転生先はスカさん一家   作:行雲流水

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第七話:終わりの始まり。

 

 これで、良かったのかな。

 

 変えてしまった事、変えてしまったものはもう元へと戻らない。まぁ、いいか。そう何度も自分に言い聞かせているけれど、なんども良かったのだろうかと問いかけてしまう。深く考えても仕方ない事なのだから。なるようになるさ、ケセラセラってね。

 

 「マスター。……マスター、起きて下さい」

 

 私の肩を揺らしながら声を掛けるのは誰だろう。答えてあげたい所なんだけれど、それを頭と心が拒否をして眠りに誘おうとして、目を開けるのは断念。それでもまだ揺れる体に、段々と意識が覚醒していきようやく目を開いた。ぼんやりとする視界に映り込んだのは、済まなさそうな顔をしているロゼさんが。

 

 「申し訳ありません、マスター。ご命令でしたので……」

 

 あ゛ー……、思い出した。アインヘリアル制圧で実戦を初めて積んですごく疲れたんだけれど、その後にもやらなくちゃいけない事があって無理をしてたんだっけか。約束もあったし、作戦を手伝ってくれた皆へのお礼も兼ねて普段作らないようなものを作って満足したあと、寝落ちしたんだった。自室のベッドで起きたから、誰かが此処まで運んでくれたんだろう。けれど疲れ果てた体が自然に目を覚ます為にはかなりの時間が必要なんだけれど、それだと全ての事件が終わってしまいそうだったので、もし私が眠ってしまったらある時間に起こして欲しいとロゼさんにお願いしてたんだ。

 なのでロゼさんが申し訳なさそうな顔をする理由はないんだけれど、使い魔契約の時に精神リンクを切らなかったので、私の感情とか肉体情報とかがロゼさんには筒抜けにながれているから、疲れているとかはすべてお見通し。無茶をしてはいけないとは分かっているものの自分でどうにも止められないから、丁度良いストッパー役になってくれているのでそんな顔をしないで欲しいんだけれど細かい感情までは精神リンクでは伝わらないから難しい。

 

 「わたしがたのんだことなので、きにしないでください。……ありがとうございます、ろぜさん」

 

 申し訳なさそうな顔をしているロゼさんにそう言ってから部屋を二人で後にする。目的地はアジト内の培養槽がある部屋に。ヴィヴィオさんの様子が気になるから覗きに行こうと考えていたんだけれど、寝落ちしちゃったからだいぶん遅くなってしまった。急ぎ足で向かうんだけれど長い廊下を進む早さは三歳児の身なので時間が掛かる。

 

 「少し、いいか……?」

 

 声が聞こえた方に振り返ってみれば、厳しい顔をしたゼストさんが居た。少し張り詰めた空気に反応してロゼさんが私を庇うように前に立つけれど、ゼストさんに敵意はない事は分かっているので下がってもらう。私に用があるなんて珍しいなと思いつつ、話を聞く姿勢を取って耳を傾ける。その内容は、ゼスト隊全滅事件の事で。でも私がゼストさんの言葉に答えられる情報は持っていない。この世界に生まれて三年しか経っていないし、十年前の事を聞かれても知らない。知識としては知っているけれど、当時に存在していた訳でもないし。前世の記憶のお陰でゼスト隊全滅については何となく理解はしているからゼストさんがスカさんを毛嫌いしている事も解ってるし、私の目の前に立つ不器用な人が真相を解明しようと足掻いている事も知っている。

 

 「……ごめんなさい」

 

 彼の望みに答えられなかった事に少しの罪悪感を覚えてそんな言葉が口から勝手に飛び出していた。

 

 「いや、いい。済まなかったな。妙な事を聞いて」

 

 大きな手で私の頭を撫でる手は優しかった。その手から伝わる熱がなんだか切なくて。私の下を去ろうとする背中は何か嫌な雰囲気を醸し出していて。それを感じてしまうのはこの先を知っているからこその幻かも知れないけれど。

 

 それなら……。

 

 「まってくださいっ」

 

 ゼストさんを引き留めて私に着いて来て欲しいとお願いしてみれば、一つ返事で頷いてくれた。スカさんに似ているし、嫌われているかもしれなかったから賭けみたいなものだったけれど。そうして三歳児の後ろを、かなり大柄の渋い男性が私の歩幅に合わせて歩く光景は滑稽な事だろう。普通は逆だろうし、ロゼさんは私の影の中に入っちゃってゼストさんの事を警戒しているし。ちょっとへんてこな雰囲気に笑い出しそうになるのを我慢しながら目的の場所を目指す。

