そろそろフェイトさん御一行がスカさんやスカさんの護衛に付いているナンバーズの皆様を逮捕しにやって来るかなー、だなんて呑気に考えてた。思考の隅では、聖王のゆりかごに乗艦している皆や管理局の邪魔をしに出撃していったメンバーも気になっていて。スカさんの下へと行けば生中継をしている筈だから状況を知る事ができるんだけれど、ハイテンションスカさんに付き合うのも大変だから……なんだかなぁ。
自分の研究室で何かをする気にもなれないから、私はアジトの中をウロウロと落ち着きなく彷徨っていた。使い魔のロゼさんが地上本部へと向かってしまったので現在私の身を守ってくれる人が誰も居ません。他の人の事を考えていて、自分の事を綺麗さっぱりと忘れていただなんて、間抜けすぎてなにも言えない。
これからきっとフェイトさんたち管理局がこの隠れアジトに突入してくる訳なんだけれど、私の扱いってどうなるのやら。いろいろとやらかしてしまっているから、取り敢えずは逮捕される事は確実そうなんだよね。アインヘリアル強奪時に私の姿はバッチリ割れているし、スカさんの演説に一緒に映っちゃってたし、地上本部に配備したスカジアさんの件もあるしなぁ。容疑が沢山ありますよ、あははー。
あとは捕まった後の扱い方なんだけれど、子供嫌いな人の手に渡ると邪険に扱われそうだし痛い思いはしたくないから、逮捕される時は子供好きを拗らしてるフェイトさんが一番安心なんだけれど、スカさんを捕まえる事に必至だろうから違う人だよね。
それでもまあ、何だろう。この場所から逃げようだなんて思わないし、逃げる事も出来なかった。スカさんのクローンとして生まれ変わっての三年間の時間は、私にとって濃密なもので楽しかった時間だったから。スカさんがやっている事を知りながら、止める事も諌める事もしなかった私にも罪はあるんだろう。ぐるぐるぐるぐる回る私の思考回路とぐるぐるぐるぐる回る頼りない足取りは、いつの間にかこの場所へと辿り着いていた。結局行く当てなんてなくて自分の研究室に来ていたのだから笑うしかない。
この部屋で色んな事があったなぁ。スカさんと研究や開発で議論を夜通し繰り広げた事もあるし、無茶な徹夜をやらかしてウーノさんやクアットロさんにトーレさん、はたまた他の人たちに止められて強制的に中断されて抱きかかえられ自室のベッドまで連れていかれたり。
ご飯を食べる事を忘れていれば、セインさんやチンクさんが簡単な食事を作って差し入れてくれた。武闘派の人たちはもっと強くなりたいって言ってISの強化や武装を改造する為に相談に来てくれてたりもしたんだ。
前世では私の両親は御世辞にも良い親とは言い難かった。
口答えをすれば暴力を受けたし、些細な事でけんかになってぶつかっていた。あまりにも酷いものだったらしく、ご近所さんに通報されて児童養護施設に保護されて育つ。その施設の環境もあまり良くなくて。まぁ私に運がなかったんだろう。
何をするにも制限があったし、自由もあまりなかった。そんな事だから反骨心だけが育ってしまい必死で勉強をして、どうにか良い学校に通って職に就いて。でも、そんな環境下で育った私は、周囲の人たちに溶け込む事が出来ずに浮いていた。一人で過ごす日々は気楽なものだけれど、正直寂しくもあった。時間を潰すために漫画やアニメに嵌ってしまったのは必然だったんだと思う。
その事を"逃げ"だと言う人がいるのならば、そうなのだろう。けれど私にとってそれは現実よりも楽しくて面白いものだったから。それに物語の中で描かれる幸せそうな"家族"の形に密かに憧れていた。誰かに優しくされる事が嬉しかった。誰かに頼られる事が嬉しかった。誰かに褒められる事が嬉しかった。多分、私以外の他の人がみれば何の変哲のない当たり前のものだったのかもしれないけれど。でも、私にとってそれはとても心地の良いものだったから。いつの間にか大切に思っていて、大事なものに変化していったんだろう。
何もする気が起きないとは言ったものの、気になってしまうのが人間の性というものだから。スカさんが監視している映像にこっそりとハッキングを掛けてこの部屋でも観られるようにした。物語は本当に佳境に入ってて、聖王のゆりかごでは八神さん家のヴィータさんが動力炉の破壊に向かっているし、クラナガンの街ではスバルさんやティアナさんの姿がある。そしてエリオさん+キャロさん対ルーテシアさんによる怪獣大決戦が始まっていた。
