転生先はスカさん一家   作:行雲流水

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第六話:怒涛のイベント消化。

 最近というよりも以前から気になっていた事がって、それはスカさん一家の九女であるノーヴェさんの事だ。どうも反抗期なのか毎日ご機嫌斜めな御様子で、皆の輪の中に加わろうとしないんだ。唯一心を開いているのは、五女であるチンクさんだけで。それでもまぁ、皆と完全に意思疎通しないよりは全然マシだし、無視をされる事もないんだけれども。事なかれ主義の元日本人の私としては皆と仲良くして欲しいってのが本音だし。

 

 ――ぷよん。

 

 そんな擬音が似合う、私の使い魔であるロゼさんの上で腕を組んでどうにかならないかなーって考えていた。放って置いても大丈夫って思っちゃう自分と、どうしても気になる自分が居て。出来る限り話しかけていて、そんな私を見てノーヴェさんは溜息を吐きつつ面倒臭そうに相手をしてくれるんだけれども、一言二言で会話が終了してしまう。会話のキャッチボールを楽しむ気は無いみたいで、ちょっと傷心中なんだよね。

 私が果敢にノーヴェさんにアタックして、すぐさま玉砕している事に気付いたチンクさんは、律儀に私に頭を下げてくれた。チンクさんが頭を下げるべき事柄ではないし、私が勝手にノーヴェさんの心配をしているだけだからって言うと嬉しそうに笑ってた。ノーヴェさんの事を気にかけてくれる人が増えて嬉しいらしい。

 でも原作三期が無事に終われば彼女は厚生の道を歩んで、まっとうな人になるみたいだから将来的な心配はない。過去を省みて赤面しなきゃならないのはノーヴェさん自身で、その事についてはノータッチだし良い経験なんだとおもう。それでも仲良くしたいって考えちゃうのは私の我儘なのかなぁ。

 

 ――むぎゅー。

 

 「…………っ」

 

 ロゼさんの上に座っていたのにいつの間にかロゼさんを両腕で抱きかかえていた。丸いスライムさんの姿が私の腕の力で変に圧縮されてるんだけれど、邪魔をしないようにか文句なんて一言も言わず黙ってくれている。反抗期を迎えた子供時代を私も過ごした事はあるけれど、それは自分の両親に向けてのものだったから。ノーヴェさんが何を考えて皆とコミュニケーションを取らないのか、理由なんて全然分かりません。精神的には大人な筈の私ですが、人付き合いは苦手な前世を送っていたし今世も人間関係はこのアジトの中だけで構築されているから、手をこまねいている訳で。

 それならノーヴェさんの物欲に訴えてみようかと算段してみたものの、なんだかモノで人を釣るのは卑怯な気がして、やっぱり正攻法でいくしかないのだろうって結論が出たんだけれど、何をすればいいのやら。情けないけれど、私が取れる手段はそれくらいだから後は時間が解決してくれることを期待するしかないよね。

 

 公開意見陳述の日が近づいており時空管理局地上本部を襲撃する計画をスカさんから知らされて、その準備に忙しくなってきている所だし。余計な事をしてノーヴェさんに精神的負担を掛けるのは避けたいなら、何もしないのがベターな選択なんだろう。

 武闘派の人たちは戦闘訓練と襲撃シュミレーションに力を入れて何度も計画に穴がないか確かめている日々だし、私も含む後方待機組は後方支援やもしもの時の為のサブプラン計画を立てている所。そんなこんなでスカさん一家は多忙な日々を過ごしているんだ。

 

 ウーノさんのお手伝いで、資材調達やらガジェットドローンの在庫管理。他にもアジトで暮らす為の皆の生活費の算出や必要経費の捻出。光熱費はどうなっているんだろうって調べてみたら、自前の魔力炉から電気を賄っているから電力会社に電気代を払ってなかった。その辺りは流石スカさんで。自前で魔導炉型の発電機を開発していた。結構広いアジト内の電力を賄う為にやたらとサイズが大きかったんだけれど、設計図をスカさんから手に入れて手を加えて小型化と出力向上を図ってみたら無事成功。そうして小型化した魔導炉の空きスペースにはスカさんと私が息抜きやネタで作ってお蔵入りになってしまった作品の数々をポイッと投げ入れている。勿体ないから使ってあげたい所なんだけれども、どうしようもないほどにネタに走り過ぎてピーキーなものになっているので使えない。ちょっと反省をしつつも、何時か折をみて再設計や解体して再利用しようっと。