 

 移動中、ゼストさんは一言も喋らずに黙ってただ付いて来てくれる。陸の部隊では珍しいオーバーSランクの魔導師で部隊を率いっていたってのが信じられない位だ。失礼だけれど、言葉数の少ない上司が部下と意思疎通を上手くできてたのだろうかなーって。でもまぁ、真面目で実直な人だから、大丈夫か。それじゃなきゃ出世なんて出来ないし、副官の人が確りしていて代弁してくれれば平気だもんね。部下に恵まれてたんだろうな。

 

 「これは……」

 

 はいはい、そうですよ。培養槽が沢山並んでる部屋です。本当はヴィヴィオさんに会うためにやって来るつもりの場所だったんだけれど、少し予定を変更してヴィヴィオさんが眠っている培養槽の場所よりも奥に居る。

 きょろきょろと顔を動かしながらゼストさんは周囲を見てる。培養槽の中に入っている人は裸の女の人ばかりなので、連れて来る事を迷ったけれどゼストさんなら邪まな気持ちで見る事はないだろうし、全力でそれを悟られないようにするだろうし、口外もしないだろうって事で来てもらった。私が奥まで入るのは珍しいんだけれど、ゼストさんに見ておいて貰いたい事があるからここまで来た。監視カメラはあるんだけれど、スカさん達は別の事で手が離せない状況なので今のタイミングなら大丈夫なはず。

 

 「メガーヌっ……!」

 

 そう。ルーテシアさんのお母様であるメガーヌさんが眠る培養槽の前です。本当なら直ぐにでも目覚められるメガーヌさんなのですが、研究用の素体にでもするつもりだったのだろうかスカさんの気まぐれにより培養槽の中で眠ったままだ。目覚めさせるだけなら私にも出来るんだけれど、原作三期が終われば管理局の技師さんだかお医者さんによって目覚めるし、現在お世話になっているスカさんに逆らう訳にはいかないので現状維持である。私の心情的には、この培養槽に入る人たちを開放したいけれどね。でも、やっちゃうと色々と不都合が起こるから。申し訳ないのだけれど、自分の事が優先だ。

 

 「何故、此処に俺を連れてきたっ!」

 

 視線で射殺(いころ)されそうなくらい怖い表情のゼストさんは底冷えするような声で静かに吼える。深い理由なんてないんだよね。ただメガーヌさんは無事で、目覚める為にはレリックが必要ない事を伝えたかっただけなんだし。なら今すぐにやれと言われている様な気もしないんだけれど、まだ知識が足りないから不安な面がある事と、現状だと私はスカさんに逆らう気はないので出来ない事。そして遠くない未来……このアジトに居る皆は逮捕されるだろうから。管理局は確かに人手不足で回らない部分もあるけれど無能なんかじゃない事。だから今少しスカさんのお遊びに付き合って欲しい。

 

 「これは?」

 

 不服そうな顔をしながら差し出した物を受け取るゼストさん。まぁ、まだまだ培養槽の仕組みを理解しているわけではないのだけれど、そこいらに居る技師や医療関係者よりは詳しい筈だ。そこは流石スカさんのクローンだし、培養槽についてもスカさんから少しずつ教えてもらってたしね。今のこの管理局や管理世界の医療技術だとメガーヌさんに後遺症も何もないまま覚醒させる事は不可能で。

 後遺症や障害のないまま目覚めさせる事ができるのはスカさんくらいなんだけれども、一応スカさんを師と仰ぎ色々と教えてもらったので自分なりに考察やらをして色々と纏めてるデータだ。後は管理局に所属している医療関係者の腕と知識と経験が必要になるけれど、纏めたこのデータが役に立つ筈だ。スカさん独自の理論も使っちゃってるから一般に普及している培養槽と少し違うからね。

 

 ゼストさんに渡すモノはもう一つある。それは戦闘機人のデータだ。ナンバーズの皆のメンテナンスをしていたから、スバルさんとギンガさんに応用できるだろうと思ってこれも用意しておいた。用意周到過ぎて不審に思われるかもしれないけれど、口止めをしておけばゼストさんは義理堅い人なので出所は言わないだろうし、仮に言った所で私は別に困らないし。私が知っている未来を辿るのならば、ゼストさんはあの結末を迎えなきゃならないのでデータを作成した人物の特定は無理つー訳なので。コピーは幾らでも取れるし、漏れても問題はない情報だからゼストさんの使いたい様に使って欲しい事も伝えて。