――ルーテシアさんとキャロさんの召喚獣対決……街中の被害がとんでもない事になっている気がする。
他の星からしゃしゃり出て来て三分間しか変身出来ない某巨人のヒーローが、敵と戦いながら派手にビルやら工業地帯やらをどっこーんばっこーんと破壊していく特撮作品みたいになってる。怪獣を撃退して良かった良かった、そして平和が保たれましたって言っているけれど、実際にはその陰に家を失い仕事を失い路頭に迷う人たちが沢山いると思うんだよね。
そんな事を描いてしまえば夢も希望も浪漫もなくなってしまうし、子供向け番組だから小難しい事は言わない方針なんだろう。でも、現実に起こってしまえば色々と世知辛い問題が沢山出来て、それに奔走しなきゃならない人たちも沢山出来るんだから。戦っている本人たちは頑張っているんだろうけれど、建物のオーナーとか今頃膝から崩れ落ちているんじゃなかろうかと想像しちゃうのは無理もない話で。
他の場所でもスバルさん対ギンガさんの対決が始まろうとしている。さて無事にギンガさんの洗脳は解けるのか、賭けのようなものだけれど信じるしかないかな。培養槽のシステム解析については私はまだ完全に習得していないからスカさんの方に分があるし。なのでギンガさんの洗脳が解けない可能性があるんだけれど、スバルさんも機動六課でなのはさんの直々に訓練を受けて頑張って来たんだからきっと報われるはずだ。
所謂他人任せの投げっぱなしジャーマンなんだけれど、四方八方手が出せるほど器用じゃないし出来る限りの事は施したのだから、私にはもう見守るしか手段がないんだんよね。
そういえば私が居るこのアジトはどうなっているんだろうか。外の出来事に興味を引かれちゃったからこのアジトの中の事を気にしていなかったんだけれど、そろそろこの場所にもフェイトさんたちが突入してきてもおかしくないから。キーボードを手繰り寄せて色々と操作をし、固定監視カメラの映像を拾ってみると見事にフェイトさんたちはアジトの中へと侵入を成功させていてスカさんと対峙中。
トーレさんとセッテさんがフェイトさんと戦闘中で、一応優勢みたいだ。フェイトさんはまだ軍服調のバリアジャケット姿だからまだ余裕はありそうかな。トーレさんたちに加勢するつもりなのか、スカさんは言葉でフェイトさんの心を乱す手段に出た。私の遺伝子の提供者ながら、嫌な台詞をどんどんとよく言えるもんだ。しかも真に受けてフェイトさんに精神的ダメージを与える事に成功しているし。
もう少しフェイトさんはメンタル面を鍛えた方が執務官としての職を全うできるのでは、と愚考しちゃうのは仕方ない。だって、世の中は不条理な事ばかりで溢れていてその状況に直面する機会が一番多いのはフェイトさんなんだよね。だからこそ精神の強さが大事だと思うんだけれど、スカさんの言葉でたじろいじゃうようじゃこの先がとても心配だと、私の老婆心が叫んじゃった。
あ、老婆心が働いたついでにもう一つお節介というか今後の身の振り方の為に保険をもう一つ掛けておこう。そう思ってキーボードをまたべけべけと叩いてとあるデータを入手しておいた。
精神的に追い詰められているフェイトさんを余所に、地上本部ではゼストさんが無事にレジアスさんへの御礼参りに成功したみたいで、再会を果たそうとしていた。そんな事だから地上本日に配備されているスカジアさんが、レジアスさんの執務室へとゼストさんの後を追い急行してる。ロゼさんも既に現場待機が完了しているみたいで、隠れてタイミングを窺っている状態だ。
なので、もしかすれば私が考えている通りに物事が進めば彼ら二人とドゥーエさんは助かるかも知れない。後はシグナムさんの采配でどうなるかなんだけれど、武士の情けが発動しないかなーと狙ってる。ま、管理局員だから手荒な事はしないはずだ。
『……レジアス』
『な、何故お前が……此処にっ!』
レジアスさんが驚くのは仕方ない。ゼストさんは世間的にはお亡くなりになっている人だもん。レジアスさんが驚いて彼の事を幽霊扱いしてもおかしくないと思う。ひげ面で仏頂面のレジアスさんが目を見開いて驚いているので、その反応が面白かったり。
