになってくれたロゼさん。もう既に居なくてはならない人物と化してしまった。
目の保養にと私好みの男性の姿になって貰ってたんだけれど、それを見たスカさんが『このアジトには私以外の男は認めないと』割と真面目な顔で言い放ってしまったので、それからは女の人の姿になってもらったよ。
ちなみにネットでたまたま見つけた画像の写真を模して貰ってる。多分モデルさんだったのかな。長身故のすらっとした手足に整った顔立ちの金髪碧眼の八頭身美人で巨乳さん。その姿を見たスカさんは満足した様子で、にんまりしてた。スカさんってなんで同性の人を排除しちゃう傾向があるんだろうね。天才の考える事は良く解らないと、唸ってしまった一日だった。
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使い魔さん、後の話になればなるほどイロモノキャラと化したのは、何故でしょうか。いや、面白ければそれで良いんですが。