 

 また別の日にはトーレさんからお願いされて、脳筋組のメンバーとの戦闘訓練を行ったり。私が仮想敵役で捕縛系の魔法を使用してナンバーズの皆様を緊縛。んで緊縛されたナンバーズの皆様はソコからの脱出を試みるって寸法。面白半分でいつもスカさんを簀巻きにしている捕縛魔法の紐もどきで亀甲縛りを実行してみたら、たまたま訓練の様子を見に来たウーノさんとクアットロさんに目撃されて『そんな事を誰に教わったのですか?』と笑っているけれど笑っていない顔で問い質されたんだけれど、前世で知っていたなんて言えなし嘘も付けないので書庫にあった本の中に書いてあったと伝えると、クアットロさんが魔法で一瞬のうちに転移して問題の本を見つけ出して焚き上げていた。ウーノさんもそれを確認してから書庫の主であるスカさんの下へと行き、スカさんに苦言を呈していた。

 なんだかごめんなさいスカさん。でも、なんで書庫にそんな本を置いていたんだろう。趣味なのだろうか。

 

 最近のロゼさんは知識の吸収に満足したのか、以前よりも格闘と魔法について熱を入れていてナンバーズの皆様と一緒になって戦闘訓練に励んでいる姿をよく見る。危ない事はして欲しくないんだけれど、本人が興味があるし楽しいと言っているので、ロゼさんが無茶をしない限り私は止めないつもりだ。

 ロゼさんは防御魔法に定評があるようで結構固い防御陣を築いているそうだ。そんな事だからナンバーズの武闘派メンバーに目を付けられて、防御魔法突破訓練に引っ張り出されている。逆にロゼさんも他の人との魔法戦をお願いしているみたいなのでwin-winの関係みたいだった。私も開発して作った兵器の実験に付き合って貰って、色々な事を皆に試してもらっているんのだから私もwin-winなんだけれどね。

 

 スカさん曰く『祭り』まであと少し。

 

 ◇

 

 てな訳でスカさん曰く『祭り』である公開意見陳述の日がやってまいりました。そう言えば地上本部襲撃と機動六課襲撃って同時進行だったな、と今更ながら思い出す。だもんでグループ分けは三組と相成っている。

 地上本部襲撃組、機動六課襲撃組、そして後方待機。もちろん私は後方待機組だ。突発的な事態が起これば対処要因として出撃する予定もあるんだけれど、もちろんそれは私が出来る範囲でのサポートだけだから戦闘はしないし、保護者も付いているんだよね。そしてその保護者はクアットロさん。なんでそんなにルンルンで締まりのない嬉しそうな顔をしているのだろうか。そしてウーノさんは心配そうに眉尻を下げているし。ちゃんと悪役っぽい顔をして欲しいし、心配するなら出撃組の心配をしてあげようよ。それに私が出撃する事態になるのはスカさんの計画が失敗を示している事になるんだから、そんな事態になっちゃうと駄目でしょうが。

 

 ま、タラレバの話はさて置いて。

 

 戦闘訓練を見学していて便利な能力だなーって感心したのはディープダイバーの能力を持つスカさん一家六女のセインさんだ。その能力は、無機物に潜行して壁抜きができるってもの。原作知識で知っているとはいえ実際の目で見るのは違うから、驚いてしまったのは言うまでもない。そして凄いと言っちゃったもんだからセインさんが悪乗りしちゃったのも言うまでもない。空き巣とか生業にしている人からすれば泣いて喜ぶ希少技能(レアスキル)なんだけれども、セインさんが生まれ持って得た資質だから誰彼が真似を出来る訳でもない。うん、世の中の平和は保たれてる。

 そんな能力を持っているセインさんの力を使わない訳はなく、今回の地上本部襲撃の為の要になる任務を背負っている。地上本部指揮官制室へと直接潜入して、特殊なガスが装填されたハンドグレネードを投下して制圧するというモノ。要するに作戦成功の要にあたる内容で失敗すれば地上本部襲撃だなんて夢のまた夢となって、撤退を余儀なくされるだろう。

 

 ――カチリ。

 

 室内の時計が、作戦開始時間を告げる。

 

 「行くか」

 