驚いているレジアスさんを無視してゼストさんが問いかける。もちろんそれは十年前の事でゼストさんがこの十年間抱えてきたものだ。その問いに一瞬レジアスさんがたじろぐけれど、一度息を吐いて気持ちを切り替えた時だった。転送魔法で静かに音もなくレジアスさんの後ろから現れた変装ドゥーエさんがレジアスさんに狙いを定めた一瞬。
『……ッシ!!』
瞬息一閃の斬撃は誰の目にも止まることなく無慈悲に対象を斬り殺す……筈だったんだけれどその刃が届く事はなかった。細い刀身がレジアスさんの首へと喰い込むことを止めたのは、誰であろう私の使い魔のロゼさんである。人の形で硬化しちゃったからヘンテコな感じになっているのはご愛嬌で、心の中でロゼさんタイミングバッチリナイスと叫びながら、ふと原作以上のバッドな展開になってしまわないか不安になってしまう。
『なっ! 何故貴方が止めるのっ!! ドクターの計画の邪魔をするつもりっ!?』
ドゥーエさんの台詞は尤もだ。それがスカさんの命令であったし、誰も逆らう事のない不文律だったのだから。そしてその不文律を絶対に破らないであろうスカさんのクローンである私が破ってしまったのだから、彼女が驚くのは正常な反応なのだ。
『マスターの御命令ですので。……それとマスターからの伝言です。“また一緒にご飯を食べましょう”と……』
ロゼさんの言葉に一瞬目を見開いて、苦虫を潰した様な顔になるドゥーエさん。そんなに私と一緒にご飯を食べるの嫌だったのかしら。ちょっと落ち込みながらも、命が助かった事に安堵してた。
『ドクターに何て言えばいいの……』
『それはご自分で考えて下さい』
ロゼさんは書籍で言葉を覚えてしまったものだから、結構というか大分言葉のチョイスが固くてキツイ。しかも思った事をストレートに言ってしまうのでこの先ちょっと心配である。ゼストさんとレジアスさんはドゥーエさんのいきなりの登場に驚いてフリーズしたまままで。
その方が都合がいいんだけれど、これから起こる事を考えればこのままでいるのは不味い。周囲にはスカジアさんがぞろぞろと執務室に入ってきているし『何事だっ!』とレジアスさんが叫んでいるけれど……。うん、スカジアさんはレジアスさんをしょっ引く為に入室したんですよ。スカジアさんがレジアスさんを取り囲んだ瞬間、超絶なタイミングでシグナムさんが乱入してきた。このカオスな状況に少し混乱したようだけれど、おっぱい剣士のシグナムさんはその胸の大きさの如く広い心で全員を逮捕。
もちろんロゼさんはシグナムさんに捕まるなんてヘマは犯してない。ロゼさんには"逃げろ"と言ってあるので逃走を図ってもらってる。だって起こりうる可能性は私が全てロゼさんに伝えてあったから、状況が掴めているので逃げるのは案外簡単。ロゼさんはセインさんみたいに無機物の中に入り込んで移動する事が出来るし。液体金属って便利なんだけれど、セインさんのように誰かと一緒に移動する事は出来ないから、有用性はセインさんに分が上がる。
ドゥーエさん、ゼストさん、レジアスさん、公務執行妨害でシグナムさんの手により現行犯逮捕されました。取り敢えず捕まえれば良いので罪状が適当だなーと思いつつ。レジアスさんは事情聴取や裁判で最高評議会の件とか問質されるだろうね。もしかすれば原作よりも謎が解けるんじゃないのかなぁ。ゼストさんは世間的には死んじゃっている人だからどうなる事やら。ま、戸籍はID復活でどうにでもなるだろうし、上手く立ち回れば直ぐにでも釈放されそうだけれど、不器用だからねぇ。
ゼストさんが助かれば刑期を短くするために、培養槽の論文や戦闘機人についてのデータを渡した訳なんだけれども、ゼストさんは上手く使ってくれそうにない。んー不安になるなら、それもちゃんと伝えておけば良かったか。彼の寡黙さと実直さを考慮するのを忘れてたよ。まぁいいや、その辺りの判断はゼストさん自身に任せよう。それにスカさんに加担していたけれど、止むに負えない事情があったんだし。オーバーSランクの魔導師を管理局が腐らせておく訳もないだろうし。
◇
地上本部の騒動が収まりつつある頃、外ではスバルさん対ギンガさんによる強制的姉妹喧嘩が終了してました。ギンガさんの洗脳が上手い事解けたみたいで、そのまま戦線復帰するみたいだ。ド凡人オブTHEド凡人と自称しつつ努力で才能を強制開花させたティアナさんも、ウェンディさんとディードさんを倒しちゃったよ。うーん、原作よりも私のおせっかいによって武装とか強化されてたんだけれどティアナさんの成長の方が上回ってたみたい。