 

 「わかった。変な事を聞いて済まなかったな。……俺は十年前の事を問質しにレジアス・ゲイズに会いに行く」

 

 少しだけ目を細めて笑い、受け取ったデータを大事そうにポケットへと仕舞いこんで、ゼストさんは足早にアジトを出て行った。

 どうか無事でと願う気持ちと、ゼストさんの背中に背負った目に見えない何かが、まるで彼の未来を示しているように見えて、私は深い溜息を一つ吐きだした。やるせない気持ちを抱えながら、ヴィヴィオさんが眠っている培養槽の下へと向かう私がたまたま目に入ったのはギンガさんが眠っている培養槽だった。最終決戦にはスカさんの洗脳を終えて、ナンバーズ十三番目として出撃をするわけなんだけれども。憂鬱な気分のついでに、もう一つくらい憂鬱を背負い込んでも構わないかと心が騒ぐ。

 そんな事なのでギンガさんの洗脳を時限式で解けるように設定しておきました。これで上手く時間が合えばスバルさんとギンガさんの姉妹喧嘩をしなくて済むようになるんだけれど、賭けの部分が大きい。何せ詳しい時間とか知らないしね。上手く洗脳が解けたなら、管理局員として現場に即戻れるだろうし。戦力が足りていないから、負傷していない限り受け入れてくれるだろうし。

 

 スカさんたちを裏切ってしまう形になるんだけれど、それはそれ、これはこれである。ロゼさんが私の影の中で見ているけれど、ロゼさんは私の使い魔で私の事が最優先なので無問題。ちょっと時間をとってしまったけれど、やっとこさヴィヴィオさんの下へ。気持ちよさそうに培養液に浮かんで寝ているヴィヴィオさんは無邪気な子供そのままで。流石にヴィヴィオさんに細工をする事は出来なかった。聖王のゆりかごを起動させる為の大切な鍵なので、余計な事をすればスカさんに速攻でバレる仕組みになっているので私に出来る事はなにもない。だからこうしてみている事しか出来ない。

 

 ――それじゃぁね。

 

 別れを告げて、培養槽が並ぶ部屋から出ていく。ヴィヴィオさんが目覚め、聖王のゆりかご起動までに時間はそう掛からなかった……。

 

 ◇

 

 お約束通り聖王のゆりかごが起動した。泣き叫ぶヴィヴィオさんをモニター越しに見るのは辛いんだけれど、なのはさんがどうにかしてくれるからなのはさんに投げっぱなしである。何か手を出して失敗してもアレなので、主人公さんに一任しましょ。それにしたってもう原作も終盤なんだねとしみじみ思う。これまでの過程は原作通りで、多分心配は要らないとおもうけれど何だか胸が痛いのは何でだろう。

 スカさんのクローンとして生まれ変わり、スカさん達と過ごして来た三年間。その日々が終わってしまうのだから胸が痛くて仕方ないのはしょうがない事だと思うけれど。スカさんだって自分が望んでやりたい事をやっているのだし、私だってやりたい事をやりながら過ごして来たのだから。悪の道に走るような非道な人間にはならないと言って逃げようと思えばいつでも逃げられた。そのくらいに私は自由だったし、与えられていたものも多かった。育ててくれた恩と彼の庇護下の中で手に入れた知識や経験は、普通に生活していたならば手に入れられなかっただろう。でもさ、これはやり過ぎじゃないのかな……スカさんや。

 

 「諸君! 私は研究が好きだ」

 

 嗚呼、始まっちゃったよ。

 

 「諸君! 私は開発が好きだ」

 

 好きだよねぇスカさん、コレ。

 

 「諸君! 私は研究・開発が大好きだ!!!」

 

 ちょっとふとましい体型で高級な白いスーツを着込んだ少佐のようにそんな事をのたまうスカさんは凄く上機嫌。だって目の上のたんこぶだった最高評議会の三人をドゥーエさんが始末しちゃったもんね。だから今のスカさんは首輪の外れた猛犬状態になってしまった。さぁ、もう誰も止められる人は居ないよ。『無限の欲望』だなんて二つ名を持っているスカさんだから仕方ないんだけれど、彼の演説もどきに返事をしてくれる兵士さんなんてどこにも居ないから、すんごく滑稽な光景になっているんだよね。