 戦闘を統括しているトーレさんが普段よりも幾分か低い声色で、ぽつりと宣誓する。その声に呼応して戦闘組の気配がガラッと変わった。嗚呼、戦う戦士の顔だ。普段一緒にご飯を食べたり、私が開発した試作品のテストに付き合ってもらったりしながら一緒に暮らして、時折馬鹿な事をやらかして笑ったりしているけれど"戦闘機人"と名を付けられるだけあって、こういう時の皆の眼はぶっちゃけ怖くなる。

 そりゃ戦場になんて一度も出た事がない私のような甘ちゃんには、到底辿り着けない領域に達していている訳である。一緒に暮らしている身としては、皆と穏やかに過ごせればそれで良いし文句なんてないのだけれど、状況がそれを許してくれない。スカさん自身とスカさんの後ろに付いている最高評議会。険悪な仲なんだけれどお互いに利用しなければ価値がなくなってしまうので今の所、共闘してるけれど。私的にはこの生活を保障してくれているパトロンとかスポンサーってイメージが強いけれど、スカさんはなんであんなに毛嫌いしてるんだろうね。

 ま、無茶な仕事を沢山持ってくる上司みたいなものだから、賃金に似合わない労働をさせられればストレスが溜まるだろうし働き損になるから嫌になるのは理解出来るかも。その無茶に付き合わされている事になる私は辞退したいのだけれど、生活費の分くらいは働かないとね。タダ飯を食べる訳にはいかないし、ね。

 

どうか無事で、と願いながら彼女達を見送った後、帰還した皆が万が一怪我をした時の為の用意を始めた。

 

 襲撃組が出撃してから暫く。皆の気配が消えていつもならそれなりに騒がしいアジトの内部は静かなものだ。時間的にはそろそろ同時襲撃が始まっている頃だなぁ。ゼストさんとルーテシアさんもナンバーズの皆と一緒に作戦に参加しているから怪我なく戻って来てほしいんだけれど。この身はハイスペックスカさんのクローンだけれど、まだ幼児だから現場に立てないのはちょっと悔しい。前線に立てば迷惑が掛かるだろうけれど、後方で出来る事もあるし。こうしてアジトで待機して安穏と過ごしている事に罪悪感を覚える。

 それに今回はスカさん側に負傷者が出る事も知っているから気が気じゃないし、主人公たちなのはさんたちの傍に私の様なイレギュラーな存在が居る可能性も捨てきれないし。もし仮にそんな人が居れば私はどうすればいいのだろう。その人物に接触して平和条約でも結べるのなら結びたいけれど、敵対者とみなされればスカさん達と一緒に倒される事になるだろうし。不安は尽きず、いろんなマイナス思考が働くんだけれど、その可能性は少ないんじゃないだろうか。

 

 一に、原作知識がある事。

 一に、魔導師としての素質がある事。

 

 この二つの条件をクリアしなければ転生者が存在していたとしても機動六課の側に介入する事は難しいだろうし、魔導師じゃない時点で役には立たないだろう。けれどもまぁ、絶対なんて事はあり得ないから用心するに越したことはないんだけれど、一応今までにその気配はないから安心している。今更介入した所で、どうこうできる状況じゃないしね。

 あとは本当にイレギュラーが起こらない事を祈るのみだ。それならば、主人公たちが一度悪役に膝を折る事はテンプレート的な展開なんだし、遠慮なく原作再現してくださいなと言うことで、スカさんの計画が開始された。今回の襲撃には鹵獲目標が定められている。それはもちろんヴィヴィオさんと、戦闘機人のオリジナルであるギンガさんとスバルさんだ。ヴィヴィオさんは絶対目標なのでトーレさんが是が非でも連れて帰って来る事だろう。スカさんからも厳命されていたしね。

 

 あ゛、ヴィヴィオさんとどんな顔をして会えばいいのだろう。イレギュラーな存在を気に掛けるよりも、大きな問題が出て来てしまった。すっかり忘れていたけれど、ヴィヴィオさんが戻ってくるんだった。聖王のゆりかごを起動する為に必要な鍵になるヴィヴィオさんだから、スカさんが何かしら手を施すのだろうけれど、その間のお世話役は確実に私じゃないか。ちょっとシリアスに臭いセリフを考えながらヴィヴィオさんを送り出したあの時の私の気持ちを返してよぅ。すっかり忘れてた。

 

 嗚呼、もう恥ずかしいったらありゃしない。

 

 研究室のリノリウムの床の上を転がりまわりたい気持ちを抑えながらトーレさんがヴィヴィオさんの捕獲失敗しないかなーと頭の片隅によぎるんだけれど一瞬で霧散させる。原作通りにシナリオを進ませたいのならヴィヴィオさん奪還は絶対だもんね。腹を括って、再会して恥をかくしかないのだろう。笑いたきゃ笑えばいいんだ。笑ってくれるのなら喜んで道化になろう。