スカさんとフェイトさんの舌戦も続いていて、フェイトさんは軍服調のバリアジャケットからレオタードに毛が生えたくらいの布地面積が少ないバリアジャケットにいつの間にか変わってた。畜生、生着替えシーンを見逃した。魔力で編み出したモノだから魔力供給量を減らせば良いだけなのに、わざわざ布地も減らしてしまう意味が理解出来ないんだけれど様式美というやつなんだろうね、きっと。それにフェイトさんがその方が気合が入るって言うのならそれでいいのだろうし。
『はぁぁああああっ!!』
腹の底から出した声が集音マイクを通してスピーカーへと響いてくる。フェイトさんの見せ場でもあるのだけれど、やっぱりレオタード姿は痴女としか言えない。ごめんフェイトさん。あ、でも二刀流はカッコいいです、はい。やはり悪党は正義に倒されてしまうのが世の常識なのか、トーレさんとセッテさんが健闘虚しく倒れてしまった。多分、暴力シスターことシャッハさん対セインさんとの戦闘も終わる頃だろうな。
ウーノさんもヴェロッサさんに変態的発言である『頭の中ちょいと査察させて』と言われてドン引きしている頃合いだろうし、私の下にも武装隊員でも突っ込んでくるんだろうな。余所事を考えていたら、モニターの画面ではスカさんが逆転満塁ホームランのごとくフェイトさんのザンバーで斬られるというよりも打ち上げられていた。南無。合掌。
「さぁ、いきましょうか。お嬢様」
「え」
突然聞こえてきた聞き慣れた声に振り返ってみれば、眼鏡を外したあの人の姿が。……あ、あれ。クアットロさんは先程まで聖王のゆりかごに居たはずではと聞いてみると『転移魔法でちょっーと』とハートマークを浮かべて私を抱き上げる。そうして私はクアットロさんが転移魔法を発動された腕の中で一緒に聖王のゆりかごへと一瞬にして辿り着く。作戦プランには私は聖王のゆりかご組には関わらない予定だったのだけれど、突然のクアットロさんの行動を不思議に思い聞いてみると。
「ドクターはもう見限りました。それにドクターが居なくてもマイクロチップと貴女が居れば十分に計画は続けられるでしょうし」
ふふん、と鼻を鳴らして不敵に笑うクアットロさん。あ、はい、そうでしたね。原作でも割とあっさりスカさんを見限っていたので、この展開はありっちゃありなんだね。目の前の眼鏡……じゃなくてクアットロさん的には。
まぁ、今は眼鏡を掛けていないのでのほほんとした腹黒お姉さんって雰囲気は微塵もないし。言うまでもなく悪の女幹部と言った所かな。しかも似合っているのだからぐうの音も出ないというか、なんというか。いや、私はスカさんの計画に加担するつもりはないんですよー。研究や開発は楽しいからやってきただけで、世界を混沌の渦の中に落とし込むだなんて興味ないですし、平和が一番です。
そんなこんなでスカさんの代わりとなる私をきっちりと手に入れた事でご機嫌に高笑いを始めたクアットロさんの後ろには、同じように高笑いをしているスカさんの幻影が見える。嗚呼それはきっと負けフラグだよとげんなりしながら、腕から降ろされた私はクアットロさんの足元でどうしたものかと頭を抱える。
ふと正気に戻ってここは何処だろうと見渡してみると、聖王のゆりかごの最深部。モニターにはヴィヴィオさんとなのはさんが親子の絆を結ぶ為に、盛大な親子喧嘩(仮)を繰り広げているし、動力炉ではヴィータさんがボロボロになりながらグラーフアイゼンと共に破壊活動に勤しんでるし。
そろそろ終わるなぁとしみじみしていると、ある事が思い浮かぶ。ん…………ワタシコノママジャナノハサンノあれヲイタダクコトニナリマスヨ。
瞬時に頭の中に非常警報が鳴り響いた。そう、そうなのである。非常にまずい状況で、非情にも逃げられる方法がない状況なのだから。クアットロさんを説得して一緒に逃げるのもアリだけれど、それだと話の根本を変えてしまう恐れがあるので駄目だから、このまま大人しくここでなのはさんの砲撃を頂く選択しか存在してないという現実。非殺傷設定なんだろうけれど私が精神的にお亡くなりになりそうなんだけれど……。出来れば回避したいけれど無理だ、無理無理。
