FGO微課金ユーザーが『HUNTER×HUNTER』の世界にいく話 作:あきしょう
福袋で沖田オルタ出ました!
うれしくてさっそく2話を書いてしまいました。
287期ハンター試験。
街中のどこにでもあるような定食屋の地下深くに今年の試験会場があり、そこにはすでに数々の試練やなぞかけを乗り越えてきた、ハンターを目指す猛者たちが集っていた。
その中の一人、見た目はどこにでもいそうな人の好さそうな男が、獲物を物色するかのように周囲を観察していた。
「へへ、今年は新人が妙に多いな。だが、だからこそ俺の趣味もはかどるってもんだぜ!」
男の名はトンパ。
10歳のころからハンター試験を受け続け今に至るがそれは決して彼の実力が劣るからではない。
ではなぜか。
それは彼がハンター試験を受けるのは、ハンター試験に受かるためではないからだ。
彼は希望を持ってここまでやってきた新人の足を引っ張り、脱落して絶望するさまを見ることが生きがいという、実に陰湿な性根の持ち主だった。
「新人つぶし」のトンパ。それが彼の異名である。
ちょうど今、会場に入ってきた受験者の顔を見てトンパは舌なめずりをする。
やってきたのは男女のペアだ。トンパには彼らの顔に見覚えがなかった。つまり自分の悪癖を知らない新人というわけだ。
(カモがきやがった。待ってろよ~、新人ども!)
そんな悪意を悟られないようトンパはにっこりと笑顔を作って話しかける。
事情を知っている周囲の受験者たちはまたかといった顔をするも、特に忠告したりはしない。ライバルを助ける義理はないし、そもそもこの程度にうまく対応できなくてはハンターになるなど夢のまた夢と知っているからだ。
「よお!お二人さん、新顔だな! 男女のペアとは珍しい。ひょっとして恋人同士だったりするのかい? うらやましいね!」
「私たちのことですか? マスター! 私たち、恋人同士ですって! なんか照れちゃいますね!」
「失礼すぎる。詫び石をもらいたいぐらいだ」
トンパの言葉に、男女はそれぞれまったく真逆の反応を見せる。
400番は目つきが悪い以外特に変哲もない少年だった。
見たところ体も細く武道の経験もないようで、自分が手を下さなくても勝手に死ぬか脱落するとトンパは一瞬で少年の実力を見抜き、さして興味を持たなかった。
だが、もう一人は違う。
この辺りでは珍しい和服に誰もが一度は振り向いてしまうほどの美貌。そして隙のないたたずまいが、只者ではない空気を醸し出し、さきほどから周囲の注目を集めている。だが、こういう女の顔をゆがめさせたらさぞや気持ちいだろうとかえってやる気がみなぎるトンパ。
どういうわけか彼女はどこにもナンバープレートを付けていないが、ここにいるということは受験者じゃないということはないだろう。落としたり取られたりしないように服の中にでも隠しているとトンパは結論付けた。
「ハハハ! 悪い悪い。俺の名はトンパ。こう見えてもハンター試験のベテランさ。分からないことがあったら何でも聞いてくれ。ところで、君たちはどうしてハンターになりにきたんだい?」
信用を得るためにまずは簡単な会話から入る。
その話題として、ハンターになる動機は鉄板だった。
「ガチャだ」
「へ? すまないなんだって?」
「だからガチャだ」
「あ、ああ、なるほどガチャか……」
聞き間違えかと思って聞き返したが、同じ答えが返ってきて、とりあえずわかったふりをするトンパ。
彼にはガチャとハンターがどう関連するのか分からなかった。
「ハンターになればいろんなクエストを受けられて石が手に入れやすくなると思ってな。次のピックアップに備えて前回爆死して失った分を早く補充しなければならん」
「星5どころかサーヴァントが一体も出ませんでしたからね……。あれは見事な爆死でした」
「……ああああああああああ!なんで俺はあそこでガチャを引いちまったんだ。我慢していて地道にためていれば確実に星5が狙えたかもしれないのに!ああ、そうだよ俺のせいだよ! 今回のピックアップキャラがど真ん中過ぎて一発大穴を狙って中途半端な数で挑んじまったんだよ。ていうか排出確率低すぎだろ! ほんと能力がクソ過ぎる! 死ね! それかせめて課金させろ! 無課金だけとかほんと無理だから!」
「そ、そうか……、あんたも大変だな」