 だからその滑稽さを緩和させるために大量のガジェット・ドローンを兵士に見立てて、気分を出すために私が音声を合成して観客のガヤ声を流してる。その声は時にはスカさんに同調し、最後には盛大な拍手とスカさんを称える名前コールが流れるようになってるんだけれども、スカさんの演説はいつ終わるかわかんないし、時々アレンジが入るから手動でやるしかないんだよね。

 

 某少佐の演説がスカさんの目に入っちゃった理由は、私が第九十七管理世界ようするに地球にあるインターネット回線に自由にアクセスできないかと考えて、超長距離通信を編み出した事が発端だった。

 もちろんそれは地球の質量兵器や技術が知りたくて繋げたのだけれど、前世の記憶が懐かしいと訴えてきてちょっとだけ"2525動画館"とか"my tube"とかを覗いちゃったのが間違いだった。あそこはネタの倉庫だから、ついつい楽しくて見入ってしまったんだよね。それを偶々スカさんが知ってしまい一緒に見る様になってしまったんだけれど、ロボットアニメなんて物もみてしまったから影響されまくりで。アニメのネタで済んだ事を真面目に科学的に検証をし始めるし、私も私で感化されて一緒に考えちゃったもんだから状況は悪化する一方で。

 あの技術は使えるとか、あれならば管理世界の技術で応用が利くとか熱弁していつの間にか夜が明けていた事なんてザラだった。スカさんと私の生存確認をしにきたウーノさんが生きていた事に安堵した後、呆れ顔になって深い溜息を吐いていた。何時もの事なのだから諦めて欲しいんだけれど、ウーノさんの溜息までがお約束。様式美。すぐに興味を示して色んな作品を見ていたスカさんは、世界を旅する武器商人とか超電磁砲的なのとか、宇宙生物に侵略されながら滅びの道を歩むしかない人類とかが気に入ってた。で、特にお気に入りなのが先ほどの演説シーンで。

 

 教えてしまった責任もあるし面倒だと思っても演出のあるなしで雰囲気が大分違うから、地味な作業だけれどスカさんの声のタイミングに合わせて合成音声を流している最中だ。しかもこの演説、スカさんがいとも簡単に公共電波をジャックして管理局や次元世界に住む人たちに公開生中継してるんだよね。テレビを付ければどのチャンネルもスカさんのイカれた姿が映るなんてどんな罰ゲームなんだ。私は裏方スタッフとして参加、かと思いきやスカさんの左腕に抱かれて一緒に映ってる……。犯罪者として次元世界にデビューするだなんて全く考えてなかったよ、とほほ。テンションが駄々下がりの中、スカさんの演説はなおも続く。BGMの選択もこだわったようで、今流れているのは地球のオーケストラでよく演奏されている組曲惑星から"火星"である。

 これも私が作業用BGMとして流していたのをスカさんが偶然聴いてしまい気に入ったそうだ。いろいろと地球産のオーケストラを聞いて気に入ってたみたいなので、スカさんのラボでもよく流してたなぁ。著作権は切れているから全然問題はないけれど、暗い音が地味に流れ始めて段々と激しく派手になっていく曲調だから今の状況には似合ってて怪しさ満点である。スカさん曰く、見栄えは大事だそうだ。

 

 「さぁ、諸君っ! 地獄を創るぞ」

 

 あ、最後はネタが思いつかなかったのか某少佐の台詞をそのまま言っちゃった。その言葉は今のスカさんの状況を的確に表している言葉だろう。聖王のゆりかご起動のお陰でミッドチルダは阿鼻叫喚の縮図状態。管理局員は総出で現場に出動しているだろうし、一般市民の皆様は緊急避難をしなければならないし、経済的打撃はどうなっているのやら。多分凄い事になっているんだろうけれど、賠償金を払いきるお金がスカさんにあるのだろうか。多分無理、だよね。

 だからこそミッドチルダの政府や管理局が存在してるんだろうけれど、そっちもそっちで財政状況は芳しくなさそうだからちょっと心配の種だったり。復興費って巨額のお金が動くからね。逆に潤う人もいるだろうけれど、その陰には必ず不幸になってる人も居るのだし。はぁ。

 