「駆動炉が……防御機構フル稼働、予備エンジン稼働、自動修復開始。ふっ……まだまだっ」
嗚呼、その台詞はもう駄目だこりゃ状態でフラグをどんどんと建設していくクアットロさん。そのフラグを一本でもユーノさんに分けてあげてと心の中で切に願うけれど。そうしていろいろと仕掛けを施していたクアットロさんの悪足掻きは徒労に終わってしまう。何故ならなのはさんのワイドエリアサーチに引っ掛かっちゃったから。
「私をずっと探してた……! だ、だけどここは最深部……」
や、やめてクアットロさん。その台詞は撃ってくれとなのはさんに言っているようなもんですよ。あ、どうしよう、なのはさんの砲撃で撃ち抜かれる未来を恐怖してお手洗いに行きたくなってきた。この身は三歳児で子供で幼児なんだけれど、一応精神的には大きな大人なのでそんな事態にはなりたくはない。なりたくはないんだけれど、クアットロさんを置いて逃げる事は出来ないから一緒に撃ち抜かれるしかないんだな。壁抜きの為になのはさんは七発のカートリッジをロードして、さらに威力を高めようとする。なのはさん自身の魔力だけでも十分だというのに、確実にヤる気だよ。鬼だよあの人。
『ディバイ――――ン…………』
撃ち抜かれる覚悟を決めた瞬間、突然ひょいと私をクアットロさんが抱き上げる。
「ふふふ……! 貴女はこんな小さな子供を撃てるのかしら……?」
――へ?
嗚呼、汚いっ。クアットロさんは私を盾にする気だ。でもどうせ一緒に撃ち抜かれるのだから何処に居ても一緒なのでクアットロさんの腕の中で大人しくしてる。それでなのはさんが砲撃を止めてくれるのなら御の字だし、ラッキーだよね。
『バスタァーーーーーーーーー! ……って子供ぉぉおおおお!!』
あ、なのはさんが珍しく戦闘中に涙目だ。集中していた為なのか気付くのが遅かったみたいで今更止める事は無理難題。主役キャラの貴重な物を見れたなと思いつつ、これで仮に天国へとクアットロさんと一緒に旅立ってもいいかなーなんて。
『レイジングハートっ! 止めてっ! 止めてぇえっ!』
『
モニター越しに聞こえる
嗚呼、最初スカさんたちと一緒に暮らしてる事が不安で仕方なかったなぁ。でも、段々と慣れてきて。アニメだけの知識だけだと知らない事や、意外な一面を見る事があったし。悪人でも人間らしさはあるんだなーって。三年間を懐かしみつつ死なない様に祈っているんだけれど、一向にバスターの衝撃が来る気配がない。恐怖に震えながらも目を開けてみると、目の前には私の大切なスライムさんの姿が。
「ろぜさん、なんで……」
ここに居るのか、という言葉は口から出なくて。
「……どうにか、間に合いました」
イケメン顔負けの台詞を吐きながら唐突に現れてディバインバスターの盾となってくれているロゼさんなのだけれど、バスターの威力が高すぎる為か所々が融解し始めててちょっと怖い。地上本部からこっちに急行したのだろうし、これ以上バスターを受ければロゼさんの命が危ない。私が使い魔契約をして助けた命なのに、こんな所で無駄死になんてさせるなんて絶対に駄目だ。非殺傷設定だろうけど、ロゼさんは普通の使い魔よりも特殊な存在だからどういう結果を招くか解らないから用心するに越したことはないので、私も一緒に前に出る。
「マスター!?」
下がって下さいと言いたげなロゼさんを余所に横に立つ。私に出来る事なんてロゼさんへの魔力供給量を一時的に増やして、ロゼさんの防御を上げるくらいしか出来ない。残念ながら必要に駆られなかったから防御魔法については習得してないんだ。こんな事ならちゃんと習っておけばよかったと後悔しつつ。出来る事をするしかない。一体何秒耐えたのだろうか。そのくらい時間経過が解らない程には耐えていたと思う。どうにかなのはさんのバスターを凌ぎ切り安堵の息を吐く私。
その後ろでは、なのはさんの砲撃が怖くて仕方なかったのかクアットロさんが気絶してた。砲撃の土埃が晴れて、モニター越しになのはさんが凄い驚いた表情をしている。
――どうにか凌げたなぁ。
そんな気持ちは直ぐに飛び去る事になるけれど、ね。
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えーっと、作者は日本人なので英語はグーグル先生頼りです、はい。
メモ:長文にルビをふる時はこまめに切る。