1人で勝手にフィーバーし始めた400番の様子を見て、トンパは一瞬で「あ、こいつは話が通じない系のやつだ」と察する。ちなみに最後の言葉は隣で疲れた顔をしている女に向けたものである。
「ま、まあよく分からないがお互い理由があってハンター試験を受けに来たんだ。合格できるよう頑張ろうぜ。これは餞別だ、飲んでくれ」
そう言って2人に『いつも』のジュースの缶を二本手渡す。
トンパはハンター歴が長いのでこういった頭のおかしいやつに出会う機会も多い。そういう相手の一番の対処法は話をさっさと切り上げるに限ると知っていた。
「わあ、ありがとうございます! よかったですね! マスター!」
「俺はいいや。喉かわいてないし」
「もー、そんなこと言って。いいです、私がマスターの分まで飲んじゃいますから! 後でほしいといってももう遅いですからね!」
そう言いながら少女はプルタブを開け勢いよくジュースを飲み始めた。
「おい、そんなに勢いよく飲んでむせても俺は知らんぞ」
「
「……前もそれで倒れたことがあっただろうが。また同じことになっても俺は放っておくからな」
「
少女はジュースを飲みながらしゃべるという器用なことをしていたが、突如話すのをやめ顔色が変わりはじめた。
(くくく、さっそく効果が表れたようだな。実はそのジュースの中には超強力な下剤が入っていたのさ! さあ、苦しめ!)
トンパは数秒後の女が無様にトイレに駆け込む姿を想像すると我慢できなくなり、醜悪な笑みを浮かべ、
「こふっ!!」
少女は盛大に吐血し床に倒れた。
「ええええええええええええええ!! なんでえええええええええええ!!」
トンパはその様子を間近で見て思わず叫ぶ。
おかしい、なんで下剤入りのジュースを飲んで血を吐くことになるんだろうか。
確かにトンパは人の苦痛にゆがむ姿を見たかったが、決してこういう意味ではなかったはずだ。
『お、おいあの娘、血を吐いて倒れてるぞ。あれ死んでんじゃねえか?』
『なんかジュースを飲んだら血を吐いたらしいぞ』
『ジュース? ……て、あそこにいるのトンパじゃねえか』
『え、トンパ?『新人つぶし』の? じゃああれはトンパがやったのか?』
『ああ、今年はジュースに下剤じゃなくて即効性の猛毒を入れているらしいな』
『苦しめるのに飽き足らず殺すようになるとは……おれはいつかやるとは思ってたよ』
『ええー、前からあいつの性癖ないな、って思っていたけど、殺すのに快感を覚えるとかあのヒソカと一緒じゃねえか。もう完全にないわー。近づかないようにしないと』
『ああ、しかもあんな女の子の吐血に興奮するとかヒソカ以上の変態じゃね? もうあいつ終わったな』
あちこちからそんな声が聞こえてくる。
今までトンパの悪趣味を知っていても、眉を顰めるか一緒に笑うかしているだけだった他の受験者も、さすがに死人がでたら話は違う。非難、というかヒソカを見る目で遠巻きで見てくる。
そのことに気づいて焦ったトンパは
「おい、あんた! 大丈夫か! しっかりしろ!」
と少女に駆け寄った。
「……す、すみません。むせました」
「なんでむせただけで血吐くんだよ! おい、死ぬなよ! 生きて、それからちゃんと周りの誤解を解いてくれ!」
「心配してくれてありがとうございます。……最期に飲んだあなたのジュース……おいしかった……です」
「不吉なことをいって目つぶるな!!」
そう言い残してがくりと全身の力が抜ける少女。その姿は今死んだばかりのようにしか見えない。
周囲のトンパを見る視線はますます虫を見るような目になる。
「ち、違うんだ! 俺のせいじゃない! お、おい、あんたからもなにか……、ていない!?」
400番の少年に助けを求めようとしたが、いつの前にかいなくなっていることに気づく。
その逃げっぷりはとても年季の入ったもので、いついなくなったのかトンパは今まで全く気付かなかった。
「…………………」
血に染まった床と倒れた少女のもとに一人取り残されるトンパ。
「誰かあああああああああああああ!! 医者ああああああああああああああああああ!!」
彼は自分の地に落ちた名誉を取り戻すため、最後の希望にすがってあらん限りの声で叫んだ。
※
世界ほろびねえかな、と物騒なことを俺は半分冗談で考えていた。
もちろん半分は本気である。
理由? 爆死したからだ。運営は死ね!