 

 ――カチリ。

 

 時計の針が襲撃タイムライン終了を告げていた。

 

 ◇

 

 そんなこんなで、地上本部襲撃と機動六課襲撃は無事に終わり、原作通りにヴィヴィオさんの確保とギンガさんも確保された。スバルさんの確保は原作通りに無理だったようなんだけれど、スカさんが満足げな様子だったので問題はない。ナンバーズの皆も怪我もしつつ無事に戻って来てくれたし、一安心。チンクさんの怪我が酷かったんだけれど、怪我をして帰って来るかもと備えていたので直ぐに治療を開始して元に戻しちゃった。

 機械の身体で生身の部分さえ無事なら、壊れたパーツの交換で済むのでこういう部分に利点は一応あるんだよね。倫理的にと言われると途端に怪しくなるけれど、その事は棚の上。今更ナンバーズの皆を生身の人間に戻すなんて不可能だし。普段から皆のメンテナンスを引き受けてた甲斐があったものだ。

 

 ヴィヴィオさんとの再会を恐れていた私だったけれど、帰還早々に聖王のゆりかごの鍵として全うして頂く為に培養槽へとスカさんがさっさと運んじゃって漬け込んじゃったから、ヴィヴィオさんとの再会は叶わず。

 ちなみにギンガさんも洗脳の為に培養槽へと漬けられて、現在スカさんが調整中。培養槽便利過ぎじゃないと不思議に思いつつ、時間があればその仕組みの勉強を始めようと心に誓う。地上本部と機動六課の崩壊でそろそろ原作も大詰めの段階へとやって来て、イベントの目白押しとなってる。次はアインヘリアルの破壊なのだけれど、どうせなら破壊よりもいっその事乗っ取ってしまおうってスカさんに意見したら通ってしまった。なので作戦立案が私になってしまい、どうしたものかと試行錯誤しているんだけれど軍事知識がない私がそう簡単に作戦なんて立てられる訳ない。しかも戦力として動ける人数は実質十人程度で、少ないんだよね。ガジェットドローンは決まった動きしか出来ないし、制圧なんて器用な事は出来ないから。

 

 戦闘機人と魔導師なので一般人となら負ける事なんてないだろうけれど、訓練を積んだ武装隊員を大量に投入されれば数の暴力で確実に負ける。それならば正攻法で作戦を立てるよりも、制圧完了後に何かしらの仕掛けをしてしまおう。ようするに制圧後の再侵入さえされなければアインヘリアルの起動は行えないし、遠隔操作にしてしまえば現地に人を派遣しなくても操作できちゃうからね。あとは魔導炉からの魔力供給問題を解決しなくちゃならないんだけれど、少し前に小型化した魔導炉を持ち込んで本来の電源と切り替えて設置すればいいだけだから、時間は掛からない。手に入れたあかつきには、過剰戦力となりそうだけれど持っていても持っていなくてもどっちでも良いなら、念のために持って置こう。あとはスカさんが御乱心しない様に見張っておけば間違いはあるまいて。

 

 ともかくアインヘリアルは破壊から鹵獲へと変更されて、施設内を襲撃するプランとなった。下調べをしたところ警備兵は出入り口のみで、そこさえ無力化すれば施設内に居る人員は非魔導師だから侵入は容易い。その後に施設内の職員や技術者の排除へと移るんだけれど、天に召されてしまうような手荒な事はしたくないので追い出す形をとる。魔導師じゃないから無力化する事は簡単なんだけれど、捕えた人たちの輸送をどうしようか。人の手でやると確実に時間が掛かって、逆に私たちが襲撃される羽目になりそうだから素早い対応が必要なんだよね。

 なので以前に造ったリサイクルロボットを少し改良を施して、ゴミじゃなくて人間を収容できるようにして雑に組み上げた転送魔法もきっちりと組んで人間の転送を行っても問題のない様にしようかな。うん、これで人手が足りなくても平気だ。制圧後は、さっくりと別電源につなげ直してアインヘリアルを使用できるようにイジる事と遠隔操作可能にする事。そして最後の仕上げに誰も侵入できなくなるようにAMF発生装置と、あるガスを施設内に充填させる事にした。

 