 そして今まさに、最高評議会と一緒に動いていた人たちがやって来た悪事をスカさんがあっさりと暴露しちゃった。どのくらいの人たちが最高評議会の影響下にあったのかは知らないけれど、管理局の高官たちは慌てふためいてるんだろうな。脳髄だけになってまで生命維持を施して生きながらえながらも倫理的に不味いって理由で秘匿されてたもんねぇ。もしくは存在は知っていても、姿をしらないだけだったのかも。この辺りの記憶はあやふやだ。その話の流れでプロジェクト・フェイトについても踏み込んで煽る事煽る事。フェイトさんに何か恨みでもあるんですかーってくらいに煽ってるんだけれど、これってスカさんなりの嫉妬なのかなぁ。プレシアさんもかつては一緒に研究をしてたみたいだけれど、そういえば"記憶転写"の部分に関してはノータッチみたいだったし。興味がなくて手を出さなかったのだろうけれど、娘を蘇らせたいという執念に囚われて、完全ではないにしろ"転写"が出来てしまったプレシアさんに対抗意識でも芽生えてしまったのか。スカさん自身にしか判らない事だから、推測するしかないんだけれど。うーーん、と微妙な顔になりそうなのを我慢しながら、アジトでのスカさんの演説はやっとの事で終わった。スカさんは大仰に喋るもんだから、腕の中で揺れる事揺れる事。気持ち悪くなる寸前に終わって安堵したのは秘密である。そして、長かった。

 

 さてさて、演説が終わったって事はこのアジトも危険に晒される訳である。はやてさんの友人である査察官のベロッサさんがハッスルしちゃって、この場所がバレるんだったよね。どうやってこのアジトを見つけ出したのが不思議なんだけれども。そして一緒に主人公サイドからは"暴力シスター"ことシャッハさんと、管理局からは長年スカさん関連の事件を追い続けていたフェイトさんに件のヴェロッサさんが突入してくるんだよねー。見た目は三歳児でなんにも出来ない子供に見えるかもしれないけれど、アインヘリアル襲撃時に顔が割れているだろうから多分捕まるんだろうな。こんな事なら変装でもしておけばよかったけれど、初陣の緊張でそれどころじゃなかったし。

 つか、このアジトで自由に動き回っている時点で怪しい人物Zだしね。演説を終えたスカさんの腕から解放されて晴れて私は自由の身になる。スカさんは指揮官としての役目があるのでこのままココに残るそうだ。秘書兼副官であるウーノさんも勿論一緒に。最終決戦の為かこのアジトにはスカさんの護衛の為にトーレさんと六女のセインさん、七女のセッテさんが待機している。

 

 あ、そうだ。このアジトに潜入されて制圧を受けてしまう前にやらなくちゃいけない事がある。その為にいそいそと自分の足で研究室へと赴き、スカジアさんの全機体遠隔操作システムを引っ張り出してプログラムを構築。地上本部に配備されてあるスカジアさんの操作権限を乗っ取って、レジアスさん、ゼストさん、そして一番の優先目標のドゥーエさんの死亡を回避しようって魂胆から。レジアスさんの居場所は地上本部に不法侵入するはずのゼストさんとドゥーエさんの魔力を感知して居場所を特定する予定で個体で魔力波長が全く違うので分別は可能だし、二人の魔力波長は知っているので簡単だ。

 本部には十体しか配備されていないけれど、戦力としてそれなりだから盾にでもなって時間を稼いでくれれば、烈火の将であるシグナムさんが止めてくれるだろうし。賭けに近いし、残りの問題はシグナムさんに丸投げという何ともザルな行動なんだけれど、何もしないで見ているよりは出来る事をする方が建設的だし。そしてもう一つの保険を掛ける。

 

 「マスター。何故……」

 

 私と離れてしまう事に不満があるんだろうね。ロゼさんがふくれっ面である。それでも主である私の命令には服従しなければならないらしいので、不承不承で地上本部に向かってくれた。ロゼさんも最近の訓練でめきめきと腕を上げているので、スカジアさん十体よりも断然に役に立つ。命令されたコマンドだけしか実行できない兵器と、自分の意思で考えて動いてくれる人ならば後者の方が圧倒的に貢献度は大違いだから。ぶっちゃけて私のできる事、すべき事はこれで終わってしまった。あとは出たとこ勝負の勢い任せだ。

 もしかすれば何かの間違いで原作のストーリーから外れてしまうかもしれないけれどそれはまたその時だし、モブとして気にしてもらえないくらいの存在の私が死んでも何も問題はないだろうし。いや死にたくなんてないけれど、そうなるのならばきっとそういう運命なのだから。

 

 




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