最初にこの世界に来て死ぬような目にあってから2年が過ぎた。
その間、魔獣を倒したり、マフィアの幹部の警護をすることになったり、いきなり能力を奪われそうになったり、ジンとかいうあほのけんかに巻き込まれたり、やっとの思いで召喚できたサーヴァントが暴れだして殺されかけたりと、本当に大変な毎日だった。
沖田さんの「こっふ!」は前世では定番のギャグだったけど、現実の世界ではガチで笑えないことがこの二年で身をもって実感できた。あのダメダメサーヴァントはいつも肝心な時に「こっふ!」をやらかして、毎度俺を命の危機に追い込みやがる。何度レアマナプリズムにしてやろうかと思ったか覚えていない。
だが、そんな大変な日々も、決して無駄だったというわけではなかった。
どういう仕組みか知らないが、どうやら何か強力な敵と戦ったり、困難なことに挑むんだりする、簡単に言えば「クエスト」を受けてそれを達成すると、ゲームと同じように聖晶石が手に入れられるらしい。そのことにこの世界に来て少し経ったころに気づいた俺は、それから積極的にいろんなクエストを探して受けるようになった。
とりあえず今の目標は、聖晶石をどんどん集めて、従順で気が利いて、戦闘中に血を吐いて倒れたりしないサーヴァントを一体手に入れることだ。この際男でも構わない。
そして少し前、クエストやログインボーナスで少しずつ貯めてきた聖晶石180個(途中でちょくちょく使ってしまった)を、シトナイのピックアップを知って思わず使ってしまい、見事爆死した。
ちなみに内訳は以下の通りだ。
概念礼装『激辛麻婆豆腐』×59
概念礼装『まるごしシンジ君』×1
……お前らに59個の麻婆豆腐に囲まれ、あまつさえ後ろから沖田さんに肩をたたかれ慰められた時の俺の気持ちがわかるだろうか?
1個シンジ君なのが輪をかけて不快なんだよ!!
クソが! 排出確率低すぎだろ!!