 ガスの充填は私の使い魔であるロゼさんの役目。というのもロゼさん制作過程で起きた奇跡の副産物のガスがある。タングステンに色々と金属成分や魔法技術をつぎ込んでしまった為か、中和反応なのかなにかを引き起こしてガスを発生させちゃう時があったんだよね。そのガスには致死性はないけれど、即効性のあり直ぐに意識を奪ってしまうタイプのガスなんだ。ロゼさん曰く意図的に反応を起こそうとすれば延々と出来てしまうらしい。

 成分が足りなくなれば、ロゼさんが指定した元素の標準液を用意すればいいだけだから凄く簡単だし、元素って市販されているから入手するのも案外楽なんだよね。ロゼさん特性のガスを利用して施設内をクリーンルームのように気圧調整してあげれば、外の空気が入り辛くなってガスは施設の外に漏れにくくなるって寸法。そのガスを生み出すロゼさんの姿は滑稽なんだけれどね。人型だと特に。

 スレンダーな金髪碧眼の綺麗な女性がお腹を壊して連続でおならをしている姿だし…ガスを出す事を念頭に置いているロゼさんなので音が出る事は些末な事らしく、すかしてして下さいと懇願したときは何を言っているのだろうって世界の不条理を呪った過去がある。アハハ。最後の仕上げは、制圧後の施設内を占拠状態を維持させなくちゃいけないけないのだけれど、ナンバーズの誰かを常駐させる訳にはいかないので、地上本部に配備した警備ロボットの改良版とスカさんから借り受けたガジェットドローンを配備させる事に。これならガスが充満していても機械だから関係ないし、周囲の警備も十分に力を発揮できるだろう。そうそう私が制作した警備ロボットには、地上本部に配備された際に名前を付けたんだけれど……。

 

 SU—per(とても)

 CU—stomization(カスタマイズされた)

 JI—ngo(好戦的愛国主義者の)

 A—ffection(愛情)

 

 『SUCUJIA』が正式名称だ。読み方はちょっと無理矢理なんだけれど『スカジア』さん。あ、そうそう。アインヘリアルの警備に当るのは改良版になるので地上本部に配備されたものと区別が必要なので新たな名前を付けなきゃならないんだけれども、面倒なのでSUCUJIA:Type-Rとかでいいか。掛けてるお金もType-Rの方が高いし。地上本部に配備されたものは本部のお財布事情も関係してオミットされちゃった機能とかもあるので、ある意味TYPE-Rの方が完全版なんだよね。

 因みに正式名称の意味だけをレジアスさんに教えたら、右側よりの名前の為か大層気に入っていた。お遊びで付けた名前で、ネタ元は何か月か前に私がふと思ってしまったスカさん×レジアスさんの禁断の情景が元である。本来の意味と嫌味を含めた正式名称を伝えちゃうと、血圧が天元突破してしまいレジアスさんが憤死しそうだからあえて言わないでおいたんだ。人間、知らない方が幸せなという場合もあるんだ。ワタシッテヤサシイヨネ。

 

 もしもの場合はアインヘリアルを破壊できるように、爆破装置も設置するし抜かりはない。私が立てた計画プランをスカさんとウーノさんに見せたら何でか感心してた。一応、この案だけじゃ不安なので何通りかの別プランも提案してあるし、失敗した時用のサブプランも考えてある。少ない人員でどう行動を起こせば効率よく最低限で動けて、最大限の効果をだせるのか考えるのは楽しかったけど。スカさんからの許可も得たし、晴れて私の初陣になるアインヘリアル強奪作戦は開始された。

 

 ……開始された、はずだった。

 

 なんでナンバーズの皆様全員が私と一緒に出撃するんですかぁー。スカさんに提出した強奪プランは最小限の戦闘員のみで任務に実直なトーレさんとチンクさん。そしてその二人が選出した二名と私とロゼさんだけだったのにーーー。だというのに出撃メンバーに選ばれなかった人たちが暇だからと理由になっていない理由を付けて私たちと一緒に行動しています。もうアジトも出てしまったので帰れとも言えず諦めて一緒に行動している。唯一アジトに残っているのはスカさんとウーノさんだけで護衛に武闘派の誰かが残らなくても良かったのだろうかって思うけれど、一応秘密のアジトなので管理局に発見されていないから大丈夫なはず。