そう、俺の作ったガチャをするための能力は、サーヴァントの排出確率が本家よりもさらに低く、かつ概念礼装がほぼ『激辛麻婆豆腐』しかでないのだ。
何これありえない。あの本家のガチャ以下とかありえなさすぎだろ。
この時、さすがの俺の心も完全に折れた。
もうガチャなんか絶対にしないと心に決めた。なんか2年位前にもおんなじことを言ったような気がするが今回は本気だった。
爆死のショックで日課の聖晶石磨きもすることもなく、クエストの情報を探すこともせず、ひたすら宿の中に引きこもるようになったが、そんな俺を見かねた沖田さんにはたかれて説教された。
「どうしたんですか! マスターのガチャへの想いは一度や二度爆死したくらいで諦めてしまう程度のものだったんですか! 石ならまた一から集めればいいじゃないですか! 私もこれからも手伝いますし、また一緒に頑張りましょう! マスター!」
「黙れ! 運営の回し者め! そんなこと言われても俺はもう騙されんぞ! 俺に続けて欲しいんだったらまずはガチャの確率を修正しろ! そして詫び石よこせ!」
「もー、マスターはまたそんなこと言って! せっかく沖田さんがいいもの持ってきたのに! あと沖田さんは運営の回し者ではありません。決して!」
「いいもの?」
そう言って沖田さんが差し出してきたのはハンター試験の受験申請用紙だった。
ハンターについて俺が知っていることは少ない。せいぜいこの世界で一番人気でお金が貯まる仕事で、試験がとても難しいという話ぐらいだ。人気もお金にも興味がない俺には関係ないと思ってたが……
いや、待てよ? 試験が難しいということは……
「そうです。ハンター試験は難しく、いくつもの試練を潜り抜けなければならないそうです。つまり、ハンター試験を受験すれば、その試練の数だけ」
聖晶石が手に入る!
「そういうことです。それにちゃんとメインストーリーを進めとかないといざというときにイベントに参加できなくなりますからね。気を付けましょう」
「何言ってんだお前?」
最期のは意味が分からなかったが、さすがに自分の召喚したサーヴァントにそこまでお膳立てされては俺も黙っているわけにはいかなかった。
こうして俺はハンター試験を受けることに決めたのだった。すべてはガチャをするために!
なんて回想をしていると、黒スーツにサングラスの怪しい男に話しかけられた。いや話しかけられたというか突然後ろから現れた黒サングラスがいきなり
「おい、お前! 何やってんだ!」
と言って絡んできたのだ。
『チンピラ』かな? 倒せば魔術髄液をドロップするかもしれない。
それに質問の意図が分からない。もっとわかるように話してほしい。
今は、ハンター試験の一次試験で、地下道をひたすら歩かされている。
試験が始まって早々につかれてしまった俺は、令呪で彼女を回復させこうして俺の代わりに走ってもらっている。つまり、おんぶしてもらっている状態だ。このことを言っているのだろうか?
「そうだよ! なに病人におぶさって走らせているんだって言ってるんだよ! その娘は当分安静にしてなくちゃなんねえ。なによりそんな自分より背が低い女の子におぶってもらってはずかしくねえのかてめえはよ!! さっさとその娘から降りやがれ!」
「やだ」
「な!?」
どうやらこのおっさんはジュースにむせて血を吐いて倒れた沖田さんを治療してくれた医者らしい。見た目によらず中身はいい人だ。
ただ、恥ずかしくないのかって?
全然恥ずかしくない。自分ができないことをできないといい、できる人に頼るのは全然恥ずかしいことではない。そこに女も男も関係ない。
血を吐いたのは俺の忠告を無視した沖田さんの自業自得だし、令呪である程度回復させた。走るぐらい、問題ない。
そもそも沖田さんは俺の魔力……この世界ではオーラか、オーラで動いている。だから、彼女が走っているのは俺が走ってるのと同義である。恥ずかしいことなんて一つもない。
なんてこと目の前のおっさんに言っても分からないだろうから無視していると、俺の代わりに沖田さんがフォローに入るが、
「あ、私なら大丈夫ですよ!
「慣れてる!? おい、てめえはふだんこの娘に何やらせているんだ!」
沖田さんの全然フォローになっていないフォローに、ますます怒る黒サングラスのおっさん。そこに彼らの仲間が加わってますます事態は混乱していく中、俺はただ、このハンター試験で何個集められるか考えていた。
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彼らとはそんな最悪な出会いだったが、この出会いをきっかけに、俺もこの世界での
今回は原作キャラとの絡みも入れてみました。
次回(があれば)、いよいよバトルに入りたいと思います。
ちなみにサブタイトルは私の経験談と全く関係ありません。あくまで主人公の考えです!