 それにしたって皆過保護にも程が過ぎる。付いて来ている皆もそうだし、スカさんとウーノさんもサーチャーで生中継されている映像を見てるし、何かあれば直ぐに応援を寄越すから連絡しなさいって。子供じゃないよーって言いたいけれど、悲しいかなこの身は三歳児でした。最近忙しくて自分の肉体年齢を忘れつつあるよ。

 

 アインヘリアルはミッドチルダに三基存在し射線を確保する為に高地に建設されている為、三地点同時襲撃による一斉制圧を選択した。一個一個制圧しても良かったんだけれど、時間が経つにつれ警備は強化されるだろうしね。

 なお三号基は未だに建造中なので確保して自分たちで建設を続けるよりも、徹底的な破壊工作とした。なので私は三号基に向かい爆薬を設置して破壊する役目を担ってる。使い魔のロゼさんが私に着いて行くと聞いてくれなかったんだけれど、一号基と二号基のガス充てんという大事な役目があるから命令として強制してしまった事は申し訳ないと思っている。ロゼさん謹製の椅子やベッドにお世話になれなくなるのは嫌なので、後で確りとご機嫌を取らないとね。

 

 「お嬢さま、そろそろ時間ですのでよろしいですか?」

 

 トーレさんが私に声を掛けてくれて、作戦開始を促してくれる。機動六課襲撃から間が経っていないのに借り出して申し訳ないと謝るけれど、実戦部隊の長なので構いませんよと言ってのけるトーレさんはすんごいイケメンだ。胸あるけれど。今回協力者としてルーテシアさんとゼストさんも手伝ってくれるそうで一緒にこの場に立ってる。不思議に思って何故と聞いてみると『興味があるから』って。協力してくれるのは嬉しいけれど危ない事はお願いできないので、ルーテシアさんにはガジェットドローンの転送をお願いし、ゼストさんにはルーテシアさんの護衛を頼んだ。

 アギトさんが彼女たちの傍に居る筈なんだけれどスカさん一家は苦手らしくて姿を見ていない。なので何処かに隠れているんだろう。後でお礼をしなきゃと思って何が良いのかと聞くと『ゼロが作った御飯』『風呂に入りたい』となんともまぁ健気なお願いだったので、この任務が終われば皆の為に盛大にご飯を作ろうじゃないのよさ。論文を幾つか書いてて、原稿料が入ってきてるしある程度自由の利くお金はあるので、その位ならお安い御用だ。

 

 「はい。みなさん、よろしくおねがいします」

 

 この場に居る皆に頭を下げて姿勢を元に戻してみれば、頼もしい顔をしている面々。嗚呼、これは失敗する事はないかな。原作だと破壊してたけれど、皆の自信満々の顔を見ていると作戦失敗の文字は浮かばないんだもの。各々好き勝手に声をだしてそれぞれ自分の役割を果たすために散っていく。予定していたメンバーよりも多くなってしまったけれど、トーレさんが仕切ってくれたので楽だった。

 

 気合の入ったナンバーズのみなさんのお陰か、一号基のアインヘリアル制圧は予想よりも早い時間で終了。職員や技術者の排除もスムーズに終わって、あらかじめ用意しておいた小型魔導炉とAMF発生装置の設置が完了。

 砲台の制御装置のハッキングからの遠隔操作切り替え、それからロゼさんの超シュールな光景が繰り広げられてガスの充填も無事に終了。同時進行している二号基の方も一号基と変わらないタイミングで制圧完了の一報を受けてしまったので、ロゼさんがちょっと大変な目に合ってしまったけれども。

 

 「た~まや~」

 

 私の隣で呑気な声を出しているのはクアットロさん。その言葉の通りに三号基も私が調合した特製火薬を使用した自前の小型爆弾を使用して粉微塵に破壊したから、最初から作り直すには地上本部の予算の関係上不可能だろう。

 

 どうにか私の初陣は無事に終了。戦場に出た新兵が死んじゃう事なんて当たり前だから、結構なストレスが掛かっていたのだけれど気が抜けてどっと疲れてしまった。それでもこの後には大事な打ち上げ会があるのだし、皆晩御飯を楽しみにしているみたいなので倒れる訳にはいかない。なので気力を振り絞ってアジトに戻って、調理を始めた。皆お腹が空いていたみたいで怒涛の勢いで減っていく大量の料理を目を白黒させながら見てた。

 

 ――お疲れ様でした。

 

 そう心の中で感謝の言葉を呟いて、アジトの台所で私の意識はついに途切れたのだった。

 




10302字


 私にネーミングセンスというものは皆無です。ハイ。
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